皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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斎藤警部さん |
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| 平均点: 6.69点 | 書評数: 1433件 |
| No.353 | 6点 | 親しめぬ肌- 佐野洋 | 2015/10/24 06:32 |
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| ばらばらバラエティな感じの短篇選集。軽くエロいのはいつのもの通り。SFもちょい入ってる。そっちも軽くエロい(笑)
かたつむり計画 /無罪判決 /傷 /火と煙 /哀れな夢 /親しめぬ肌 /不毛の設計 /烏鳴き /牽制死球 /ふたりの妻 /異臭の時代 (講談社文庫) |
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| No.352 | 8点 | 第二の銃声- アントニイ・バークリー | 2015/10/23 17:59 |
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| 新本格ですね。
殺人劇が生んだ現実の殺人に、自白合戦x推理合戦の複雑怪奇な噛み合わせがね、多重解決の退屈な空回りに陥らず本当にこの人は上手いなあと思わせますね。色んな違和感や齟齬にいちいち意味があってね。 冒頭ピンキーとヒルヤードの間で取り交わされる探偵小説論には泣けるくらいの旨みがありましたね。 ジョンが負けたと思ったとシリルが思い込んだ地の文のあたりからゾクゾクする違和感が醸造し始めたね。。殺人劇ごっこの言い出しに乗っかって、えも言われぬ燻し銀の鋭い指摘を会話文で言わせまくり。。アハハ。(← そんなシーン本当にあったっけ??) あと、本作の思い切りの良いユーモアは私かなり好きですね。アイルズ名義の「殺意」に漂ってた中途半端ブラックユーモアよりずっといい。ブランドにさえ通じるかも。しかし、被害者も困った奴だが語り手も相当に嫌な奴でないか?ヒルヤードには好感が持てるぞ。 それにしてもこの作者は本当に企画で仕掛けて来るのが好きなんですね。クリスティが上向きにぶち上げる派手な企画好きだとしたら、バークリーは前向きに深堀りし続ける滋味の強いそれという感触。「手記」を扱うマナーからして両者の違いははっきりしています。 ところでこの小説、題名に『第二の銃弾(THE SECOND SHOT)』って、何故そこまでこだわるんだろう「その事」に殊更に、って読んでる間ずっと思ってたんだけど、読了してみて嗚呼成る程ね、と。 そぃや「弁護側の証人」も似たような経緯で納得したものだったなあ、題名付けの機微に。 (ここからちょっとネタバレか) ゲストに呼ばれた三人の推理作家が結局全員チョイ役で終わったってのが何とも、地味ながらなかなかの皮肉を感じましたよ。 |
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| No.351 | 8点 | 死者はよみがえる- ジョン・ディクスン・カー | 2015/10/23 12:49 |
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| これは相当に好きだ。出だしも中盤も驚きの結末も文句なし。 あまりに意外な犯人は、、本気(マジ)で分からなかったから、真実(マジ)驚いたな!! でも結末だけの作品じゃないからね、最初にも書いた通りのっけから乗せられてずーっと面白いお話なの。それでいて最後にアレでしょ、こりゃひっくり返りますよ。。 「火刑法廷」なんかよりずーーっといいね。 | |||
| No.350 | 5点 | 曲った蝶番- ジョン・ディクスン・カー | 2015/10/23 12:40 |
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| 本屋の背表紙の題名と著者名だけ見て、密室物かとしばらく思っていたものです。固く鍵の掛かった書斎のドアを探偵警察家の者総がかりの力づくでぶち破ったら、はずみで蝶番がひん曲がってしまいました。しかし、よく見ると、ありえない方向への曲がり方をしており。。 みたいなね。
いっそ本当にそういう物語だったら良かった(?)。不可能事象の解明はなかなかに拍子抜け。とは言えどこか土埃の匂う古風な因縁物語の雰囲気は悪くなく、読ませてはくれる。 |
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| No.349 | 4点 | 火刑法廷- ジョン・ディクスン・カー | 2015/10/23 12:28 |
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| 好みに合わない古典名作の一つ。 最後のどんでん返しは、物語を引っくり返すというより、物語のおしりにくっついたオマケにしか見えません。「なんちゃって!」的な。
お話自体、さほど惹かれるものは無い。 カーは好きだがこれはときめかん。 |
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| No.348 | 6点 | 密閉教室- 法月綸太郎 | 2015/10/23 03:19 |
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| 「雪密室」に較べて文章や物語自体の青臭さが鼻についてしまうのはミステリ興味の牽引力が少し弱かったのか、否か。。 されど本格好きなら読んで損は有るわきゃなかろう。それなりの高得点付けちゃうよ。 | |||
| No.347 | 7点 | 雪密室- 法月綸太郎 | 2015/10/23 03:12 |
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| 先達の「企み足跡」各作(特にやっぱり白い僧院)に較べると、謎と解決の複雑化は流石にきちんとキメてくれてるが、驚きや納得や感動と言ったよりホット部分ではむしろ少し弱まってるかな。日本人にありがちな事。
でも面白く読めたので問題無し。足跡トリックの発展に寄与したと思います。おなじみの青臭い文章もさして気にならず。 最後にネタバレを言うと、偶然を上手に使いましたね。 |
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| No.346 | 7点 | 天使の傷痕- 西村京太郎 | 2015/10/23 02:09 |
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| 長篇第一作「四つの終止符」に続き若き京太郎が世に問うたハード社会派サスペンス、いや社会派本格推理と呼ぶべきか。
「終止符」ほどの唯一無二な雰囲気は無く、普通の推理小説然として進むが、事件そのものと社会背景、その両方の謎解き興味が読み進むほど強烈に襲い掛かる名編だ。社会派サイドのテーマはやはり重い。京太郎の名を未来から消さない為にも、君は読め。 |
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| No.345 | 7点 | イヴが死んだ夜- 西村京太郎 | 2015/10/23 01:56 |
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| ふとももにバラの刺青が印象的な若い女性が殺された。続いて同様の刺青を持つ女性が自殺。渦中に十津川警部の婚約者が巻き込まれるが、彼女と亡くなった二人を結ぶのは或る一人の男。。。悩める十津川警部はなんとインターポール(國際警察)への派遣が終わったパリ帰り(!)。いつにも増して、表情は苦い。警視庁と岐阜県警の合同捜査は躍動的。十津川警部の私生活を侵す影に悶々としつつ、スピーディーな展開の果てに見出した結論は如何。
暗く重い読後感をもたらす、サスペンスフルなハード本格長篇。 初期京太郎が好きなら、行け。 |
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| No.344 | 6点 | 殺人処方箋- リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク | 2015/10/22 12:34 |
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| これはTVで観るよりノベライズが先だった。中学の頃読んだ。周りに好きな奴も多かった(土曜のドリフを負かしたのはひょうきん族よりコロンボが先)。借りても読んだがこれは自分で買った。よく言われるように”異色の処女作”。だが土屋隆夫の「天狗の面」ほど極端じゃあない。その後のコロンボと違う、とされるラスト近くからのストレートな言葉攻めシーンはTVよりむしろ小説のほうが激烈でヒリヒリ来る。ミステリの骨格だけ取ったらどうって事も無い話なんだけど、やっぱり、達人コロンボ警部が魅力の底なし沼なんだよね、最初のほうのおとなしいシーンも、最後の荒々しい見せ場も。ここが永遠の始まりだ。 | |||
| No.343 | 7点 | 構想の死角- リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク | 2015/10/22 12:21 |
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| 「自白のホヮイダニット」ですよねえ~、これはちょっと、切ないです。 厳密に言うと「何故犯人は、第一の殺人の方を自白したのか」というなかなかの趣向。 遡ればコロンボによる(第一の殺人も第二の殺人も同時に)「自白させのハウダニット」だね。こっちはちょっと、優しくないと言うか、辛辣だねえ。
凡庸な書き手なら”第一と第二の殺人方法に違和感が云々。。”でプロット完成に満足してしまいそうな所、この作品が温存する’もう一押し’は、”倒叙ミステリが如何にして結末まで謎を秘め通すか”という問いに対する回答のお手本だね。 全体通して見ればオリジナルTV版のスピルバーグ演出が光ってるとも思えますが、上記の自白を巡る機微の描写はね、小説の方がより胸に刺さると思います。 時々「高層の死角」や「抗争の刺客」と混同する人がいますが「香草のパクチー」と間違える人は多分いませんね。 しかし第二の被害者の殺され損ぶりと来たら! 長いコロンボ・シリーズの中でも記憶に残る側杖被害者。 |
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| No.342 | 7点 | チャイナ蜜柑の秘密- エラリイ・クイーン | 2015/10/22 11:52 |
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| 賑々しく華があって楽しい本。ストーリーが愉快に弾け飛ぶよな最後のひっくり返しがまた痛快。これは面白かったな。
(これよりネタバレ) 物語の構造で見ると、例の「安部公房」いや「あべこべ」趣向が単に現場偽装の手段なわけでもなく、ちょっと興味深い多重構造の仕掛けになっていますよね。 |
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| No.341 | 5点 | アメリカ銃の秘密- エラリイ・クイーン | 2015/10/22 11:41 |
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| 国名シリーズ第6作にして晴れて母国開催。
殺しの舞台は派手だが、読み物として何処か地味だな。 隠し場所トリックにゃ驚かないが、犯人設定はなかなかのもの。それを突き止めた手掛かりとロジックの交差ぶりも悪くないぜ。 |
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| No.340 | 8点 | 九マイルは遠すぎる- ハリイ・ケメルマン | 2015/10/21 20:12 |
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| 表題作の大胆緻密なロジック交響詩にゃぁ感服横丁千鳥足ってなもんよ!! ちっともロジッカーじゃない評者もこのお話単体には満点を投げ銭せずにいられないね。展開される一連は決して気丈な苦労人、もとい机上の空論なんかじゃなくってね、じゅうぶん実生活に適用出来るリアリティのあるナニですよね。あン? 余計な事は言わないように、他人の余計な事は聞き漏らさず解釈し漏らさないように、ってなわけでね。最後、しっかりちゃっかり現実の事件を見事に引き当てる所がまた最高だね!
他の作品は記憶に無い! 悪くなかったと思うが? |
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| No.339 | 8点 | りら荘事件- 鮎川哲也 | 2015/10/20 18:37 |
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| 物語の導入から雰囲気キラキラですよね。CCM(クローズド・サークル・ミステリ)の良い所ばかりさり気ない細部にそこかしこ。
MRJ(魅力的な女子)が出て来ないという不満をお持ちの向きもありましょうが、そこは「朱の絶筆」の方で埋め合わせしていただくとして、好みはあれどひとまずイケメン探偵HRZ(星影龍三)で我慢していただきたい。って意味分からねえ。 さて現実性とか人間性とか全く意識の埒外にすっ飛ばしてしまう本格の筆力は流石です。と言うよりちゃんと書けてると思いますけどね、書き過ぎて雰囲気壊さない所まで。 ただ、結末にもっとQTDC(驚天動地)のひっくり返しがあったなら。。と個人的には惜しまれます。それと犯人の意外性にもう一ひねり欲しかった所。終盤にかなり迫る所まで堂々の満点候補作でしたが、「SDNN(そして誰もなくなった)」と同様、その二つの大きなマイナスが採点に響きました。が、言うだけ野暮ながらSDNN同様RSJの方も必読の激烈快楽作です。ATの胆力をひしと感じていただきたい。 お花のUCK(薀蓄)も美味しくいただきました。 |
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| No.338 | 9点 | 罪と罰- フョードル・ドストエフスキー | 2015/10/20 18:03 |
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| 本格じゃないですよね。直接心理描写の塊でハードボイルドじゃ有り得ないし、叙述の仕掛けも無けりゃ(あ、ネタバレ言っちゃった)時刻表トリックも、針と糸の密室さえ出て来ない、あれ、出て来るっけ? ま社会派っちゃあ社会派かな。とてつもなく重い作品ですけどね、若き犯罪者の徹底的葛藤地獄とそこからの救済を描いた、最高に良い長篇小説ですよ。終盤近くから、頭の中で名も知らぬ雄大な交響詩が滔々と流れ続けますよ。 | |||
| No.337 | 5点 | ドーヴァー4/切断- ジョイス・ポーター | 2015/10/20 17:55 |
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| うっかり読み流して「元祖・日常の謎」かぁ、なんておかしな結論付けないように!
「奇妙な味」短篇向きの素材を扱っている様な気もしますが、これをわざわざ長篇に引っ張った故のまさかの結末意外感ですよね。 ネガティヴユーモアもなかなかで、まずまずのなかなかのまぁまぁな読み応えでした。 |
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| No.336 | 6点 | メルトン先生の犯罪学演習- ヘンリー・セシル | 2015/10/20 02:08 |
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| これが存外面白くてねえ。。。 先生のスットコ講義録を一章々々集めただけの古臭いオムニバス短篇集だと思ったらこれがトんだ大違いの見立て違いの見当違い。(余談ですが真面目な席で「種違い」を間違えて「竿違い」と言っちまうほど恥ずかしい言い間違いは他になかなか無いですな、特に女子だと)ま予想してた通りの犯罪小噺集には変わり無いんですが、小噺だけじゃなく「地」の部分もね、単純に先生が講壇に立って一席ぶつ、というだけじゃなくてちょっと事が入り組んでるの。先生の「頭の事情」もあるし。。意外と不道徳で危険なスリルも漂う作品集ですよ。多少は退屈する場面もあるけど、決してありふれちゃいない素材と切り口で、辛口なのから甘いのから、ふざけてるのやちょっぴりふざけてるのや大いにふざけてるのまでバラエティに富んだ短い物語がいっぱい詰まっているわけでありますし、ミステリの人なら読んで損は無いと思いますよ。 | |||
| No.335 | 7点 | ミステリー総合病院―医学推理小説傑作選- アンソロジー(国内編集者) | 2015/10/20 01:41 |
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| このアンソロジーにはヤられましたねえ、若い頃。 編者がまた、佐野洋と来ちゃうわけですよ。
医学知識とミステリ執筆、両方の専門家が(ほんとは医学の専門家は一部ですが)医学素人読者の興味を唆って止まない体乃至心のダークサイドに纏わる興味津々の犯罪物語達は暗闇の中の閃光を垣間見る様なスリルの連続で、夜中おトイレに起きるのをちょっとだけ怖いものにしてくれます。 思えば不木師匠、木々師匠、風太郎師匠に出遭って心奪われたのも全てこのアンソロジィの暗い病棟の中の出来事でした。記憶違いでなければ。 小酒井不木「直接証拠」 木々高太郎「網膜脈視症」 山田風太郎「眼中の悪魔」 岩田平太郎「渦の記憶」 結城昌治「影の殺意」 三好徹「潜在殺人」 佐野洋「満月様顔貌(ムーン・フェイス)」 渡辺淳一「血痕追跡」 夏樹静子「暗い玄界灘に」 菊村到「悪魔が忍び込む」 草野唯雄「甦った脳髄」 森村誠一「鈴蘭の死臭」 (カッパ・ノベルス) やっぱり医学系はね、まるで心理トリックの様な虚を突く物理トリックの可能性が広くてね、愉しいですよ。精神医学を応用する場合だと、心の在り様や動きがまるで物理トリックの様に扱われたりする、そんなスリルもあるしね。 |
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| No.334 | 6点 | 太鼓叩きはなぜ笑う- 鮎川哲也 | 2015/10/20 01:07 |
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| 相当に遠い昔、気まぐれで初めて手に取ってみた鮎川哲也。徳間文庫の新刊だったと思う。
ところが相性いま一つ、次の一冊に手を出すまで優に十余年を費やしてしまった無念の一冊目。 と言うか鮎川さんの中でもこの「三番館シリーズ」は今でもさほど強く心惹かれるものではありません。流石に詰まらなくはないものの、「ああ、なるほどね」、とそれなりに感心する止まりで感動へ至らず。堂に入ったユーモアはなかなかのものだけどね、物語がなんかチマチマしてますね、チマチマの振りして実際の所はデーーンと構えてるぞ、みたいな、鮎川氏の特にノンシリーズ短篇によくある空気感は無くて、本当にこじんまりしてる寂しい風情。 私立探偵氏がいちいち自分の心情を面白おかしく吐露する(本当の探偵役であるバーテン氏は違うけど)というあまりに逆ハードボイルドな文章が抵抗あるのかも。いえ何も私は鮎川氏にハードボイルドを求めちゃいませんがね。 まあ、立ちっぱなしなのに安楽椅子探偵役のバーテンがいて、伝統的本格推理で言うところの足で稼ぐ警察役の私立探偵がいて、依頼人には既に間に一枚入った形の仲介役である弁護士がいて、更にその後ろにやっと大元の依頼人がいる、というなんだか皮肉でややこしい体制は面白いですよね。更に言えばこのシリーズの真の主役は探偵役ヒーローのバーテンではなく、ワトソン役(=「わたし」)にして間抜けな警官役の私立探偵(へんな言い方)の方じゃないですか? もし彼が「引き立て役クラブ」に加入したら「オマエ本当は主役だろ!」って追い出されるんじゃいかって心配しちゃいます。 ところでこの徳間文庫は巻末解説が(当時は名前を知りもしなかったが)かの中町信氏! 氏が病床にあって出遭った「黒い白鳥」を、古本屋のおやじのせいで犯人はおろかメイントリックまで大いにバラされて憤慨中だったにも関わらず大変面白く一気読してしまった、それが起爆剤となり推理作家を目指し始めた、みたいな文章は何度目を通しても本当に魅力的です。ここで遭遇した「黒い白鳥」なる長篇名がずっと記憶の片隅(よりも少し中央寄り)に在って、十数年の歳月を経て私もやっとそれを読むに至ったという事の次第であります。嗚呼。 色々言いつつ6点も付けちまった。 この第一集はやっぱり悪くない。 |
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