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ミステリの祭典

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あびびびさんの登録情報
平均点:6.33点 書評数:669件

プロフィール| 書評

No.249 3点 この町の誰かが
ヒラリー・ウォー
(2011/11/27 22:37登録)
誰もが平和で暮らしやすい町だと思っていたが、ひとりの少女がレイプされ、ハンマーで殴られ殺された。

それは近所の夫婦がコンサートに行くので、いつもの通り、子守のバイトに行った先の出来事だった。

物語はその場所に近いであろう人々や友人、公安委員、刑事などの証言をドキュメントタッチで綴っているのだが、ここでいろいろな背景が浮き彫りにされる。

それは人々のプライバシーに関する問題も多々あり、人種差別や、要人の同性愛などが露見して、町自体の土台が崩れて行った。

最後に犯人が告白することになるが、ずっと緊張感があって物珍しかった。しかし、二度とこんなタッチのミステリは読みたくない気もした。


No.248 6点 ラスト・チャイルド
ジョン・ハート
(2011/11/25 21:16登録)
双子の妹が誘拐され、行方不明。同時に父親も姿を消した。母親は嘆き悲しみ、酒、ドラッグに溺れる。

そんな状況の中で双子の兄が学校にも行かず、近隣の町など毎日捜索するが、ある主任刑事がこの親子の動向を必要以上に気にかける…。

そんな状況説明が細かく長いのがこの作家の特徴だと思われるが、分かり切ったことを何度も繰り返されるとついついページを飛ばしてしまう。

それでもラストは畳み掛けるように謎が解明された。その手腕は見事というしかない。


No.247 6点 ロウフィールド館の惨劇
ルース・レンデル
(2011/11/17 22:07登録)
文盲がゆえに殺人を犯した…。ロウフィールド館にメイドとして就職できたのは代わりに紹介状、推薦状を書いた人がいたからで、その女はまったく字が読めなかった。

それから事あるごとに危機を乗り越えたが、(主人からの書き置きを他人に読んでもらったり)、それが永遠に続くはずはなかった。「私は字が読めません」といまさら言えず、一家惨殺の悲劇となる。
それは冒頭で作者から明かされていて、ネタばれではない。そのあとの異常心理を書いたサスペンスである。

ただ現代ではその設定はまずありえなさそうだし、やや迫力に欠ける。でも、映画にすれば、監督の腕の差が出そうな物語だと思う。


No.246 7点 苦い林檎酒
ピーター・ラヴゼイ
(2011/11/15 23:29登録)
あとから考えてみると当たり前の犯人だったが、作者が意図的に角度を変えたため、いろいろな謎が残った。しかし、それがミステリであり、作家の手腕になる。

そうは言っても、あくまでもこれは読後感であり、最初からその流れを把握できるはずもない。ミステリの読者は作家にコントロールされ、我々赤ん坊をいかに寝かせつけることができるか…。

そういう意味では、これはすんなり寝つかれない。でもハラハラドキドキのシーンもあり、「読んで良かった」気にはさせられる。


No.245 7点 鉄の枷
ミネット・ウォルターズ
(2011/11/08 16:50登録)
その女性は鉄の口枷をはめられて殺されていた…。しかも財産は娘、孫には行かず、かかりつけの女医に全額与えらるれるという…。

本格ミステリの香り漂う逸品。「女彫刻家」よりこちらの方が読みやすく、楽しめた。英国伝統のミステリと言えるのではないか。


No.244 4点 夜勤刑事
マイクル・Z・リューイン
(2011/11/05 16:58登録)
19年もの長き間、夜勤勤務のパウダー警部補は、自然に嫌味たっぷりの、尊敬されない上司になっていた。家庭も崩壊寸前だ。しかし、事件の核心をつく術は心得ており、17人が殺された迷宮入り寸前の事件に着手する。

淡々とした流れ、凹凸の少ないストリーにページをめくる手が止まる時もあるが、どこかリアルであり、共感を覚える。


No.243 5点 赤朽葉家の伝説
桜庭一樹
(2011/11/01 11:58登録)
赤朽葉家から見た昭和から現代の世相、時代の流れ。語り手の祖母である万葉という女性が千里眼で、さまざまな未来の死を予言し、それにまつわる事件性が後にミステリーの展開となるが、これは締め括りの部分を強調しただけのように見える。

千里眼と来た時点で放棄したくなったが、意外とテンポよく読めた。読後感は悪くない。


No.242 8点 白い僧院の殺人
カーター・ディクスン
(2011/10/29 13:40登録)
「なぜ、逆から見ようとしないのだ」。そこからあらゆる謎が解かれ、すっきりした読後感。最初はややこしいストーリーに見えたが、犯人の動機はごく単純なものだった。

久々に本格ミステリーを堪能したと言う感じで、お薦めの一冊と言える。


No.241 6点 縞模様の霊柩車
ロス・マクドナルド
(2011/10/24 17:18登録)
まず文章がいいと思う。そしてリュウ・アーチゃーの探偵としてのスタンスがいい。

物語は、この作家の得意分野的な流れで、依頼者の過去がだんだん危うくなって行く。それなら「なぜ、探偵に依頼したのか?」という疑問は残るものの、それが心理的な葛藤部分に表れてくる。


No.240 4点 震えない男
ジョン・ディクスン・カー
(2011/10/21 15:12登録)
窓際でタイプライターを打っていた男が殺される。その部屋には彼の妻がいたのだが、「銃が勝手に撃った!」と。その機械的トリックはどうも怪しい。命中率などを考えてしまう。

さらに幽霊屋敷と呼ばれるこの館に入ったある女性が、「ドア付近でくるぶしを手で掴まれた!」と悲鳴を上げる。これは怪奇的ムードに拍車をかけたが、最後の最後で実は嘘だったと…。

その女性は主人公と言うべき語り部?の連れだけに、「そんなあほな!」と。


No.239 6点 バスカヴィル家の犬
アーサー・コナン・ドイル
(2011/10/14 23:15登録)
シャーロックホームズはミステリチャンネルでよく見たけど、この作品は忘れていて楽しく読めた。ただ、前半の盛り上がりにしては犯人はあっさりしていた。

実際にそんな犬がいたなんて、なんの余韻も残らない。しかし、時代が時代だけに、名作であることは間違いないのだと思う。


No.238 7点 切断
黒川博行
(2011/10/11 14:34登録)
黒川作品は疫病神シリーズが人気で、確かにおもしろいが、1980年代の作品の中ではダントツにおもしろかった。

最後まで息をつかせぬ復讐劇は、大阪という都市の設定が良く似合う。大阪在住の作家だけに町角の描写が実に的確だ。

この本のタイトルである「切断」にどんな意味があるのか?なぜ殺した人間の一部を切断するのか?ある程度推理はできても先を読みたくなる。


No.237 9点 ギリシャ棺の秘密
エラリイ・クイーン
(2011/10/11 14:24登録)
エラりークイーン最初の推理は見事に外れ、饒舌だった分恥辱にまみれた。確かに詩人、哲学者などの引用を前面に押しての推理は嫌味たっぷりだった…。

しかし、この作品はミステリのだいご味を存分に味わえた。やや中だるみ感はあったものの、驚くべき真実、どんでん返し風の犯人は、名作にふさわしい切れ味。


No.236 7点 漂う殺人鬼
ピーター・ラヴゼイ
(2011/10/06 13:49登録)
「浜辺での殺人は容易だ…」というフレーズから始まる。その通り、夏の浜辺で寝そべっている女性が人ごみの中で殺されるが、実はこの物語の主題はそこではなかった…。

いかにもこの作家らしい起承転結だったが、期待すぎた感もあり。しかし、一流のミステリであることは否めない。


No.235 5点 海の稜線
黒川博行
(2011/09/29 13:05登録)
作者がまだ高校の美術教師だったころの作品と言う。一年がかりだったらしいが、キャリアのエリート係長が東京弁なのに対して、地元大阪の刑事がこてこての関西弁でストーリーは進
んで行く。

犯人そのものは意外性もなく、ごく普通だったが、綿密な取材で、海運業の世界を展開させる。しかし黒川といえば「厄病神シリーズ」で、最近の作品の方が好みかも。


No.234 5点 あなたに似た人
ロアルド・ダール
(2011/09/21 18:50登録)
「味」、「おとなしい凶器」と出だしで読んだ時には、にやりとしたものだが、だんだん作者の意図が分からなくなった。

さすがに洗練されてはいるが、これはミステリではない。いや、ミステリでなくても面白ければ…と読み続けたが、結局は最初の二作が最高だった。


No.233 7点 エジプト十字架の秘密
エラリイ・クイーン
(2011/09/19 13:46登録)
犯人のために?裸体主義者などを登場させ、混迷の道へ誘っているが、よく考えてみると、犯行ができる状況にあるのは彼だけ…と、途中で気づいた。

果たしてエジプトは関係あったのか、なかったのか、よく分からないまま読み終えてしまった。それにしても最後の最後で犯人が残した手掛かりですべてが明らかになるなんて…。

それがいかにもリアルだが、物語の上ではもうひとつ現実味がない。


No.232 5点 消えた女
マイクル・Z・リューイン
(2011/09/15 13:52登録)
探偵サムソンシリーズの代表作といわれているが、ロス・マクドナルドに影響を受けたらしい。すなわち暴力的ではなく、淡々と追跡をした果てには意外な犯人が…。

題名はあっさりしているが、なかなか込み入った話で、文章的な奥の深さもある。


No.231 4点 女刑事の死
ロス・トーマス
(2011/09/12 16:59登録)
たったひとりの肉親である妹(女刑事)を車に仕掛けられた爆弾で殺された。諜報機関の仕事をしている兄が急遽ふるさとに帰り、昔馴染みらの情報を元に調査するが…。

その背後に大物武器商人らが絡んで事件は膨らんで行くが、本格ミステリが好きなファンは物足らないかも知れない。


No.230 2点 絞首台までご一緒に
ピーター・ラヴゼイ
(2011/09/09 01:06登録)
女学生が学校の寮から抜け出し、テムズ河で夜の水泳を敢行するが、その時に犬を連れた三人組のボートと遭遇する。

次の日、その近くで浮浪者が殺害された。その女学生は重要な目撃者としてその三人組を探しに刑事らと一緒にテムズ河を遡っていくが…。

はっきり言ってこれはドタバタ喜劇であり、ミステリの危険な香りは一切しない。この作者でこれほどの駄作?に初めて遭遇した…。

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