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ミステリの祭典

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この町の誰かが

作家 ヒラリー・ウォー
出版日1999年09月
平均点5.25点
書評数4人

No.4 6点 測量ボ-イ
(2014/03/16 18:01登録)
代表作「失踪当時の・・・」もそうですが、妙なリアル感が
ありましたね。
訳文も会話文が多いせいか読みやすかったです。
正直犯人は関係者の誰でもいいような話しですが、事件の背景
に社会の歪みがさりげなく書かれていて、ちょっと社会派っぽ
い?アメリカで「社会派推理」というカテゴリが存在するのか
な。そんな感想です。

No.3 6点 E-BANKER
(2014/01/26 20:27登録)
作者晩年に当たる1980年発表の本作。
ウォーと言えば米・警察小説作家の代表選手というイメージだが、本作は一風変わった味わいを持つミステリーに仕上がっている。

~コネテイカット州クロックフォード・・・。アメリカのどこにでもありそうな平和でそして平凡な町。だが、ひとりの女子高校生が死体で発見されたとき、町はこれまで見せたことのない顔を露にする。あの子を殺したのは誰か? この町の住人なのか? 浮かんでは消えていく容疑者たち。焦燥する捜査陣。怒りと悲しみ、嫌悪と中傷のなか事件は予想のつかない方向へと展開していく。だが、局面を一転させる手掛かりはすでに目の前に・・・!~

これは作者の作戦勝ちだ。
本作は、普通の警察小説のように捜査状況を追っていくというスタイルとは全く異なり、小さな町で起こった十六歳の少女の殺人事件を、事件に関わった人々の証言や会議記録で再現する、という構成をとっている。
最初は、事件の状況や被害者の人となりが順に語られ、中盤以降は容疑者の証言や捜査陣のやりとりがすべて会話形式で進行していく。
視点人物が次々と変わっていくというのは、読み手が混乱しやすいというデメリットもあるのだが、本作では作者の手腕により混乱することなく、終局の真相解明まで突き進んでいく。

田舎町というのは、アメリカでも日本と同様、よそ者に対して排他的で差別の対象になるんだねぇ。
殺人事件を契機として、人種差別や暴力事件、性犯罪など、平和な町に隠されていた闇が徐々に姿を現していく・・・
この辺り、舞台設定に関する手練手管もやはりさすがという気がした。

ラストはもしかして「叙述トリック?」と思わされたのだが、これは作者の狙いなのだろうか・・・?
ミステリーとしても新鮮で、まずは安定感のある作品。
欲をいえば、中盤のまだるっこしさが何とかなれば・・・ということになるけど、水準以上の評価はできる。

No.2 3点 あびびび
(2011/11/27 22:37登録)
誰もが平和で暮らしやすい町だと思っていたが、ひとりの少女がレイプされ、ハンマーで殴られ殺された。

それは近所の夫婦がコンサートに行くので、いつもの通り、子守のバイトに行った先の出来事だった。

物語はその場所に近いであろう人々や友人、公安委員、刑事などの証言をドキュメントタッチで綴っているのだが、ここでいろいろな背景が浮き彫りにされる。

それは人々のプライバシーに関する問題も多々あり、人種差別や、要人の同性愛などが露見して、町自体の土台が崩れて行った。

最後に犯人が告白することになるが、ずっと緊張感があって物珍しかった。しかし、二度とこんなタッチのミステリは読みたくない気もした。

No.1 6点 kanamori
(2010/06/20 16:20登録)
田舎町の少女惨殺事件を町の人々へのインタビュー形式による会話体だけで描いています。
著者晩年の作品なのに、このような実験作を試みる創作姿勢に感心しますが、ドキュメントタッチの構成が物語に緊迫感を与えていてサスペンスを盛り上げていると思います。

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