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ミステリの祭典

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試行錯誤
アンブローズ・チタウィック 別題『トライアル&エラー』

作家 アントニイ・バークリー
出版日1958年01月
平均点7.00点
書評数9人

No.9 7点 ʖˋ ၊၂ ਡ
(2021/08/06 16:46登録)
心臓病で余命幾許ない男が、社会に害をなす人間を殺害すべく奔走し、挙句は無実の男を救うために自分を有罪にしようと裁判を起こすという破天荒な物語。
全編ブラックユーモアに満たされているのに、後味はやたらと良いという不思議な作品。

No.8 7点 測量ボ-イ
(2020/07/03 15:56登録)
1986年版の東西ミステリでその存在を知って30年以上、ようやく読む
機会を作りました。
この作品、あらすじを読んだだけで何だか読んでみたくなる作品では
ないですか?(少なくとも僕はそうだった)。
内容も期待通りのものではありました。

採点は8点(基礎点)-1点(さすがに長すぎ)

(ここからネタばれ)
この作品、殺人が起こるところの描写を一部省略していますよね?
そんなカラクリを使った作品というと、誰しも思い浮かべるのが
ク〇スティの「〇〇〇〇〇殺人事件」になります。
でもこの作品とは真相・何を省略したかのネタはまた異なるので、
これはこれで全然ありなんですけどね。

No.7 9点 クリスティ再読
(2016/11/15 19:36登録)
「ガラスの村」とで二大変態裁判小説になるな。あっちは社会批判を直接の動機にするのでシリアスだが、本作はブラックなウィットに富む上機嫌な風刺小説みたいなものである。黄金期最強のトリックスター・バークリーって、唯一自分が何をしているかをメタに理解していた傑物のように思うよ...

彼はいつも、法律の欠陥を、それ自体の過剰性によって打ち破ることを楽しみとしていた

「毒入りチョコ」も含めて、「過剰性の戦略」というような視点があるんじゃないかと思う。貴重なものを苦労して見つけ出すのではなく、すでにあるリソースを、アイロニカルに複製し過剰なまでに氾濫させる...といったあたりの方法論って、80年代末あたりから流行ったシミュレーショニズムとか連想させる。悪名高い言い方になるんで何だが、ポストモダン・ミステリ、っていうような言い方が絶対ハマる。戦前の作品とはちょっと思えないな、好きだ。とくにお気に入りは...

(被告席に立つ気分はどうですか、という問いに答えて)「写真をとってもらうときのような気分だね」

クールなウィットがすばらしいね。本作邦題が「試行錯誤」⇒「トライアル&エラー」⇒「試行錯誤」と最初の邦題に戻っちゃったけど、評者は断固としてひとつ前の「トライアル&エラー」を推したい。熟語の「試行錯誤」よりも「裁判がエラーだ」とか「審問と誤審」とか、そういうニュアンスのタイトルじゃないかな? なんで戻したんだろうね。

No.6 8点 nukkam
(2016/05/18 18:54登録)
(ネタバレなしです) 1937年発表のチタウィック氏シリーズ第3作です。不治の病で余命わずかのトッドハンター氏が悪を除去する目的で犠牲者を探し始めるという何とも風変わりな展開の本書は一応本格派推理小説には分類できるのですが、あまりにも規格外のプロットなので感想を書きにくいです(何を書いてもネタバレになりそう)。バークリー作品としてはかなりの大作ですが、どんどん予想しない方向に突き進む展開のおかげでだれることなく読めました。道徳とか倫理とかで本書を論じるとおそらく否定的結論に行き着くとは思いますが、そこはあくまでもフィクションの世界と割り切りましょう(大体ミステリーをそういう切り口で読む人もそういないでしょうけど)。まあ子供に読ませる最初の一冊でもないとは思いますが(笑)。

No.5 6点 ボナンザ
(2015/09/26 21:55登録)
ジャンピング・ジェニイと第二の銃声の翻訳によって影に隠れたきらいはあるが、皮肉の効いた作風と展開はまさに彼の独壇場である。

No.4 5点 蟷螂の斧
(2013/05/03 20:09登録)
(東西ミステリーベスト31位)ミステリーとしては、倒叙形式ですが、2か所の描写(伏線?)で結末が見えてしまい、興味半減となってしまいました。後は、裁判で、明確な証拠がない中で、如何に有罪になるかということになるのですが、結局、根拠のない状態で判決が出てしまい、これまたすっきりしません。裁判や証拠に対する批判的な小説ならば、陪審員の描写が必要だと思うのですが、それもないし、また、ミステリーであれば、探偵役の行為に問題点が2つもあり???。アンチミステリーの立場で描かれた一風変わった男のユーモア・心理小説といった感じですかね。

No.3 7点 kanamori
(2010/07/21 18:30登録)
皮肉なユーモアが全編を覆う、倒叙ミステリとアンチミステリを融合させたバークリーの集大成といえる傑作。(別題は「トライアル&エラー」)
まず、主人公トッドハンター氏の犯罪を後押しする輩の言い分が(笑うところでないが)笑える。また、物証に別の意味を持たせるのは、「毒チョコ」と同じ多重解決ものの理屈といえる。
中盤なかだるみの展開があるが、最後までブラック・ユーモアが効いていて楽しめた。

No.2 7点 ロビン
(2008/10/01 23:43登録)
ユーモア倒叙物、ということは、もちろんラストに一ひねりあり。法廷の場面はある意味滑稽と言えるでしょう。
登場人物に喋らせた台詞には、バークリーの殺人という観念に対する一つのアンチテーゼを感じます。

無駄な描写が多く、途中ちっとも物語が進まない場面もあってちょっと中だるみ。でも翻訳物のわりには読みやすい文章でさほど苦にはならなかったかな。

No.1 7点 こう
(2008/09/07 22:28登録)
 バークリーの皮肉が効いた傑作です。
 余命2~3か月と宣告された中年男性が生きているうちに善行を行いたいと思い社会に有害な人間を殺すことを決意、実行に移す。しかし別の人間が殺人容疑で逮捕されあわてて自分の犯行を自白するも余命いくばくない男のたわごととしてとりあってもらえず、というストーリーです。
 70年以上前の作品ですが当時は衝撃的な内容だったと思います。難点はとにかく長いことでもっと圧縮できたと思います。ストーリー自体も皮肉が効いていますがラストの展開も一ひねりがあり上手いと思います。
 ストーリー展開が冗長であること以外は満足でした。ただバークリー独特の皮肉はある意味ワンパターンではあるのでシェリンガム物も読み進めてゆくと飽きてくるかもしれません。ちなみにこの作品にはシェリンガムではなく毒入りチョコレート事件から連続してチタウィックが登場します。 

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