ハートの4 エラリイ・クイーン、別題『トランプ殺人事件』 |
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作家 | エラリイ・クイーン |
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出版日 | 1957年08月 |
平均点 | 5.00点 |
書評数 | 13人 |
No.13 | 4点 | HORNET | |
(2024/07/15 16:05登録) 絶大な人気を誇るハリウッドの名俳優と大女優、そしてその息子と娘が、不可思議なトランプの犯罪予告に悩まされた末、事件に巻き込まれていく。当初、ハリウッド映画の創作に携わる予定で滞在していたエラリーが、探偵役として事件の解決に乗り出す。 いうまでもなく初期の国名シリーズの作風とは一線を画し、華々しく騒々しい雰囲気が作品を満たしている。トランプによる犯罪予告という劇場的な要素がさらにそれを盛り立てているものの、ただそういう演出以上の役割は果たしていない。そもそも犯罪者の心理に立った時に、この犯罪予告は何も利することがなく、かえって手がかりを与えているだけのように感じるが・・・ <ネタバレあり> 物語中では事件の「動機」解明が真相解明の大きなカギとされているが、偏屈な老人、トーランド・スチュアートの遺言状をエラリイが見つけたときから、動機は完全に察しが付く。そしてそれはいたって俗的な動機であり、意外なものでもない。また、その動機で考えたとき、真犯人とは別にもう一人、強い動機をもつ者がいると思うのだが、それについて推理が一切めぐらされていないのも不思議(タイとボニーの結婚に最も難を示す者)。 全体的に、必要以上に長く、読み進めるにつれてダレてしまう感じだった。 |
No.12 | 3点 | レッドキング | |
(2020/12/20 19:11登録) ハリウッドスター両家の父子と母娘、二代にわたる恋情と確執。引退した元スター富豪老人、付添の老医師、名物プロデューサー、酔いどれシナリオ書き、ゴシップ屋の謎美人、そして探偵兼作家で新人シナリオ書きエラリー・クイーン。配達されるトランプ占い殺人予告に翻弄されるハリウッド毒殺騒ぎ。「時間の三つの様相のうち、過去や現在が殺人の原因になる事はあるが、これは未来が原因の殺人・・」てな大仰なホワイ、要するに「遺産目当て」の事だった。 |
No.11 | 6点 | 虫暮部 | |
(2019/10/23 16:12登録) ポーラ・パリス:群衆恐怖症で6年間家から出ず、しかし町のことを何でも知っている、パイプオルガンのような声の美女。昨今のラノベに出て来そうなこのキャラクターがいい。 “罠”のとばっちりで殴られたパイロットが気の毒。“あの一撃は軽かったし”って、そういう問題じゃないだろう。見てないで助けろよ警視。 |
No.10 | 5点 | E-BANKER | |
(2019/01/24 22:56登録) 「悪魔の報酬」に続くハリウッドシリーズの第二弾。 遠くハリウッドに進出(?)したエラリーは果たしてNYと同様に活躍できるのか? 1938年発表。 ~作家兼探偵のエラリー・クイーンは映画脚本執筆のためにハリウッドに招かれたが、そこでも彼が直面したのはやはり殺人事件だった。銀幕の名優、スクリーンの美女、変わり者の脚本家や天才的プロデューサーなど、多彩な映画王国の登場人物をめぐる冷酷きわまる殺人、また殺人。前作「悪魔の報酬」につづき、クイーン中期を代表するハリウッドもの第二作~ 何だか、無理矢理ハリウッドに合わせたかのような作品。 前作はまだクイーンらしさも十分残っていたように思うけど、本作はかなりくだけた印象。 まぁ、紹介文のとおり、登場人物が俳優や映画関係者など、いわゆる“業界人”だから、それもやむなしというところか。 硬質なミステリーという雰囲気は殆ど消え失せ、映像化を意識した軽い読み物っぽい。 で、本筋はというと・・・ 本作のメインは一見「動機さがし」。ハリウッドを代表する俳優と女優の毒殺事件。でも、ふたりには少なくとも同時に殺される理由が見当たらない。そこへ現れるトランプのカードによる殺害の予告・・・ こう書くと魅力的な道具立てにも見えるのだが、これが単なるこけおどしなのだ。 動機はエラリーがさんざんもったいぶって披露するようなレベルではない。むしろ最初から明々白々・・・ それよりも、本筋の裏側で進行していた別の悪意の方がサプライズ。 こちらの方は伏線もなかなかうまい具合に回収されてクイーンっぽい感じだ。 (古典作品によくある○れ○わりなんだけど、やむにやまれずというか、必然性がある分納得感がある) でも評価としては高くはならないよなぁー。 「駄作」と評されるのも仕方なしという感じだ。やっぱり、クイーンにはNYの街が似合うということなのかも。 (本作発表年は日本でいうと昭和10年代前半。戦前のきな臭い時期だったわけで、ハリウッドの華やかさとの差に愕然とさせられる・・・) |
No.9 | 4点 | クリスティ再読 | |
(2017/09/24 19:46登録) ハリウッドもの、なんだけどね、皆さんハリウッドらしさが出てると評されるけど、評者に言わせると全然らしさが出てない。ポーラ・パリスみたいな地獄耳のゴシップ・コラムニストというと、ルエラ・パーソンズとかヘッダ・ホッパーとか、スター並みの存在感で恐れられた人(エピソードはずっとエグい)がいたりするわけだ。クイーンお得意の「呼ばれて行ったけど6週間音沙汰なし」のプロデューサーは、ハリウッドの第二世代の代表者のアーヴィング・ソールバーグがモデルで、この人はフィッツジェラルドの「ラスト・タイクーン」のモデルとしても知られる人だ。ここらへんのエピソード選択とか表面的なもので「ホントにハリウッド行ってたの?」級。まあハリウッドと言いながら撮影シーンがちゃんとないんだからねえ、もっと頑張ってほしいなぁ。 で..読んでてもどうもストーリーも冗長。トランプによる警告とか、後期の作品でもよくこの手の「謎のプレゼント」は多いけど、意外にサスペンスが盛り上がる...って具合にはいかないことのが多いように感じる。考えオチだからねこういうのは。 本来のミステリ部分が良ければそれでも...なんだけど、本作、犯人&動機をまともに隠せてないと思う。何か見え見えな真相でがっかりさせられる。 ふう、ここらへんの作品どれもこれも駄作なんだけど、その中では「ドラゴンの歯」が一番読める気がする。あれは恋愛担当をボー君に振って、エラリイはホント脇役だからね。そのくらいのバランスの方が話がうまく流れると思うよ。 |
No.8 | 7点 | 青い車 | |
(2016/02/27 21:42登録) 不思議とあまり話題にはのぼらないものの、意外や意外かなり楽しめました。はじめはいつになくチャラチャラしたエラリーに戸惑いましたが、華やかな雰囲気に彩られたプロットには新鮮な楽しさがあります。二つの俳優親子同士のロマンスや、それぞれの親がハネムーンの飛行機の中で毒殺されるという派手な演出には釘付けになり、読む目を休めることができません。ハリウッドものの特色は『悪魔の報酬』よりさらにディープになり、クイーンの苦心の跡が見て取れます。 犯行方法についての罠を看破すれば、機会から自ずと犯人がわかってしまう弱さはあるものの、動機の問題も絡むことで先を見えにくくしており、本格ミステリとしてもなかなか上質です。クイーン・ファンの人にはもちろん、お堅いパズラーは苦手という人にも読んで損はないとお勧めしたいです。 |
No.7 | 4点 | 斎藤警部 | |
(2015/10/29 23:19登録) ゆる~く読ませていただきましたがちょっと眠かった。 毒殺トリックは。。バカの類でしょうか?(実際やったら○○○○の人でもないかぎり一瞬でバレるらしい) |
No.6 | 4点 | ボナンザ | |
(2014/04/08 17:14登録) 外面はよくなったが、正直メインのミステリ部分は劣化している。 |
No.5 | 5点 | TON2 | |
(2013/02/12 18:08登録) ハヤカワミステリ文庫 パズル的内容ではなく、エンターテイメントに重きが置かれています。発表当時はハリウッドの内幕ものとして価値があったと思われますが、現在では疑問です。 |
No.4 | 3点 | nukkam | |
(2010/07/09 10:54登録) (ネタバレなしです) 1938年発表のエラリー・クイーンシリーズ第13作では「悪魔の報酬」(1938年)の続編にあたる作品で(前作ネタバレはありません)、ハリウッドを舞台にしたユーモア本格派推理小説です。前作以上にどたばたやロマンスが派手になっており、なるほど私のイメージするハリウッドらしさも十分に堪能できました。しかし「悪魔の報酬」では論理的推理による謎解きもしっかりできていたのに本書はどたばた描写ばかりが目立ちすぎて推理の説得力が弱く感じられます。 |
No.3 | 7点 | Tetchy | |
(2009/08/02 20:26登録) 第2期クイーンシリーズと云われているハリウッドシリーズの1冊である本作はきらびやかな映画産業を舞台にしているせいか、物語も華やかで今まで以上に登場人物たちの相関関係に筆が割かれ、読み応えがある。 この頃、実作者のクイーン自身、ハリウッドに招かれ、脚本家として働いていたが、そこで要求されるのは緻密なロジックよりも面白おかしい登場人物たちが織成す人間喜劇というドラマ性である。 その特徴が顕著に現れていると思われるのは本書の最後にポーラをクイーンが外に連れ出すシーンだ。王子とお姫様を匂わすキスシーンも交え、非常にドラマチックで映像的である。それまでの作品で人が人を裁くことに対し、苦悩していたクイーンが独りごちてシリアスに終わる閉じられ方から一転している。 しかし逆に云えば、語られる内容は華やかだが、核となる事件は非常に凡庸である。 使い古された遺産相続に起因する動機に、明白すぎる犯人。 久しぶりに犯人も解ってしまった(犯人が親族だったかどうかは見過ごしていたけれど)。 また題名が象徴するトランプのカードによる脅迫というのも今までにない演出だ。非常に映画向きの演出だといえる。 こういうのは個人的には好きなので歓迎したいが、クイーン=緻密なロジックというフィルターが邪魔をして、本作の評価を辛くしている。 謎とストーリー双方がよければ文句なしに満点なんだけど。 |
No.2 | 6点 | 空 | |
(2008/12/02 21:31登録) この時期のクイーンは軽いタッチが特徴ですが、これも冒頭から笑わせてくれて、小説的なまとまりもよく、全体的に楽しめました。 動機の問題は、犯人の発想自体も推理もあまり冴えませんが、裏で進行していた企みの意外性は十分でした。ヴァン・ダイン流の性格分析による真犯人指摘まで、おまけに取り入れられています。 |
No.1 | 7点 | ロビン | |
(2008/09/16 02:59登録) 読み逃していたクイーンの長編。これであとは『最後の一撃』だけだ!(だけどなかなか手に入らない……) ハリウッドシリーズは、描写や物語展開もエンタテイメント的。その点は読んでいて面白い。そしてエラリイが女に弱すぎ笑(このへんから、後のニッキーの登場が伺える) 本筋とは別の小さな仕掛けが重なって、事件を複雑にしていくという設定は好き。何より、「あの人物」と「犯人」が別人だったとは驚き。それを導き出し、犯人を指摘するロジックもシンプルで明確。ただ、国名シリーズに比べると物足りない感は否めないなあと。 |