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[ SF/ファンタジー ] 黒い海岸の女王 新訂版コナン全集1 |
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ロバート・E・ハワード | 出版月: 2006年10月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
![]() 東京創元社 2006年10月 |
No.1 | 7点 | クリスティ再読 | 2025/06/04 11:40 |
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コナンが名探偵でも未来少年でもない層というのは一定、日本にもいる。海外ではこっちの方がメジャーなんだけどもね。というわけで本サイトでは若干周辺的かもしれないが、蛮人(英雄)コナンも取り上げようか。パルプ雑誌から始まったカルトヒーローだし、クトゥルフ神話ともかかわりもあるし、とそう大きくは本サイトの趣旨からも外れてもいないと思うよ。
要するにシュワちゃん出世作の映画「コナン・ザ・グレート」の原作とか、ヒロイック・ファンタジーというジャンルの創始者に当たる小説である。70年代くらいからハヤカワ・創元の両版元から刊行されてもいたわけで、日本でも長く親しまれてはきていたのだが、2000年代に入ってから創元での「新訂版コナン全集」とそれを基にした新紀元社版「愛蔵版英雄コナン全集」として復活することになった。昔のシリーズは実は補作・模作の問題があったこともあり、原作者ハワードのオリジナル原稿を尊重する意味で、再度スポットライトが当たったわけである。 現在の歴史が始まる直前の時代、ハイボリア時代。剣と魔法の乱世に覇王の座についた風雲児、キンメリアのコナン。その生涯の冒険の旅を描くのがこのシリーズ。20の短編、1つの長編、5つほどの断片が原作者ハワードの貢献。黒くねじれた長い髪、陰鬱な強面、日焼けした肌、くすぶった暗い青い目、と描写される北方人種キンメリアの戦士である。 でこのシリーズが本になる時って、執筆順じゃなくて「コナンの生涯」を語る時系列で編まれることが多いんだ。なので、創元新訂版第1巻の本書は若き戦士コナンの遍歴武者修行。「氷神の娘」「象の塔」「石棺のなかの神」「館のうちの凶漢たち」「黒い海岸の女王」「消え失せた娘たちの谷」の6短編+オマケ。 いや文章、いいんだよ。ある意味ラヴクラフトの愛弟子みたいなところもあって、濃密だが具体性の強い文章で怪異と冒険を描いていく。心理描写には重きを置かずに、客観描写主体のあたり、ちょっとしたハードボイルド気分。コナンには意外かもしれないがカウボーイ風のところもあるしね(ハワード自身西部劇が得意だったし)。「石棺」とか見ようによっては密室殺人(苦笑)。乗りかかった船が海賊に襲われたが、結局海賊と意気投合してその女王と懇ろになる「黒い海岸の女王」。海賊女王ベーリトの造型で有名な作品。「あたしは死のなかにいるけど、あなたが生きて闘っているかぎり、必ず、死の深淵から立ち戻って」と萌えるというよりも燃えるなあ。 あたしは、火と鋼鉄と殺戮の女王―おまえはあたしの王におなり! あと個人的には「館のうちの凶漢たち」が好きかな。邪悪な神官の暗殺に赴いたコナンがその館で出くわす四つ巴の闘争。 こうしてみると、コナンってハードボイルドの別角度での展開みたいに見えることもあるんだよ。 まあぼつぼつやっていきます。 |