皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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斎藤警部さん |
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平均点: 6.70点 | 書評数: 1303件 |
No.34 | 7点 | 杉の柩- アガサ・クリスティー | 2024/10/18 00:37 |
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■幼馴染の若い男女が「結婚しよっか」ともじもじ考えてるところに、幼いころ以来の再会となる薔薇のように美しい女(下人の娘)が現れ、静かな嵐を巻き起こし、やがて彼女は屍体となって発見される。
■その少し前に「幼馴染」の女の富豪の叔母 .. 病身でそう長くはないと思われていた .. が医者の見立てより少し早くに亡くなっている。 ↑ この二つの死の間に、何らかの連関性は在りや無しや。 疑いは「幼馴染」の女へと浴びせられる。 “冷静にとりみださず、できるだけ短く、感情を交えないで答弁をするということは、なんてつらいんだろう……” 構成の妙スピリットで充満した作品と言えましょう。「本格ミステリの退屈な部分」的なものは徹底排除。サスペンス小説のやり口から借りて来たのか? ハーキーも絶妙のタイミングで登場! その出遭いの相手の立ち位置も最高。 妙に開けっぴろげな恋人たちの会話は、まるでそこに人間関係トリックの新しい地平でも開けているかのように見えました。 「書簡」で埋められた章は、焦点を定められないくすぐりで満ちていました。 それでなくとも手紙の機微、企みが光る一篇でした。 思わぬ所で勃発する探偵合戦も愉し。 使用人階級?に重要人物が配置されているのも何気な何かの誘導かな。 他にも細々した手掛かりやらトリックやらナニやら、小味ながらプチケーキの様にカラフルに並んでいます。(落ちていたラベルの切れ端の件・・) 本作のミソというか大ネタは、アガサ自家薬籠中の「人間関係トリック」を、犯人そのものというよりむしろ、犯行動機の側面推しでナニしたようなアレでしょうかね。 私も実は虫暮部さんと同じ方向の真相を考えたんですよ(但し真犯人とその動機・葛藤については、虫暮部さんほど深くは洞察出来ませんでしたが)。「◯◯の秘密」的なアレについては、あからさまなような、ほのめかしのような、何とも微妙なヒントの出し方なもんで、積極的に「その手に乗るか」とまで行かずぼんやりと疑い続けて終盤いいとこまで来ちゃいましたね。 見事にヤラれました。 んで、裁判シーンのスリリングなこと!! まあ、真相というか真犯人の人間性がミステリ的にもうちょっとキラキラしていたら、より良かったかな。。 物語としては充分キラキラしてると思いますけどね。 特に結末は。。 ジェラードとランパードが同じピッチに揃った! と思って、よく見たら「ランバート」さんだったのは惜しかったですね。 |
No.33 | 6点 | 書斎の死体- アガサ・クリスティー | 2024/04/18 20:40 |
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“……の顔に浮かんだ微笑は、美しかったーー勇しく、もの悲しげで。”
「心から、ほんとに心から、あなたの幸福を祈っています」 アガサクらしい企画先行勝負・・・タイトル通りいかにも推理小説にありがちな設定で幕開け・・・の割にというか、だからこそなのか、慎ましく質実な事件捜査の歩みを、されどセミカラフルな描写を引き連れ読者に提示し続ける技は、ある種典型的クロフツのような落ち着きと信頼感を宿している。 地方名士宅の書斎にて若い金髪ダンサーの絞殺死体が発見されるというスキャンダラスな事象から始まる不可能犯罪?アリバイ崩し?の面白本。 犯人の、警察相手にちょいと無理筋な立ち回りには疑問符も付くが、、 序曲を爽やかに省き、手の速い事件紹介からスタスタ進むその様は、章立ての短さも手伝い実にプラクティカルなリーダビリティをリプリゼントしまくっている。 うむ。この真相には味がある。 「複雑な筋書ですな」 「ダンスのステップほどは複雑じゃありませんわ」 探偵ぽい人が何人も登場し存在感を示すのでどうなる事かと危ぶんだが、最後はマープル様がしっかり真相暴露の見せ場を奪って行きました。 或る意味お手本の様な完成度は、まるで無印良品『本格推理小説』のようで、PIL “Album” (a/k/a/ “Compact Disk”, “Cassette” or “mp3”) を思い出す。 ただ、かの盤ほどの対面説得力はプイと放棄しちゃってる感じの軽さも魅力。 そして最後のオチが強烈だ(短篇みたいだが私は好き)!! |
No.32 | 6点 | 動く指- アガサ・クリスティー | 2023/05/27 18:24 |
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風よ、教えてくれ。 私はこの物語で、クリスティにミスリードされていたのだろうか。。。
小さな田舎町(セントメアリミードに非ず)を混乱の渦に投げ込んだのは、連続する匿名の『誹謗中傷手紙』投函事件。やがて二人の人物が命を落とす。この町で療養中の傷痍軍人である独身青年は、同行者たる彼の妹にまで届けられた匿名の手紙 .. あなたたちは実の兄妹ではく云々なるいやらしい内容 .. をきっかけに事件解決へ向け、爽やかな恋愛模様を交えつつ、ゆるりと動き出す。。。。 ミス・マープル登場の遅いタイミングに、大らかなる旨味あり。 鮎川哲也の長篇(鬼貫や星影の登場にチキンレースの如くギリギリまで待たされがち、全てではないが)を思わせる。 大きな捻りを擁しているかの様であり、実はそうでもない?物語構造。 それも悪くない。 二周回って?意外性の枯れた?真犯人像。 だがそれもまた良し。 ロジック重視派でない私でさえ "もう少し推理が欲しい" と願ってしまう、論理の道筋の儚さ。 許します。 唐突な『冒険解決』も責めはしません。 最後の台詞、凄く良い。 日本人には?厄介な、二人のミス・バートン(Miss Burton & Miss Barton)が「主要登場人物表」に掲載される小説でもあります。 |
No.31 | 7点 | なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?- アガサ・クリスティー | 2022/04/08 06:50 |
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「でもいったい、どうしてここにいらっしゃったの?」
「あなたときっと同じ理由からですわ」 「ではエヴァンズがだれだか、おわかりになったのですね?」 この本が「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」や「なぜ、社長のベンツは4ドアなのか?」と同じコーナーに置いてあったら笑います。実際、今どきの古本屋やセレクト本屋でやりそうですけどね、そういう遊び。 ↑ 本作への感想と言えば、それで総括できます。 昔の日活で映画化したなら題名「若いヤングでぶっ飛ばせ」でいいんじゃないかと思うくらいヤングでカラフルな犯罪活劇でとにかく楽しくて、、、 と、まんまと油断させられて、思い込まされていたんですね、この上等な緩さはアガサの休日じゃないのかと(6点にするつもりでした)、あの章の衝撃のあのシーンにぶつかるまでは!! さて本作のタイトルと言えば、いわゆる世界三大ダイイング・メッセージとして「ブルータス、お前もか!」「板垣死すとも、自由は死せず!」(←板垣さんはこのあと生き延びました)の次に有名な台詞になるわけですが、この謎のエヴァンズさんが一体どこのどいつで(ファーストネームはギルなのか、ビルなのか、意外とマルなのか)、また彼/彼女に何を頼まなかったのか、頼むべきだったのか、普通だったら頼む所なのか、とりあえず生一丁頼むような感じなのか、という大きな謎を横目で追いつつ、とりあえずは目の前の連続殺人(自殺?未遂もあるでよ?)事件を解き明かすべく真っ赤なスカーフなびかせマンボズボンで奔走する若い男女(←ちょっと脚色、伯爵令嬢と牧師の息子)が最後にはドス黒い心を持った悪い連中をブッ飛ばしてギャフンと言わせるべく、仲間や偶然の力もチョイと借りて大活躍する一大スペクタクル劇場。 この男女、展開に応じて”しっかりしてる側”のキャッチボールというかパス交換があるのが面白い。一方的にどちらかが冴えてて主導権握って、というのではない所がね。 真犯人、意外なんだか意外でないんだか、と思ってたら、いや、やっぱりちょいと意外でした。 真相の反転具合もなかなか、予想外に派手にやってくれました。 いい意味で気が緩んだ甲斐があっただね。 男女の機微もうまい具合に収まって、と思ったらそれ以上、何ともベタな収まりに。 筆跡の件だけ(?)は、ちょっと都合良過ぎかと思いますが。。 うん、最後の一文、いいですね。 いろんな要素も手際よく詰め込まれて(後ろから殴られて気を失ったり、みんな大好き●神病院も登場するぞ!)、ヤングのミステリ入門書として実はすこぶるよろしいんじゃないかと思います。 そういや、いっけんご丁寧なストーリーネタバレにしか見えない目次の章立てにも、ささやかなナニがあったな。。 そして、登場人物一覧に、マ、マ、マサカのトリックが。。!! (確かに、ちょっと違和感あった..) |
No.30 | 8点 | ねじれた家- アガサ・クリスティー | 2021/10/05 20:50 |
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短い最終章、最後の台詞に大真相のほのめかしが宿る。そう、真犯人意外性より大真相の異様さで圧倒する小説。真犯人がものすごーーーい後になってやーっと暴露される構成も、この真相あってこその必然性、並びに演出有効性。まるでコンクリート打ちっぱなしの店のように露骨に晒された伏線ならぬ大ヒントの数々。探偵役不要(?!)の物語ながら、ある種の探偵役は主人公父親の警視庁副総監か。⚫️⚫️⚫️な真犯人が⚫️⚫️⚫️される結末も衝撃的。ちょっとアンチミステリな趣向も見え隠れ。なーんか探偵役らしき人物がずーっとふわふわしててピリッとしない筋運びだなー(そのくせ面白い!)、マザーグース感、館モノ感まるで無いし、と思ってたら、、そういう真相に繋がったってわけですか。。!! そこんとこ、真相分かってみればもはや不要だったんじゃないかと錯覚する大きなミスディレクションとしても充分成立していたんですね。際立って特殊な物語構造が魅惑の源泉です。本作もまた、アガサらしい堂々の企画一本勝負と言えましょう。(若い頃ほど露骨でないのも味がある) |
No.29 | 7点 | 牧師館の殺人- アガサ・クリスティー | 2021/05/26 16:16 |
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"いつか私が人を殺す仕事をやるとしたら、恐るべきはこのミス・マープルだろう。"
実質容疑者がいっぱいいて楽しいぞ!! 実質容疑者から外れる人々も含め、それぞれの思惑や事情、行動に人間関係のカラフルな錯綜が最後にピーーッと整頓される綺麗な風景は、涙が出るほど爽やか。 犯人の心理的偽装トリックはなかなか唸らせるものがあるけれど、如何せん同じ村に心理洞察のスペシャリストが住んでいたわけで不運でした。 随分とギャフンな物理トリックも堂々登場しますが、気にしなくていいでしょう(?)。 それにしても、こんな人の悪い犯人設定(犯人そのものじゃありませんよ)をミス・マープルのデビュー作にぶつけてくるなんて!! ユーモアの横溢も特筆したい所。 さて本書、妙にタイトルがバタくさいなあ青崎有吾の新作、なんて思って手にした人はいませんか。 |
No.28 | 8点 | 五匹の子豚- アガサ・クリスティー | 2021/02/12 18:09 |
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くっきり魅力的な目次構成は、見立て容疑者の趣向自体まさかの欺瞞じゃなかろうかと、愉しい疑義も唆しました。 十五年前の殺人事件(?)、死んだ父と、犯人とされた母の間に生まれた娘。。事件当時は幼い子供で今は成人。。が、その真相を改めて究明して欲しいとポワロに依頼、ポワロは容疑者を五人に絞って直接に話を聞きに赴き、また後日には文書に纏めて送らせます。文書を読み再検討した上で、も一度、各人に最後の質問を投げかける。。締めには依頼者を含め一同六人集めて大団円。。。。。。 無駄なく厚みある中盤を惜しみながら読み進み、なかなか顔を見せない終盤へゆっくりと入るにつれ、いっそいつまでも物語よ終わらないでくれと、人生最終読のミステリはこれくらい趣深い謎を残して読書中絶のまま死んでしまったらそれも良いなどとあらぬことを考えてみたり。 終わってみれば、向く方向が全く異なる二人の「永遠の■■」が生成された物語、だったというわけですか。。。 嘘を吐き通した筈の真犯人が実は漏らしていた心情吐露の部分、振り返るとディープ過ぎて泣けて来ます。真犯人は勘で薄っすら疑ってた人物で正解でしたが、真相全体像は、まさかの想像範囲外でしたね。。。。(「●●い」が鍵になってるんだろうな、というのはその通りだったけど、まさかここまで深く爪刺す要因だったとはね。。) 味覚と嗅覚がポイントとなる話でもありました。 tider-tigerさんもご指摘ですが、人情ドラマを隠れ蓑に(?)パズル性で押した凄みがある一篇ですね。 最後にポワロが指摘した「それ」の怖さ、連城の某短篇が頭をよぎりました。 |
No.27 | 7点 | 葬儀を終えて- アガサ・クリスティー | 2020/10/16 19:55 |
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「だって、リチャードは殺されたんでしょう?」 なる台詞の味わい深さよ。。。これに尽きるんじゃなかろうか! んん~そうねえ、レドヘリと言えば聞こえも良かろうが、ちゎっと無駄が多過ぎひんかのう、アレの。。とは思うんですけどね。。 でも死にネタがこんだけ豊富だからこその、真相隠匿にはなってるわけで。。 芸術ってのは、罪深いもんなんですねえ。。。。 いっけん地味な物語ではありますが、後からじわじわと迫り来るものがありますよ、特にその、犯罪動機の強さとリスクのやばさとのバランスだかアンバランスだか。。 登場人物一覧には入ってなかったけど、老獪な私立探偵ゴビィ氏の造形は実に味わい深かった。 いっやー、いかにもアガサクらしい、人を騙すニクい作品! んで最後に、この家系図、アンフェアやろ!(笑) なんちゃって。。。。 |
No.26 | 5点 | ポアロ登場- アガサ・クリスティー | 2020/07/25 20:50 |
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「すぐにこの問題を僕に任せたことによって、機転が利くということと、女性が高等教育を受けることの価値を証明したんだからね。」
国際色豊か、冒険味も目立つ、第一短篇集。 コージーな風合いも強く、時々あくびが出るが、軽い気分で試せるミステリ入門書として悪くないかも。 「素人はなんて馬鹿なことをするんだろう。」 いちばん思い入れあるのは『消えた廃坑』。 『チョコレートの箱』で締めるのと、そのエンディングがニクい。 ※弾十六さんの註釈を味わうために再読してみました。 |
No.25 | 7点 | ゼロ時間へ- アガサ・クリスティー | 2019/09/05 06:18 |
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犯人の意外さに参った! アガサって本当に、意外な真犯人を演出するアイデアやら手管の引き出しが奥深いですね。。 そして、おお、伏線の偉大なる公明正大さ! こりゃ「越えてやろう」って後進どもが群発もするでしょう。 事件の真相が構造的に意外なら、物語の結末、いや構造も骨格レベルで大意外。嘆息せずにいられません。 これはアガサならではの照れ隠しなのか、企画のカッチリした堅さをエモーションの柔軟さが上回っている感触も素敵です。。いや、それはやはり真相隠匿の一手段でもあるのだろうな。
ある箇所で、安心感ある思わせ振りにタイミングの意外性が垂直衝突! 「最後まで何が起こるか分からない感」の記録更新を、斬新な構成の力を借りて図ったような野心作ですね。 この、想像以上に表題に相応しい、最後の最後まで謎の圧迫と結末期待値のキラメキが持続し続けるであろう、サスペンスフルな予感。 女史の高名な代表作の隠画、ではないな、真逆トリックを使った作品か?!(大分類では同類になるでしょうが) 。。。もっと強引にグイグイ来る面白ささえあればなあ!! 充分面白いんだけどさ。。 これ言うと微妙にネタバレ匂わすかも知れませんが、ミステリ上の謂わば’一事不再理’をまさかのシンプリシティで一回だけこねくったようなナニのアレ、と言えるかも知れませんな、本作のメイントリック。 |
No.24 | 6点 | ひらいたトランプ- アガサ・クリスティー | 2019/02/20 23:12 |
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おお序文! 笑 乱歩さんの「心理試験」と非なるが似てるとこもある心理の探偵。動機の二重天蓋って構造か。。。。 筆に何の工夫も無ければ、第二の殺人の犯人、「君、そこで××したでしょ?」って秒速で勘付かれるところ、流石のアガサらしい有機的目くらましでなし崩しのクライマックスへ。 でも、単純幾何学模様の如く(ブリッジという舞台装置の力も借り)かっちりはまった物語構造がややかっちりし過ぎてパズル性プチ過多か。それでいて特に終盤あらわにされる人情/非人情模様とのくすぐったいアンバランスが惜しまれる。アガサの得意な企画勝負が小さくまとまり過ぎて圧倒まで至らなかったかな。いちばん意外だったのは、いつしかヒロインが換わってしまったこと、かも? ローダ役は水原希子で決まり! |
No.23 | 8点 | ナイルに死す- アガサ・クリスティー | 2018/09/26 05:32 |
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欺き尽くすにあたっての、疑心を唆る前以て感、じわじわデスティニー感、半端ナッスィンヌ。 さてこっから書くことはおそらくネタバレですが、、、、 見え透いたミスディレクションとカラフルな賑やかしを兼ねるように、本筋事件の犯人以外にも悪い奴や困った人がいっぱい掻き回してくれるのが面白い。 そして事件真相外の意外な人間関係やその展開も。それでもドラマに浸り過ぎずあくまで本格流儀の人物設定なり性格描写に抑えているのが良い。いかにもアガサクらしい、良い意味で彼女の典型過ぎる長篇だべっちょ。(ほんとは真犯設定に大きくもう一ひねりあっても良かったよ。。。。。本筋とそれ以外の事件の背景を大胆に繋げたりとかして。実際少しだけ繋げてるとこもあるけど)
代表作ですよね。 |
No.22 | 7点 | 鏡は横にひび割れて- アガサ・クリスティー | 2018/06/12 22:50 |
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ホェンダニット応用編、いつ●●が成立したか(長期と短期の噛み合わせ)。
忘れ得ぬ犯人像、鮮烈な動機。危険な含みのエンディング。 意外なタイミングの連続殺人に僅かの蛇足感もありますが、”村”やマープル達に訪れた経年変化の描写と合わせ技で、短篇で光りそうなワンアイディア(と呼ぶには残酷過ぎる背景だが)を長篇で活かす構成要素としてしっかり機能したと言えましょう。 間違い無く、味わいの一篇です。 |
No.21 | 7点 | 死者のあやまち- アガサ・クリスティー | 2018/01/30 02:52 |
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意外な被害者、そして、失踪。。 外国人。。。。 警察犬。。。?
失踪人の生死がいつまで経っても明らかにされない、妙にゆったりした進行の内に新たな死人は出るは(これが意外な人物!)、そうこうしていつの間にか終盤数ページに迫っちゃってるわ。。この心地よいズルズル感はいったい、何の企みに担保されているのかしら。。 そして最後は、深く長く静かな余韻。。。。(アガサ後期作ならではの味わいってやつでしょうか) 【以降ネタバレ含み】 クリスティらしい企画性(祭の殺人ゲームで被害者役が本当に殺される)が真相隠れ蓑のごく取っ掛かりでしかなかったり、物語のスターターであるオリヴァ婦人(ミステリ作家)が最後のほうはさして重要人物じゃなくなってたり、そのへんちょっとアンバランスだが。。結末の強さと素晴らしい余韻に絆されてそんなんどうでもよくなってしまいました。 靄のかかった薄ぼんやりした真犯人像(これがまた独特)よりも、真相の裏側を知っていた非犯人の方がやけにくっきりした人物造形、という人物配列の妙は面白いし、本作の場合は感動につながりますね。「入れ替わり」はありがちな方便だけど、それを取り巻く状況と心理の重なり合いが何とも切ない滋味を醸し出しており、好きな一篇であります。 |
No.20 | 6点 | エッジウェア卿の死- アガサ・クリスティー | 2017/04/29 01:45 |
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エェイなんだえ、このメタ仄めかしの何やらギラつく技法! しかし終わってみればその真相は一抹の物足りなさを引き摺ったまま。。カッチリした企画に演出の肉付けが薄かったとでも申しましょうか。“やや雑に破かれていた手紙の一枚”に関わるトリックは小味演出ながら忘れ得ぬ。ここにロジック側からもいっそクイーン風にガッツリ重く対応してもらったら更に良かった。 執事の正体。。。 この中途半端げな物語にひと捻り半を加えて理想形に仕立てたのがディヴァインの諸作であったりアガサの名作群だったりするのではないかな? なんて思っちゃいます。しかし決して詰まらなくはない、離したくはない(T-BOLAN)。 最後に置かれた手記は良かった。これで1点上がった。 |
No.19 | 8点 | 無実はさいなむ- アガサ・クリスティー | 2016/10/12 06:01 |
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離れ島の邸宅に住む、血の繋がらない子供達(みな養子)だらけの大家族。家長である「お母さん」が殺害されたのは一年前。子供達の中でも一番の問題児が犯人として挙げられ、やがて獄中で病死。。。 そこへ「犯人は実は●●では無かったんです。」とアリバイ証言を手土産にやって来た、一人の著名な探検家。ところが、大家族を喜ばせる筈のこの無実の証言が彼等を苛(さいな)み始める。「では、いったい家族の中の誰が真犯人だったのか」と。。。。
こんな舞台背景で、苟(いやしく)もクリスティなら、犯人の設定に一定以上の切なさと幻惑のダイアモンドダストを期待するはずだ。まして本作の様な如何にもモノありげな書きっぷりの長篇なら尚更。その上、誰が(どちらが)探偵役か直ぐには分からない状況、まして探偵役候補の片方(探検家)はひょっとすると真犯人かも知れない、とかなりの深さまで疑えそうな物語の雰囲気だ。 ある時点での恋愛感情云々、そして動機と機会云々、そいつらが絶妙のタイミングと角度でクロスし反射する。これがアガサクオリティ、と膝を叩くこと六、七回。 メアリーがポリーと呼ばれるあたりではキンクスの「ポリー」が頭を流れた。 ♪ポリーはお母さんの言うこと聞かない~(和訳) しかし終盤もいい辺りから「お父さん」の台詞が大沢悠里の声で聴こえて来るのには参ったな。 「夢の中では、どんなふうに殺しました?」 「ときどきはピストルで撃った。」 で、犯人設定はどうだったかと言うと、、 ムフフ、言えませんよ。 流石ですね! としか言えません。 |
No.18 | 7点 | 白昼の悪魔- アガサ・クリスティー | 2016/07/19 12:09 |
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有り体のミステリだったら十中八九あのジョニー(仮名) 。。って誰や? 。。が犯人! と序盤の決め打ちで満場異論無し(!?)の所だが。果たして。。。
舞台が語られ、殺人が起き、取り調べは順次進み、すっきりシンプルな物語構成。ところが終盤に至り何かしら深い所から引っ剥がされそうな暗雲の予感が。。。その挙句に解き明かされた真相は、意外と、絢爛絵巻の趣とは全く異なる堅実さ溢れるもの。それでも小説力の強さに牽引され、アガサクにしては地味目の話ながらもかな~ぁりの面白さ噴出。 ただ、中身が地味なのはOKだけど、題名のギラリ感と合ってないかもね。(原題も) 【ネタバレ】 終わり近く、ポワロが語る折角のダミー解決でもうちょっと引っ張っても。。とは思いましたが、あんまりそっちを強調すると肝心の真相の方が霞んでしまうのかも知れません。ダミーの方が、心理的により強烈で残酷で、意外性もありますものね。 |
No.17 | 5点 | ポワロの事件簿1- アガサ・クリスティー | 2016/05/25 11:44 |
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西洋の星の事件/マースドン荘園の悲劇/安いマンションの事件/ハンター荘の謎/百万ドル公債の盗難/エジプト王の墳墓の事件/グランド・メトロポリタンの宝石盗難事件/誘拐された総理大臣/ダヴンハイム氏の失踪/イタリア貴族の事件/遺言書の謎
(創元推理文庫) 目次を見ると何だか安心して楽しめそうな表題たちが。。コチャコチャと色とりどりに並んで楽しそう。 じっさい読んでみると何気な凡庸さをちょいちょい感じるが、まぁじゅうぶん楽しめます。 |
No.16 | 6点 | 予告殺人- アガサ・クリスティー | 2016/02/15 15:48 |
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幸いこれは相性の良いクリスティ。犯人”だけ”は瞬殺で見えてしまったけど、それでも充分に楽しい”追い詰め読み”が出来ました。言い間違えの伏線はちょっと際どいモンだったスけど、動機、事件の背景は最後まで上手に隠蔽されましたねえ。連続殺人の中に一つ、その動機を単純に「●●じ」と呼ぶのが憚られる微妙な経緯のものがありますね、記憶に残ります。
(以下音楽ネタ) それにしても主要登場人物の「ブラックロック」なる姓はバッドブレインズあたりを連想させずにはいられませんでした。ROCKじゃなくてLOCKだけど。あと、その人のファーストネーム「レティシア」が井上鑑の凄く好きだった同名曲を思い出させずにいらりょうか。。(ほんとはそっちの方は旧いフランス映画『冒険者たち』のヒロインから取ってます) |
No.15 | 3点 | メソポタミヤの殺人- アガサ・クリスティー | 2016/02/15 15:07 |
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どうしてなんだろうなあ、ホントウにおもしろくなかった。作者が色々面白いこと繰り出して来るのは感じ取れるんだけど、ビニールシートの向こう側で空回りってとこでね。エキゾティックな舞台設定の妙だとかも、おかしなほど心に入り込んで来ない。
どうしてこう、クリスティさんとは作品によって相性良し悪しの格差がすさまじく不安定に大きいのか、本当に謎だ。他人様にはどうでもいい事でございますが。(とは言え平均点下げちゃってごめんなさい) |