赤い博物館 緋色冴子 |
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作家 | 大山誠一郎 |
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出版日 | 2015年09月 |
平均点 | 6.47点 |
書評数 | 15人 |
No.15 | 8点 | 蟷螂の斧 | |
(2022/12/09 19:14登録) ①パンの身代金 8点 身代金受け渡しの倉庫で、運搬人の社長が消え、身代金だけが残っていた.。何故?・・・動機、アリバイ。トリックの組み合わせが巧い ②復讐日記 10点 殺された女子大生の元恋人は、犯人への復讐を計画、その一部始終を日記に綴っていた・・・完璧なアリバイ、反転。これは短篇ではもったいない。完全に騙されました ③死が共犯者を別つまで 7点 死ぬ間際に「おれは25年前、交換殺人をやった」・・・アリバイ、成りすまし ④炎 7点 火災が発生。3人(夫婦と妻の妹)が焼死体で発見された。しかし死因は青酸カリによる毒死であった。妻は妊娠3ヶ月。その当日、妹の元彼が復縁のことで訪問することになっていた・・・復讐 ⑤死に至る問い 6点 26年前の殺人事件と酷似した殺人事件が発生。模倣犯なのか同一犯なのか?・・・動機 トリック主体の短編なので許容範囲です。長篇だったら文句を言うかも(笑) |
No.14 | 7点 | パメル | |
(2021/09/11 08:29登録) キャリアながら警視庁附属犯罪資料館の館長に甘んじる謎多き美女の緋色冴子と、一刻も早く汚名を返上し捜査一課に戻りたいと願っている巡査部長の寺田聡。図らずも「迷宮入り絶対阻止」に向けて共闘することになった二人が挑む難事件とは。予測不能の神業トリックが冴え渡る5編からなる連作短編集。 「パンの身代金」身代金受け渡しの裏に潜む企みとは。 「復讐日記」アリバイトリックと日記に秘められた行為とは。記述の矛盾から真相を暴く。 「死が共犯者を別つまで」交換殺人の解法が斬新。 「炎」命を懸けた執念の犯行トリック。 「死に至る問い」意外な犯行動機により行われる模倣殺人。 過去に発生した事件の資料より疑問点が見つかり、再捜査が行われることで新たな真実が明らかになるというのが基本構成。資料を媒介として間接的に事件を捜査する。つまり資料の内容を読者にも分かるようになっている。同じ資料を見て事件の捜査に当たっているのに、読者の想像を超える真相が用意されている。資料をもとにロジカルに真実に辿り着くプロセスに、斬新な着想による大きなサプライズがあるのが嬉しい。 |
No.13 | 6点 | ボナンザ | |
(2021/07/06 22:46登録) 大山作品では一番良かった。個人的には動機はなんだろうと構わない派なので、パズルとして良くできていると評価できた。 |
No.12 | 7点 | Kingscorss | |
(2020/10/20 14:33登録) 文庫版で読了。先に最新作の『アリバイ崩し承ります』を読んでおり、そちらは正直イマイチだったんですが、これは面白かったです。 トリックや動機、プロットに強引なこじつけ感があるのが多いですが、『アリバイ』よりはこちらのほうがうまく馴染んでいるせいかそれほど気にはなりませんでした(『アリバイ』は結構こじつけ感や無理やり感がひどかった) 全体的に楽しんで読ませていただいたんですが、トリック等以外で少し残念だったのは、ヒロインの緋色冴子のキャラがかなり薄っぺらいことでしょうか… 『アリバイ』の時乃もかなりペラペラでしたが、こちらも負けじと『ただ頭のいい美人』にしただけといった感じです。大山さんの特徴でしょうか… 個人的に好きだったエピソードは『復讐日記』と『炎』。作者が文庫化の際に手間をかけて改稿を重ねた『パンの身代金』は一番イマイチでした… 本格モノなので、強引なこじつけや、現実的ではないが物理的に可能なら心理的に不可能でもトリックに組み入れちゃうのはしょうがないと思いますので、その辺に目をつぶれば楽しい読後感になるのではないでしょうか。 |
No.11 | 6点 | makomako | |
(2020/04/19 12:55登録) 最初の2作(パンの身代金と復讐日記)は比較的無理がなく、内容もひねりが効いていて面白かった。 最後の「死に至る問い」は賛否が分かれているようですが、私にはこれはいくらなんでもちょっと無理やりすぎると思いました。 しかしこれだけしっかり内容を盛り込んだ作品を並べて見せてくれたのはすばらしい。 こういった短編集だとどうしても出来不出来が気になってしまうけど、次作に期待が持てますね。 |
No.10 | 8点 | ミステリーオタク | |
(2019/08/30 12:39登録) 自分もベストは「死に至る問い」。 『アルファベット・パズラーズ』の「Yの誘拐」に並ぶ驚愕作。 |
No.9 | 7点 | ことは | |
(2019/01/31 01:42登録) 私もベストは最終話「死に到る問い」 みなさん、動機で評価が低いようですが、私はそこがよかった。 「普通はそんなことしないよ」ともちろん思いますが、だって普通じゃなくなってるよね。作者は間違いなく狂気を書こうとしていると思う。最後の犯人の表情なんて、ぞくっとしてしまいましたよ。 復讐日記の手記もいいし、この人は謎解きにこだわらなければもっと小説として面白いものがかけると思うんだけど、謎解きはゆずれないのでしょう。 |
No.8 | 7点 | メルカトル | |
(2018/10/03 22:00登録) これは面白い。派手ではないけれど渋みのある、玄人好みのしそうな連作短編集の傑作。 いずれも世界が反転するのを目の当たりにすることができます。全体的に無理やり感はありますが、犯人の意外性、読者の目を欺く巧妙な仕掛け、大技ではないけれど切れのあるトリックなど、楽しめる要素が満載です。 館長で探偵役の緋色冴子警視の見事なまでのクールビューティーさ加減、良いですねえ。これ程まで沈着冷静で不愛想な主役の女性はこれまで存在しなかったのではないでしょうか。それに対して助手の寺田聡は個性があまり感じられず残念な人。 何人かの方が触れられていますが、『死に至る問い』の動機だけは納得できかねます。それに推理があまりにも斜め上に行き過ぎて、正しい道のりを辿るロジックとは言えないと思いますね。飛躍しすぎでしょう。これはフェアとは言いがたいです。 他の作品に関しては概ね成程と首肯でき、ハッとする瞬間がとても貴重な体験となりました。 いずれ劣らぬ奇想の連打といった珍品がラインナップされていると思います。どうしても地味な印象は拭えませんが。 |
No.7 | 7点 | E-BANKER | |
(2018/09/11 21:16登録) ~警視庁付属犯罪資料館、通称「赤い博物館」の館長・緋色冴子はコミュニケーション能力皆無だが、ずば抜けた推理力を持つ美女。そんな冴子の手足となって捜査を行うのは部下の寺田聡。過去の事件の遺留品や資料を元に難事件に挑む~ 2015年に単行本として出版された本作が、地上波ドラマ化、改稿を経た文庫版にて読了。 ①「パンの身代金」=グリコ・森永事件を彷彿させる企業恐喝事件。身代金を運んだ社長が入った廃屋から忽然として姿を消し、翌日全く別の場所で死体として発見された。真犯人はまさかの人物・・・なのだが、そこに至る過程というか動機もかなり特殊(悪く言えばこじつけ)。 ②「復讐日記」=真犯人(と目された人物)が残した「手記」が問題となる本作。「手記」といえば、作者の仕掛けや欺瞞が間違いなく施されている、というわけで本作も例外ではない。プロットとしては既視感がきついし、フーダニットは想定内なんだけど、仕掛けそのものはなかなかよく出来ている。 ③「死が共犯者を別つまで」=J.Dカー「死が二人をわかつまで」を想起させるタイトルの本作。テーマはずばり「交換殺人」。このテーマも数多のミステリー作家が挑んできたテーマなのだが、さすが作者は「そこ!」っていう部分を捻ってきている。伏線が巧妙に効いてるのもニクいけど、まぁ力技といえば力技だし無理矢理といえば無理矢理。でもよく出来てると思う。 ④「炎」=これは“子供視点”がうまい具合に処理されているのがミソだろう。しかし、現実的に可能かといえばかなり懐疑的にならざるを得ない・・・(だって、一緒にお風呂に入ってるし、子供とはいえそこで気付くでしょう!) ⑤「死に至る問い」=他の方も書かれているとおり、かなりの問題作がコレ。もちろん「動機」である。動機を抜きにしても、真犯人特定に至るロジックはちょっと飛躍しすぎだろ。(①が飛躍レベル3としたら、これはレベル6くらいだ) 以上5編。 上記のとおりで、突っ込み所もかなり多い作品。 でもいいではないか! そこを変に「丸め」てしまうと、作者らしさがなくなってしまう。 文庫版の帯には「超ハイレベルで奇想天外」と書かれてるけど、いい意味でも悪い意味でも「奇想天外」な作風を貫いてもらいたい。 でもひとつ気になったのは「○れ○○り」がトリックのポイントになってる作品が多いこと。 何回も書いてるけど、人間の目ってそこまで節穴じゃないって! そこは納得感が得られるだけの理由付けが欲しい。続編もありそうだね。 (個人的ベストは③かな。以下、②④①⑤の順) |
No.6 | 6点 | 名探偵ジャパン | |
(2017/09/06 19:01登録) 作者らしい、トリック重視の短編集です。 相変わらず無理矢理感はありますが、そこも売りなので。しかし、今回は警察官が主人公で、「密室蒐集家」のようなファンタジックな設定が薄れたリアルな舞台のため、多少の違和感は浮き彫りになってしまっています。特に最終話。皆さんご指摘の通り、あんな理由のためだけに無辜の人間を殺害せしめるとは……。確実に目的が達せられるという保証もないのに。何とかして「あれ」を奪ったほうがどれだけ容易で、精神的な負担も軽くなるかしれないはずです。 ベストは「復讐日記」です。まさかの反転劇は大いに楽しめました。 事件の内容以上に驚いたのは、「連作短編なのに大オチがない」というところでした。続編があるのでしょうか。 |
No.5 | 5点 | HORNET | |
(2016/02/20 21:39登録) 時効等で捜査が打ち切られた事件の証拠品を保管する「犯罪資料館」。自らの失態でそこへの異動を命ぜられた、元捜査一課の寺田聡の役割は、そうした事件の証拠品を事件ごとにラベルを貼って保管すること。花形の捜査一課からの「左遷」に忸怩たる思いを抱える寺田だったが、館長の緋色冴子は実はキャリアで、未解決に終わった事件を、証拠品から再検討し、真実を暴き出す名捜査官だった―。 作品は事件ごとの短編。 ①「パンの身代金」…パンに異物を混入された製パン会社の社長が、金を要求され、犯人の要求に従ってお金を持って行った先で殺害。身代金(?)は手付かず。 ②「復讐日記」…女子大生と関係をもった教授が、彼女を殺害。その数日後に教授も殺害される。女子大生の彼氏の犯行として終結した事件だったが―。 ③「死が共犯者を別つまで」…交通事故で死んだ男が最後に残した言葉。「俺は交換殺人をした…」その真相は? ④「炎」…両親と叔母(母親の妹)を火事で亡くした幼い娘。叔母の元恋人が3人を殺害し、火を放ったことになっていたが…。 ⑤「死に至る問い」…26年前の殺人事件と全く同じ状況で行われた殺人。 「密室蒐集家」ほどではないが、基本的にパズラー小説のアイデア集。謎解き主体というかほぼオンリーで、そこが嗜好の主体にある読者には歓迎されるだろう。私も好きである。 ただ、「突発的に起こったことに対応したことによる不可解状況」というパターンが多い印象。そういう手で来られると、読者としては「そりゃ看破できないっしょ」って感じになるかな。 その点、②④はロジカルで面白かった。 |
No.4 | 7点 | 青い車 | |
(2016/01/24 23:59登録) 『アルファベット・パズラーズ』の頃と比べて作者の筆力が格段に進化している印象です。一番大きな進歩はぎこちなかった伏線の張り方が巧みになっているところでしょう。『死が共犯者を別つまで』など、トリックもキレが良くなっている作品が多いです。個人的にベストはホワイダニットととして意外性のある『死に至る問い』なのですが、abc1さんの指摘を読んでなるほど、確かにキツイところもあるな、と苦笑してしまいました。それでもサプライズに徹した作者の心意気は素晴らしいのでこの点数。 |
No.3 | 4点 | abc1 | |
(2016/01/08 15:41登録) (ネタバレあり) 意外な真相を用意しようという情熱はビンビン伝わって来るし、実際何度も驚かされたのですが、物理的は可能かも知れないけど、人間心理的にあり得ないという話が多くて困惑しました。 一例として最終話についてだけ述べますが、自分と父親に血縁関係があるかどうかを知るために、殺人まで犯すというのはさすがにないでしょう。犯人はずっと昔に人を一人殺していて、ハードルは下がっているのでしょうが、昔の事件は幸運にも隠蔽され、命拾いをしています。 それをわざわざ、父親との血縁関係を知るためだけに、罪もない人をもう一人殺すというのは……。 息子を虐待してしまうのを止めるためと説明されてはいますが、刑務所に入ってしまったら虐待どころか、そもそも息子と会えなくなります。息子も殺人犯の子供として今後どんな苦労をすることか。 親としてこの選択肢はあり得ません。そもそも〈自分と息子〉の間には血縁関係があることがはっきりしているのですから、今さら〈自分と父親〉の間に血縁関係があろうがなかろうが、自分と息子との関係は変化ないと思います。 |
No.2 | 5点 | yoshi | |
(2016/01/03 01:42登録) ようやく大山誠一郎の読み方がわかって来た。 ようするに「普通人間はこんなことしねえよ」とか 「こんな動機で人殺しはしねえよ」 などと思ってはいけないのですね。 それと最終話以外は全て物証がひとつもないのですが、 犯人は雪女の推理に異を唱えてはいけないのですね。 パズラーとしては充分楽しめました。 |
No.1 | 7点 | まさむね | |
(2015/12/20 23:40登録) 閑職である「警視庁付属犯罪資料館」の館長を務める美人キャリアと、凡ミスから捜査一課を追い出された巡査部長。このコンビが次々と過去の事件の真相を解明していく…と、超要約してしまえば、警察小説と言えなくもないのですが、中身は完全な本格ミステリ。どの作品も想定以上の着地を見せてくれましたし、ロジックも良。高水準な短編集と言えましょう。マイベストは、作中作の使い方が光る「復讐日記」か。 |