帝都探偵 謎解け乙女 |
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作家 | 伽古屋圭市 |
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出版日 | 2013年12月 |
平均点 | 6.83点 |
書評数 | 6人 |
No.6 | 7点 | zuso | |
(2020/10/17 09:32登録) 大正時代を舞台に、本格ものあり人情ものありの連作短編集。シャーロキアンの方には特におすすめ。どんでん返しもあります。 |
No.5 | 7点 | makomako | |
(2015/10/18 09:38登録) なかなか大変なお嬢様と車引のお話。お嬢様が突然の名探偵宣言して、お抱え車引が陰で謎を解くという構造は、読んですぐにわかってしまう。読みやすくてまずますの感じと思って読んでいると、次第にこの物語の複雑さが披露されてくる。 最後にどんでん返しがあり、おおなるほどと思っていたら、終章でさらにどんでん返し。ある面でうまく騙されていたことがわかる。 作者は才能がありそうです。 終章の話は悪くはない。確かに伏線も張ってあったのだが、こういった話にしなくてもよかったような気もします。このあたりは好みの問題でしょうが。 |
No.4 | 6点 | E-BANKER | |
(2015/09/20 19:22登録) ~シャロック・ホウムズ(シャーロック・ホームズ)に憧れ、名探偵になることを宣言した女学生の菜富令嬢。お抱え車夫の寛太は彼女の願いを叶えるべく、菜富の家庭教師をしている小早川と協力するが・・・~ 「このミステリーがすごい!」大賞受賞の作者が贈る連作短篇集。 ①「死者からの手紙」=最初の探偵譚は、女学生時代のエス(=レズ?)で夭折した女性から届いた手紙の謎。本当に死者からの手紙なのか? 早速菜富お嬢様の勘違い(?)推理とそれをフォローする寛太という図式が明らかになる。 ②「密室から消えた西郷隆盛」=“西郷隆盛”とは当然本人ではなく、彼の「銅像」のこと。足跡のない密室から忽然と消えた銅像の謎なのだが、密室の解法そのものは肩透かしレベル。 ③「未来より来る男」=未来からやって来たという男の正体は、という謎がメイン。いかにもそれらしく振舞う男なのだが、真相そのものはよくある手。 ④「魔炎の悪意」=火事で死んだはずの前夫が生きている姿を見てしまった美しい未亡人。本当に夫は生きているのか調査を依頼された二人。事件は予想以上の広がりを見せるのだが、これも③と同じようなプロット。 ⑤「名探偵の誕生」=連作の最終譚は当然今まで隠された「構図」が明らかに・・・ということになるのだが、本作でも大掛かりな仕掛けが施されていた! 以上5編。 実は⑤の後の終章で更なるドンデン返しが待ち受けている。 連作短篇集はこうでないと・・・やっぱり! ①~④の各編はいかにも作り物めいていて、何となくむず痒いような感じがしていたが・・・ その「感じ」そのものが作者の狙いだったわけだ。 他の方の書評を先に見ていたので、最終的に「仕掛け」があることが分かっていたのがやや残念。 ラストにもうひとつ重要なことが隠されていたのがわかるのだが、それが何とも切ない! 続編があってもいいようn気がするのだが・・・ (もちろんこれ以上大掛かりな仕掛けは難しいんだろうけど・・・) |
No.3 | 7点 | 名探偵ジャパン | |
(2014/08/02 09:40登録) 名探偵に憧れるお嬢様と、それに振り回されつつも実際に推理までしてしまう車夫。毎回少し外してしまうお嬢様の決め台詞、たまに成功する車夫の自己紹介など、お約束ネタもあり。読み進めていく途中は、新たな形のコンビ探偵誕生に喜び、「これはNHKあたりでドラマ化したらいいものが出来そうだな」などと、暢気な感想を持っていたのだが・・・ 結局本作も最後はびっくり箱を用意していたとは。タイムスリップして、「NHKでドラマ化」などと抜かしていた自分を蹴り倒してやりたい。映像化できるかこんなもん。 確かに面白かったし、最後いい話でまとめたのも好印象だ。しかし、釈然としないものが残る。久しぶりに魅力的なシリーズ探偵登場かと拍車喝采を送った自分への苛立ちか。 今の読者が欲しているのは、とにかく驚かせて欲しいというびっくり箱爆弾。一回限りでその世界ごと全て破壊してしまう爆弾が破裂してしまっては、シリーズを通して活躍する名探偵の登場など望むべくもない。探偵だけが爆破圏外に逃れ、次の事件に進むことは、もはや許されないのか。一作ごとの「使い捨て探偵」の時代に一抹の寂しさを憶えた。 |
No.2 | 7点 | kanamori | |
(2014/07/30 23:07登録) ”シャロック・ホウムス”に憧れ、名探偵になることを宣言した女学生の令嬢と、彼女の願いを叶えるべくワトソン役を務めるお抱え俥夫の「俺」が、大正時代の帝都・東京市を舞台に5つの事件に挑む連作ミステリ。 これはなかなかの掘り出し物の一冊。 死者からの手紙や、密室から消失した等身大の西郷隆盛像、未来から来た男、密室状況からの人間消失など、次々と舞い込む事件の謎解きも魅力的ながら、陰の名探偵「俺」の推理を、弁舌鮮やかに自分のものとして披露するツンデレお嬢様のキャラクターがたまらない。 しかも、この軽妙なストーリーが、終章近くで何度も反転する作者の仕掛けには驚かされた。たしかに、あれこれ伏線も張られている。なかにはシャーロッキアンでも気付かないようなものもありますがw ”どんでん返し”じゃなくて、これは”ちゃぶ台返し”だろ!という感想もありそうですが、個人的には大いに評価したい。 |
No.1 | 7点 | メルカトル | |
(2014/06/10 22:31登録) 序章、終章と5篇の短編からなる連作短編集。 時は大正、良家の令嬢である菜富は何の前触れもなく、唐突に「あたくし、名探偵になることに決めましたの」と宣言し、それを聞いた車夫の俺こと寛太は内心やれやれと思いながらも、何とかその望みが叶うように尽力する。それを待っていたように依頼が舞い込むのだが、結局探偵はお嬢様でも、陰で推理するのは寛太の仕事となるのであった。 あの有名な大ヒットミステリ以来定番となった、ユーモアを全編に纏った、易しい系ミステリの系譜を踏襲する作品と見せかけて、とんでもない仕掛けを施した、凝りに凝った構成となっており、「それ以降」の作品群とは一線を画する、意外なほど玄人受けしそうな逸品となっている。 じっくり読めば、そこここに伏線が張られており、少なくともラストの衝撃は予測できる作りになっている。ある程度予想はしていたものの、やはり実際に現実を目の当たりにするとショックを受ける。しかし、決して暗い結末ではなく、辛くとも希望がわずかでも覗けるラストシーンであり、心温まる余韻を残す。 このような良作が埋もれているのだから、まだまだミステリ・シーンも捨てたものではない。「本格は死んだ」と人は言うが、新しい才能も生まれて、まだまだ本格は死なず、今後も本格に限らずあらゆる分野のミステリに期待したいものである。 |