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ミステリの祭典

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ロビンさんの登録情報
平均点:6.56点 書評数:130件

プロフィール| 書評

No.30 8点 過ぎ行く風はみどり色
倉知淳
(2008/10/06 19:44登録)
物語の構成上、「もしや……」と身構えていたが、その真相は自分の予想の範囲を上回るものだった。
多少強引だが、破綻のない論理。トリックではなくロジックで解き明かされる密室の謎。
緻密すぎる描写で、小さな伏線をさらに小さくして埋没させている。些細な相違点には絶対に理由があるのだと再認識させられた。
ちょっぴり切なくて物悲しい、だけど爽やかな読後感は心地よい。これからも氏の作品を追いかけたい。


No.29 5点 連続殺人事件
ジョン・ディクスン・カー
(2008/10/06 14:47登録)
なんか全てが中途半端。オカルト的雰囲気も、密室トリックも、全然足りない。カー自身のトリックの応用。まあページ数も少ないし、ちょっと長めの中篇と考えれば、それなりのもの……か?
終始展開されるドタバタ劇は正直ウザかった。


No.28 6点 七回死んだ男
西澤保彦
(2008/10/06 14:42登録)
SFパズラーという着想が面白いですね。正直、「これが何度も繰り返されるのか」と思ったときは辟易としたんですけど、予想していたよりはダレることなく読みきれた。
あれを「体質」の一言で済ましてしまうあたり、やっぱり本格なんでしょうけど、驚きの主眼が事件の真相よりも、その体質にまつわる矛盾を解き明かすものという、ちょっと僕の求めていたものとは違いました。


No.27 7点 試行錯誤
アントニイ・バークリー
(2008/10/01 23:43登録)
ユーモア倒叙物、ということは、もちろんラストに一ひねりあり。法廷の場面はある意味滑稽と言えるでしょう。
登場人物に喋らせた台詞には、バークリーの殺人という観念に対する一つのアンチテーゼを感じます。

無駄な描写が多く、途中ちっとも物語が進まない場面もあってちょっと中だるみ。でも翻訳物のわりには読みやすい文章でさほど苦にはならなかったかな。


No.26 7点 新宿鮫
大沢在昌
(2008/09/29 19:33登録)
日本のハードボイルドのほとんどは主人公が警察で、あまり読む気になれず、ここまできた。
本書も刑事という設定でこれぞハードボイルドという孤高の男。そのため、どうしても組織からはみ出した人間としなければならず、そういった警察機構の対立の描写も多い。
などなど、個人的な好き嫌いはあるのだが、面白かったです。緊迫感のある文章と物語展開。ただ、ちょっと軽い印象を受けてしまった。


No.25 8点 弁護側の証人
小泉喜美子
(2008/09/27 23:11登録)
うわ~、想像の中で描いていた世界が一気に崩れたよ~!まさか新本格以前に、こういったトリックを仕掛けていたとは。名作と謳われるのも納得。
この構成なのでフェアではないですが、ロジックもしっかりしています。結末のカタルシスも心地良い。


No.24 8点 怪盗グリフィン、絶体絶命
法月綸太郎
(2008/09/26 22:36登録)
ハードボイルド法月の傑作!というより、冒険スパイ小説というべきか。
どんでん返しの連続で、結末まで振り回されっぱなしでした。もちろん、お得意のロジックもあり。名探偵による謎解きの論理でなく、物語展開でここまでドキドキさせられたのは久しぶり。(ただ、途中で若干中だるみしたので減点)
ミステリーとは、謎を解き、騙され、驚かされ、最後にカタルシスを迎えるエンタテインメントなのだと、子供たちにも認識してもらえる作品だと思います。


No.23 7点 三つの棺
ジョン・ディクスン・カー
(2008/09/26 12:58登録)
これでもかという不可能犯罪の二本立て。美しいくらいにオカルティズムと融合されている。トリック派の人にはたまらないと思う。が、納得のいかない点は多い。(若干ネタばれ)
古典的トリックが使われているが、どうも理解し難い。なんで背が高く見えたの?なんであの動作をしただけで死ぬほどの傷を負っているのにあんなに動けたの?っていうか警察は鏡を見つけなさいよ。
他作品のネタばれ満載な密室講義も読み応えは十分。
しかし、読みにくいなぁ。改行もほとんどされていないので、よっぽど精神集中して注意深く読まないと伏線には気づけない。


No.22 8点 スクランブル
若竹七海
(2008/09/24 22:38登録)
これぞ青春ミステリという物語。僕も若竹作品で一番好きです。
登場人物があだ名や本名で呼ばれるから、確かに誰が誰だか把握するのが難しいとけど、それを差し引いても素晴らしい出来。思春期ならではの反発や、内輪の中だけの心地よい世界。それを思い出させます。
最後のどんでん返しのおかげで、この人の作品らしい怖さが少し薄れた印象。シリーズ化希望です。


No.21 8点 生首に聞いてみろ
法月綸太郎
(2008/09/23 15:00登録)
個人的には好きな作品なのに、このサイトでは評価が芳しくないようなので笑、このたび再読してみました。
じっくりと読み込ませる緻密なプロットで、ちょっとした叙述トリックも効いていると思います。
生首よりも、石膏像の謎や過去の事件には意表を突かれる真相が。綸太郎は今回犯人に(それ以外の人にも)翻弄されますが、ラストの論理的な解決は見事。本格+ハードボイルドという、長編ノリリンらしい物語。
もっとロジックで押す推理を期待していたけど、文庫版の対談を読むと、敢えてそうしなかったんだなぁと。確かに伏線が回収されていく気持ち良さはあります。


No.20 5点 グリーン家殺人事件
S・S・ヴァン・ダイン
(2008/09/21 23:13登録)
確かに類似点は多いですが、10点物の『Yの悲劇』には遠く及ばない。これが読後の正直な感想です。
解決編までの展開は随所にサスペンス性、館物独特の閉鎖性からくる恐怖感があり楽しめました。しかし、解決編に入った途端に失速。
犯人による証言が事実でなく嘘だったということになると、どうも拍子抜け。特にそれが暗示的なものであれば、そこからロジックを組み立てるのではないかと期待してしまう。
拳銃消失のトリックも、あれならば警察が見つけられないはずがないし、機械的なアリバイトリックもどうも……。
(すいません、クイーンびいきなのでつい辛口になってしまいました)


No.19 7点 獄門島
横溝正史
(2008/09/20 16:36登録)
確かに素晴らしい。だけど、それをやられちゃうとなぁ、というのが正直な感想です。せっかくの連続殺人も、それ自体がトリックならば肩透かしを食らった気分。
見立てが醸し出す怖さはそれぞれ際立っていて、特に一つ目の事件のアリバイトリックは秀逸。

三人称小説ならば、あの台詞はアンフェアなのでは?せめてひらがな表記にするべきかと。それとも、前の文章から考えると、あれは和尚が直接言った台詞ではなく、あくまで金田一の解釈による台詞っぽく書かれていたから、それ自体が叙述トリックの一つなのかな……?


No.18 7点 古い骨
アーロン・エルキンズ
(2008/09/19 07:40登録)
スケルトン探偵、面白いです。骨から真相を導いていくキャラクターも斬新。主人公たちの危機的な場面の描写も緊迫感があり、引き込まれます。
しかし、あの証拠が発見されたときに、探偵は一旦間違った説を導き出してしまうが、多くの人は「真相」のほうを思いついてしまうのではないかと(おそらくそれは、読者が推理小説という物語を前提として読んでいるからだろうけど)。
それに、解説の文章を先に読んで、もっとガチガチのロジックで攻めてくる古典本格かと期待してしまったので、ちょっと拍子抜け。


No.17 10点 白い僧院の殺人
カーター・ディクスン
(2008/09/18 01:02登録)
H・M卿の一言に驚愕!考え方の視点の転換がものすごく効いている。こういった密室トリックは好きですね。
一つ一つの出来事や伏線がラストのH・M卿の推理によって収束されていく。これぞロジックの素晴らしさ。


No.16 6点 少女には向かない職業
桜庭一樹
(2008/09/16 21:51登録)
若者(自分もですけど)が書いた純文学っぽい口語体の文章で、登場人物もそれっぽいし、展開もそれっぽい。青春時代の陰のある人間関係や心理描写って、救いがないから読んでいてつらいなあ。
ラストにカトリーヌ・アルレーのある作品を参考にしていることが明かされて、それなりに仕掛けもあり、ミステリーしてる。
殺人を犯した女子中学生を描いたちょっと癖のある文学だと思えば、なかなか面白いかと。


No.15 7点 ハートの4
エラリイ・クイーン
(2008/09/16 02:59登録)
読み逃していたクイーンの長編。これであとは『最後の一撃』だけだ!(だけどなかなか手に入らない……)
ハリウッドシリーズは、描写や物語展開もエンタテイメント的。その点は読んでいて面白い。そしてエラリイが女に弱すぎ笑(このへんから、後のニッキーの登場が伺える)
本筋とは別の小さな仕掛けが重なって、事件を複雑にしていくという設定は好き。何より、「あの人物」と「犯人」が別人だったとは驚き。それを導き出し、犯人を指摘するロジックもシンプルで明確。ただ、国名シリーズに比べると物足りない感は否めないなあと。


No.14 6点 夜歩く
ジョン・ディクスン・カー
(2008/09/14 22:43登録)
カーの処女作。探偵役は、有名な二人に比べればちょいマイナーなバンコラン氏。
終盤に登場した死体によって、物語の世界がガラッと変わった瞬間は驚愕。それに関する推理は、所々に伏線はあるものの、決定的な証拠は記述されていない科学捜査に基づくものでその点は残念。
メインの密室(&アリバイ)トリックも、あの人物(犯人)の証言が犯行現場を密室にした大切なものだったのに。それが嘘だったなんて……。


No.13 6点 暗闇坂の人喰いの木
島田荘司
(2008/09/13 00:25登録)
うーん……結局、こういった機械的な大技トリックは自分には合わないということかなぁ。
恐怖を煽る怪奇現象が論理で解き明かされていくことにはカタルシスはある。ただ、提示された謎があまりにも壮大だったため、解決編も「これだけ?」と肩透かしを食らった気分。

まあ、偶然はべつに良いんです。それがより怖さを引き立てているから。


No.12 7点 死時計
ジョン・ディクスン・カー
(2008/09/11 00:04登録)
カーにしては珍しい「意外な犯人」なフーダニット物。(と言いつつも、主眼はハウダニット)
終盤までは、次々に新しい証言が飛び出し、二転三転するプロットでグイグイと物語に引き込まれていった。

ただ、舞台となる家の見取り図がないため、想像を固めるのに難があるかと。
登場人物たちの身長に関する論理がアリバイトリックを見破るポイントなんだけど、あの椅子の大きさや容疑者たちの身長に関する説明は、本当にサラッとしか記されていないので、すんなりと納得はできませんでした。(自分が見逃していただけか?)


No.11 9点 だれもがポオを愛していた
平石貴樹
(2008/09/08 23:02登録)
クイーン張りのロジック炸裂!「何故徹底的に指紋を拭い去ったのか?」「何故犯行をポオの小説に見立てるのか?」その論理が的確に犯人像に結びついていく。
自分は『モルグ街』しかポオ作品は読んだことはなかったんですけど、十分楽しめました。

ただ、あまりにもパズル性を重視しているため、物語として盛り上がりにやや欠ける。
あとは個人的なわがままですけど、名探偵による推理ショーが好きな自分としては、ラストが三人称による犯行シーンの描写だったことが残念かな。

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