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ミステリの祭典

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アクロイド殺し
エルキュール・ポアロ/別題『アクロイド殺害事件』『アクロイド殺人事件』ほか

作家 アガサ・クリスティー
出版日1950年01月
平均点7.78点
書評数76人

No.56 7点 斎藤警部
(2015/08/10 18:35登録)
ご他聞に漏れず、先に犯人と言うか仕掛けを知ってから読みましたが、物語が終盤に及ぶに連れ、仕掛けを知っているからこそのスリルがじりじりと突き上げて来、ポアロが眞犯人を追及する件(くだり)では本当に手に汗握るどころが汗かき過ぎで滑っちゃって握れもしない程でした。 逆に、もし仕掛けを知らずに読んだら(個人的にですが「幻の女」の場合のように)あのポワロによる眞犯人追い詰めのシーンの途中で「まさか!」と勘付いて急性のスリルに一気に襲われたのだと思います。 結末以外の部分がどうにも凡庸に感じられただけに、仕掛けを知ってしまってから読んで意外と正解だったかという気もしますなあ。


ところで、初読時全く気付かなかったのが、クリスティ再読さんご指摘の「死亡推定時刻」の件です。

(ここからはっきりネタバレ)

眞犯人が死亡推定時刻を決める医師であり、尚且つ物語の語り手でもあるという事は、当時まったく見過ごしていましたが、実は私が常々求めて止まない「悪魔的アリバイトリック」にかなり際どい所まで迫った怖るべき作品だったのではないか、と思われてなりません。 こりゃ再読しろという神のお告げでしょうか。

No.55 9点 mssk
(2015/07/03 12:08登録)
多くの推理小説が出版されている今となっては珍しくもないのかもしれないが、本作におけるクリスティの叙述トリックは非常に巧妙で緻密なものだった。
本作を読んで”やられた!!”と思った読者は少なくないだろう。私自身もその一人だった。

出版当時の推理小説界において本作はアンフェアだという批判をいくらか受けたようだが、読者に与えられるべき情報は全て与えられており、自分は全然フェアなのではないかと思う。

ABC殺人事件といい、オリエント急行といいクリスティは読者を楽しませてくれる素晴らしい推理小説家だと言えるだろう

No.54 7点 クリスティ再読
(2015/05/27 23:18登録)
皆さん大好きな古典だね、やりにくいな。まあ古典というものは、それ自体の評価と、それが受容されてきた歴史的評価と両方を相手にしなきゃいけないから面倒なんだが...

やはりハヤカワの今の版の笠井解説が一番まともな批評になっているようには思うが、評者に言わせるとこれは、「ワトソン犯人」であるどころか「ワトソン犯人を全力で回避した作品」だと思う。結果としては同じようなことかもしれないが、いろいろとワトソン犯人ではない作為をクリスティは仕掛けているわけなので、それを中心に論じたいと思う。

そのポイントとして、「犯人以外の人物による偽証がある場合、どこまでパズラーはフェアか?」という問題があるように評者は感じている。犯人(まあ共犯者も含めてだが)が偽証するのは仕方がないが、それ以外の人間の別な利害によるウソを疑わなくてはならないのならば、その嘘つきさんの証言を他の証言とつき合わせて論理的に嘘を見破る別な手間が必要になるわけで、パズラーとしてのシンプルさを大いに傷つける結果になるように感じてる。だから、本作が本当に推理可能になるのは第19章が終わってから、であるし、またこれが「一関係者の手記」であることが明らかになる第23章で、読者の推理は締め切りだ。だから19章からバタバタと隠された事実が明らかになってくる展開は、最後にワトソン的な見せ掛けの一人称小説は嘘っぱちで実はタダの手記だ...と明らかにするあたりの構成から逆算されたものなのではと思う。

というか、横溝正史の某作のように「手記の筆者だからこそ、一番怪しくてしょうがない...」というような逆の結果を生みかねないのがこのトリックなのだから、本当は「手記の筆者が犯人」なんていうのはそもそも良いアイデアなんかじゃないんだよね。それゆえ、アクロイドの創意のすべては第23章の「ワトソン犯人の回避」にかかっている、と結論してもよいと考える。

しかしね、別なアンフェアさがあることも指摘したいな。それは第一発見者が医師で犯人ならば、実は死亡推定時刻は盛りたい放題だ、ということである。どうもクリスティ本人この点に気付いているようで、「犯行は発見時から30分以前」という、一番重要な上限を設定しない(かなり不自然な)書き方しかしていないし、検屍審問の証言も回避している。まあここで「発見時から30分~60分前」とか盛っちゃうとさすがにアンフェア度が上がりすぎる...と懸念したんだろうね。医者設定はやめたほうがよかった気がする。

結論めいた言い方をすると、この作品は今更に「意外な犯人でびっくりしましたぁ」とか「こんなのアンフェアだ!」とか読むんじゃなくて、このように「時間」の話が重要なのだから、犯行推定時刻がどんどんと繰り上がっていくあたりに、スリルを感じるというような読み方を本当はすべきなんだろうね。そういうのが「今更に古典を読む」読み方かもしれないよ。

No.53 8点 初老人
(2014/06/28 03:41登録)
ネタバレあり


初読時はかなり楽しめた記憶があるが、ある登場人物が○○いじりが好きな事についてさらりと触れられており、おぼろげながら犯人の正体に思い当たったのには嬉しくもあり反面拍子抜けした面もあった。その当時はこの作品が叙述トリックの最高峰であるという知識すらなかったので、後々読み返してみた時この作品を書き上げるにあたりいかに細心の注意が払われていたのか、という事を知り初読時にもっと読み込んでいれば新鮮な驚きに浸る事が出来たのではないか、と思うと中途半端に浅い理解の仕方しか出来なかった当時の自分がなんとも口惜しい。

No.52 10点 sophia
(2014/05/30 23:28登録)
大技だけど論理的に犯人を指摘することができるようになっている。
だからこそポアロが犯人を指摘した後の「死のような沈黙」が効いてくる。

No.51 8点 ボナンザ
(2014/04/08 17:39登録)
ある意味リトマス試験紙のような作品。
受け入れられるかどうかでその人の方向性が見えるだろう。

No.50 3点 ウエーバー
(2014/03/30 01:00登録)
読んだのは20年以上前。
読み終わった時の不快感。自分が純粋だったのかな?意外な犯人は受け入れられなかった。

No.49 9点 メルカトル
(2013/11/06 22:13登録)
私が初めて本作を読んだのは確か中学の頃だったと思う。読み終わった後の衝撃は今でも忘れられない。しばらく呆然として何も手につかなかった覚えがある。
勿論その頃は叙述トリックなどというものは全く知らなかったので、その驚きは読んだ方なら想像できると思う。まだ年端もいかない少年がこんな奇天烈なトリックを体験するのは、読書人生でそう何度もあるものではない。
ただ、殺人事件そのものの真相は割と平凡で、こうしたトリックに慣れてしまった現代の読者には物足りないかもしれない。
しかし叙述トリックの先駆者としての歴史的価値は十分に評価されるべきであろうし、クリスティ畢生の大仕掛けだと思う。

No.48 8点 TON2
(2012/11/04 01:56登録)
25年ぐらい前に子どものお守りをしながら時間を見つけてチョコチョコと読みました。かなり真剣に読み、犯人は誰かと考えましたが……最後の一撃にやられました。トリックを知っていて再読しても、十分に楽しめる作品です。「そして誰も……」「オリエント……」そしてこの作品と、こうしたトリックを考えたクリスティーは本当にすごい。

No.47 10点 ミステリーオタク
(2012/08/24 23:56登録)
これは驚いた

No.46 10点 ミステリ初心者
(2012/06/20 10:50登録)
 ネタバレあります

 

 この本を購入したとき、問題作!とかのアオリが書かれた帯がありました。何にも問題じゃありませんでした。 フェアでした。

 後の高評価ミステリはこの作品の発想が元になっているものが多い気がします。さらに、この作品が一番完成度が高いですね。それだけでも10をつけたい。想像オチ、夢オチタイプのネタもこの作品が元だと思う。なんか、蒸気機関の発明みたい。

 そういえば、初めての叙述トリックはこの作品でした。世の中には頭のいい人間がいるものだなぁと感動しました。

 悪い点(気に入らないこと)を上げるなら、叙述トリックのばらし方。途中でバラしてしまっている感があり、それにあわせて犯人もバレます。そういう点では綾辻さんの例の作品のほうが上です。

No.45 7点 ムラ
(2012/04/09 08:26登録)
叙述トリック云々以前にポアロが犯人へとたどり着くまでのプロットと事件の仕掛けを純粋に楽しむことが出来た
とくにポアロの真相を隠しながら誘導する手法は読者視点でも見ていて楽しい。
事件の謎を主軸に格人の謎を徐々に解いていく感じなので最後まで読んでいて飽きなかった
惜しむべくはキャロラインの性格に難ありということだが、点数には特に関係なし
主点の医師を始め全体的にさっぱりした感じで書かれてたのでそれも個人的な読了感の良さに起因してるかも

No.44 8点 E-BANKER
(2012/03/02 22:28登録)
650冊目の書評は、例の「仕掛け」であまりにも有名な作者の長編6作目で。
確か大昔にジュブナイル版で読んで以来、超久々に再読。

~深夜の電話に駆け付けたシェパード医師が見たのは、村の名士・アクロイド氏の変わり果てた姿だった。容疑者である氏の義子が行方をくらませ、事件は早くも迷宮入りの様相を呈し始めた。だが、村に越してきた変人が名探偵エルキュール・ポワロと判明し、局面は新たな展開を見せる。驚愕の真相でミステリー界に大きな波紋を投じた名作~

「さすが!」としか言いようがない。
計算され尽くした作者の技量や構成力にはただただ脱帽ですね・・・
ラストで詳らかにされる、ポワロの推理にはやはり相当のインパクトを感じざるを得ませんでした。
例の「フェアかアンフェアか」という論争については、ミステリーそのものが成長期であった頃の話であり、現代の読者にとっては特に気にする必要はないはず。

果たして本作の「仕掛け」は叙述トリックなのだろうか?
無論、真犯人によって手記にまぎれて意図的に隠されていた箇所もあり、その点でちょっとアンフェアっぽさは残るのだが、真犯人を特定するロジックは読者にも十分解き明かせるものである。(デイクタフォンの件なんかは秀逸だと思うが・・・)
要は、容疑者に視点人物を含めるかどうかというところが「鍵」なのだが、数多のミステリーを読み続けてきた今だからこそ、オリジナルである本作の「スゴ味」が伝わってくる。

とにかく、大作家クリスティのすごさを味わうには外せない1冊なのは間違いなく、後世に残すべき作品という評価。
(「仕掛け」を知っててここまで面白く読める作品というのもなかなかない)

No.43 9点 ようじろう
(2012/02/15 19:48登録)
誰にも文句は言わせない。
戯言を吐くなら自分で書いてみろ。

はじめてこのトリックを生み出した著者は偉大であり、文句なしの最高傑作であることは断言できる。

No.42 10点 蟷螂の斧
(2012/01/27 16:24登録)
(再読)今では本作をアンフェアという人はいないと思っていたら、この書評を読んで、何人かいらっしゃるのでびっくりしました。歴史的観点(万人が認めているという意味)から、独創的なアイデアは秀逸であると思います。犯人を覚えていたにもかかわらず、大変面白く、最後まで一気に読むことができました。さすがクリスティーとの感をあらためて強くしました。

No.41 10点 卑弥呼
(2011/08/18 23:09登録)
悪意ある書評やミステリファンのお陰で例の部分は知っていましたが、それでも楽しめました。
クリスティっぽさが前面に出ていて、好きな人は登場人物紹介ですでに悶えるのでは。

No.40 9点 take5
(2011/08/11 00:01登録)
叙述トリックの世界を、生まれて初めて知るのは、この作品だったという方は多いと思います。
私は中学校の先生に教わって10代の早い頃に読みました。
(国語の時間に1人称・2人称・3人称の学習として)これは幸せなことですね。
その思い出の点数が9点です。
採点とはそういうものでよいと信じます。

No.39 4点 misty2
(2011/04/30 08:07登録)
有り難く拝読。
この系統なら、「仮面山荘・・・」の方が好み。
犯行者の目星がすぐについてしまう。
あと、超訳判を考えてはどうか。会話文がしらけ過ぎ。

No.38 9点 好兵衛
(2011/04/23 15:52登録)
ミステリを読み始めたときに読んでおいてよかった。
と思える作品。(なので満点+1点です)

クリスティーの作品は斬新で驚かせてくれる物が多い。
当時はミステリを読んでいる人、あまり読んでいない人
どちらも楽しめる作品だったと思う。

本を読んでいて、こんなに驚いたことはあまりない。
「?」の使い方が本当に上手いですね。
驚き、トリックに関してはクリスティーはパイオニアだと思う

代表作は沢山の子供達に引継がれて、
今だに亜種を生み続けている。
そのくらい、影響力のある作品。賛否両論ですが

自分はこういった形、大好きです。
あと、早めに読んでおいた方がいいです。

No.37 9点 HORNET
(2011/01/08 21:34登録)
 本当の自分の読後「感」ではこの点数ではありません。なぜならあまりに有名で,結末を知ってしまっていたからです。分かっていつつ読み,そして読後の「知らずに読んでいたらどんなによかっただろう・・・!」という悔しさが,すなわち私のこの作品の評価であり,この点数です。
 未読の方,是非この作品ページの「ネタバレ」からは目を背けてください。

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