皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
レッドキングさん |
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平均点: 5.27点 | 書評数: 888件 |
No.34 | 4点 | 関税品はありませんか?- F・W・クロフツ | 2024/06/12 21:50 |
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クロフツ第三十四作。密輸の為に船舶旅行業を始める犯罪グループの倒叙譚で、海中の遺体捜し「黄金虫」付き。これはクロフツの最終作にして「白鳥の歌」。
フリーマン・ウィルス・クロフツ・・・結局のところ、処女作「樽」が名作として知られるだけで、我が国のみならず(おそらくは)本国ミステリファンからも興味を持たれること稀な・・にも拘らずミステリ史に残るべき「大」作家。主役警官のみならず、犯人・被害者・共犯・脇役ことごとくが「普通の人」で、ありふれているが犯行に至らざるを得ない説得力ある動機、ミステリマニアの耽美刺激をそそる事ない「平凡」な殺人、愚直な捜査手順の描写、脇役を含め登場人物達の丁寧な経歴叙述、主に鉄道と船のトラフィックネタの頻出、あまり面白くない地味なアリバイトリック、公平な正しき人だらけの官憲達・・と、同じ様な作風を繰返し続けた。齢四十から執筆を始め、数十年間、ほぼ毎年、ほぼボルテージの下がらない(上がらない)ミステリを拵え続けたその人生に、惜しみない賛辞を! |
No.33 | 4点 | フレンチ油田を掘りあてる- F・W・クロフツ | 2024/05/01 20:43 |
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クロフツ第三十三作。ん?油田を掘りあて?、フレンチ、警視辞めてゴールドラッシュ山師にでも転身?・ではなく、油田をめぐる一族の殺人事件の「真相当て=油田掘り当て」だった。ナイスネーミングタイトルね。ラスボス操り真相なかなか面白く、毒殺~放火あたりの倒叙サスペンス具合もよく・・列車ネタは相変わらず、しょぼいトリックも相変わらずだけどね。
クロフツもあと一作で終わりかぁ。何か一抹の寂しさが・・もう読み返すこともないだろしなぁ(クロフツだし(^^)) |
No.32 | 4点 | フレンチ警視最初の事件- F・W・クロフツ | 2024/04/19 23:14 |
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クロフツ第三十二作。如才なく世渡りする半汚れ色男と、少し愚かなお人好し女。犯罪には違いないが、断罪するにはイジマし過ぎる男女のピカレスク譚・・かと思いきや、自殺以外考えられない、「開かれた密室」殺人トリックのミステリへと、急速な方向転換。「密室」不可能トリックは、クロフツでなければ、リンゴぶつけたくなるレベルの後出し「機械」トリックで、ま、クロフツだからね。「判断材料は全て出したよー(犯人、当ててごらん)」てな、読者挑戦状付き。(ん、全て開示してるか?) |
No.31 | 2点 | 少年探偵ロビンの冒険- F・W・クロフツ | 2024/03/22 21:34 |
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クロフツ第三十一作は、少年向け(ジュヴナイル言う奴ね)探偵物。といっても、そこはクロフツ、十八番どころか三十六番位の鉄道ネタが、相も変わらず執拗に詳細にマニアックに、ブレない言うか、大人げない言うか。「トムソーヤーの冒険」「スタンドバイミー」の「かつて少年だった君たちへ・・」郷愁センチメンタリズムには、遥かに遠かったが。 |
No.30 | 2点 | 列車の死- F・W・クロフツ | 2024/02/28 23:14 |
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クロフツ第三十作。タイトルの「列車の死」、”列車「での」死" (On a train)・・十八番トラベル犯罪物・・ではなくて、”列車「の」死" (Of a train)・・まんま列車が死んじゃう話・・だった。英米にとって、ヒトラーとの原爆開発競争は、愛国どころか死活問題なの分るが、落とされた日本国民としては、素直に感動はデキンよ、フレンチの「特攻」。 |
No.29 | 2点 | 見えない敵- F・W・クロフツ | 2023/12/31 01:54 |
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クロフツ第二十九作。第二次世界大戦下、武器庫から盗まれた手榴弾による遠隔爆破殺人。動機とアリバイ時間表と手段と・・これはもう確実に、"晩(末)期クロフツ"と言うべきであろう・・ |
No.28 | 3点 | 二重の悲劇- F・W・クロフツ | 2023/11/27 22:21 |
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クロフツ第二十八作。狷介な資産家の遺産相続に絡んだ、身代りアリバイトリック付き連続殺人。序盤1/3は倒叙ノワール、中盤にフレンチ「正」叙本格に転回し、終盤は交互カットバックサスペンス。安定のオモシロ(つまらな)さは流石。 |
No.27 | 4点 | チョールフォント荘の恐怖- F・W・クロフツ | 2023/10/09 21:32 |
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クロフツ第二十七作。資産家弁護士の撲殺事件。互いの利便の為に弁護士と「契約」再婚した女を視点に、女の愛人や、十二分な動機持つ被雇用者等のWhoダニット。「本格派」でも「社会派」でも「変態派」でもない、「人生派 (名言やね解説者)」ミステリ。フレンチ視点転回の後半はいつものパターンで・・わが「本格派 σ( ̄^ ̄) エッヘン!」採点基準では・・
せいぜいこの点数かな、「人生派」。 |
No.26 | 5点 | 蜘蛛と蠅- F・W・クロフツ | 2023/08/22 22:05 |
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クロフツ第二十六作。邦題「蜘蛛と蠅」。蜘蛛=金貸し・恐喝者。惨めな蠅達が絡み取られる蜘蛛の巣は、賭博と情事と「好事魔多し」・・いつの世も。十八番のアリバイトリックに犯人Whoネタがタイトに決まり、素人女探偵達のプチ冒険譚も付く。前作同様、必要条件=「犯人であり得る」だけで、確証のないまま、有罪=絞死刑の危機が迫る被告。しかも官憲に悪意はない(こういうのは、もう勘弁してほしく)。今回、フレンチは救い主役だが、活躍は脇役。 |
No.25 | 4点 | 山師タラント- F・W・クロフツ | 2023/08/01 21:36 |
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クロフツ第二十五作。原題「(James)Tarrant, Adventurer」。山師=アドベンチャーねぇ。アドベンチャーには冒険家の匂いがするが、山師って言うと詐欺師の臭いが・・・。もともと和英共に「起業家」てな趣なんだろが、資本主義米国と違い、階級社会英国でも家系社会日本でも、起業家・資本家には「成り上り者」の胡散臭さが付きまとう。
で、この作品、その詐欺師まがいの起業家男の死を巡る殺人法廷劇がハイライト。たとえ死刑でなかろうとも、被告を有罪として裁くには、「Aは犯人であり得る」=必要条件だけでなく、「Aは無罪ではあり得ない」=十分条件を満たさねばならんだろうが。ましてや、死刑判決においてをや・・にも拘らず、フレンチも、検事も、ついでに結局は判事も、必要条件:「あり得る」をもって被告を弾劾可能としている。そもそも、あれが殺人だったって言う確実な十分条件の証拠さえないじゃん。クイーン「ニッポン何とか鳥」の親父警視とかの「ロジック」まだしも・・これは・・我慢できんなあ。もちろん、取って付けた様な冤罪救済をトってツけてるけどねぇ。 ※話自体は法廷サスペンスとして面白い。 |
No.24 | 4点 | 黄金の灰- F・W・クロフツ | 2023/07/10 11:49 |
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クロフツ第二十四作。1940年作で、クロフツ後期・・前中後あるとして・・に入るのかな。古き大邸宅を舞台にした、おや、珍しく本格館物?思わせ、そこはクロフツ、十八番の乗り物アリバイトリックとリアル機械仕掛け物であった。フレンチが出て来るまでの、マッタリ物語感が、ナカナカ心地よく、点数オマケ。 |
No.23 | 3点 | フレンチ警部の多忙な休暇- F・W・クロフツ | 2023/06/14 12:17 |
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クロフツ第二十三作。豪華賭博船を運営するチーム内の撲殺事件、というより、殺人事件オマケ付きの英国沿海クルージング小説。フレンチの奥さんを・・器量は悪いが人の好さそうな白髪交じりの、て・・シオ描写の作者・(*_*; |
No.22 | 5点 | フレンチ警部と毒蛇の謎- F・W・クロフツ | 2023/05/06 20:04 |
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クロフツ第二十二作。機械毒蛇トリックともかく、アリバイ構成の方がなあ。共犯にして倒叙主役を、クロフツにしては珍しや心象掘り下げして、ちょびっと「罪と罰」させてて、点数オマケ。 ※にしても、あれで死刑てのは・・・ |
No.21 | 5点 | シグニット号の死- F・W・クロフツ | 2023/04/15 19:33 |
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クロフツ第二十一作。十八番の船上殺人プロットに、ナンと嬉しや久々の「密室」付き・・カー「爬虫類館」レベルだけどね・・ 期待しなければ、それなりに・・再放送「科捜研の~」「捜査一課長」並みには・・面白いクロフツ。WhoWhyドンデン返しもナカナカよく・・もちっと犯人のキャラ掘下げほしいが・・クロフツだからね・・ |
No.20 | 3点 | フレンチ警部と漂う死体- F・W・クロフツ | 2023/03/29 21:26 |
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クロフツ第二十作。経営者一族・・一人の伯(叔)父と四人(+1人)の甥姪達・・に起きる毒殺未遂事件と船旅撲殺事件。凡庸なアリバイトリックにチョビッと伝奇浪漫風な過去譚とクルージング観光付き。 |
No.19 | 4点 | 船から消えた男- F・W・クロフツ | 2023/01/20 21:39 |
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クロフツ第十九作。航行中の船から消失した男が、溺死体で発見され、莫大な財産に繋がる発明に絡んだ殺人事件裁判へと展開する。十八番アリバイトリックいつも通りで、何ら「不思議不可能」無しもいつも通り。見どころは法廷冤罪サスペンス・・でも、犯人や否やどころか、殺人か否かさえ曖昧な、あんな「状況証拠」での死刑判決なんて、ありか? |
No.18 | 3点 | ヴォスパー号の遭難- F・W・クロフツ | 2022/12/30 16:12 |
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クロフツ第十八作。沈没した貨物船の保険金詐欺疑惑を調査する私立探偵。探偵の行方不明事件が殺人事件へ展開し、信じられないまでにストレートな・・十八番アリバイトリックさえない・・船舶爆破陰謀が判明する。船荷「密売」ネタはちょびっとだけ面白かった。 |
No.17 | 4点 | ギルフォードの犯罪- F・W・クロフツ | 2022/12/04 16:27 |
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クロフツ第十七作。倒叙変化球二作の後、王道直球・・緻密まったり捜査・アリバイトリック崩し・乗り物チェイス劇(英仏ベ蘭またぐ路線図の大仰な事)・・に戻り、経営危機企業トップ達の苦し紛れ犯罪が殺人事件に連動し・てな既視感溢れる設定もナカナカ居心地良く。 ※仮にも業界トップ会社の重役が貧民街に住んでるてのが、時代言うか・・ |
No.16 | 5点 | サウサンプトンの殺人- F・W・クロフツ | 2022/11/01 19:07 |
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クロフツ第十六作。二つのアリバイトリック自体は凡庸で、殺人トリックは輪をかけて退屈。が、犯行サスペンス倒叙と、犯罪者たる「倒叙」者が、欺かれる「叙述」者に転倒する、とんテン・・ドンデンでなく・・返しが読ませどころ。 |
No.15 | 4点 | クロイドン発12時30分- F・W・クロフツ | 2022/10/25 21:26 |
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クロフツ第十五作。こう丁寧な倒叙をされると、犯人の主観・・「冷血」や映画「フレンジー」でさえそうだったが・・に情緒が巻き込まれてしまい、官憲側へ部分的に拒絶感さえ感じてしまう。が、そこはクロフツ、情状酌量とはいかないキャラの主人公に仕上げてくれてはいる。点数は、倒叙でない普通の描写だった場合の点数3点に、1点オマケ。
※刑事物が嫌いだった父が、格別に嫌ってた公僕がコロンボと古畑任三郎だった事をふと思いだした。 |