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ミステリの祭典

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時の娘
グラント警部

作家 ジョセフィン・テイ
出版日1954年01月
平均点6.14点
書評数14人

No.14 5点 ボナンザ
(2020/07/15 22:11登録)
歴史の謎系のはしり。題材がそれほど親しみないせいか、やはり後発の高木作品の方に惹かれてしまう。

No.13 9点
(2018/11/03 02:34登録)
素晴らしい歴史推理でした。
あの衝撃は今でも思い出せる。

真理は時の娘であり、権威の娘ではない。
ベーコンはそう言った。

No.12 4点 文生
(2017/11/03 16:32登録)
緻密な論証に基づく歴史ミステリーの名作ということなのですが、世界史が苦手なもので内容が全然ピンとこなかったのは残念。話についていくのが精一杯で楽しむ域に達することはできませんでした。

No.11 9点 クリスティ再読
(2015/11/23 22:38登録)
本作は歴史推理の古典で有名であり、歴史好きでは人後に落ちない日本でもフォロワー多数、な作品なんだけどね...
実は本作、とっても慎ましいんである。本作は、あくまで証明可能なことを、大言壮語せずに綿密に証明してみせた作品であり、日本のフォロワーたちがやったようなトンデモ説の強弁とは精神において対極にある作品なんだよ。

「真実というのは、誰かがそれについて説明したもののなかにはまったく含まれていないんです。真実はその時代の些細な物事すべてのなかに含まれているんです。新聞の広告。家屋の売買。指輪の値段。」

細部にこそ神は宿る...すばらしい。これぞミステリというものである。論証も小説なのでいちいち出典を挙げるわけではないが、なるべく同時代資料に根拠を求め、資料批判の目は確かに持ち、読者にしても「調べれば確認できるだろう..」というくらいの信憑性を持たせることに成功している。まあ今どき、ネットの検索でもそこそこ歴史上の有名人物の生涯くらいは調べれるわけで、評者が見た範囲でも大筋本作の推理は成立しそうに感じる。
あとWikipedia に本作のナイスな評価があったので特に紹介したい。「歴史に対する不正義が人々の感情に訴えかける物語によって助長されていることに対する著者テイの嫌悪や不信」が本作のテーマだと言っている。「物語の倫理」を巡る作者の想いは、ロマン大好きなフォロワーたちには残念ながらまったく届いていないようだ...
本作はテイの創作論のような読み方もできるように思う。小説(ロマン)は、その物語性(ロマン)によって徒に感動を押し付けるのではなくて、デテールの精密によって現実でも空想でもない別な現実を体験させるものなのかもしれないね。だからこれはちょっとメタな視点による物語批判なのかも...評者はそう読みたいな。
それゆえ登場キャラは全員に血肉が通っており愛すべき人々たちである...これはホントウにすばらしいことである。必読。

No.10 5点 makomako
(2015/09/23 09:18登録)
 私は登場人物の名前を覚えるのが苦手なので、この物語を読むのに非常に苦労しました。ばら戦争に関しては世界史で昔習った程度で、リチャード3世なんて全く忘却のかなたの人物です。何度も系図を見ながら読んでいたのですが、系図に出てこない人物も多々あり、これがどんな関係なのかがわからなくなり、そのまま続けて読んでいくとまた苦難のことか不明の話となってしまう。仕方なく初めのほうを探し出しまた読み返すといった作業の連続なのです。たまたま国際線の飛行機の中で読んでいたので、ある意味良い暇つぶしとはなったのですが。
 歴史推理そのものは決して嫌いではないので何とか読み通しましたが、面白く読むまでにはとても至りませんでした。
 イギリス史に興味がある方や外国人の名前を覚えるのが得意な方にとっては非常に面白かったのかもしれませんが、私にとってはちょっと気を許すと全然話が分からなくなる、難敵の小説でした。

No.9 5点
(2015/06/05 10:23登録)
15世紀の英国の王リチャード三世は残忍な悪人だったのか、王子殺害については有罪なのか、無罪なのか。判決を下すのはベッドの上のグラント警部。

英国や欧州で歴史上の人物として、どの程度著名なのかは知りませんが、すくなくともシェークスピアの戯曲があるぐらいだから、一般人でも知ってるレベルなのでしょう。
とにかく一般的には嫌われ者みたいです。
日本の歴史上にもいますよね。
山岡荘八が『徳川家康』(26巻)を書くまでは、信長や秀吉の引き立て役で、腹黒いイメージしかなかった、狸親父・家康がそれ。
弟・義経を追い詰めて殺した、全く人気のない(もちろん評価もされているのでしょうが)、源頼朝のほうが近いか。

入院中のグラントが歴史書をひもときながら、そして歴史研究生キャラダインと会話しながら謎解きを進めていく、そんなスタイルはとても興味深い。ユーモアがあるのも良い。
日本人にとって謎解き対象の人物のなじみのなさは、インターネットなどで少し調べておけば問題なしでしょう。
それよりも、もう少し、たとえばロシア革命のアナスタシアみたいに謎も華もある人物だったなら、もっと楽しめたように思うのですが・・・

その他述べたいことはいろいろあるが、あえてひとことだけ。
『時の娘』というタイトルがいちばん良かった。

No.8 6点 蟷螂の斧
(2013/08/11 20:59登録)
(東西ミステリーベスト39位)歴史家の目ではなく、探偵の目で歴史を見る、つまり「誰が得をするのか(動機)」という視点で描かれていることが、新鮮に感じられました。本書を読む前に「薔薇戦争」の概要だけでもと思いましたが、複雑すぎてあきらめました(苦笑)。歴史ミステリーはほとんど読みませんが、きっかけは、「史上最高の推理小説100冊」(1990年英国推理作家協会選出)の第1位、「史上最高のミステリー小説100冊」(1995年アメリカ探偵作家クラブ選出)の第4位とのことで拝読。本書に限らず、本邦と英米との嗜好の差は、かなりありますね。この辺は、追々書評にあわせて書きたいと思います。(2013.2ニュース~2012.8発見された遺骨がDNA鑑定の結果リチャード3世のものと断定された。)

No.7 7点 E-BANKER
(2012/02/20 22:41登録)
グラント警部シリーズにして、歴史ミステリーとして有名な長編。
入院したグラントが、ベッドの上で主に書物を読んで推理していくという完全アームチェア・ディテクティブスタイル。

~薔薇戦争の昔、王位を奪うためにいたいけな王子を殺害したとして悪名高いリチャード3世・・・彼は本当に残虐非道を尽くした悪人だったのか? 退屈な入院生活をおくるグラント警部は、ふとしたことから手にした肖像画を見て疑問を抱いた。警部は徒然なるままに歴史書を紐解き、純粋に文献のみからリチャード3世の素顔を推理する。安楽椅子探偵ならぬベッド探偵登場!~

素直に面白かった。
翻訳物で「歴史ミステリー」というのは初めて読んだが、個人的にこういうジャンルは好きなので・・・
リチャード3世といえば、シェイクスピアの戯曲を持ち出すまでもなく英国歴史上「稀代の悪人」というイメージはある。
本作を読む限り、英国でもこの図式は当てはまるようで、教科書でも歴史教育でも「悪人」という扱いのようです。

井沢元彦の「逆説の日本史」シリーズを愛読しているせいもあるのですが、王朝など権力者が交代する際は、以前の権力者に対する誹謗中傷が必ずといっていいほど行われるものなのです。これは、日本史であろうが英国史であろうが一緒。
(新しい権力者にとっては、当然自身の権威を高めていく必要があるわけですから)
本作では、大法律家であるトマス=モアがかなりこき下ろされてますが、彼こそがまさに新しい権力者を擁護する立場の人物。
こういう大人物が文献の中で「リチャード3世は悪い奴」という内容を残してしまうのがクセモノ。その後の人々に誤った印象を残すことになってしまう・・・

私個人の感想でも、リチャード3世は傑出の大政治家のように思えますねぇ。
まぁ、日本史に比べると英国を始めとする西欧史はそれほど詳しいとはいえないので、あまり断言はできませんが・・・
とにかく、歴史ミステリー好きな方にはお勧め。
(ハヤカワ文庫版で訳者・小泉喜美子女史ですが、非常に読みやすい)

No.6 5点 mini
(2011/11/14 10:00登録)
エリザベス・ピーターズの「リチャード三世「殺人」事件」の書評書いたついでに、オマージュの元となった「時の娘」にも言及した方が良いかなと思い立った

イングランドとフランスとの百年戦争が基本的にはイングランド側の敗北に終わると、イングランド域内では混乱の時代に入る
15世紀後半には諸侯の中でもランカスター家とヨーク家の2大対立が軸となり後世では両家の紋章から”薔薇戦争”と呼ばれている
長年の抗争に諸侯は疲弊し結局は両家は統一され強大な絶対王権が確立される、後にエリザベス一世を輩出する所謂”チューダー王朝”である
薔薇戦争は日本史だとよく”南北朝時代”に例えられるが、う~ん私はちょっと時代的にも違う気がするなぁ、後に絶対王政が確立された経緯を考えると、日本史だと織豊政権以前の混乱期である室町幕府衰退から応仁の乱や戦国時代あたりの内乱に例えた方が近いかも、むしろ12世紀のプランタジネット朝時代のスティーヴン王と女帝モードの対立の方が日本における南北朝時代の感じがする
薔薇戦争時代の歴史はチューダー朝の庇護下に有ったシェイクスピアなどに見る如く王朝の都合で歪められた記述となったものも有り、チューダー史観と呼ばれている
つまりリチャード三世の悪行もチューダー史観によって歪められた宣伝であるというのが現在リチャード三世を擁護する人達の基本スタンスである
「リチャード三世「殺人」事件」ではこの辺の押さえておくべき事項が分かり易く冒頭で説明されており、文庫の前説も親切設計だ
その点「時の娘」は一般的には基礎知識が無くても楽しめるという意見が有るんだけど、私はいきなり「時の娘」を読んでも分り難いと思うんだよなぁ
やはり薔薇戦争時代の歴史の基礎を知っているのと知らないのでは全然違う
かなり以前に「時の娘」を読んだ時にはどうもピンとこなかったんだけど、今回エリザベス・ピーターズ「リチャード三世「殺人」事件」を読んでやっと理解できたって感じだ

No.5 5点 あびびび
(2011/07/02 17:23登録)
英国人ならだれでも知っている?王の継承者である幼い兄弟ふたりを殺したとして悪役ナンバーワンの伯父・リチャード三世。その事件を、入院中のグラント刑事が暇にまかせて推理する?訳だが、英国の歴史を知らなくてもまあまあ理解できる。

しかし、こういう小説は読み方の相性を問う。「イスタンブールの群狼」もそうだったが、自分の頭脳では歴史ものは合わないようだ。一冊読むのに、一週間もかかってしまった。

No.4 8点
(2011/05/23 22:21登録)
ジョセフィン・テイの異色作であると同時に代表作として発表当時から有名な作品、
リチャード三世を悪王とする通説についてはシェイクスピアも読んでないので、さっぱり知らなかったわけですが、それでも最後まで楽しめました。歴史ミステリですが、今回再読してみてクリスティーの『五匹の子豚』やクイーンの『フォックス家の殺人』のような過去の犯罪を再調査し、冤罪を晴らすミステリに近い感じも受けました。訳者あとがきにも書かれていますが、ユーモアがほどよく効いていて、地味な話なのに退屈させません。リチャード三世の無実の証明と真犯人の指摘には特に驚くようなアイディアがあるわけでもないのですが、肖像画の使い方もうまく、非常に好印象を残す作品に仕上がっていると思います。
ローレンス・オリヴィエがリチャード三世を演じたのを見たことがある、と最初の方で外科医が言いますが、これは舞台劇のことですね。オリヴィエは本作出版の4年後に監督兼任でこのシェイクスピアを映画にしています。

No.3 7点 kanamori
(2010/07/20 18:26登録)
グラント警部シリーズの第5作は、ベットディテクティブによる歴史ミステリという異色作。
まず、「真理は時の娘」という英国のことわざが掲げられていて興味を惹きます。
薔薇戦争時の英国王室やリチャード3世のエピソードの知識があれば、より楽しめたと思いますが、グラントが肖像画をみた直感と文献のみで既成事実を覆していくプロットは、けっこうスリリングでした。
作者の邦訳作品の中では訳文も一番読みやすい。

No.2 7点 測量ボ-イ
(2010/04/15 20:56登録)
怪我で入院する羽目になった探偵役の主人公が、入院中に
歴史上の謎に対して独自の解釈を試みる作品。そう、「安楽
椅子探偵」ならぬ「寝台探偵」のさきがけ的作品です。
この作品に触発されて、同様の趣向で書かれた日本国内の有
名作もあり、その影響力は大きいです。
会話が主体ということもあり、海外作品にしては文章も読み
易かったです(訳者は「弁護側の証人」で有名な小泉喜美子
氏)。

僕自身世界史にはそう詳しくないのですが、15~16世紀の
英国王室史を知る良いきっかけとなり、勉強になりました。
表紙の肖像画に何となく(何となくですけど)惹かれて手
にとり読んでみたのは主人公と同じです。でも、楽しめま
した。

No.1 4点 こう
(2008/05/06 23:09登録)
 高木彬光の成吉思汗の秘密 が書かれるきっかけとなった安楽椅子探偵物の傑作という評判で読んだ作品でしたがやはりなじみが薄い題材なので日本人の共感は得られにくいかと思います。なじみがあれば非常に面白いのかもしれません。

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