皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
レッドキングさん |
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平均点: 5.27点 | 書評数: 888件 |
No.708 | 7点 | アミダサマ- 沼田まほかる | 2023/06/09 17:03 |
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主婦であり経営者であり僧侶 !でもあった作者。仏教救済説話とサイコホラーと吐き気を催すほど極限のクズ行為・真情の小説・・宮沢賢治と女流イヤミスと坂口安吾中上健次・・異次元を貫く超ヒモの如き「アミダサマの声」の小説。
「ミステリ」ではないが、「Mystery=神秘」の讃歌譚として大いにオマケ評価。 |
No.707 | 7点 | 人間の顔は食べづらい- 白井智之 | 2023/06/05 23:50 |
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面白かった。今まで「佐藤友哉舞城王太郎の類の作家」とヘンケン持って読まないで損した。「クローン人間」設定とグロ展開を煙幕にした、見事なる「生ける屍の死」「二の悲劇」「殺戮にいたる病」イイとこ取り。
(道尾秀介がこれ褒めたっての良く分かる・・彼自身、Brahms・Beatlesなみの良いとこ取り天才だからね) |
No.706 | 4点 | 智天使の不思議- 二階堂黎人 | 2023/06/04 07:34 |
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水乃サトル不思議シリーズ第四弾。
操り者の少女漫画家とシモベの男。実行者視点で、三十年を隔てた二つの殺人アリバイトリック・・一つは密室付き、もう一つは少々話が立て込んでる・・が描かれる、ま、倒叙の「白夜行」ね。普通の叙述展開だったら3点。が、倒叙展開面白く、乱歩風かつ「戦前〇〇者(今時チトあぶないか)物」風の外連味もミワク的なので1点オマケ。 |
No.705 | 6点 | ねじまき少女- パオロ・バチガルピ | 2023/06/03 05:45 |
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環境(何とCIAの如き強権「環境省」)・食料(カロリー企業!)・エネルギー(何とゼンマイ!が強動力)・・三拍子揃って危機の近未来世界。 「バンコク」・・あのバンコクなんだろなぁ・・を舞台に展開する、ペシミスティックでエロティックな、サイバーパンクSF活劇。「ブレードランナー」由来のジャパン(日本でなく)風味・・寂しげだが絶望にまでは至らせない湿気と諦念・・も、ほのかに心地よく、点数、大いにオマケ。 ※文庫本上下巻を横に並べた表紙絵が良い。 |
No.704 | 5点 | ローラ・フェイとの最後の会話- トマス・H・クック | 2023/06/01 21:39 |
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かつて神童と目され、偉大な歴史家となる将来を夢見たハーバード大卒の男。齢四十を前にした実像は、著作はパっとせず講義にも人気のない、離婚歴のある冴えない学者に過ぎなかった。父親の店の店員だった凡庸な見てくれの中年女との数時間の「対話」を通し、今は亡き不器用な田舎者だった両親と、女と、女の夫との間に起きた事件が回想され、男の生涯の痛い「真実」が焙り出される・・これが、クックのいつもの奴より地味に、でも、イタいんだなぁ(;O;)。
それでも、「人生の最後の希望は、己の犯した全ての誤りが、ふいになすべき良きことの全てを教えてくれること」てな救済エンドへ。最後の"Happy"割愛すれば、「惑星ソラリス」や「父、帰る」等、暗く美しいロシア映画。 一言で言えば、ミステリ妙味を犠牲にした・・もはや読者を釣るテクに過ぎず・・人生の「苦い文学」。 |
No.703 | 5点 | 百番目の男- ジャック・カーリイ | 2023/05/26 02:09 |
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"軽口のハードボイルド"風刑事が主役のサイコもの。エルロイよりはライトで、ディーヴァーより全然シンプル。連続首無し殺人の被害者は、いずれもマッチョ男で、殺害順に屍体のマッスル度は上がり、ペニス付近に意味不明な文言が刻まれて・・意味を追わずカナ表記を音読しよう(訳者、工夫したなァ)・・。 相棒刑事・アル中の女検死医・憎まれ役上官等とのファンキー・ダーティなやり取り楽しく、ラストのサスペンス緊迫展開もよし。犯人解明後のサイコ描写ナカナカだが、真犯人判明の驚きがチト物足らず・・え、それって誰だっけ?となったが・・読み返したらチャンと初っ端近くから出てた・・。ドクターレクター役の殺人鬼サイコお兄さん、Very goo・・おっと、もとい・・badよ。 |
No.702 | 5点 | 長恨歌 不夜城完結編- 馳星周 | 2023/05/22 21:47 |
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日台ハーフの主人公:劉健一物語の第三部にして完結編。第一部:「不夜城」の "傷だらけのダークヒーロー"が、第二部:「鎮魂歌」で "操りのアンチヒーロー"に反転し、この第三部:「長恨歌」では "暗黒のラスボス悪魔"の容貌さえ帯びる。
貧しき大地より経済先進国たる我が歌舞伎町に流れ込んだ、中国マフィアの凄惨な抗争・・は遠く前世紀の光景となり、今や我が国に十倍する人口相当の国力を蓄えつつある中国。それでも故郷からあぶれ、麻薬ビジネスを糧に、この異郷の地でネズミの様に棲息する中国プチマフィア達。歌舞伎町を舞台に日本ヤクザも絡んだグループ間抗争が、主人公:劉健一の戯画の様な脱中国チンピラをワトスン語り役に展開し、いったい、誰が何を目論んで何を起こしているのかの、Who・Why・Whatミステリが完結する。 |
No.701 | 7点 | あやかしの裏通り- ポール・アルテ | 2023/05/18 22:59 |
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迷い込んだ裏路地。奇怪な男女と謎の建物。室内から窓越しに見える幻の光景。逃走し、かえり見れば・・路地自体が消えていた・・・。ドイル・カー風怪奇叙景の合理的解決で、フレンチ風に洗練された(島荘だとウルトラ野暮になる)Who・Why・Whatミステリ調理が完成、見事。 |
No.700 | 4点 | 稀覯人の不思議- 二階堂黎人 | 2023/05/15 22:03 |
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水乃サトル不思議シリーズ第三弾。手塚治虫マニア団体で起きた稀覯本を巡る密室殺人。メインの「家と部屋」二重密室トリックは、イマイチな短編ネタだが、手塚治虫の稀覯・希少本ウンチク(なかなか面白い)と、第二事件の「意外な」Who・Whyネタが付いて、長編として読ませてくれる。(手塚漫画に関心ない人には・・退屈かなぁ)
※コバルトってアトムの兄貴じゃなかったっけ?作者の勘違いじゃね?・・思ったら、漫画の方では弟で、あってた。 |
No.699 | 7点 | ナイチンゲールの屍衣- P・D・ジェイムズ | 2023/05/14 21:46 |
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おぞましい因縁のある、厳めしく陰鬱な総合病院で起きた看護婦連続毒死事件。他殺?自殺?恐喝?情事?金銭目的? 婦長から看護学生に至る容疑者十数人のみならず、ほんの脇役・・死亡した看護婦をはらませた作家志望青年や、恨みある警官を頭韻罵倒する女中、息子の死亡保険金もダンス費用につぎ込むダンス狂い老女・・までもの描写が見事。
驚きのエンドは、ミステリとしては捻り無さすぎにして堂々たる文学的王道の真犯人Who、ミステリとして「難解」過ぎにして素晴らしき文学的な、Why。ミステリとして4点・文学として8点。間とってオマケ付けて7点 ※つくづく、英国・・独逸でなく・・の女って、怖そうだなア・・実物は知らんが。 |
No.698 | 6点 | 友が消えた夏- 門前典之 | 2023/05/07 23:31 |
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門前典之第八弾。「閉ざされた館・男女学生・密室・連続殺人」と、「三十路女タクシー誘拐事件」、二つの事件が、同じ日付で交互叙述される。あえて同日付で別エピソード描かれりゃあ、どうしても、因果捜し・叙述トリック注意、となり、結果、・・麻耶雄嵩等の人物叙述トリックと違って・・キチンとミステリ意味をなしてた。
二つの密室トリックは、最初のペケ(~_~)だが、二番目のはグッド(^.^)よ。 終盤の、女流イヤミス系の臭いは、チトいただけないが。 ※「携帯電話」「椎名林檎」「安室奈美恵」・・・「イニシエーションラブ」思い出すなぁ。 |
No.697 | 5点 | フレンチ警部と毒蛇の謎- F・W・クロフツ | 2023/05/06 20:04 |
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クロフツ第二十二作。機械毒蛇トリックともかく、アリバイ構成の方がなあ。共犯にして倒叙主役を、クロフツにしては珍しや心象掘り下げして、ちょびっと「罪と罰」させてて、点数オマケ。 ※にしても、あれで死刑てのは・・・ |
No.696 | 6点 | invert II 覗き窓の死角- 相沢沙呼 | 2023/05/01 21:49 |
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城塚翡翠シリーズ第三弾。中長編2作の倒叙作組み合わせ。
「正者の言伝」侵入した別荘で刺殺犯となる少年の倒叙・からのドンデン返し。履物とバッグと雨のロジックに6点。 「覗き窓の死角」探偵を証人に利用した殺人アリバイトリックの解明と紛失宝飾品からの犯人特定。7点。 超美女にして「てへぺろこっつんさん」ブリっ子キャラの探偵ヒロイン。コロンボ「あと、一つだけ・」、古畑「ん~・・」同様、犯人サイドから倒叙されると、基本、ヒールにして鬼の嚇かし役になってしまい、酉乃初・マツリカに比べると、ちといただけないなあ、ヒスイちゃん。「殺人は絶対だめですぅ」倫理キャラ設定が失敗っだったんじゃないか。ま、好みの問題だけどネ。 |
No.695 | 3点 | 真夜中の密室- ジェフリー・ディーヴァー | 2023/04/26 21:00 |
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ライムシリーズ第15弾。今回の敵は、どんな錠前も簡単に解錠し、女の部屋に侵入するピッキング達人。ディーヴァーだもの、当然に操り真犯人ツイスト来るけど、分かり易くあっけないネタなんだなァ、これが。さすがにこれでは弱いと自覚したのか、vs「ウクライナから来た暗黒ボス」ネタ付くんだが・・そっちのが面白い位なんだが・・二つのネタ、絡まないんだなぁ、これが。 |
No.694 | 6点 | 赤髯王の呪い- ポール・アルテ | 2023/04/24 01:42 |
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緑色の顔に白目だけの少女幽霊・・んな恐いモンは怖すぎるわ!(T_T) 「火刑法廷」なんかはゴシック・オカルト。が、これは、サイコ・ホラー。両目を潰され殺された少女の密室トリックには、カーの香りするけどね。 ※採点は表題作へ |
No.693 | 5点 | サンドリーヌ裁判- トマス・H・クック | 2023/04/22 19:49 |
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不治の難病に罹った才色兼備の妻の急死。妻殺し容疑で告発された大学教授の夫。妻との出会いからの重苦しい追想が、数日間の裁判描写に重ねて綴られて行く。ミステリと文学が、ほぼ、fifty-fiftyでリードし合うクックの小説だが、これは、ミステリ興味・・自殺か殺人かWhatダニットと無罪か有罪か評決・・を釣りにした、冷笑主義と自虐的高慢に硬化した男の精神を焙り出す苦渋の小説。言っちまえば、ミステリをダシにした「文学」に過ぎない。
が、最後の一頁の、「驚き」の・・文学にあるまじき・・ミステリ的Happyエンドに点数オマケ。 ※「カラマーゾフの兄弟」のゾシマ長老が言ってたな、「地獄とは、人を愛せなくなった心」って。 |
No.692 | 7点 | 不自然な死体- P・D・ジェイムズ | 2023/04/19 09:25 |
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海を漂う小舟にはミステリ作家の屍体、屍体は「自然死」なのに両手首が切断されていた。詩人にして警視の探偵・その狷介な叔母・男女の文壇関係者達・不具者の秘書女・女流作家の姪・・半ば閉ざされた岬に住まう、一癖どころか三癖はある容疑者達。クリスティーどころかドロシー・セイヤーズでさえ、ここまで「人が悪く」はなかろうって程に辛辣で「純文学」なドロシー・ジェイムズの精神解剖描写。主役探偵どころか助役警部さえ、作者の残酷なペン先から逃れられない。殺人と手首切断の合理的「Why」に、文学的「何故?」が見事に融合、見事。 |
No.691 | 5点 | シグニット号の死- F・W・クロフツ | 2023/04/15 19:33 |
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クロフツ第二十一作。十八番の船上殺人プロットに、ナンと嬉しや久々の「密室」付き・・カー「爬虫類館」レベルだけどね・・ 期待しなければ、それなりに・・再放送「科捜研の~」「捜査一課長」並みには・・面白いクロフツ。WhoWhyドンデン返しもナカナカよく・・もちっと犯人のキャラ掘下げほしいが・・クロフツだからね・・ |
No.690 | 7点 | 七番目の仮説- ポール・アルテ | 2023/04/11 21:41 |
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ペスト病人の消失と死体の出現、「密室」ワンツートリックが実によいなぁ。鳥仮面ペスト医者(なんじゃそれ)、クセ者のミステリ劇作家とミステリ役者、ワケあり風執事と薄幸風美女。多重変装に予告殺人遊戯、怪奇趣味とドタバタ浪漫、ちと無茶な操りドンデン返し。「いいじゃないか。こういうのでいいんだよ、ミステリてのは。(井之頭五郎風)」 |
No.689 | 4点 | 悪徳の輪舞曲- 中山七里 | 2023/04/08 18:43 |
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トンデモ過去持ちハードボイルド弁護士:御子柴シリーズ第四弾。今回の依頼人は、再婚相手の資産家夫殺しで法廷に立たされた実の母。冒頭の「犯行叙述」を、どう無罪判決へ「叙述トリック」反転させる?がメインとなってしまい、事件真相の方、WhoHowともかく、Whyは・・うーん、ちと説得力無いなぁ・・
※サイコパス遺伝説など一笑に付すべきだが、「たらちね」ネタでヒヨったか?作者、もっともっとハードボイルドさせなきゃ、御子柴礼司。受付の女の子に「兄妹喧嘩ですか」なんて突っ込ませてないで。 |