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ミステリの祭典

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火村英生に捧げる犯罪
作家アリス&火村シリーズ

作家 有栖川有栖
出版日2008年09月
平均点6.00点
書評数15人

No.15 7点 E-BANKER
(2022/04/15 22:37登録)
火村英生を探偵役とするシリーズとしてはちょうど10冊目の短編集となる本作。現代社会で、ひとりの探偵で短編集10作目というのは、ある意味称賛に値する(かも)。
収録作は2002年から2008年にかけて発表したもの。単行本は2008年発表。

①「長い影」=タイトルは事件解決のきっかけの1つとなったもの。本シリーズの見本のような短編なのだが、まとまりの良さが半端ない作品でもある。アリバイはやや陳腐。
②「鸚鵡返し」=鸚鵡といえばやっぱりアレだよね。そうそう、まるで人間がしゃべっているみたいに・・・
③「あるいは四風荘殺人事件」=なかなか面白い趣向の本作。推理クイズのようだと言うべきか、まさに「新本格」というべきか・・・いずれにしても一瞬で見抜く火村の慧眼が光る。
④「殺意と善意の顛末」=”善意が殺意に勝つ”ということかな?
⑤「偽りのペア」=なるほど・・・。スリッパをみてそれに気付いたわけか・・・。それだけだけどね。
⑥「火村英生に捧げる犯罪」=これは佳作。冒頭からの奇妙な出来事(大阪府警宛の挑戦状、有栖への盗作疑惑)が現実の殺人事件につながっていく、というプロットはシャーロックホームズの頃からの面白い短編の定番。
⑦「殺風景な部屋」=これは推理クイズ。
⑧「雷雨の庭で」=これも実に本シリーズっぽい短編。細かいアリバイチェックを疑似餌として、真相は「エッ!」という単純なもの。こういうプロットこそ短編の命だろう。

以上8編。
これまで本シリーズに対しては、「あまり面白くない」とか「相性がよくない」などと否定的な意見を書いてきましたが、本作はそういった評価を翻したくなる作品だった。
「さすがは有栖川有栖」とでもいうべきで、今の世の中にここまで安定感のある短編集を発表し続けていることはある意味奇跡かもしれない、というべきレベル。

昨今の本格ミステリーは「特殊設定もの」が幅を効かせており、それだけ普通の状況下で本格ミステリーを書くのが難しいということなのだろう。そんな環境で「普通」の本格ミステリーを書き続ける作者。
これが「王道」。今、有栖川有栖がミステリーの王道になったということ?
(⑥は佳作。①と⑧はファンなら好きになるのではないか)

No.14 6点 バード
(2022/03/20 07:48登録)
火村シリーズ短編集にしては収録作ごとの好き嫌いが大きかった。特に表題作はタイトルが格好良く、その使い方も上手い良作である。表題作以外では「鸚鵡返し」が短いながら切味抜群。反対にケツの二つの話は水増し感があり、無い方が良かった。

<個別書評(ネタバレあり)>
・長い影(7点)
トリック自体は無難だが、「長い影」というタイトル回収の上手さが光る。

・鸚鵡返し(7点)
文庫本でわずか9ページだが鮮やかに犯人を告げる鸚鵡。策士策に溺れるとはまさにこのこと。

・あるいは四風荘殺人事件(5点)
作中作形式にした意味も薄く、無駄にごてごてした微妙な話。里中の構想が火村の想像通りだったとしたら、現代視点ではインパクトが足りなさそう。それこそまんまの展開の作品が既にあるし。

・殺意と善意の顚末(6点)
これも「鸚鵡返し」に並んでコンパクトな良作。しょーもないと感じる人もいそうだが。

・偽りのペア(5点)
アリスも言っているようにトリックがしょーもない。

・火村英生に捧げる犯罪(7点)
事件の真相自体の面白みは薄いが、散々火村に注意を向けさせる書き方をしておき、キーはアリスというのが良い。格好いいタイトル自体がミスリードな点も含め構成力で魅せてくれた。本短編集のマイベスト。

・殺風景な部屋(4点)
『名探偵コナン』辺りにありそうな安直なダイイングメッセージ。申し訳ないがあまり面白くなかった。

・雷雨の庭で(4点)
この話の強みってなんだろうかと考えた時に何も思い浮かばない。

No.13 6点 虫暮部
(2021/03/03 14:07登録)
 「あるいは四風荘殺人事件」。ああいうトリックをああいう距離感で書くのは何かずるい。作中作ではない普通の形(って何て呼べばいいの?)で書いて欲しかった。作中作の欠点を火村が指摘する趣向かと期待したんだけど……。
 「殺風景な部屋」。容疑者の風貌や人となりを勝手に想像する、と言う演出は意味が無いのでは。アリスのその先入観が読者に対する目晦まし(性別誤認とか)になる趣向かと期待したんだけど……。

No.12 5点 ボナンザ
(2020/07/24 19:48登録)
仰々しいタイトルの割にあれな真相の表題作を筆頭に、相変わらず肩の力を入れずに読める短編集。

No.11 6点 makomako
(2019/06/09 11:25登録)
「鸚鵡返し」や「偽りのペア」のように10ページぐらいの短編から中編といってよい作品まで色々楽しめます。
 作品ごとに違ったシチュエーションで、ほとんどが一発トリック型のお話です。
 私は氏の作品は温かみがどこかに感じられるところが好きなのですが、短編となると本当にトリック一本勝負なので、そういった感触を望むことはあまりできません。
 やっぱり長編がいいなあと思いますが、これはこれで悪くはないでしょう。

No.10 7点 ボンボン
(2016/06/21 01:13登録)
色々な形の短いもの8篇なので、まとまった評価はしづらいが、ざっくり言えばファンとしてのんびり楽しめる1冊。(表題の凄さにつられて、「このシリーズで初めて読む1冊」にはしないほうがいいかも。)
基本的にどれも、火村が犯罪者を冷徹に糾弾したりしないし、アリスが人間の深淵を見て哀しくなったりもしないので、人が死んでいるのに謎解きを楽しんだりして少々不謹慎だなあと思うくらい気楽な小噺系。
その中でも「あるいは四風荘殺人事件」と「火村英夫に捧げる犯罪」は特に巧いと思った。
前者は『いかにもある種の本格ミステリ』に対する愛なのか皮肉なのか。作者ならではのオトナな態度と奥ゆかしさが成せる技で絶妙な形に仕上がっている。表題作である後者は、ショートショートの寄せ集めのようなノリで進みながら、ちゃんと見事に落してくれる。アリス本人が事件解決装置になる使われ方が面白い。

No.9 6点 青い車
(2016/03/02 15:05登録)
短篇四作プラス掌篇四作という珍しい収録の本。掌篇はどれも短いならではのキレがあるものばかりで、かなり楽しめます。特に『殺風景な部屋』はシンプルながらも印象に残るダイイング・メッセージの解明でお気に入り。次いで『偽りのペア』がユーモラスなオチで好きです。
しかし、残る四つの短篇は個人的にあまりヒットしませんでした。別に水準を大きく下回るものはないのですが、ワクワクさせる表題に期待値が上がりすぎてしまったのかもしれません。強いてベストを挙げるとしたらやはり表題作『火村英生に捧げる犯罪』でしょうか。変な期待値を持たず、軽い気持ちで読めば十分面白い本ではあります。

以下、ショート・ショートを除いた各話の感想です。
①『長い影』 トリック、ロジック、犯行経緯といった要素はしっかり押さえているのですが、期待を上回る新鮮さやエネルギッシュさがないのが残念。
②『あるいは四風荘事件』 亡くなった警察小説の大家が残した本格推理小説のアイディアを読み解く話。これにも「もっと面白くできるだろう」という欲が残ります。推理作家らしいメタ的な視点で謎を解こうとするアリスの姿は面白いです。
③『火村英生に捧げる犯罪』 タイトルからすごい名犯人が出てくるのかと思ったら、他に例を見ないほどの小物っぷり。このことを指摘する人は多かったようで、文庫版あとがきでは作者の通じなかった意図が知れます。犯人の隠された思惑がユニーク。
④『雷雨の庭で』 犯人からはトリックを仕掛けず、アクシデントのような殺人により成立した現場の状況。今ひとつ面白みを欠いた真相です。

No.8 5点 まさむね
(2011/12/19 21:31登録)
4つの短編+4つの掌編で構成。
良くも悪くも「無難だなぁ…」という作品が多かったです。その中でも最も印象に残った作品はと問われれば,メタ的要素もあった「あるいは四風荘殺人事件」でしょうか。

No.7 6点 HORNET
(2011/01/09 19:46登録)
まあ標準的な出来だと思います。有栖川有栖,火村&有栖コンビが好きで,「長編を読むにはちょっと時間が・・・」「パワーが・・・」というときには構えずに気楽に読める短編集になるでしょう。表題作が設定的にはよかったです。

No.6 5点
(2010/11/09 15:27登録)
表題作は、名前負けしている作品だと思いました。大きな事件なのかなと思いきや、作中で触れられている事件も大したものではなく、真相が分かった途端拍子抜けしてしまいました。
ですが、その他のケータイで配信された短編はキレが良く、楽しめたので評価はまぁまぁということで。

No.5 6点 なの
(2009/03/13 20:50登録)
軽いですね、壮絶に
落語と言うか、推理クイズと言うか・・・
しかしいつも思うんですが、変な准教授とミステリ作家が事件にしゃしゃり出て来たら、
殴り飛ばしたくなりますよね、関係者は
こいつら、事件をゲームとしか思ってないし

No.4 5点 こう
(2009/02/07 23:58登録)
 まあ無難な短編集だと思います。軽い作品も多いですがオーソドックスなミステリを意識した作品群だと思います。
 「殺風景な部屋」はダイイングメッセージのバリエーションですが相変わらずこの作者もクイーン同様ダイイングメッセージにとらわれているなあと思いました。従来の作品より短いのでさっと読めますし話の落ちとしては従来のより悪くないかもしれません。
 他作品もまあまあでしたが純粋なパズラー作品というより落語の落ちか小噺の様な作品が多いのでたまにはがちがちのパズラー短編集を期待したいです。

No.3 6点 白い風
(2008/12/25 00:15登録)
数ページしかない作品もあり、軽い作品が多かったですね。
作品的には題名作品よりも「あるいは四風荘殺人事件」が印象に残ったかな。
話自体の構成はすぐ判ったけど、なかの犯人がちょっと不意をつかれた感じを受けました。

No.2 7点 vivi
(2008/11/27 17:51登録)
携帯サイトで配信された非常に短い掌編もあるので、
タイトル数は多いけれど、軽いものも多かったです。
でも、その作品が非常にバラエティに富んでいて、
キャラクターのファンも満足できたんじゃないでしょうか。

表題作が、やっぱり面白かったですね。
一番ロジカルで、物語的にも盛り上がりました。

No.1 7点 おしょわ
(2008/10/12 17:42登録)
短編、掌編あわせて8編、出来不出来にバラつきはありますが全体的には楽しめました。
表題作と「殺風景な部屋」はパズラーっぽくて良いです。

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