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ミステリの祭典

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毒入りチョコレート事件
ロジャー・シェリンガム、アンブローズ・チタウィック

作家 アントニイ・バークリー
出版日1962年01月
平均点7.12点
書評数41人

No.21 7点 ボナンザ
(2014/04/08 21:32登録)
この試みは中々おもしろい。
最後のブラックなオチまでさすがはバークリーだと感心させられる。

No.20 8点 アイス・コーヒー
(2014/01/18 18:24登録)
「犯罪研究会」の6人の会員たちが実際に起こった「毒入りチョコレート事件」の推理対決を行う≪理論的推理小説≫。なんといっても目玉は各々の会員たちの白熱した推理討論だが、自分は推理自体よりそのキャラクターに興味をひかれた。様々な社会地位の(作家がやたらと多いことは否めないが…)個性的な登場人物たちが繰り広げる、珍妙な推理や議論は社会の縮図といっても過言ではない。
また、意味深長なラストも含めて、野次馬精神丸出しの「ミステリ」に対する皮肉が見える。犯人の設定もしかり。この流れがアンチ・ミステリ的な展開を生み出したのかと思うと面白い。

推理の点は、証拠が読者に正しく提示されていないうえ、各々が数多くの証拠を無視しているために評価しづらい。一応事件には決着がついたように理解したが、合点がいかないところもいくつか。ただ、中々重量感があってミステリ好きならそれなりに楽しめると思う。(ところで、この作品の前に書かれた姉妹篇の「偶然の審判」は読んだことがあるはずだが、ほとんど忘れてしまった。残念。)

No.19 5点 蟷螂の斧
(2012/04/19 12:17登録)
読んでいてワクワク感がなかった。納得できる推論が、次々と崩されれば面白いと感じたかもしれませんが、納得できない推論が崩されても・・・と思ってしまいました。この手のもの、「プリズム」もそうでたったのですが、どうも肌に合いません。推論で印象に残っているのは「世界の終り、あるいは始まり」あたりです。


(追加)多重解決ものに拒否反応が出てしまった作品(苦笑)。この原作である短篇「偶然の審判」(世界短編傑作集3)は9点なんですけど。

No.18 7点 HORNET
(2012/01/29 10:46登録)
 チョコレートによる婦人毒殺事件の真相を、「犯罪研究会」のメンバー6人が順に推理する。それぞれの推理がまさに六者六様で楽しませてくれる。物語全体が事件の謎解きに終始しており、無駄のない文章であることも読み進めるにあたって心地よかった。
 「理論的推理小説」と銘打ってあるように、6人のメンバーが順に推理を開陳することで、フーダニットのロジック品評会のような様相を呈しているため、ロジックを楽しむタイプの読者にも好まれるのでは。
 そのロジックは、「こういうことをするのは・・・な人だ」的な、多分に主観的な要素もあるが(例えば3人目の発表者・ブラッドレーが挙げた犯人の条件など顕著である)、物理的・客観的な視点でそれらの難点を指摘することは、こういう古典作品にはそぐわない。彼らのいわば「プロファイリング」を受け入れたり、時には疑問を抱いたりしながら、味わうことに楽しみがある。主人公のロジャー・シェリンガムが4番目で、それさえも覆されていく展開に作者の独創性も感じ、今読んでも十分に楽しめる一冊だと思う。

No.17 7点 touko
(2011/04/06 21:41登録)
1929年作の元祖推理合戦もの。

どれが正解でもよいのに、作者の匙加減でいくらでも操作できるという、本格ミステリへの批評精神で書かれたものとのことですが、作者が恣意的にこれしかないという結論に持っていくのは、何もミステリに限った話じゃないし、いかにそれをエンタメとして見せてくれるかが重要なんでしょうねえ……少なくとも一般読者にとっては。

この作品は、一堂に介したメンバーが、前の人の推理を覆すことだけを目的にとうとうと持論を述べるというシンプルな形式かつユーモラスな人物造形なだけに、つい森見登美彦の小説に出てくる詭弁部(詭弁のための詭弁を弄することが目的というサークル)を思い出してしまいました(笑)。

No.16 7点 測量ボ-イ
(2011/02/20 14:50登録)
チョコレートに仕組まれた毒殺事件を「犯罪研究会」なる
6人のグル-プがお互いにその推理を披露しあい、一見そ
のどれもが解釈として成り立ちそうに見えます。
ところが大部分の人の推理は別のデ-タによって否定され、
その中の一つだけが残る・・「探偵小説」による名探偵の
推理も作者の匙加減一つでどうにでもなる、後日「アンチ
ミステリ」と称される先駆的作品です。

僕自身もどの推理に魅力を感じるかと聞かれたら、4番目
(人名は敢えて書かず)と答えるでしょうね・・それが否
定されるのですから、まさしくアンチ・ミステリ、後のこ
の手の作品に大きな影響を与えたと同時に、このまさに黄
金時代の初期にこの性格の作品が書かれていたことに驚嘆
しました。

採点は正直6点クラスに感じますが、歴史的意義を勘案し
てプラス1点。

No.15 7点 mini
(2011/02/12 09:58登録)
昨日11日に創元文庫から「第二の銃声」が刊行された
国書刊行会版で既読だった方も沢山居られるとは思うが、名作との噂を横目で見ながらハードカバー版なのが唯一の読まない理由だった方々にとっても今回の文庫化は歓迎でしょう

「第二の銃声」は言わばバークリーという作家が正しく理解される契機となった作だが、これに対しずっと以前から文庫で読めたにもかかわらず誤解を招く元だったのが「毒チョコ」だ
「毒チョコ」が普通に読めた時代には本格に対して保守的な気風が蔓延していて、今でこそバークリーがどんな作家なのか知られているが、当時は独特の捻くれた作風は理解されてなかったようだ
なんと言っても「毒チョコ」がユニークなのは、名探偵のはずのシェリンガムの推理が多重解決の6人中4番目という中途半端な順番にある
これがさあ例えば、6人中5番目というのなら分かる、名探偵の推理で決定版かと思ったら最後に一捻り、というパターンだったら結構有りがちなんだよね
しかし4番目って中途半端だよな、普通の作家なら名探偵をこんな順番に置かないはず、5番目では無く4番目だと全体の6人の中に埋もれてしまい、名探偵としての存在価値が無くなってしまう
実はそれが作者の狙いだったのでは?
シェリンガムが名探偵でありながら迷探偵でもあることは今では既に知られているが、当時の読者には不思議だったんだろうなぁ
推理合戦とはいっても6通りの解決が示された後、さぁどれが正解でしょう?というパターンではなくて、後の解決が直前の解決を乗り越えていく構成だ
しかし直前の解決を否定する根拠はいかにも後出しジャンケンである
この後出しな証拠提出に不満な読者も居られようが、そもそも作者は推理合戦を意図して無いんじゃないだろうか?
当サイトだとE-BANKERさん、kanamoriさん、あびびびさん等の書評が的を射ていると感じますね
他のバークリー作品も含めて鑑みるに、結局のところ真相なんて作者の匙加減一つ、ミステリー小説とは読者が挑戦する為のパズルなんかじゃないという事
本格全盛期の時代にバークリーという作家は、それを早くも看破していたという事なんじゃないかな
やはり”どのような作家なのか”という認識は重要である

野球の投球に例えるなら、まず一塁へ2度牽制球を投げた後、コーナーを突いて2ストライクとし、その後もう1度牽制球で一塁走者アウトにして、とどめの1球で打者三振て感じですかね

No.14 7点 白い風
(2011/01/08 17:20登録)
6人から7つの推理が出てくるのは素直に楽しめますね。
登場人物の少ないのですっきりしているのもいい。
1929年の作だから、古典の分類だね。
でも、現代でも十二分に楽しめる作品だね。
推理マニアなら4番目のシェリンガムの説が想像できるでしょうね。
ただ、この流れだと大抵最後の6番目が正解だよね(笑)
で、最後のチタウィックの説が解答でいいのかな?

No.13 8点 E-BANKER
(2010/11/27 23:15登録)
巨匠バークリーの名作。
シェリンガムをはじめ、「犯罪研究会」メンバーが「毒入りチョコレート事件」に対して、それぞれの推理を披露していく展開が面白い作品。
6名の会員の推理が1つずつ披露されるわけですが、展開的には徐々に真相に迫っていくのかなぁ・・・と思ってると、結局最後まで「真相」ははっきりせずという流れ・・・
そこはバークリーの考え方というか皮肉のわけで、結局”真相なんて作者の匙加減一つじゃないか!”ということなんですよね・・・
ということは、「後は読者で考えて!」というスタイルも有りかなと思ってしまいました。
個人的にはシェリンガムの推理に惹かれたんですが、チタウィックの推理もやはり捨てがたい。(皆さんそう思うのかもしれませんが・・・)
本作も海外ミステリー黄金期の一作として、必読の書という評価でいいと思います。

No.12 7点 toyotama
(2010/10/28 08:25登録)
シェリンガムの方が主役なのか、チタウィック氏が主役なのか、どっちなんでしょうねぇ。
「トライアル&エラー」を先に読んだ当方は、チタウィック氏重視で読み進めていたんですが・・・。
チタウィック氏の言動が、ダメおやじを思い起こさせる(笑)

No.11 8点 seiryuu
(2010/09/19 15:18登録)
雰囲気が好き。
よくもこれだけの推理法を考えたものだと思う。
個性的なメンバー揃いで面白くて吹き出してしまった。

No.10 8点 kanamori
(2010/07/20 18:27登録)
作者のほとんどのミステリでテーマとしている「アンチ・名探偵」ものでは、「ジャンピング・ジェニイ」と並ぶ傑作だと思います。
本書は、短編「偶然の審判」を下敷きに、犯罪研究会の面々による多重解決をより過剰にし、推理することの曖昧さと名探偵自体をおちょくっています。
本格ミステリに対して斜に構えた作者の姿勢は、独特のものがありますね。

No.9 7点 あびびび
(2010/06/08 15:07登録)
安易に読んでいると、どの結末でもそれで終わる可能性がある。その点はさすがによくできていると思うが、逆にいえば、ミステリのいい加減さも露呈する。

もちろん、凡人には思いつくことはできないけど。

No.8 8点 isurrender
(2010/06/07 15:59登録)
最初の事件の概要を読んだ時点でロジャー止まりだった僕からしたら見事に騙されたかなと笑
ただ真犯人を当てるのはちょっとヒントが足りないかな

しかし、本作の面白みというのはそこにあるわけじゃなく、「推理大会」というところにあると思うので、そこはあまり減点にはならないでしょうね

No.7 7点 江守森江
(2010/03/02 06:01登録)
創元推理文庫の新版を読んだのでスッキリと読みやすかった。
問題編と言うべき事件の描写が殆どなく、概要と些細な手掛かりが提示されるのみで早々に「犯罪研究会」の面々による多重解決が開陳される。
先に開陳される推理を否定しながら何転もする推理合戦の趣向は、後続の本格ミステリに多大な刺激と影響を齎し賞賛に値する。
解決編のみ幾つも揃い、各々が開陳されている時点では論理的で面白い。
しかも、前者を総括しながら最後に開陳されるチタウィックの推理は秀逸。
しかし、前者の推理を否定する証拠や論拠が多分に後出しで読者は只々開陳される推理を読まされる点は残念。
多重解決のどれもが後出し否定されなければ全て正解になりうるので、アンチ・ミステリ的ウヤムヤ感も残る。
それでも、一読の価値ある古典的名作と云える。

No.6 6点 itokin
(2009/11/03 08:36登録)
いやこいつは参った.二転三転でもややこしいのに五転六転してはとてもついていけない、話の面白さより謎解きの面白さを求める人にはいいかも知れないが私には合わない。古典の名作といわれているそうだがその後の新人作家の推理小説の書き方の教科書になったのは確かだと思う。

No.5 8点 清涼水
(2009/02/14 22:02登録)
この趣向は今でも十分楽しめる。

No.4 8点
(2009/01/25 11:49登録)
何通りかの解決を示しながら、真相に迫っていくという発想を、極限までつきつめてみた実験作、ということでしょうか。解決をふやしたため、最初の2つは単にその可能性もある、という仮説にすぎません。これくらいの仮説であれば、普通のミステリでも名探偵や警察が、途中で可能性を検討する作品は多いでしょう。
バークリーの真骨頂は、ブラッドレーの蓋然性から絞り込んでいく推理から始まります。というより、これが無茶すぎて、後の3人のまともな推理より印象に残ってしまうところが、笑えるというか不満というか。しかも、いかにもミステリ的に鮮やかで説得力のあるシェリンガムの解決まで間違いだと退けて…よくもここまでやってくれます。

No.3 9点 こう
(2008/08/31 23:14登録)
バークリー最大傑作の一つだと思います。いわゆる多重解決の先駆的作品です。
 若い実業家ベンディックスの自分のクラブに中年男爵が郵送された試供品のチョコレートボンボンを持ってくる。妻にチョコレートを買う約束をしたベンディックスがそれをもらって家に戻り妻と試食する。本人は2個、妻は7個食べた。二人ともその後倒れ、妻は死亡、中にニトロベンゼンが混入されていたことがわかる。この事件を私的な集まりの「犯罪研究会」のメンバー6人が独自の真相を持ち寄り発表する。というストーリーです。
 約80年前の作品ですが今でも色褪せない作品だと思います。この作品はバークリーの名探偵ロジャーシェリンガムの作品ですがいわゆる「名探偵の失敗」の作品として有名です。長編は10冊ありますが、いわゆる名探偵ぶった描写がされているにもかかわらずかなりの作品で失敗しておりバークリーの名探偵に対する皮肉がみてとれます。この作品が最も鮮明かもしれません。
 6つの解決も中にはお粗末なものもありますが当時のいわゆる他作家の探偵物の探偵による安易な一通りの真相に対しての皮肉がよく出ていると思います。
 尚全く同じ事件を扱った短編「偶然の審判」をできれば先に読むことをお薦めします。

No.2 9点 あい
(2008/04/10 16:53登録)
一つの単純な事件から様々な推理が飛び出しとても面白い。

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