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クリスティ再読さん
平均点: 6.40点 書評数: 1325件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1245 7点 野獣世代- ボアロー&ナルスジャック 2024/04/06 18:56
後期ボア&ナルというと、それまでの心理主義サスペンスの中にトリッキーな罠が仕掛けてある、というスタイルから脱却して、よりプロット重視の動きの多いスタイルに切り替わる。本作なんてその典型で、主人公は15歳の悪童。でも自分をイジメる若い女性数学教師への仕返しみたいな、悪戯の延長線での誘拐・監禁事件を起こした顛末がこの小説。

当初2日監禁して許してやる予定だった。もちろん一人じゃ誘拐・監禁なんてやってのけれない。相棒がいる。でもその相棒が交通事故で瀕死の重傷...一人になった主人公は、そのままズルズルと監禁を続けることになってしまう。そうなると誘拐した教師への「子供」な甘えも覗かせるようになって、依存関係めいた心理の泥沼にハマっていく....だからそういうあたりは、なるほどボア&ナルっぽい。そして当初取る気もなかった身代金も、捜査攪乱のために要求するハメになる。

この身代金を巡るトリックはなかなか面白い仕掛け。そして意外な展開と結末。なかなか面白く読める。中期のグダグダした作品よりも評者は好感。
子供ってケダモノみたいな部分ってあるものだが、ヘンに甘えた心理の側にリアリティがあって「野獣世代」って皮肉かいな?という気持ちにもなる(苦笑)

No.1244 6点 レスター・リースの冒険- E・S・ガードナー 2024/04/03 19:44
そういえば本サイトでは評者初ガードナー。
昔は読んでいて、嫌いと言うほどでもないのだが、思い入れがないので、何となくやるタイミングをなくしていた。搦め手かもしれないが、レスター・リースから始めるか。

警察のスパイで従僕に化けているスカットルが読む新聞記事から、犯罪事件の犯人を推理して、その獲物を横取りする怪盗レスター・リースが主人公。中編4本のハヤカワ文庫。
新聞記事からだけで真相を推理するわけだから、安楽椅子探偵の一種だし、真犯人から獲物をかっさらうのはコンゲームみたいな趣向。そして、ヤラれ役のスカットルと上司のアクリー部長刑事に「ブラック魔王とケンケン」みたいなカラーがあって、エンタメの趣向としては満点。
リースの推理の部分がわりと面白い。ちょっとした手がかりから真相を膨らませてみせるのがなかなか見事。コンゲームの部分は「カトゥーン的」といった感覚。チューインガム中毒なナイスバディ秘書とかさ、結構笑える。
欠点はリースの狙いが真犯人への陽動作戦ベースで、さらにスカットルに狙いを見抜かせないオトボケがあるために、リースの狙いが全然読めなくて置いてけぼりになりやすい。さらにいろいろ詰め込み過ぎて展開が早すぎること。あれよあれよと話が進行してあっけにとられるのが、SFみたいな読み心地。

ガチャガチャした雰囲気なのが、パルプマガジンの駄菓子感覚というものだ。

No.1243 5点 死にいたる火星人の扉- フレドリック・ブラウン 2024/03/29 15:03
原題がさほど面白いわけではない「DEATH HAS MANY DOORS」なのを、これほどキャッチーな訳題にした、というだけでもとにかく目立つ作品だからねえ。ついつい手を出したくなるよ。いや、火星人....ブラウンと言えば「ゴーホーム」の方の火星人もいるわけだが、青春ハードボイルドのエド&アンクル・アムシリーズなんだから、「火星人に殺される...」とエドに護衛を依頼した女がたとえ不審な死を遂げたとしても、SFにはならないし、また悪趣味なアメリカンジョークの世界に突入するわけでもない。
一応ハウダニットものではあるんだよ。そうすれば「火星人が殺した!」はミスディレクション?かもしれないが、サリー殺しの方は物理トリックに気が付くんじゃない?(場違いに詳細な描写でピンとくる...)キャラはそれぞれごく普通にうまく書けていて、エドくんのホロ苦青春と酢いも甘いも噛み分けたアンクル・アムのコンビ感の良さは、スレてないウルフ&アーチ―といった味わいもある。ボクシングのエピソードとかセイシュンしてるよ(モニカくんレギュラー化したらいいのに)
けどね、どうもプロット展開が悠長なんだよなあ。そしてハッタリに納得の真相があったなら、ミステリ史に残る不可能犯罪の名作なんだろうけど、正直ハッタリがハッタリで終わった残念感が強い。(第二の殺人のハウダニットは評者はアホか!)
なんかいろいろ惜しい、残念という印象の作品だけど、これは訳題でハードルを上げまくった結果みたいな気もするよ。

No.1242 7点 メグレとしっぽのない小豚- ジョルジュ・シムノン 2024/03/27 17:35
大昔の早川「シメノン選集」で唯一の短編集。全9編収録で「しっぽのない子豚」という短編が巻頭なんだけど、これにはメグレは出ない。メグレが出演するのは「街を行く男」「愚かな取引」の2作だけで、他の7編には登場しない。えっ?と思って調べたが、実は本書の底本は「Les Petits Cochons sans queue」であり、底本みたいに表示されている「Maigret et les Petits Cochons sans queue」が嘘?というのが面白い。訳書は1955年出版で、底本は1950年刊のフランスで編まれた短編集。直輸入みたいな感覚で底本そのままに訳したが、「メグレ」を表題にしないのは営業上まずい、という判断があったんだろう。

「街を行く男(街中の男)」ならこの表題のフランスミステリアンソロがあるくらいの「メグレらしい」短編。尾行された容疑者が家に帰れず金がなくなって窮迫していくのをメグレがじっと見つめるスケッチ風の話。「愚かな取引」は珍しくナントの機動警察にメグレがいた時期の話。
本書収録作のどれもシャープな切り口が楽しめる。いうまでもなく、シムノンの筆に脂がノリに乗った時期。その中でも最初の3作が長めの作品で、読み応えがある。
「しっぽのない子豚」は新妻が夫のオーバーのポケットから見つけた、しっぽのない子豚の置物に、古美術商の実父の秘密ビジネスとの関わりを察知して心配する話。視点設定が素晴らしいけど、このアイデアならメグレ物で使っても面白いだろう。
「命にかけて」はコンゴでの過去の因縁を引き継いだ男二人の対決! なんちゃってなオチが皮肉。
「しがない仕立屋と帽子商」は「帽子屋の幻影」の元ネタ短編。とはいえ、この短編はシリアルキラーの帽子商の犯行を察知した、小心な移民の仕立屋が訴えようかどうか懊悩する話を、仕立屋視点で描いている。長編が帽子商視点でうまくネタバレしないように描いているのと対照的で、同じ話なのに「二度美味しい」。全盛期のシムノンの切り口のシャープさと腕前に感服する。
他の作品も切り口のうまさ、いきなり核心に話を持っていく語り口のうまさに惚れる。
(国会図書館デジタルコレクションで。巻末の予告には「メグレと不運な刑事」が載っているけど、これは出なかったんだよなあ。祝「シメノン選集」コンプ)

No.1241 5点 我が屍を乗り越えよ- レックス・スタウト 2024/03/26 14:22
ある朝、ウルフの事務室に訪れた若い女は、ウルフの娘がダイヤモンド盗難の嫌疑を受けてピンチであると救援を求めた。友人の若い女とウルフの娘は、モンテネグロからの亡命者で、今はフェンシング教室の先生をして過ごしているのだが、そのロッカールームでダイヤモンドが盗まれたのだ。娘である証拠書類を提示されたウルフも、不本意ながら見過ごすことはできずに、フェンシング教室にアーチーを派遣した。ところが、その教室で殺人が起きた!被害者はイギリスの諜報員らしい...

となかなかキャッチーな話。これにさらに、ウルフの前半生が断片的に明かされたり、戦前のユーゴスラビア王家とナチスドイツ、そしてアメリカ財界の結託など、謎解き以外での興味が大きい作品。第二次大戦が始まるあたりの作品で、スタウトの反全体主義の政治的主張が表れた作品でもある。政治圧力のために愚痴をこぼすクレーマー警部がなんかかわいい(苦笑)

まあだけど、どうもテンポの悪い話で、しかも、謎解きがあまり大した話でもないのが、ミステリとしてはいまひとつ。キャラ小説としてはほんと安定しているし、後年に書かれた、ウルフがユーゴに乗り込んで暴れる異色作「黒い山」の前日談でもあって、見逃せない話でもある。ネタバレすると嫌だから、本作から読むべきだろうな。

まあウルフの娘、って言っても、孤児を引き取った養女。ナチと結託した王党派vs反セルビア的なモンテネグロ国民vsセルビア人主体の中央政府という三つ巴のややこしい政治情勢の中で、ナチスやアメリカ政府などの思惑が渦巻く暗闘に...なんだけど、中途半端感も否めない。そこらへんのユーゴ政治情勢なんて日本人のほとんどが馴染みないよ〜〜評点はこんなところで勘弁して。

(けどさ「私は感情が入りこまないように、こうして脂肪をつけているのだよ」と言い放つウルフって、意外なくらいハードボイルドなキャラだと思うんだ)

No.1240 6点 奇っ怪建築見聞- 評論・エッセイ 2024/03/23 11:07
「三角館の恐怖」の主人公は実は「三角館」と名付けられた建築そのものだ、ということに乱歩が気が付いている...というのを面白く感じたことから、日本の怪建築についてコレクションした本がないか?と見ていたら、こんな本がある。
確かにミステリの「館」というもの自体に、年少の評者も憧れをもって、ミステリの挿絵で入っている平面図を参考に、自分の「夢の家」を夢想したことがあったりもしたわけだ。もちろんこれには戦前の「洋館」に対する夢と憧れが、戦前のミステリに反映していることの証左でもあるわけで、「新青年」の「悪夢の家」は言うまでもなく「黒死館」に結実する。
逆にいわゆる「新本格」で「斜め屋敷」やら「十角館」やら、改めて「怪建築」が取り上げられたことには、80年代の建築探偵やら考現学・路上観察学会などの都市論の流れが影響していたのだろう。そう捉えたときに、戦前戦後の怪建築を題材にしたこのムックはちょっとした「ミステリの参考書」にもなってくる。

でこのムックで扱われる怪建築は...

1. 二笑亭
いきなり御大登場。水木しげるがマンガで戦前の怪建築の代名詞の二笑亭を解説。
2. 会津栄螺堂
会津に現存する、江戸時代に作られた螺旋形の塔。内部を二重らせんの階段で昇降できる。
3. 岩窟ホテル高壮館
比企郡で廃墟にはなっているが現存する、凝灰岩の絶壁を明治時代に農民が掘りぬいて作ったホテルのような建築。
4. 目黒雅叙園
「昭和の竜宮城」と言われたキッチュ建築。まあこの手のものは飛田の百番とか、いろいろありそう。
5. 三角屋敷
リアル「三角館」。三角敷地での歪んだ三角や台形の建築は珍しくはないが、幽霊屋敷として怪談の舞台となったマンションが、都内某所にあるそうな。実際にここに住んだ小説家霜島ケイさんが体験談を語る。加門七海の「怪談徒然草」の元ネタとして有名。
6. 京都太秦のオールプラスチックハウス
徳力彦之助という漆芸家が1950年代に作った全プラスチック製の半透明の家。プラステチックハウスは現存しないが、母屋にあたる洋館は現存。これは強烈にオシャレ。

などなど、日本にも「怪建築」はいろいろ実在する。アウトサイダーアートに類するものもあるが、ミステリと怪建築が共有する「夢」を正面から扱ったムックとして、紹介したい。

考えてみれば、乱歩の「人間椅子」も「鏡地獄」も、ミニマムな建築と捉えることもできるわけだし、「屋根裏」にも反-建築の夢が詰まっている、と考えたら、面白い視点にもなるだろうなあ。

No.1239 6点 怪奇探偵小説傑作選〈4〉城昌幸集-みすてりぃ- 城昌幸 2024/03/22 19:05
乱歩による評「人生の怪奇を宝石のように拾い歩く詩人」が有名なわけだが、この本が城昌幸の本領たる怪奇幻想短編のアンソロになる。自薦傑作選の「みすてりい」に編者日下三蔵がほぼ同量を選んで追加しているのがちくま文庫である。全55作、総ページ542。長い作品で15ページ超くらいのショートショート集になる。

ショートショートと言えばもちろん星新一は城のショートショートを愛読して自分の作品の形式にしたわけである。しかしストイックなミニマリスト星とはかなり肌合いが違う。それよりも以前評者がボードレールの散文詩集「巴里の憂鬱」を強引にショートショートとして読んでみた読み心地の方にずっと近い。城左門名義での詩人としての活躍もあるわけだが、やはりボードレールやポオと「新青年」を直接媒介する存在と城のショートショートを捉えるべきだろう。不要なものをそぎ落とすミニマリスト星にはない、「豪奢」なポエジーが城の真骨頂である。

内容は多岐にわたる。夢小説に近いものもあるし、「人花」なら「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」みたいな話だし、殺人が絡んだ話やら、ちょっとした騙しトリックの話やらあっても、トータルでは「奇妙な味」のテイスト。反転でひっくり返しても、そこに人生の哀歓みたいなものを漂わせる技がある。

であとポオの「アルンハイムの地所」に始まって、乱歩「パノラマ島」やら谷崎「金色の死」が散々模倣することになる「人工楽園」テーマを繰り返し描いているのが目立つ。最初の作品「艶隠者」はアクセス不能な都市の秘境に自分の隠遁所を作った男の話だし、一つの街を作ってそこで「ママゴト」する「ママゴト」、自分の墓苑の詳細なデザインを残して自殺した男の話の「スタイリスト」、「屋根裏の散歩者」の主人公のような高等遊民が理想の家の模型を作ってひたすら愛玩するがいざその建物が建てられると...の「模型」などなど、理想世界のイメージを架空の建築に投影した作品がけっこう目立つ。そこらへんに「詩人」っぽさを感じるなあ....

そしてあとは愛する者を破壊したいという矛盾した欲求もよくテーマになる。「白い糸杉」「殺人淫楽」、そして愛した女がすべて死ぬ運命にある男の話の「宿命」などなど、星新一の厭世観とは違うパッションの高さが特徴的。

話のバラエティ・クオリティは高いんだけど、散文詩風の緊張感が強く出ているので、なかなか読み進むのにパワーが要る。うん、でも評者「若さま侍」も好きだから、この本はやっておきたかったな。捕物帳にも通じる人生の機微みたいなものも、スタイリッシュな「若さま」にも時おり感じられるしね。

あと、乱歩が城を始めとする「幻想派」を「新青年」文化の「探偵小説」の一つとして捉えていたことも「みすてりい」に寄せた乱歩の一文から伺われる。城と並べているのはたとえばモーリス・ルヴェルやジョン・コリアであり、また渡辺温や地味井平造や稲垣足穂なんだよね。だから星新一が協会賞を取ったりするのもこういう流れの中にある、というのを体感できる面白味も感じた。

No.1238 6点 - アンドリュウ・ガーヴ 2024/03/12 17:33
初読。皆さん同様、このトリックは知ってたな。しかし「どの作品で?」は知らなかった....それでも読んでたら、気がつくよ。ああ、あのトリックね、って。

でもねガーヴに甘い評者はそう印象が悪くない(苦笑)。原題が「Frame-Up」だから、これを「罠」と訳題にしたのは、時代柄仕方ないかもしれないが、あまり良い判断ではない。「でっちあげ」「フレームアップ」の虚実として読むと面白いし、またトリックのちょっとしたミスディレクションになっている個所もあって、妙味も感じる。
シンプルな謎解きストーリーだけど、ブレア警部とドーソン部長刑事が会話でしっかり推理を闘わせるあたりや、女性たちの悪女っぽさとか、抑え気味ではあるけども「ガーヴらしさ」はそれなりに出ている。

だから、ミステリを「トリック小説」として読んでしまうことで、作品としての面白味がかなり薄れてしまうというのを、評者は危惧する。宰太郎本の問題というのも、乱歩が始めた日本の「トリック偏重」の悪習の結果なんだと感じる。また、ガーヴが代表する英国スリラーと、日本では「クロフツ流」と捉えられる捜査小説と、「本格ミステリ」概念との微妙な関係性を評者は重視したいとも思うんだ。

No.1237 5点 メグレとひとりぼっちの男- ジョルジュ・シムノン 2024/03/11 12:26
メグレ物というと、戦前の作品から「もうすぐ停年」と言い続けて最終的には1972年まで勤め上げたことになる。戦中戦後のメグレ物には引退後のメグレを描いた作品もいくつかあるが、要するに「サザエさん時空」に突入してしまい、メグレ周辺の人間関係はずっとそのままで、世相風俗だけ時代に沿って動いていくことになる。本作は1971年作品で晩期の作品になるが、珍しくも事件が起きた年が1965年と明言されている。そして、メグレが戦後すぐに地方に左遷されていて、パリで起きていた事件について知識がないことが、話のキーになっている。

過去の事件と、その事件の影響で人生を捨ててルンペンになった男の話。徹底的に人間関係を捨てて、誰ともロクな会話をせずに、あばら家に一人住む男が殺された。この男の過去をメグレが追っていく。そういう大枠だから、やはり年代を明記する必要もあるわけだ。そして、訳者の野中雁氏があとがきで「メグレも老いた」と書くように、「サザエさん時空」であってもメグレの人格には、相応にシムノンの老いも反映していく。そういう意味で「枯れた」作品には違いない。

逆に言えば、プロット的にはややアラが目立つのも否定できない。いうほどにこのルンペンの人格と過去の事件が深堀りされるわけではないし、過去の事件とはいえ20年前で、メグレと同世代の刑事なら何となく過去の事件に気がついた可能性も高くて、やや捜査が雑、という印象もある(バカンス中の事件という設定はその言い訳?)。そして密告がきっかけで局面が簡単に打開するのは、ご都合が見えて芳しくはないなあ。

全体的に「粘り」みたいなものが失せてきているようにも感じる。我が身に引き換えても、これが「老い」というものか。

No.1236 6点 月と手袋- 江戸川乱歩 2024/03/10 14:22
花田警部が探偵役を務める倒叙作品だから、同年(1955)作の「十字路」と兄弟みたいな作品である。文章はあっさり。ふとした弾みで高利貸を扼殺してしまった脚本家が、高利貸の妻の元タカラジェンヌ(元男役)と共謀して現場偽装によってアリバイ工作する話。内容以上にいろいろと面白いポイントが多い。

いややはりこれが戦後の乱歩がファイトを燃やした遠隔殺人(目撃者=犯人)ネタであることは見逃せない。乱歩はどこだったかで密室パターンが出尽くしたことを理由とし、それに代わる不可能興味として遠隔殺人を推奨していたよ。結局遠隔殺人というネタはそれほど流行らなかったが、乱歩もいくつかの作品で採用しているし、たとえば笹沢左保の某作とか、やはり乱歩あってのアイデアのようにも感じる。
であと、本作だと明智小五郎が名前だけの出演。うんまあ確かに明智クンって少年探偵団以外だと扱いが難しい探偵なことは否定できない。「妖虫」とか「緑衣の鬼」っていかにも乱歩な作品なのに、わざと明智クンじゃないあたり、乱歩も動かしづらさを感じていたことだろう。この明智くんの「名前だけ使う」という技は、実は「大暗室」でもやっている手。
まあ「十字路」は乱歩取り巻きの渡辺剣次のシナリオのノベライズという舞台裏もあるのだが、いろいろ共通性の高い兄弟作の本作というのも、なかなか興味深いものがある。
(ちなみに本作中で、犯人がジョニ黒を愛飲するのが印象に残る。この頃から飲まれていたんだな~~評者の父もよく飲んでたが、最近思い出して飲んでみたら、おいしいなジョニ黒って)

No.1235 6点 三角館の恐怖- 江戸川乱歩 2024/03/09 21:02
「エンジェル家の殺人」のやりついで。
「エンジェル家」の方でも言ったが、乱歩の最大の創造は「三角館」とこの家を名付けたこと。名前を付けることで、焦点がしっかり絞られて、作品としてのまとまりが出てきている。
キャラも「ルパシカを着たニヒリスト的な音楽評論家」と「カサノヴァ的色悪の画家崩れ」と兄弟にしっかりキャラを色付け。全盛期のねちっこさには及ばずも、しっかりアオった文章。そして妻の浮気をわざと聞かせて心理的拷問を試みる場面でも、わざわざゴシックで叙述するのには、「アザトイな(笑)」と読んでいて気分がアガる。大衆小説のツボを知悉した乱歩の技が豪快に炸裂。ちゃんと原作にはない「読者への挑戦」も補って、超豪華な推理クイズに仕立て直した剛腕が何と言っても読みどころ。
ちなみに光文社の全集なんかだと、光文社「面白倶楽部」連載の前に原作者に自由訳の許可を得た旨が書かれているし、乱歩自身「エンジェル家の殺人」の翻案であることを堂々と公にしている。ならば作家倫理的な非難は難しい。戦後の乱歩のプロデューサー的な性格がはっきりと出た作品でもあろう。

でなんだが乱歩と言えば、土蔵で執筆するとか建物に関する伝説がいろいろある人。「幽霊塔」とか「パノラマ島」とか、怪建築に対する興味関心は強くあったことだろう。戦前の乱歩全盛期といえば、深川に怪建築の代名詞でもある二笑亭が存在した時期(1931-38)でもある。怪建築「三角館」という切り口でもきっと面白い。
(ちなみに新潟には北方文化博物館「三楽亭」という正三角形のお茶室があるそうだ。敷地が三角なのが原因で、三角っぽい建築というものは実体験でも意外にある印象)

No.1234 5点 帽子から飛び出した死- クレイトン・ロースン 2024/03/04 20:09
マジックでは「種明かしは絶対にするな」と教えられるのだけど、その理由はというと「種明かしをしても、それを聞いた観客は絶対に感心したりしないし、それどころか汚いトリックに引っかかったと幻滅するのがオチだから」。本作の評者の評価もそういうあたり。マジックは現象の派手な不思議さで押し通すことができるわけだから、種明かしなんて損なことをする理由がないのだが、ミステリはそうはいかない。

まあ本作、ホント小説としては退屈で読みづらい。登場人物も多くて、しかもすべてマジック業界関係者、人物の区別もつきづらい....いや刑事だって全部律義に名前を出していたりして「誰?」となることもしばしば。密室と準密室、さらにちょっとした人間消失とか、派手な現象はあるし、クライマックスにマジックショーを持ってきて、とある有名技を披露。だから「現象の派手さ」はあるんだけども、楽しさとかサスペンスを全然醸し出さない。「11枚のトランプ」ならアマチュア・マジシャンにしたために話が楽しくなったのとは好対照。プロのマジシャンが容疑者だと、何をしても疑われるし意外なことをしても驚きとかあるわけがない。本当に損だ(苦笑)

mini さんが書かれた本書の頃のアメリカのパズラーの歴史話はまさにその通り。アメリカでパズラーが人気だった時期はほぼ10年程度で短くて、本作はその最末期の悪例みたいなものだと思った方がいいだろう。

No.1233 6点 エンジェル家の殺人- ロジャー・スカーレット 2024/02/29 21:51
みんな知ってる乱歩「三角館の恐怖」の元ネタ作品。
一応西田政治訳で創元の「世界推理小説全集」で紹介されてもいたから、創元の新訳が出る前でも「幻」というほどでもなかったよ。乱歩の翻案が大体忠実、というのは知られていた。

乱歩が気に入るのはよくわかる作品。なんだが、乱歩が晩年に強い興味を示したとある趣向を、本作もやっているのが見逃されがちだ。カーの「**の*****」とかクリスティのいくつかの作品がやっている、あれ。まあ、これは作中であまり強調されていないから無理もないんだけど、乱歩って評論を読むと、意外なくらいにデテールが読めていて驚くことが多いよ。
そういうあたりも含めて、本作で導入されたいろいろな趣向は面白いものが多いんだが、具体的な作品の出来にうまく反映していないのが弱みである。出だしなど、かなり細かく建物の描写をしたり、最終的に全フロアの平面図が入ったりと、実は本作の主人公は「建物」なんだということに、乱歩は気がついている。だからこそ、しっかり「三角館」と命名したわけだ。言い換えると乱歩としての最大の創作は、まさにこの建物を「三角館」と名づけたことにあるんだよ。

No.1232 7点 菖蒲狂い 若さま侍捕物手帖ミステリ傑作選- 城昌幸 2024/02/29 15:33
創元で出ている有名捕物帳シリーズでミステリ度が高い作品を集めたアンソロの一つ。
いや若さま侍ならこの企画に最適としかいいようがない。そもそもいわゆる五大捕物帳でも佐七と並んでミステリ色が強いシリーズである。もともと半七だってホームズの刺激から生まれたものだし、ワトスン形式を右門が採用し、平次だって物理トリック全盛のホームズライバルへの反発があったり、と捕物帳自体がミステリを横目で意識しつつ並行進化を遂げたジャンルなのである。
その中でも若さまは「隅の老人」を意識した、というのでも異色のシリーズである。ホームズライバルでも「隅の老人」は本当に別格だから、作者城昌幸のセンスが良すぎる。いや、考えてみれば戦前派名探偵というのは、明智由利帆村法水とホームズを意識したとはいえ没個性な推理機械ばかりなのだが、ヒーロー性とミステリをしっかり結びつけたキャラ創造という面では、逆に捕物帳の方に一日の長がある、とも言えないだろうか?
柳橋の船宿に居候して日長一日、床柱にもたれて片膝で行儀悪く酒を飲み続ける、身元不明の若侍、通称「若さま」。伝法な啖呵を切ってみせる江戸っ子だが、町奉行所与力も下には置かぬ身分を感じさせ、岡っ引遠州屋小吉が持ち込む謎を話を聞いただけであっさりと解明する名探偵でもある...いやいや、アクが強すぎる顎十郎や漫才トリオな佐七一家よりも、際立ったヒーロー性とキャラクター性を備えた、理想的な「名探偵」を実現していることが、不当なまでにミステリ史で無視され続けてきたのでは?とか評者は思うのだ。

まあいい機会でもある。今回この本では、25作のとくにミステリ色の強い短編が集合。このシリーズに納められた銭形平次や眠狂四郎だと「ややミス」「準ミス」程度の作品が主体になるけども、若さまなら「どこからどう見てもミステリ」が主体となる。密室ありミッシングリンクありアリバイ工作あり、さらにはロジック主体の「推理」と言っていい着想もいろいろ伺われる。
しかし、フェアに読者にデータを提示するのは、おそらく初出時の紙幅の制約からかできてはいない。それを言い出したらホームズもホームズライバルもあまりちゃんとこれが出来ているわけではないから、笑って許すべきだろう。

うんまあでも、とある書評で「読んだあと明るい気持ちになる」というのを読んで、評者も納得する。平次と違い勧善懲悪をテーマとはしないのだが、そのくらいに若さまの闊達なキャラに好感が持てる名シリーズである。ミステリ読者に捕物帳を薦めるのなら、「半七」「顎十郎」の次は「若さま」で決まり。

No.1231 5点 高校殺人事件- 松本清張 2024/02/23 14:39
清張って駄作はあっても奇作・怪作は珍しい作家だが(苦笑)、しいて言えば本作とか「神と野獣の日」とか「火の路」あたりが、そうかなあ。やはり清張は自分の資質がしっかり分かっていて、それを生かすようにしていた作家という印象がある。
だからかボードレールやらポーや国木田独歩やらという文学的リソースの参照に妙なリアルさがあるのに、高校生活にリアルさがないという困った小説になったわけだ。ジュブナイルなんて書くもんじゃなかった、ときっと思ったことだろう。

7人の少年少女探偵団のディスカッションはホームルームみたいだが、まあ探偵に集団討議はマッチしないなあ....皆さまも羽鳥さち子嬢ばかりがウケている(笑)まあそんな小説。それでもリーダビリティは最強レベルで、清張独特の落ち着いた文体が心地よい。しかし高校生の一人称だから、地の文から会話になると精神年齢がぐっと落ちる印象(困惑)
1950年代末の調布近辺が、まだまだ武蔵野の面影をしっかりと残している描写が興味深い。高校生詩人で被害者のノッポの家の商売が馬蹄の鍛冶屋!

No.1230 7点 青玉獅子香炉- 陳舜臣 2024/02/21 15:35
さて陳舜臣の直木賞受賞作。当時はミステリの受賞の難度が高いとされていた時代で、ミステリ作家でも非ミステリ系作品での受賞が多かった。陳舜臣は歴史小説も得意としたわけだが、実際にこの短編集は「広義のミステリ」というか、犯罪を媒介にして人間を描く、というタイプの作品集になっている。

中では「小指を追う」が誘拐事件と仏像窃盗の意外な接点を扱って、ややミステリ色が強いかな。重要文化財の仏像を「3000万円くらい価値がある」と紹介したことで、金無垢だと誤解して盗んだ少年院帰りの不良少年。結城昌治とか書きそうな話。他の話は太湖石(「太湖帰田石」)、サンダカンでのラワン材貿易(「年輪のない木」)、バーミヤンの石窟仏像(「カーブルへの道」)と、広くアジア文化を扱って陳舜臣らしい視野の広い話が続く。

やはり表題作「青玉獅子香炉」が力作なのは当然。故宮博物館歴史秘話といった体裁で、贋作を作った職人がその香炉に執着し続けて、故宮の文物と共に中国を彷徨する話。やはりスケール感がいい。「玉」って人肌のような潤いと滑らかさがあるもので、それを師匠の息子の嫁への恋情を重ねて、女性に玉を抱かせて細工をする職人の奇矯な仕事振りなど、妙に納得するところがある。故宮博物館に行ったことがあれば、さらに趣き深い作品になると思うよ。

中学生くらいの頃に評者この本を読んだことがある。そうしてみるとそれから45年くらいぶりの再会になる。「青玉獅子香炉」の主人公が自身の作品とのすれ違いドラマを演じるさまに、自分とこの本との関係を重ねていることに気がつく。個人的な話にはなるが自分自身を面白く感じている。

No.1229 6点 仮題・中学殺人事件- 辻真先 2024/02/21 11:21
さて本書も伝説の朝日ソノラマ「サンヤングシリーズ」の一冊。このシリーズでも主人公設定がやや児童書寄りな作品も多いが、中学生主人公の本書あたりは「超革命的中学生集団」と並んでラノベの元祖と捉えてもいいかな。とくに本書の場合には「青春」の香りが出ている。
「青春」ってけして明るいものじゃない。本作は「読者が犯人」というメタミステリの趣向があることで有名だし、アリバイトリックや密室もあってパズラーのお約束をてんこ盛りにしていると言ってもいい。しかし「ミステリ」を媒介にして、「青春の暗さ」を描いて「イタい」あたりが、今読むと意外なくらいに琴線に触れるものがある。中学生の年頃の、生と死の境界が脆弱な危うさが血なまぐささを避け得ない「ミステリ」に仮託されているかのようだ。評者も齢を喰ったのかな。小峰元の「ディオゲネスは午前三時に笑う」との共通のニオイを感じたりもする。
だから「ミステリ」をどう使うのか、ということに本作のオリジナリティというものがあるんだと思う。「読者=犯人」趣向自体はトンチみたいなものなのだが、それを通じて打ち明けられる恋心、というものもあっていいんだよ。

皆さまの評価よりも少しだけ良くしたい。

No.1228 5点 奥の細道殺人事件- 斎藤栄 2024/02/19 13:42
本作は「ミステリ論」的に重要な作品で、そこそこ有名作というイメージがあったが、今は完全に埋没しているようだ。うん、トリックのフェアorアンフェアという面で、今の人に読んでもらいたいと思うので、評者斎藤栄はあまり得意ではないが、今回取り上げることにした。

芭蕉「奥の細道」の研究者に殺人の容疑がかかった。しかし犯行当日、研究者には東北旅行の鉄壁のアリバイがあった。状況証拠で真犯人なのは間違いないが、同行者の証言によって犯行は不可能...

いや、犯行場所の錯誤とかそういう話じゃないのがミソ。前提条件に大きな作為があるネタなので、普通のミステリファンは「アンフェア!」というタイプ。だから「こういうの、どこまでやっていいの?」という線引きもマニアなら考えなきゃね...とは感じる作品なのだ。
斎藤栄でも初期作で、意欲的にパズラーを書いていた頃の作品である。今でいうメタミステリを「ストリック(ストーリー+トリック)」なんて造語で呼んでいた。だからこそ評者もこういうアンフェアと戯れる本作みたいな作品を「ミステリ論的に重要」とも評価するわけだ。
で、時代柄、公害問題+汚職なんて社会派ネタに、さらに斎藤栄の趣味の将棋(出世作が乱歩賞の「殺人の棋譜」)に加え、芭蕉忍者説を扱う歴史ミステリに、さらには終盤のアリバイチェックがトラベルミステリー風情をかきたてる...とまあ、欲張りにも程がある作品。その分長くなって八方美人なあたりが、埋もれた理由なのかもしれないな。

「線引き」という面でいえば、本作は芭蕉忍者説を扱って歴史ミステリの側面もある。まあ、評者「成吉思汗の秘密」を酷評した経緯もあって、歴史ロマンとは言ってもね、という冷静な面があるのは自覚している。だから、基準としては
・今生きている人に迷惑をかけない
・証拠の捏造をしない(客観的な根拠なしに怪しげな挙証に加担しない)
ならば、どんな荒唐無稽な「歴史推理」でも、フィクションと笑って済ませようとは思うんだ。「成吉思汗」はこれを犯しているから酷評しているだけだ。そもそも芭蕉忍者説は「どうやったら証明完了になるのか?」というゴール設定が現実的ではないから、学術的に取り上げるのに無理がある。結果、状況証拠の考察以外は、奥の細道を暗号解読して...という無理筋の推理を披露しているだけの話。しかも証拠となる解読キーを「火事で燃えた」と撤回しているから、あくまでフィクションの色付け程度に捉えるべきだろう。

というわけでメイントリックのアンフェア論争と、歴史ミステリの倫理と、重要な作品だと思っている。皆さまのご意見も伺いたい。

No.1227 5点 鉄の門- マーガレット・ミラー 2024/02/18 12:36
評者にだって、苦手作家というのは、ある。ミラーなんて本当に昔からそういう印象が強かったんだけど、改めて読み直して「苦手感」を再確認。いや女性作者好きだし、ロマサス好きだし...でもミラーはダメ。

まあミラーって「意識の流れ」とかね、確かに本作はそんなテイストの技法を多用しているんだけど、エンタメだからねえ、部分的な効果として使う程度のものだ。要するにホラー映画の意味不明で思わせぶりなインサートショットみたいなものである。そういうのに「カッコイイでしょう?」風な気取りが見えるのが、どうも印象が悪い。どうもこういう自意識過剰でそれを客観視しないあたりに評者の苦手感があるようだ。いや「気取る」のはいいんだよ、セイヤーズなんて気取った文章だけど、自己省察的なユーモアがあるからね。

まあ本作、そういう主観性が強い作品で、その中に謎を仕込んであるんだけど、おおよそ予測が付くレベルの謎。あと言うと、ダーシー巡査部長とかバスオム警部とか、ジャネット・グリーンとか端役まで心理を深掘りして、何か「イヤな奴..」風の印象が付いてしまうのに、やり過ぎを感じて印象が悪い。

考えてみれば「レベッカ」の焼き直しみたいなものなんだがなあ。
うん、評者はミラーは敬遠したい。

No.1226 5点 孔雀の道- 陳舜臣 2024/02/13 16:44
ほぼ50年前のミステリになる。幼少時の事件の真相と母の真の姿を、日英混血の女性が追い求めるプロットによって、東洋と西洋の「比較文化論」めいたことをしようとしたストーリーになるわけだ。今更で読んでみると、古くなるのはそういう「比較文化論」めいた部分の方....協会賞同時受賞の「玉嶺よふたたび」の方は日中戦争を扱いながらロマンに軸を置いているので、意外に古くなりづらいけど、こっちの方が早々と賞味期限が来てしまうのは、何というかねえ。
まあ本作で興味深いのはこのヒロインの母の肖像、ということになるんだが、次第に明らかになるその奔放さが、今では逆に「そう珍しくもないや」と感じてしまうとなると、戦中の時代、それに出版当時の「新しい女」風の衝撃が感じ取られないことにもなるようだ。うん、この母の生き方に共感する部分は評者は正直薄い。
それでも手堅く書かれた母もの小説にミステリで味わいをつけて、またメロドラマを絡ませるという骨格は、わかる。少女小説風な甘口さというものか。

(けど評者、神戸はご縁があるので、登場地名の土地勘があって、そういうあたりが妙に面白く感じる。ご当地小説でもあるな)

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クリスティ再読さん
ひとこと
大人になってからは、母に「あんたの買ってくる本は難しくて..」となかなか一緒に楽しめる本がなかったのですが、クリスティだけは例外でした。その母も先年亡くなりました。

母の記憶のために...

...
好きな作家
クリスティ、チャンドラー、J=P.マンシェット、ライオネル・デヴィッドスン、小栗虫...
採点傾向
平均点: 6.40点   採点数: 1325件
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