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ミステリの祭典

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makomakoさんの登録情報
平均点:6.17点 書評数:887件

プロフィール| 書評

No.647 6点 風景を見る犬
樋口有介
(2019/07/06 14:51登録)
 推理小説としてはかなり弱い。
 確かに殺しも意外な犯人もちょっとしたどんでん返しもありますが、伏線を張って推理をするといったタイプの小説ではありません。
 沖縄の風物と人間を描いていくといった方向に傾いています。
 主人公はまだ高校生で、青春小説といえばそういった方向でもあります。
 樋口氏の小説らしく高校生らしからぬ洒落たトークにあふれていますが、そこにはそこはかとなく寂しいところが感じられます。
 いい感じなのですが盛り上がりに乏しいところもあり、全体としてちょっと長すぎる感じがしました。


No.646 7点 いまさら翼といわれても
米澤穂信
(2019/06/29 07:26登録)
このシリーズを読むのは久しぶりのため初めは登場人物のことを忘れていてちょっと戸惑いましたが、すぐ思い出し(なんせ古典部には4人しかいない上に、特徴のある人物ばかりですから)以後は楽しく読めました。
 あとがきで作者がいずれ書かねばならない作品でしたと述べていますが、読めば納得です。
 デビュー作の氷菓は古典部シリーズの始まりでもありましたが、実に素敵な作品でした。その後このシリーズを続けるとともに、同じ青春ものでも栗きんとんのような毒のあるシリーズも発表。表題だけ見て読み始めた私はこの毒に戸惑ったものです。
 作者は大いなる才能があるのでしょう。同じ傾向のものだけ書いていくのでは我慢ならなくなったのかもしれません。その後も多種のしかも高レベルの作品を発表されていますが、私は古典部シリーズが最も好きです。
 是非次の作品を期待します。


No.645 6点 少女の時間
樋口有介
(2019/06/26 21:55登録)
 このシリーズも10冊を超えたのだが、柚木草平はあいかわらず38歳のままです。
 今回はことに美女がたくさん出てくる。洒落た会話を楽しむのもこのシリーズの楽しみなのですが、本作品は初めのところはちょっとやりすぎの感があります。「どうせ」といった言葉がちょっと出過ぎかな。
 お話は本格推理小説としては多少弱いが、でも楽しく読めます。
 冴子警視正が出世してついに別れとなりそうな代わりに実に個性的な美女が登場。当然怪しい関係となる。
 うーん大変だが羨ましくもある。
 次の作品もきっと読んでしまいそう。


No.644 8点 マジックミラー
有栖川有栖
(2019/06/16 08:14登録)
この作品は発表されてすぐ読んだ覚えがありましたが、内容はすっかり忘れてしまって、全くの初読のように読みました。発表当時は学生アリスがとても気に入っていたので、本作品のようにトリック勝負の内容にやや不満を感じたものですが、好みがが本格推理の方へ傾いてきたせいか、非常に面白く読みました。
 双子のトリックで犯人はほとんど明らかであるのに、実に精緻で巧妙な手段を解明しつつなお謎は残る。さらにもう一つのトリックが仕掛けられこれまた双子が問題となり、犯人もかなりはっきりしているように思われるのだがやっぱりアリバイが崩せない。
 若き作者は細かいところまで考え抜いてこの話を完成させたのでしょう。
 素晴らしい出来栄えです。
 締め切りに追われて一定の作品を量産させられているらしい?うれっこ作家になるとこんな作品はなかなか大変かもしれませんが、最近とみに充実してきた有栖川氏には期待しております。学生アリスも書いてね。
 本格物が好きな方なら絶対楽しめると思います。


No.643 6点 火村英生に捧げる犯罪
有栖川有栖
(2019/06/09 11:25登録)
「鸚鵡返し」や「偽りのペア」のように10ページぐらいの短編から中編といってよい作品まで色々楽しめます。
 作品ごとに違ったシチュエーションで、ほとんどが一発トリック型のお話です。
 私は氏の作品は温かみがどこかに感じられるところが好きなのですが、短編となると本当にトリック一本勝負なので、そういった感触を望むことはあまりできません。
 やっぱり長編がいいなあと思いますが、これはこれで悪くはないでしょう。


No.642 7点 魔眼の匣の殺人
今村昌弘
(2019/06/02 08:31登録)
屍人荘の殺人がとてもよかったので、期待して読みました。
 なかなか良かった。
 はじめはかなりオカルトチックな感じでしたが、次第に本格推理小説へと展開が進みます。オカルト話が苦手な方でも巧みな展開なのできっと楽しく読めると思います。
 読んだ後で考えると結局オカルト的なものに縛られたお話となっているのですが、あまり違和感はなかった。作者の物語の紡ぐ能力が高いのでしょう。
 最初の作品の評価が高いと読者としてはさらに素晴らしいもの、最低前作と同等のものを期待してしまいます。本作品は決してできの悪い作品ではなく、かなり良くできた、しかも面白い作品と思いますが、期待した分評価は多少のマイナスとなってしまいました。
 この調子だとこの次のお話も望めそうです。
 こういったお話はシリーズ化してくると次第に内容が緩んでくることが多いのですが、次作もがんばってぜひ私たちを楽しませてくれる作品を。
 作者に期待しております。


No.641 6点 長い廊下がある家
有栖川有栖
(2019/05/27 21:26登録)
 表題作は中編。後の3つは長めの短編です。
 表題の長い廊下がある家が一番好き。似たようなトリックは何度か読んだような気もしますが、これはこれでかなり大胆で斬新なトリックと思います。
 実は長編と思って読んでいたので、途中で急に解決してしまったように感じました。お話も面白く登場人物も興味深いので、もっと膨らませて長編としてみてもよかったような気がします。
 そんなことはせずに切れよく中編とした作者の志に拍手を起こりましょう。
 ほかの3作はちょっと落ちるかなあ。
 2作目の雪と金婚式はかなりロマンチックで嫌いではないのですが、切れ味は今一つでしょう。
 3作目の天空の目はアリスは一人で解決したお話。ちょっと意外な展開ではありますが、推理小説としてのおさまりはいまいちな感じがしました。
 最後のロジカルデスゲームはあまり好みではないですね。


No.640 6点 ノッキンオン・ロックドドア
青崎有吾
(2019/05/22 21:14登録)
短編の連作でトリック一発芸の作品がそろっています。
 出てくる人物はかなり軽い感じですが、若々しくて良いと感じる方も多いと思います。
 氏の作品は関東言葉がしばしば出てきて、ことに「みたく」は私にとっては極めて違和感があります。きちんと「みたいに」と書いてほしいなあ。
 全体としては悪くない。次作を期待しましょう。できれば長編でお願いしたいですが。
 


No.639 6点 満願
米澤穂信
(2019/05/22 21:07登録)
発表された年に数々の大賞を獲得した注目すべき作品ですが、私は読むのをしばらく控えていました。
 というのも米澤氏は初期の作品では本当に魅了され感動していたのです。ところがインシテミルあたりから私の好みから離れていったようで、その後の作品ではどうも読んだ感じがよろしくなかったのです。
 今回この作品を読んで、さすがの物語構成力と文章を感じたのですが、やはり私の好みから言うとちょっと離れているなあと感じました。
 良い作品と思いますが、好みから言うとこのぐらいです。 
 好みによってはきっと高評価となる方もおられると思います。


No.638 7点 きみのために青く光る
似鳥鶏
(2019/05/22 20:52登録)
 今まで読んだ似鳥氏の中では一番良かった。
 氏の作品はおふざけが過ぎたというか内容がないというか。暇つぶしには良いのですが、まじめに読んでくださいといった感じはほとんどなかったのですが、本作品は読んで心に響くところがあるきちんとした?作品となっていると思います。
 氏は物語を書く才能はあるが、軽いのりの作品を多発していく人と思っていたのですが、本作品で考えを改めました。
 ぜひぜひこんな作品をまた書いてくださいね。期待しています。
 
 


No.637 7点 かがやき荘アラサー探偵局
東川篤哉
(2019/05/06 09:42登録)
文庫化され「かがやき荘西萩探偵局」改題された方を読んだ感想です。
 はじめはアラサーの三人がちょっと感じ悪いところもありましたが、その後は例によってのユーモアミステリーに違和感なくはいっていけました。
 東川氏のお話はきちんと本格小説として出来上がった上にユーモアが入るといったもので、いかにも馬鹿らしい内容にユユーモアだけ付け加えたものとは一線を画しているものと思っています。
 本作品もその路線にたがわず、きちんとした(それほどでもないか)推理小説に出来上がっていると思います。
 なかなか奇抜な推理もあり、これが真正面からの本格物だとちょっとなあといったところもあるのですが、まあ許せてしまいます。
 結構面白いです。続編が楽しみですね。


No.636 4点 オーパーツ 死を招く至宝
蒼井碧
(2019/05/03 08:48登録)
この作品は好みがわかれるのかもしれません。
 知的な遊びとして楽しめるのか、ばかばかしい話に付き合わされたと感じるのか。   私は後者の方でした。
 題名はなかなか面白そう。4つの話の連作のようで、一つずつの題名も面白そう。しかもこのミステリーがすごいの大賞受賞とあってはきっと面白いはずと期待して読んだのがいけなかった。
 トリックは斬新と言えば斬新ですが、全くの穴だらけ。こんなことで犯人を指定されたらたまらないといった推理モノから、文章で書いてあるからわかりにくいだけで、実際に現場を見たらだれでもすぐにわかるめちゃくちゃなトリックまで色々取り揃えてあります。
 どうしてこのミス大賞なのかわからない。「このミステリーがすごい」は毎年購入していたがもうやめようかな。
 ただ作者の力は感じるところがあります。シリーズ化されたらもう一作は読んでしまうかもしれない。


No.635 7点 奪取
真保裕一
(2019/04/28 17:58登録)
かなりの長編ですが、スラスラと読むことができました。面白い小説でした。
偽札作りがこんなに難しい、いいかえれば日本のお札はなんとすごいのだろうと感心しました。
 謎の要素は少なくサスペンスの要素が高い。登場人物が少なく(ただし名前が変わるのですが)これも読みやすい要因となっているのだと思います。
 ただ最後がちょっと軽すぎる。これだけの長編を読ませておいて、最後がこれかよ。といった感じは否めません。


No.634 7点 第二の銃声
アントニイ・バークリー
(2019/03/30 22:40登録)
 多くの方の書評のようにこの作品が傑作であることは間違いないのだと思います。
 古典的本格推理小説に対して大胆な新しい試みを行ったことには敬意を表します。
 まずはばかばかしいような殺人劇場が登場人物により演じられ、被害者を演じるみんなから殺したいほど憎まれている男が本当に殺されてしまう。誰からも犯人と目されたピンカートン氏は濡れ衣を晴らすため友人の高名な探偵を依頼する。しかし彼は犯人を暴いたりhぽたとえ犯人であっても他人に傷つけたりしてはいけないといったへんてこな条件を探偵にかす。有能な探偵は次々と真相を暴く。次々ともっともらしい仮説が登場し、犯人が推理されるがすべて否定される。この辺りで私の頭は全く混乱してしまうのです。なんと複雑なお話なのでしょう。でも最終的に何とか解決したようになるのですが、最後にどんでん返しが来る。これでうーん凄いと思う方は高得点の評価をするのですが、私はちょっとなあといった印象。
 推理小説には銭形平治が投げた銭は必ず当たる。外れて犯人が逃げたといったはかげたことにはならないといった暗黙の了解があると思うのですが、本作はこの暗黙の了解を破っているのです。
 あーあ。水戸黄門が印籠出したら相手にそれって何って言われたような感じの終わり方のようでした。


No.633 6点 小さいそれがいるところ 根室本線・狩勝の事件録
綾見洋介
(2019/03/17 14:29登録)
 前半は全く違った理由で秘境の駅へ旅する二人の人物が描かれています。
これが結構楽しいのです。
ことに鉄道マニアでなくても一度根室本線に乗ってみたくなってしまいそうです。
二人の行動が途中から絡み合ってきてそれ又なかなか楽しい。
 比較的淡々とした話なのに読書を飽きさせない魅力があります。
 ただ推理小説そしてはきちんとした本格物ではありません。旅情推理といったところでしょうか。
 でもまあ面白かったですよ。


No.632 6点 首無館の殺人
月原渉
(2019/03/09 14:02登録)
シズカシリーズ第2作。
 前回は本格物としての雰囲気は十分でしたが、犯人が比較的簡単にわかってしまい興ざめ?でしたが、今回はそうはいかない手ごわさでした。
 相変わらず不気味で雰囲気は十分です。謎もそれなりにあり、首が空中浮揚するという見え見えのトリックもありましたが、メインの謎は意外なものでした。
 よほどの名探偵でもなかなか真相を見抜けないでしょう。まあこのお話の途中までで答えを見抜くのは無理かもしれませんが。
 私は本格物が好きなのでかなり楽しめました。
 エピローグから見るとシズカさんはこれでおしまいなのでしょうかね。
 変わったキャラクターなのでもう一作ぐらい登場されてもよさそうですね。
 


No.631 6点 使用人探偵シズカ 横濱異人館殺人事件
月原渉
(2019/02/25 21:56登録)
帯に「ご主人様、見立て殺人でございます。」なんて書いてあるからてっきり「謎解きはディナーの後で」風のものを想像しましたが全く違いました。
 バリバリの本格物です。
 出だしは良いなあ。おどろおどろしくて、横溝正史の世界みたい。
 主人公がひょんなことから怪奇な館へ行くこととなり、そこでとんでもない事件に遭遇する。一見不可能と思われる見立て殺人が連続して起きる。なんと、なり昔に描かれた絵をはがすとそこに被害者の絵があり、殺人はそのとうりに進んでいくといったお話なのです。すごいでしょ。使用人シズカは超然としているが最後に謎を解いて見せます。
 これだけみるとまさに本格物でとても面白いであろうと思われるのですが、さほどでもないのです。なんといっても途中で犯人がわかってしまう。大体犯人当てはほぼ外れの私にしてわかってしまうのですから、これはちょっといただけません。この時点で興味は半減。最後は多少意外なところもあるのですが、腰砕けの感は否めませんでした。
 


No.630 6点 大聖堂の殺人 ~The Books~
周木律
(2019/02/19 07:42登録)
 堂シリーズもいよいよ最終です。
 もともとシリーズ化する予定ではなかったようなので、シリーズ全体としてみると数々の矛盾点がありますが、それは良しとしましょう。
 眼球堂でスケールの大きな本格推理として始まったのが、次第に幻想小説のようになり、教会堂では相当いけなくなったのですが、その後何とか多少持ち直し今回の最終となったように感じています。
 最初の方はあまり面白くない話をグタグタと述べながら進みます。最終章なので全体のまとまりを付けねばならないのでまあやむを得ないのでしょう。
 今回はとてつもないスケールのトリックが出てきます。こんなことしなくてもこの殺人は可能のように思いますが、とにかくとんでもないです。 
 そのため現実には絶対無理(まあ今までのお話でもたいがい無理ですが)と感じられ、現実感が乏しいのです。
 最後は完全に幻想小説となってしまいました。
 長い小説を書いてくれた感謝の意味を込めてこれでも評価は多少甘めです。


ちょっとネタバレ

最期のカタストルフィーはこの島のトリックを使えば簡単に逃げ出せそうですが。
大体---って浮くのかねえ。


No.629 8点 妖魔の森の家
ジョン・ディクスン・カー
(2019/02/17 17:22登録)
私はどちらかというと長編作品を好むのですが、この短編集はとても楽しめました。
 詳しく言うと「妖魔の森の家」、「軽率だった夜盗」「ある密室」「赤いカツラの手がかり」は短編で、最後の「第三の銃弾」は中編というべきですが、いずれもこれに凝った不可能殺人で、これで大丈夫かしらと思わせる内容が、最後に鮮やかに解決されます。
 勿論ここまで不可能殺人となるとちょっと無理があると思わせるトリックもありますが、この程度なら良しとしましょう。
 私の好みとしては第三の銃弾が最も好きです。ただ殺された判事さんはそれほど悪い人でもなさそうなのに、家族は---。困ったものです。気の毒ですね。


No.628 3点 教会堂の殺人〜Game Theory〜
周木律
(2019/02/06 20:09登録)
鏡面堂の書評で書きましたが、この作品を飛ばして次の鏡面堂を読んでしまったのであわてて本作品を読みました。
 あーあ、これはもう本格推理小説ではなく幻想小説となってしまったんですね。
 愛すべき重要な登場人物を次々と殺害し、探偵役の十和田は完全におかしくなり、もうむちゃくちゃではないですか。
 堂シリーズもだんだんダメになってきたのでしょうか。
 もうすぐ完結とのことですので、最後まで付き合うつもりで最新作の予約を入れたのですが。期待して良いのでしょうか。心配になってきました。

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