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ミステリの祭典

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魔眼の匣の殺人
剣崎比留子シリーズ

作家 今村昌弘
出版日2019年02月
平均点7.48点
書評数33人

No.13 8点 青い車
(2019/06/27 07:39登録)
 前作以上に地味な印象ですが、予言と人間心理を中心に展開される推理やラストサプライズなど、作者の力量を裏付けた秀作だと断言できます。腕時計の推理もいいですが、何といっても穴が無いよう随所で丹念に説明をしている辺りが強みではないでしょうか。ロジックを重んじているといっても、派手さを志向する青崎有吾氏とは違い堅実で手厚いタイプといえます。今後のミステリ界の新鋭として続編を強く期待。

No.12 7点 パメル
(2019/06/26 18:50登録)
いきなり余談ですが、前作の「屍人荘の殺人」映画化決定おめでとうございます。小説が面白かったら、映画も面白いとは限りませんが見てみたいなと思っています。
クローズドサークルを舞台に、本格ミステリにオカルト要素を組み込んでいる。この配合が、とても良いバランスに思える。
予言に囚われた者たちの殺人劇を解き明かしていく探偵役の剣崎。ロジックがアクロバティックすぎる気もするが、張り巡らされた伏線で一応納得。最後にひねりをきかせ、事件の奥底を掘り下げるのも良い。
前作に比べると、インパクトに欠けるしラジオドラマ的な部分もあるが、ロジックは一段と緻密を極め、本格としての味わいは濃い。フーダニットとしては、前作を上回るのではないだろうか。
ラノベ調な会話など苦手な部分はあるが、この作者は設定のアイデアが抜群に優れているので、しばらく追っていこうと思う。

No.11 7点 makomako
(2019/06/02 08:31登録)
屍人荘の殺人がとてもよかったので、期待して読みました。
 なかなか良かった。
 はじめはかなりオカルトチックな感じでしたが、次第に本格推理小説へと展開が進みます。オカルト話が苦手な方でも巧みな展開なのできっと楽しく読めると思います。
 読んだ後で考えると結局オカルト的なものに縛られたお話となっているのですが、あまり違和感はなかった。作者の物語の紡ぐ能力が高いのでしょう。
 最初の作品の評価が高いと読者としてはさらに素晴らしいもの、最低前作と同等のものを期待してしまいます。本作品は決してできの悪い作品ではなく、かなり良くできた、しかも面白い作品と思いますが、期待した分評価は多少のマイナスとなってしまいました。
 この調子だとこの次のお話も望めそうです。
 こういったお話はシリーズ化してくると次第に内容が緩んでくることが多いのですが、次作もがんばってぜひ私たちを楽しませてくれる作品を。
 作者に期待しております。

No.10 6点 蟷螂の斧
(2019/05/21 22:34登録)
緊張感がなかったことが残念。それは葉村譲視点に起因するものと思います。彼は前作で殺人不感症におちいっています。よって彼が殺人に関し、ハラハラドキドキしなければ、読者も同様にハラハラドキドキしません。動機は新機軸で新鮮なのですが、いま一つ納得性に欠けていました。一人の動機であれば、まったく問題ないのですが・・・。本作の場合、ご都合主義と言われても致し方ない。光っている点は、時計に関するロジックですね。まあ、前作が強烈過ぎたので、それと比較して本作はこの点数で。

No.9 7点 初老人
(2019/05/12 13:18登録)
恥ずかしながら、前作の存在を見聞きしていたにも関わらず、最新作のこちらを先に読んでしまいました。なので、評価としてはこの作品単独のものになる事をお許し下さい。
実行犯とその共犯者は比較的容易に予想出来たし、地下室からの白装束の怪人物の消失も解を導き出せた。しかしながら、時計の針のロジックには唸らされたし、最後の◯◯◯◯にはすっかり騙されてしまった。
一つ難を付けさせてもらうとすれぱ、施設についた後の急拵えの計画がそんなに上手く行くのか疑問である。
何はともあれ、面白かった。

No.8 9点 sophia
(2019/05/08 19:43登録)
前作と同じくクローズド・サークルものの傑作ですが、今回の話は論理クイズのようでちょっと難しかったです。この作品の良さは初めて読んだときよりも再読したときの方が分かるかもしれません。
中盤までオカルト話ばかりで、人為的な殺人事件はいつ起こるのかと気を揉んでおりましたが、後半に差し掛かってついに起きた事件以降伏線のオンパレードで一気にスピードアップ。そして解決編後、最終盤のもうひとひねりは三津田信三の某作を思い出しました。手記に隠された伏線が見事。
一番に死ぬだろうなと思った人がやはり一番に死んだのは少し笑えました。

No.7 7点 名探偵ジャパン
(2019/05/02 18:21登録)
他の評者の方も書いていらっしゃる通り、本作を執筆、発表するにあたり、作者は相当のプレッシャーを受けていたと思います。結果、上梓された本作は、受け続けていたプレッシャーを、そのまま同等の反作用として力に変えたかのような、見事な出来栄えを見せたかと思います。前作の受賞、評判はフロックではなく、間違いのない実力によるものだと世間に知らしめました。

ただ、前作よりも1点評点を落としたのは、二作目ということで前作ほどのインパクトがなかった、という理由もありますが、扱われているテーマが「予言」という、人知を超えた能力であったということもあります。
予言ですよ、予言。これはもう、前作のあれとは違い、科学技術や理屈でどうこう説明が付けられる領域をはるかに突破してしまっています。「予言」の存在を認めてしまったら、ほかの超能力の存在を一切否定できなくなるのでは?
例えば瞬間移動とか、時間停止とか、そんな能力者が出てきたら、アリバイも密室トリックもありません。そういった物理的に作用する能力でなくとも、他人にニセの記憶を植え付けるとか、人の心を読むとか、そんな超能力を持った人間が、この作品世界に存在する可能性が否定できません。
「この作品世界に予言はあるけど、瞬間移動はない」「この世界には予言以外の超能力はない」誰がそれを宣言、証明できるのでしょう。予言があって瞬間移動がない理由が見当たりません。それを証明するのは作中レベルからは不可能で、作者が作品外のメタレベルから「予言以外の超能力はないよ」と宣言するしかないでしょう。

超能力の存在が肯定されてしまった以上、今後このシリーズでは推理を行うにあたって、他のあらゆる超能力の存在を考慮しなければならなくなりました。大きな足かせになってしまわないか心配です。

No.6 8点 まさむね
(2019/05/01 22:10登録)
 デビュー作「屍人荘の殺人」が大評判になっただけに結構なプレッシャーだったと思うのですが、心配ご無用とばかりに、引き続き質の高い作品を発表してくれました。
 犯人は比較的判り易いような気がしますが、本質がソコだけに置かれているものではないので、ご安心(?)ください。前作ほどの重量感はないものの「未来視(予言)」という特殊設定を巧く活かしたロジックも魅力。終盤の反転も綺麗に嵌っています。重層的に楽しめると思いますね。
 作者の本格愛と、次作に繋げる意気込みも評価して、1点加点したこの採点とします。次作も楽しみだなぁ。

No.5 8点 虫暮部
(2019/04/16 11:54登録)
 正直、『屍人荘の殺人』は単発の打ち上げ花火だと思っていた。変な話を思い付いた人が偶然それなりの筆力も有していたという印象で、一作品としては面白かったものの、それが次回作の品質や作家としての存在意義を保証するとまでは評価出来なかったのだ。その点、作者に謝らなくては。超常現象アリの世界観によるロジックは見事。文章が無難、ではあるが、そういう部分で引っ張る読ませ方は意図していないのだろう。
 ヒルコという名をついエビスと読んでしまうのが困ったところ。

No.4 7点 人並由真
(2019/04/15 21:57登録)
(ネタバレなし)
 途中で止められず、眠い目を擦りながら夜中の3時過ぎまでかけて読了した。

 殺人に至った動機の形成についてはフツーの感覚ではイカれているといえるものなのだろうだが、ここまで煮詰めたこの設定の中なら、確かに犯人の思考のロジックとして整合している。
 読み終わったあとホワイダニットの部分を何回も反芻し、どっかにツッコむ隙がないかと考えたが、こちらが思いつくレベルのことには悉く先回りした解答が用意されている。
 時計の文字盤のくだりや、最後のどんでん返しも含めて、作者のミステリ愛は前作以上に感じた。
 しかし第三作のハードルがかなり上がってしまったなあ。焦らないでゆっくり続刊は書いてください。

No.3 8点 HORNET
(2019/04/07 16:40登録)
「屍人荘の殺人」で鮎川哲也賞を受賞し、華々しいデビューを飾った著者のシリーズ第2作。
 前作の娑可安湖での事件以来、懇意となった葉村譲と剣崎比留子。神紅大学ミステリ愛好会として細々と活動を続ける2人だったが、そんなある日、葉村があるカルト系の雑誌に娑可安湖での事件が予言されていたという情報を得る。記事には、その予言者は「M機関」という、戦後秘密裏に超能力研究を行っていた機関に関わりがあるとも書かれており、それは娑可安湖の事件で出てきた「班目(まだらめ)機関」ではないかと2人は色めき立つ。真相を探るため、班目機関の研究施設があったとされるW県の山奥の村に2人は向かう。
 ところが向かった山奥の村には、住民が人っ子一人いない。たまたま同じ地を訪ねてきた人たちと村を巡るうち、問題の研究施設には「サキミ様」と呼ばれる予言者の老婆がおり、彼女が「11月最後の2日間に、この地区で男女が2人ずつ、4人死ぬ」と予言したため、村人たちは皆出ていったのだという。予言に驚いている間に、地区へのたった一つの出入り口である橋が燃え落ち、葉村たちは閉じ込められてしまう。クローズドサークルの中、予言にならって人が次々と死んでいく―

 クローズドサークルの中に、違う色のミステリトリックをかけ合わせていて、その効果はあったと思う。動機の面から考えると、そんな短い時間の中で初対面の人間同士がそんな契約交わせるのかな・・・とは思うけど、理屈としては筋が通っており、ロジックに瑕疵はないと思えた。真犯人が暴かれた後の最後のどんでん返しこそ見もので、事件の背後にある長年の確執には背筋がゾッとする思いだった。
 期待を裏切らない秀作だった。

No.2 8点 ミステリ初心者
(2019/03/31 03:35登録)
 ネタバレをしています。

 絶対に当たる予言という実際にはありえない超常現象?を組み込んでの作品です。しかし、その予言の性質を丁寧に説明されていたり、共犯者の存在を探偵が明かしていたり、変則的な要素が入っていても本質は端正な本格推理小説でした。私は、時間をかけて読み返して、そこそこ真相を推理する事が出来ました(細かい多数の部分ははずしており、胸を張って当てたとはいえないが)。私は、普段当てられないことが多いため、難易度はやさしいかもしれません。
 サキミが、十色勤の日記のサキミとは別人だと予想していました(ねずみ関連で)。しかし、十色への復讐のための自殺とは予想できませんでした。話の流れ的に、女性であり、日記に登場する人物である、ダウジングのハルか誰かかと(笑)。岡町君がサキミとは思ってませんでした(笑)。思えば、十色勤の側近であり、女性の可能性がある岡町君以外にはありえないのですが、十色勤は鬼畜ですね・・・。十色勤の"サキミがこの子(久美)が死ぬ予言をしてしまったら・・・"という懸念ですが、結果的にサキミの孫に対して当たってしまったのが皮肉的で良い伏線でした。岡町=サキミが予想できたのなら、自殺未遂の意味やフェルト人形にも気づけたかもしれず、悔しいです。フェルト人形に関しては、論理的に当てられると解決編でわかり、より悔しいです。

 以下難癖。
 十色の絵を見た王寺は、葉村の部屋にねずみの屍骸をおき、より絵の状況に近づけ葉村を殺そうとした。絵は必ず当たる。しかし、このとき、ねずみの屍骸をすべての部屋から出してしまったらどうなのか? 矛盾してしまう。 どこからかねずみが現れて死ぬのか? ただ、小説内に十色の能力の前例は上げられていて、読者に説明がなされているため、フェアだと思います。
 サキミ毒殺事件について。毒を入れるチャンスや、扉の前の赤いエリカなど、はじめから自殺→別の人間が花を撒いたにおいがぷんぷんしました。しかし、"十色の絵の状態を、現実側が近づけることで間接的に殺せる"考えが頭にはなかったため、最後まで撒かれた花の解釈に困りました(笑)。
 ヒルコ自殺未遂により、朱鷺野は安全圏に入ったと思った。それにより、交換殺人を拒否し口論になったと思いますが、そのあとの王寺の行動がやや不可解。結局王寺は、朱鷺野が交換殺人に応じた形にしていますが、それだと朱鷺野のロッカーの鍵の件が嘘だとばれてしまい、交換殺人をやっていたこともバレると思います。また、朱鷺野が即死ではなく、気絶だったというこは、読者からしたら推測が難しいとは思います(私が鈍くさいだけ?)。

 個人的には、前作よりもさらに不満点が少ないです。絶賛された前作からの2作目のため、難しい面もあったかもしれませんが、今作も上質な本格推理小説であり、いよいよ作者の力量が本物だと確信しました。
※追記:う~ん、やはり素晴らしい作品なので、一点上げて8とします(笑)

No.1 7点 はっすー
(2019/02/26 12:47登録)
あと二日で、四人死ぬ――
ミステリ界を席巻した『屍人荘の殺人』シリーズ待望の第二弾!

その日、“魔眼の匣"を九人が訪れた。人里離れた施設の孤独な主は予言者と恐れられる老女だ。彼女は葉村譲と剣崎比留子をはじめとする来訪者に「あと二日のうちに、この地で四人死ぬ」と告げた。外界と唯一繋がる橋が燃え落ちた直後、予言が成就するがごとく一人が死に、閉じ込められた葉村たちを混乱と恐怖が襲う。さらに客の一人である女子高生も予知能力を持つと告白し――。ミステリ界を席巻した『屍人荘の殺人』シリーズ第二弾。

待ちに待った『屍人荘の殺人』の続編
前作の「アレ」の次は予知・予言という事で一見パワーダウンしたかのように見えますがむしろミステリ的には今作の方が出来は良いかと思います
特に特殊な状況下の設定を上手く使ったロジックは前作以上に凝っています
ただ特殊な状況下での犯人のとった行動の動機がイマイチ理解しづらかったり偶然が重なったりなどの気になる点も前作から引き継がれていたので点数は7点としました

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