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ミステリの祭典

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こもとさんの登録情報
平均点:6.60点 書評数:86件

プロフィール| 書評

No.46 7点 被害者は誰?
貫井徳郎
(2007/11/10 00:40登録)
 これが貫井作品かと驚いた。 今までの「重い」イメージで読み始めたため、そのギャップが私には楽しかった。
 インパクト大の先輩キャラには結構笑えるんですが、それ故に、最終話には、まんまとしてやられたという感じ。 でも、いきなり最終話に飛ぶんじゃなくて、1話から順に読んで、最終話まで中身を熟成させる・・・それが、この本の正しい楽しみ方かな。


No.45 4点 七回死んだ男
西澤保彦
(2007/11/10 00:15登録)
 この本、一般的にはホントに評価が高いんですよね・・・。
 でも、この本に限らず、何冊も試してみた結果、私は西澤作品とは相性が合わないという結論に達しました。
 たぶん、登場人物を好きになれないせいじゃないかと思う。 まぁ、脇役ならわかるのですが、この作品の場合は、主人公すら好きになれなかった。 これじゃあ、感情移入は無理です。


No.44 10点 大誘拐
天藤真
(2007/11/05 19:32登録)
 この名作がまだ、書評欄に登場していなかったのか、と驚いた。
 天藤真氏の「大誘拐」。 この本こそが、遥か昔のまだ女子高生だった頃の私を、ミステリの世界へ連れ込んだ張本人(?)なのである。
 人質であるはずのおばーちゃんが、何故かこの誘拐事件の主導権を握ってしまうなど、笑いどころは満載。
 読書に慣れていない身体には、「500ページ近い分厚さ」に「活字も最小」という条件は、かなり厳しいものであったハズなのに、読んでいる最中のわくわくした気持ちは、今も忘れることが出来ない。 こういう瞬間を味わいたくて、私は今も本を読み続けているような気がする。
 私のミステリ好きの原点、この本に、10点つけちゃいます。


No.43 3点 古傷
東直己
(2007/11/05 18:56登録)
 このヨイショ人間、法間のどこが、ハードボイルド小説の主人公なのか理解出来ないままに、ページは進み・・・最後まで来てしまいましたが。 これがまた、今までのストーリーから唐突に、なんとも哀愁漂う終わり方がやってきまして。 でも、ここにやっと、ハードボイルドの片鱗が見えました。
 ただ私はやはり貫井氏の「プリズム」然り、恩田氏の「Q&A」然り、ハッキリしない終わり方はニガテなんですよね。 これはもう、余韻が残っているというワケではなく、「で? 結局、どうなのよ?」と詰め寄りたくなるワケなんです。
 えぇ、消化不良が続いています。


No.42 9点 どちらかが彼女を殺した
東野圭吾
(2007/10/31 20:14登録)
 驚く程、評価が低いのですね~。 私はとても楽しめた方なので、ホントにびっくりしています。
 特に私は幸いにも、この本が話題になる前(ノベルス新刊の段階で)に読んだということもありまして。 ラストの演出の部分など、何の予備知識もないままにこの構成の本を手に出来たということが、とても新鮮でした。
 ミステリの場合、私は読み返すということをほとんどしないのですが、読了後に、前のページを繰って、伏線と思える箇所を発見するのが楽しかったです。 推理小説とは、考えるという作業が楽しいジャンルの本なのだと、再認識させてくれた本でもあります。
 男性二人の攻防も、とても格好良かったですね。


No.41 5点 みなとみらいで捕まえて
鯨統一郎
(2007/10/31 00:13登録)
 『バカミス』が誉め言葉だって初めて知りました。 「よくこんなこと思いつくなぁ」という作品に与えられる賞賛なのだそうです、ホントは。
 半任優里、南登野洋子、名丹廷、ダイビングメッセージ? その他諸々・・・いやいや、こんな笑いを誘うネーミングに騙されてはなりませぬ。 謎解きもきちんとお楽しみ下さい。
 ・・・と言いつつ、半任の独白ツッコミに、思わずクスリ。 こんな脱力系の笑いが取れる作家を、私は鯨氏しか知りませんが(笑)


No.40 7点 帰りなん、いざ
志水辰夫
(2007/10/31 00:08登録)
 上手いですね、志水さん。 特に後半は、内容のスリリングさも手伝って、一気に読ませてくれます。
 とにかく、文章が良いんだなぁ・・・情景を浮かばせ、人物の魅力的な部分を最大限に描ききるところが。


No.39 4点 繭の夏
佐々木俊介
(2007/10/31 00:05登録)
 キョウダイ探偵(役)というと、私の頭に真っ先に浮かぶのは、仁木兄妹で、これはかなり好きなシリーズです。
 こちらの並木姉弟探偵は、派手な印象はありません・・・というか、ハッキリ言って地味ですが、一段階ずつ謎をクリアしていくという雰囲気が、いかにも古典的な正統派推理小説といった感じ。
 正直、『驚愕の真実!』とは言い難いですが、一足飛びに奇をてらった謎解きモノが多い昨今、謎解明までの一歩ずつの過程を楽しんでいける作品という点では、貴重かも。


No.38 4点 笑ってジグソー、殺してパズル
平石貴樹
(2007/10/26 21:33登録)
 確かに、純粋な本格推理小説ではあるのですが。 でも、残念ながら・・・作品に華が感じられない。
 人物の多さに反して、個性に関する描写がないので、どうしてもストーリーに入り込めなかった。 それは、主要人物ですら、登場人物一覧表のページを何度も開いて確認してしまうことに、如実に表れている気がする。
 主要登場人物の名前同士で、ジグソーパズルを組んでいる点を考えると、もう少し人物像が自然に浮かんできても良さそうなものなんだけどな。


No.37 6点 レイン・レインボウ
加納朋子
(2007/10/26 21:08登録)
 いつもながら、背筋の伸びた小説を書く人だと思う。
 迷いや弱さがあっても、自分の進む方向を姿勢を正して見ることが出来る女性たちは、本当に魅力的だと惚れ惚れする。
 主人公や、登場する人物が一貫した短編集・・・10年位前まで、私はそれを「連作」短編というのだと思っていた。 しかし、加納作品に出合った頃から、単にそれだけではないと思うようになった。 1話ずつが単独で成り立ちながらも、最終話でそれまで根底に流れていた一つの謎が完結する。 「連作短編」とは言わば、「長編の短編集」なのだ。


No.36 7点 虹の家のアリス
加納朋子
(2007/10/26 21:03登録)
 加納ワールドだなー、と思う。
 加納氏のデビューは、私にとって鮮烈な出来事だった。 氏の文章はシンプルだけれど、言葉が足りないわけではない。 かと言っておせっかい過ぎる程くどいわけでもない。 ただ、書かれている文章以上の感情が行間に存在し、二十代の女性がこんなお話を書いているということが、私には衝撃だった。
 ふわふわとして、あったかくて、切なくて、でも、ピンと背筋が伸びた小説。 あれから十数年が過ぎた今も、加納ワールドは健在だ。 オススメは表題作。


No.35 5点 麿の酩酊事件簿 花に舞
高田崇史
(2007/10/26 21:00登録)
 旧家の御曹司は酩酊探偵だった・・・マンガみたいな展開だな、と思っていたら、ホントにマンガの原作だったそうで。
 ライトノベルなのですが、最後にはやはりちゃっかりと、高田作品に付きものの薀蓄も盛り込まれている辺り、コダワリがあると見た(笑)
 結婚相手が見つからない文麿の悩みは、山口作品の「垂里冴子」とお似合いなんじゃないかと考えてみたり。 あ、でも勧修寺家は、見合い厳禁なんだっけ(笑)
 メインディッシュというより、デザートだと思ってお読み下さい。


No.34 8点 百万のマルコ
柳広司
(2007/10/25 16:17登録)
 SF界の巨匠アイザック・アシモフが書いた「黒後家蜘蛛の会」という安楽椅子探偵モノ。 私は高校生の時分に手にし、今も古典の名作の一つだと思っている。
 そんな私の前に、「黒後家蜘蛛の会などお好きな方ヘ-」という帯の付いた本が現れたのだから、それはもう即買いで当たり前か、と。
 13編から成る短編集なのだが、知恵比べのような謎かけが大好きな私は、最初の1編でもう「当たり」だと思った。 ただ、「黒後家-」よりも、同作者の「ユニオン・クラブ綺談」の方がパターンが似ていると思ったのだが。 水戸黄門的に、同じパターンが続くのが嫌いじゃない人ならば楽しめるかと。


No.33 5点 葉桜の季節に君を想うということ
歌野晶午
(2007/10/22 19:29登録)
 私はミステリファンではあるが、「この小説は、トリックが奇抜だから好き」というタイプの読者ではないのだと思う。 どんなにトリックが優れていようとも、その料理の仕方・・・言い換えれば文章力があるという点に重きを置く。 従って、氏のデビュー当時の「家」シリーズ三作を読んだ時には、(ごめんなさい)、正直めまいすら覚えた。
 今の歌野作品は、当時に比べ、格段に読み易くなっていることはわかっているのだが、「このミス1位」と言われると、そこまでの完成度ではないんじゃないかな、とも思う。
 自分が読み始める前までの前評判が高かったので、期待しすぎてしまったのかもしれない。 まっさらな気持ちで読むべきだった。


No.32 5点 月の裏側
恩田陸
(2007/10/18 22:06登録)
 水郷・箭納倉のモデルは、私の地元に程近い、水郷・柳川市。 私はハードカバーで読みまして。 表紙を開けてすぐのところに掲載されている地図も、駅前や町の中の描写も、柳川市そのまんまで、妙に嬉しかった(笑)
 ただ、内容は正直なところ今ひとつ。 話が熟成したので終わったというよりも、枚数制限が来たので、そろそろ終わらなきゃ・・・という感じで、ラストが唐突にやって来た。 だから、煮え切らないまま終わってしまった・・・そんな感じ。 
 それでも、恩田作品、好きなんですけどね(笑)


No.31 9点 上と外
恩田陸
(2007/10/18 21:47登録)
 私は、6巻まで分冊になっている文庫本で読んだんですが、ページを繰る手ももどかしいくらい一気読みでした。
 「主人公が冷静すぎて中学生らしくないな」と思う一方で、そういう客観的な見方じゃなくて、「中学生がこんなことをやってのけるからこそ、胸がすく思いなんじゃないか」と、喜んでみたり。
 余計なこと考えずに、このジェットコースター並みの展開を、ただ楽しんで読んでみた方がお得な本だと思います。


No.30 10点 十角館の殺人
綾辻行人
(2007/10/17 11:25登録)
 長いことミステリを読み続けていると、情けないことだが、「読了した記憶はあるものの、内容をさっぱり忘れてしまった」という本も少なくない。
 だが、この本は読了から20年が経っている(その間、再読もなし)にもかかわらず、内容を鮮明に思い出すことが出来る・・・それ程、インパクトのあった作品。
 書評の中で、皆さんが書かれていますが、私も「たった一行」に息を呑んだ一人です。

 追記(2008/03/16):先日、書店で講談社文庫の改訂版をパラパラとめくってみたら、今回は例の一文が、翌頁の一行目にくるように編集されていて、思わずニヤリ。 確かにこれで、驚きは倍増するはず・・・講談社もなかなか粋なことをしますね(笑)


No.29 7点 ゲッベルスの贈り物
藤岡真
(2007/10/16 22:35登録)
 えぇ、騙されましたとも!(笑) 大技、小技、ともに効いている点がお気に入り。 特に小技の方は、思わずもれる苦笑という感じで、私好みです。
 あとがきに見られる「ミステリたるもの、解答に『やっぱり・・・』はナシ」という氏のご意見にも、全面的に賛成。 私も、ちょっとでも芽生えた疑いには、目隠しができない性質ですから(笑)


No.28 3点 プリズム
貫井徳郎
(2007/10/16 22:32登録)
 人間とは、多面体だ。 一人の語り手から見た被害者の印象は、あくまで一面に過ぎない。 幾人もの印象を重ね合わせて、浮かび上がってくる人物像は、確かにプリズムだ。
 作品の構成としては、かなり面白く、私の好きな部類だと言える。 凝っている・・・と思う。 だからこそ、その後の展開を見極めたくて、ページを繰って先を急いだのだ。 なのに、この結末はどうだろう? たぶん、この結末を好む人も、いるはずだとは思う。 賛否両論(これも、プリズム?)というところだろうが、私としては正直、肩透かしを食った・・・そんな気分。


No.27 7点 赤ちゃんをさがせ
青井夏海
(2007/10/16 22:03登録)
 いいですねぇ、安楽椅子探偵。 明楽先生の謎解きを聞けば、それまでのお話は伏線の宝庫だってことに気づかされてしまう。
 それに、助産婦トリオの会話も良い。 なんせ、その部分を読んでいるだけで、キャラの輪郭が出来上がってしまい、言動が想像できますからね。 例えばほら、こんな書評を書いていると、聡子さんならきっと「こもとからこんな書評、10年は書かれたくないよ」って言うんじゃないかな、なんてね。

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