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ミステリの祭典

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ラスト・チャイルド

作家 ジョン・ハート
出版日2010年04月
平均点6.80点
書評数5人

No.5 6点 YMY
(2023/02/04 23:07登録)
作者は、家族の軋轢や崩壊を、好んで取り上げるらしく、本書もそれを主要なテーマにしている。
主人公ジョニーは、十三歳の少年で行方不明になった双子の妹のアリッサを、友達のジャックの手を借りつつ捜索する。事件は子供の失踪が相次ぎ、さらに複数の遺体が発見されるに至って、異常犯罪者の犯行と分かる。ジョニーは、アリッサもその犠牲になったのではと必死に捜索を続ける。その執念が、物語をぐいぐいと引っ張る、大きな力として働く。
必ずしも、ハッピーエンドには終わらないが、崩壊した家族が別のかたちで再生しそうな予感を抱かせる締めは、この重い小説の救いになった。

No.4 7点 ◇・・
(2022/06/30 18:28登録)
十二歳の少女の失踪事件をきっかけに、壊れてしまった家族。父親は行方をくらまし、母親は悲しみと怒りを薬物で癒すことしか出来なくなっている。母も警察も少女の生存を絶望視する一方、双子の兄であるジョニーだけは、どこかできっと生きていると信じて妹捜しに明け暮れる。
神の声が聞こえるという体重三百ポンドの大男の存在が不気味な影を落とす中、事件は次第に連続殺人の様相を呈していく。家族の物語と少年の成長と謎解きが見事に調和していて、このバランスが絶妙。
黒人奴隷とその解放の歴史や信仰の話も無理なく盛り込まれ、物語に深みを与えている。そして小さいながらも希望の光を灯してくれる秀逸なラスト。最後の一文で救われた気分になれるはず。

No.3 8点 itokin
(2013/01/28 11:23登録)
物語の進行、心理、背景の描写が丁寧に描かれ構成、盛り上げ方も素晴らしく最後まで引き込まれた。少し、おどおどしてやりきれない感じも受けたが、最後のまとめ方で救われた。海外の評価が高いようだが作者の筆力は本物と感じた。

No.2 6点 あびびび
(2011/11/25 21:16登録)
双子の妹が誘拐され、行方不明。同時に父親も姿を消した。母親は嘆き悲しみ、酒、ドラッグに溺れる。

そんな状況の中で双子の兄が学校にも行かず、近隣の町など毎日捜索するが、ある主任刑事がこの親子の動向を必要以上に気にかける…。

そんな状況説明が細かく長いのがこの作家の特徴だと思われるが、分かり切ったことを何度も繰り返されるとついついページを飛ばしてしまう。

それでもラストは畳み掛けるように謎が解明された。その手腕は見事というしかない。

No.1 7点 kanamori
(2011/02/02 17:52登録)
1年前に何者かに誘拐された双子の妹の行方を、主人公の13歳の少年ジョニーが、唯一の友達ジャックとともに捜し続けるというストーリー。
インディアンの扮装をしたり、車を盗んで乗りまわすなど、この少年の行動・造形が奇異で、当初は感情移入が難しいですが、終盤徐々に真相が見えてくるあたりから物語に引き込まれました。小説の味わいは、キャロル・オコンネルに似ているように感じた。
タイトルの”The Last Child”は、「ひとり残された子供」というような意味ですが、最後にもうひとつの意味が示唆されます。真相は暗欝な内容ながら、エピローグで語られるジョニーのある行為で救われる思いがした。

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