皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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メルカトルさん |
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平均点: 6.04点 | 書評数: 1835件 |
No.25 | 6点 | ローズマリーのあまき香り- 島田荘司 | 2023/07/12 22:40 |
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世界中で人気を博す、生きる伝説のバレリーナ・クレスパンが密室で殺された。
1977年10月、ニューヨークのバレエシアターで上演された「スカボロゥの祭り」で主役を務めたクレスパン。 警察の調べによると、彼女は2幕と3幕の間の休憩時間の最中に、専用の控室で撲殺されたという。 しかし3幕以降も舞台は続行された。 さらに観客たちは、最後までクレスパンの踊りを見ていた、と言っていてーー? Amazon内容紹介より。 『暗闇坂の人喰いの木』以降の、年一回ペースで刊行されたいた頃のシリーズ作品と比べると、やはり随分見劣りしてしまう感は否めません。ただその構成は相変わらず読み応えがあり、長いけれど冗長とは感じませんでした。 冒頭の謎の提示は強烈で、文句なく読書欲を掻き立て、難なく惹き込まれます。一体何が起こって、どうすればこの様な不可解な謎を合理的に解決できるのか、いやでも期待は高まります。 しかし、真相は余りに貧弱でそれはないんじゃないの?と思わずにはいられませんでした。それに解決編があまりにあっさりし過ぎでしょう。何だかフィンランドの教授とかになって偉くなった御手洗はそれに見合った人格者で、かつての変人ではなくなってしまって往年の作品のファンからするとちょっと淋しいかなと思います。 まあ、Amazonの評価はあまり参考にしない方が賢明ですね。彼らは懐かしさのあまり過剰評価している気がします。いずれにせよ、定価で買って読む程の作品ではなかったです。ミステリとしては残念でしたが、それ以外の所での読み物、社会派の一面やメルヘンの世界に飛び込んだような記述、ユダヤ人と日本人のくだりは面白く読めました。 |
No.24 | 6点 | 新しい十五匹のネズミのフライ- 島田荘司 | 2020/03/06 22:33 |
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「赤毛組合」の犯人一味が脱獄した!ワトソン博士のもとに、驚天動地の知らせが舞い込んだ。だが肝心のホームズは重度のコカイン中毒で幻覚を見る状態…。犯人たちの仰天の大計画とは。その陰で囁かれた謎の言葉「新しい十五匹のネズミのフライ」とは。そして「赤毛組合」事件の書かれざる真相とは。果たして、われらがホームズが復活する時は来るのか―。さまざまなホームズ作品のエッセンスを、英国流のユーモアあふれる冒険譚に昇華させた大作。
『BOOK』データベースより。 叩き台となっている本家の『赤毛同盟』(本作では『赤毛組合』表記)、を読んでいた方がより楽しめると思いますが、未読でも意味不明にはならないのでご安心を。タイトル通り、ホームズではなく助手のワトソンが主役であります。事件解決に一役買っているのは無論ホームズですが、一応全編通して冒険しているのはワトソンです。しかしやはりホームズの個性は強烈で、出番は少ないもののかなりの異彩を放っているのは間違いありません。特に終盤退院してからのエキセントリックな言動は本領発揮と言ったところでしょうか。『赤毛同盟』自体が面白かっただけに、更にその先に意外な真相が隠されている本作が面白くないはずがありません。 ただ、「新しい十五匹のネズミのフライ」の謎だけで最後まで引っ張るのは、やはりちょっと強引だったのではないかと思います。それなりの大作の割にトリックがショボかったのもマイナス要因ですね。それを補って余りあるストーリーテラーぶりは流石だとは思いますが。 島荘は近年かつての輝きを失いつつあり、語り手としての熟練度は増しているように思いますが、トリックの独創性やスケールの大きさが枯渇している気がしますね。今後もまだまだビッグネームに恥じない作品を期待したいですね。本作でもらしさは見られるものの、やや存在感の希薄さを感じます。 |
No.23 | 6点 | 鳥居の密室 世界にただひとりのサンタクロース- 島田荘司 | 2018/10/26 22:14 |
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完全に施錠された少女の家に現れたサンタ、殺されていた母親。鳥居の亡霊、猿時計の怪。クリスマスの朝、少女は枕もとに生まれて初めてのプレゼントを見つけた。家は内側から施錠され、本物のサンタが来たとしか考えられなかったが―別の部屋で少女の母親が殺されていた。誰も入れないはずの、他に誰もいない家で。周囲で頻発する怪現象との関連は?
『BOOK』データベースより。 元が短編なので内容の希薄感は否めません。しかしそこは島荘、ドラマ性やストーリーテリングぶりは堂に入っています。 鳥居をメインにしたトリックは想像の域を超えず、驚くようなものではありません。どちらかと言うと東野圭吾のガリレオシリーズを想起させます。しかも、御手洗が謎を解く前に真相が読者に明示されるため、彼の活躍ぶりがいかにも中途半端で宙ぶらりんな感じですね。もう少し書き様があったようにも思います。 御手洗が京大生当時の事件の上、出番が最初と最後だけなので、キャラの濃さが全く伝わりません。大学時代はそこまでエキセントリックではなかったってことでしょうか。 まあ島荘らしいいい話ではありますし、容疑者の揺れ動く心情や感動のシーンなどが読みどころとなっていると思います。でも、ミステリとしては弱めです。 |
No.22 | 7点 | 天国からの銃弾- 島田荘司 | 2017/12/30 22:17 |
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再読です。
約二十年ぶりに読みましたが、内容は表題作のほんの一部以外はまるで忘れていました。そのせいで、予想以上に楽しめました。島荘、さすがの安定感で安心して読めました。 『ドアX』 まさかと思ったら、そのまさかでした。滅多に使わないと思っていた島荘にとっての禁じ手が見られます。希少価値ありではないでしょうかね。面白いです。 序盤から、そんな完璧な女いないだろうと思いながら読み進めました、怪しい雰囲気は十分感じられるんですけど。意外な展開にやられます。 『首都高速の亡霊』 冒頭からいきなり手に汗握るような緊迫した場面です。その後、中盤はやや冗長ですが、お得意の社会派の側面をちらりと見せます。結局、偶然に次ぐ偶然に唖然とさせられますが、まあリアリティより小説としての面白さを優先させた形になっているわけですね。 『天国からの銃弾』 やはりこれが一番の出来です。無駄な描写が一切ないのはこの作者にしては意外と珍しいのではないでしょうか。ただ、真相に到達するまでの過程が端折って(思い浮かばなかったのか)あり、そこがやや不満ではありました。 しかし、ある条件下で風俗店の屋上にそびえ立つ自由の女神像の目が光る謎は、とても魅力的で、ストーリーを引っ張る牽引力となっていますね。ラストの畳み掛けるような展開もスピード感があり、主人公の老人がクールでカッコいいです。 |
No.21 | 8点 | 斜め屋敷の犯罪- 島田荘司 | 2017/08/26 22:11 |
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プロの作家のみなさんにはとても受けが良いらしく、綾辻行人氏などは『占星術殺人事件』よりも本作のほうが好みに合っているとし、高評価を与えている本作。しかし、私的にはなかなかに評価が難しいのです。決してバカミスとは思いませんが、例のトリックはやはり賛否両論あろうかというのは理解できる気がします。確かに大トリックには違いないと思いますが、個人的には『占星術殺人事件』には遠く及ばないんですよね。
しかし、最もエキセントリックな御手洗が読めるのは本作ではないかと感じます。人の誕生日は覚えるのに、人の名前は間違える、しかも何度も間違えて呼んでも訂正しようとしない。この性質はこれ以降なりを潜めるので、変人・御手洗潔が最も顕著に表に現れる作品とも言えるでしょう。 私が一番気になるのは、なぜわざわざ斜め屋敷のような建物にしたのかという点です。別に普通の建築物でもトリックには差し支えないわけですし。まあそのほうが雰囲気は出ますし、私の読み違いかもしれませんけどカムフラージュですかね。その辺りうろ覚えな部分がありますので、大目に見ていただきたいと思います。 |
No.20 | 6点 | 魔神の遊戯- 島田荘司 | 2017/08/23 22:20 |
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本作は御手洗潔シリーズにおける、最も異色な作品だと私は思います。理由はあとで述べます。
舞台はネス湖畔の小さな村。旧約聖書に擬えられた、魔神の仕業としか考えられないような連続バラバラ殺人事件。人間業と思えない凄まじい力で引きちぎられた猟奇的な死体。まさに島田ワールド全開な様相を呈しており、いかにもならしさは作品の出来不出来に関わらず、読む者を引きずり込まずにはいられないでしょう。しかし、どこか違和感が・・・この違和感の正体を見破れれば本作に施された仕掛けは意外と簡単に解ってしまいそうです。 他の方も書かれていますが、死体にかけられた無理な力のトリックはあまり感心しませんね。まあ島荘らしいと言えばらしいのですが。 【ネタバレ】 島荘は○○トリックは使用しないという先入観を利用したことが、先に述べた異色作と言うことになりはしないかと思います。 よく注意して読めば、このミタライはややおとなし過ぎるし、特有のアクの強さがあまり感じられません。そういった違和感に疑問を感じれば、仕掛けられたメイントリックには気付きやすいでしょう。 私は勿論騙されましたけれど。 |
No.19 | 5点 | 御手洗潔のメロディ- 島田荘司 | 2017/08/21 22:12 |
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再読です。
第一話『IgE』は超人御手洗潔の天才ぶりを遺憾なく発揮した本格ミステリです。二人の依頼人の一見全く関係なさそうな依頼をかなり無理やりっぽく繋げ、一つのストーリーを築き上げてしまう御手洗の頭脳に只々ひれ伏すだけです。しかし、四つの短編の中では最も評価されてしかるべき作品ですね。この頃はまだ花粉症の効果的な市販薬がなかった時代なのでしょう。 『SIVAD SELIM』はミステリではありませんが、なかなか好感の持てる逸品です。外国人高校生の身障者のためのコンサートにぜひ御手洗を招いて演奏をしてもらいたいとの依頼を断る御手洗。石岡の必死の頼みにもどうしても首を縦に振らない。仕方なしに石岡一人で審査員を引き受けることに。石岡君の天然ぶりに読んでいるこちらも観客同様大爆笑となります。 『ボストン幽霊絵画事件』はまあそれなりって感じですか。御手洗シリーズは三人称よりも石岡君の一人称の文章に限りますね。この作品に関しては、舞台が外国というだけで身構えてしまい、あまり面白さがストレートに伝わってきませんでした。出来自体もイマイチな感じがします。 最後の『さらば遠い輝き』はレオナの御手洗に対する想いが、一方通行にせよまあその熱量が伝わってきます。しかし、レオナ・ファンでなければ取るに足らない作品かと思われます。 第一話、第二話はまずまずですが、それ以外はどちらかと言うと凡作の部類に入るんじゃないでしょうか。 |
No.18 | 7点 | 踊る手なが猿- 島田荘司 | 2017/02/17 22:10 |
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再読です。
吉敷刑事シリーズ?が2篇。ノンシリーズが2篇の短編集。 『踊る手なが猿』はケーキ屋に飾られた手なが猿の人形の赤いリボンが、たまに位置を変えられているのはなぜかという日常の謎を扱った作品ですが、それほど複雑な事件ではありません。しかし、東京という土地柄を踏まえた謎解きはなかなか面白いです。 『Y字路』は玉の輿に乗れそうな状況の女の部屋に、忽然と現れた男の死体の謎というありがちな設定です。普通の感覚なら当然即警察に連絡するだろうという歯がゆさを感じるものの、女の切羽詰まった境遇には同情を禁じ得ないです。 『赤と白の殺意』幻想味を多分に含んだ、封印していた過去の出来事とは何かを探るサスペンス。やや小ぶりな感は否めませんが。 『暗闇団子』島田流恋愛小説。しかも純愛小説ですよ。江戸時代にタイムスリップしたような、妙な感覚に陥ります。それだけの筆力で読ませる島荘、さすがです。 全体的に小ぢんまりした作品を集めたような感じはしますが、随所に「らしさ」が出た佳作が揃っていると思います。特に『暗闇団子』はとても純情な二人の恋物語で好感が持てますね。 |
No.17 | 7点 | 屋上の道化たち- 島田荘司 | 2016/07/14 22:16 |
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さすが島田先生、群を抜くリーダビリティで一気に読ませます。
全編を覆うコミカルな雰囲気と連続墜落死という不可思議な謎の対比、それに並行するように寄り添うしがないサンタクロースのティッシュ配りの思いがけない展開、何かとついていない男の苦行。これらが混然一体となって一つの収束に向かうプロットは、島荘の本領を発揮していると私は思う。 ただ、トリックには確かに無理があるし、あまりに偶然が重なりすぎており、さすがに手放しで称賛するわけにはいかない点も多い。それも含めてのこの点数である。甘すぎるかもしれないが、往時の重厚な雰囲気の欠片も感じられないが、それでも本作にはどこか憎めないところがある気がしてならない。 作風はずいぶん変わってしまったが、御手洗だけはあの頃と変わらないのが嬉しいのである。 |
No.16 | 7点 | アトポス- 島田荘司 | 2015/02/27 22:05 |
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再読です。
長尺な割に、解決篇があっさりし過ぎている印象。だが、これだけの大作を冗長さを感じさせず、最後まで読ませる手腕はさすがだ。読者にもよるだろうが、無駄な描写は個人的にはあまりなかったと思う。 初読の際に印象深かったのは、冒頭のエリザベートのくだりと途中の魔都のエピソードだったが、やはりその二つの物語は今回読んでみてもインパクトという点において図抜けている気がする。 謎が強烈なだけに、その真相はやや拍子抜けというか、現実離れしている感が否めないが、それでも真実の「連鎖」は驚くべきものがある。いくつもの要素が偶然のように重なって奇跡的な様相を呈しているのに、いとも簡単に謎解きをしてしまう御手洗は、ちょっと人間離れしており、数多の読者を置き去りにしているような感が無きにしも非ずである。それでも本作は島荘ならではの傑作であり、しっかりとツボを押さえたシリーズの白眉と言えなくもない。 |
No.15 | 6点 | ネジ式ザゼツキー- 島田荘司 | 2014/01/02 22:40 |
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再読です。
ファンタジー小説『タンジール蜜柑共和国への帰還』は、巨大な蜜柑の木の枝に家屋が立ち並び、通りができており、一つの小国として成り立っている。蜜柑をもぎるために妖精たちは羽根を羽ばたかせる、またその国には鼻や耳がない者もいるという、相当意味不明なものである。スウェーデンで教授をしている御手洗潔は、この小説から真実を抽出し、作者の帰るべき国を模索し、とんでもなく奇怪な殺人事件を解決に導くべく、推理を始める。 前半ではこれまでの「御手洗潔シリーズ」では見られなかった、御手洗自身の一人称を読むことができる。しかし、かつてのエキセントリックだった御手洗の姿はそこにはない、冷静で思慮深い学者然とした、それなりの年齢を重ねた落ち着いた御手洗に、なんだかしっくりこないものを感じる読者も多いのではないだろうか。 まあしかし、彼の天才ぶりは相変わらずで、この程度のからくりは大して頭脳を駆使する必要もなさそうだ。 全体的にはやや小粒な印象は受けるが、『タンジール蜜柑共和国への帰還』が思いのほか面白く、個人的にはこれがかなり気に入っている。 ミステリとしての興味は、いわゆるホワイダニットと言えるかもしれない。何故犯人は被害者の首を切り、ネジによって首と胴体を繋げるような真似をしたのか。そこには島荘がよく口にする「信念の犯罪」が執念とも言える理由をもって存在しているのだ。 |
No.14 | 6点 | 透明人間の納屋- 島田荘司 | 2013/12/30 22:39 |
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再読です。
いかにも島荘らしい、本格と社会派を上手く合成させたような作品。一連の流れとしては、まず主人公の「ぼく」の視点から、唯一とも言える信頼でき親しみを感じている大人の真鍋との友情を暖かく描き、その後透明人間の仕業としか考えられない不可思議な現象と事件を持ってきている。そして最後にはその謎解きと共に社会派の一面を覗かせるという、島荘の本領発揮といった感のある、本格ミステリと言っていいだろう。 ただ、その結末は悲惨なものであり、とても子供向けとは思えないところがやや気にはなるが、問題提起としてはさすがに考えさせられる。 読後、思えば冒頭の「ぼく」と真鍋とのやり取りが実に長閑で、その辺りを読んでいたのが至福の時だった気がする。特に自分の視点から地平線までの距離を示された時には、そうなのかと心底驚いた。 |
No.13 | 7点 | 毒を売る女- 島田荘司 | 2013/09/20 22:17 |
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再読です。
これぞ粒ぞろいの作品集と言えるのではないだろうか。 ジャンルは本格となっているが、どちらかと言うとサスペンスに近い作品が多いと思う。うむ、本格じゃないね。 島田氏にしては珍しいショート・ショートも含まれており、これがまた気の利いた、良い感じの仕上がりである。新発見、じゃなくて再発見した思いがした。 でもさすがに20年以上も経つと内容は忘れている。 それでも古臭さを感じさせないのは、氏の巧みな筆力があってこそだろう。平均点が高いのも頷ける。 ある作品では私自身物凄く身につまされる内容で、ちょっとショックだった。個人的なことなのでどうでもいいけど。 |
No.12 | 8点 | 奇想、天を動かす- 島田荘司 | 2013/06/25 22:36 |
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再読です。
吉敷竹史シリーズの最高傑作が『北の夕鶴2/3の殺人』だとすれば、本作はさしずめ集大成と言ったところか。 とにかく、不可思議、不可能犯罪を無理はあるにしても合理的に処理する豪腕は、さすがに島荘である。 例えば死体の周りにぐるりと火の付いたろうそくが並んでいる理由などは、常人にはちょっと考え付かないものではないだろうか。 ただ、犯人の存在感がやや薄く感じられたのは少々残念な気もする、もっとこの一見頭の弱そうに見える老人をクローズアップしても良かったと思うが、いかがなものか。 まあしかし、あれこれ文句をつけても、本作は島田氏の代表作の一つであるのは間違いないだろう。 |
No.11 | 7点 | 天に昇った男- 島田荘司 | 2013/06/16 22:44 |
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再読です。
まさに異色作という言葉がピッタリの作品。一応社会派とジャンル分けされているが、どちらかというとファンタジーに近い内容となっている。あのオチがなければ確かに社会派だが・・・ 冒頭の死刑執行のシーンは、真偽のほどは定かでないが、私にとっては十分にリアリティの感じられるものであり、その後の展開も意外ではあったが、そんなこともあるのだろうかと初読の際は思ったものである。 知恵遅れの少女との恋、前科者に対する差別、死刑を生き延びた奇跡的な男のロマンなど、短いページ数のわりには様々な要素が盛り込まれており、充実した中身となっている。 なので、ミステリとしてよりも一つの物語として楽しめると思う。 そして読者を島田氏独自の世界へ誘う筆力は相変わらず素晴らしいものがあるのではないだろうか。 |
No.10 | 8点 | 異邦の騎士- 島田荘司 | 2013/03/25 22:27 |
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再読です。
島荘の作品は本格ミステリが多いのだが、どことなく文学の香りがするんだよね。 本作はそれが如実に表れた形になっていると思う。ミステリでありながら文学作品でもあるといった具合で、ミステリ・ファンばかりでなく、一般の読者にも十分受け入れられるものと考えられる。 それにしても氏は主人公が痛めつけられるのがよほどお好きと見えて、幾度となく暴行を受けたりしている。そればかりか、ただでさえ記憶喪失なのに、精神的にもかなりのダメージを負うシーンが散見される。 御手洗もよくうつ状態に陥っているしね。 それはさておき、私は序盤の主人公と良子が仲睦まじく同棲生活をするシーンが一番好きである。 だから、その後の展開はかなりつらいものがあり、最後は結構落ち込んでしまった。まあそれだけ物語にのめり込んだということであり、そのリーダビリティはさすがだと思う。 いつもは御手洗の陰に隠れた感じであまり目立たない石岡だが、本作ではなかなか男らしいところを見せているのが、意外な感じがして、その意味でも貴重な作品と言えるのではないだろうか。 また、御手洗の「僕もひとりぼっちだ」というセリフがやけに印象に残っている。 |
No.9 | 6点 | 夏、19歳の肖像- 島田荘司 | 2013/03/22 22:25 |
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再読です。
とても詩的な部分と生々しい面とを併せ持つ、島田氏にしては珍しい青春小説。ミステリ的な要素もあるが、どちらかと言うと文芸作品に近い感じである。 だから、直木賞の候補に挙げられるのも分からないでもない。むしろ直木賞を受賞してもおかしくないような佳作となっている。 そして二度直木賞候補に選ばれながら受賞できなかったこともあり、乱歩賞も逃したりして、無冠の帝王と呼ばれ現在に至るわけである。 残念ながら、氏は賞には縁がなかったようである。 時代が彼に追いつけなかったのか、生まれるのがちょっとだけ早すぎたのか、もう少し後に生まれていたら、もっといろんな賞を受賞したいたのではないだろうか。 これだけ数々の傑作を生み出しながら、無冠だったのはまさに不運と言ってよいのではないか。 |
No.8 | 6点 | 嘘でもいいから殺人事件- 島田荘司 | 2013/03/20 22:26 |
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再読です。
肩の力を思い切り抜いて、リラックスして読めばいいと思うよ。 もうね、さすが島荘ですよ。こんなユーモア・ミステリを書いても十分面白く読ませるとは。 全編笑いのエッセンスを散りばめて、尚且つ本格ミステリとしての骨格はしっかりとしている、意外とこういった作品は名手しか書けないものかもしれないね。 まあ、トリックはそれほど目を見張るようなものではないが、当時はこんなんでも結構驚いたものである。 それにしても、読み進んで行っても、一体誰が探偵役をするのか不思議だったが、そう来たかって感じだ。 トリックに無理はないが、そこまでする必然性が今一つ感じられなかった。犯人の心情は分かるけど。 |
No.7 | 7点 | 水晶のピラミッド- 島田荘司 | 2013/01/12 21:33 |
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再読です。
初読では期待しすぎたあまり、今ひとつと感じたが、読み直してみて意外に面白いのを再認識した作品。 多くの方が指摘されているように、古代エジプトとタイタニック号のくだりは不必要なのかもしれないが、これがあってこそ物語が盛り上がるのではないだろうか。これらのエピソードが交互に配される事によって、御手洗シリーズの雰囲気作りに一役買っているように思われて仕方ない。 内容は密室あり、人工ピラミッドの最上階で溺死した死体という不可能犯罪あり、さらには謎の怪物まで出現して、まさに盛りだくさんで読者を飽きさせない。 またリーダビリティもさすがと言えるが、説明文がややくどく、若干分かりづらいのが難点かと思う。 レオナの台詞が芝居じみていて鼻に付くのも気になる。まあしかし、御手洗と対等に渡り合うためにはやむを得ないのかもしれない。 ラストの捻りも良い感じに決まっており、若干地味ではあるが、御手洗シリーズの面目は保っているのではないだろうか。 |
No.6 | 5点 | 最後の一球- 島田荘司 | 2011/02/04 23:44 |
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島田氏にこの点数は、正直気が引けるが仕方あるまい。
御手洗シリーズといっても、御手洗がさして活躍するわけでもないし、ミステリとして弱いので、評価が低くなるのもやむを得ないと思う。 ほとんどがプロ野球を目指した若者の独白で占めているため、文体が重厚さに欠けるのも気になる点。 しかし、島田氏独自の社会派的一面も垣間見えるので、その辺りは評価したい。 |