皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
空さん |
|
---|---|
平均点: 6.12点 | 書評数: 1505件 |
No.305 | 5点 | メグレ式捜査法- ジョルジュ・シムノン | 2010/06/30 22:39 |
---|---|---|---|
原題直訳だと『わが友メグレ』。メグレ警視は自分の友だちだと酒場で吹聴した男がその夜殺されたという事件です。舞台となる南仏のポルクロール島は、現在観光名所になっているそうです。その島へ、メグレはちょうどメグレ式捜査法を研修に来ていたスコットランド・ヤードのパイク刑事と一緒に出かけていくことになります。
メグレものにしては登場人物がかなり多く、ちょっとごたついた印象があります。最後に事件が解決されてみると、結局不要ではなかったかと思われる人物が何人もいるのです。容疑者をちりばめるフーダニットでないだけに、少々不満なところです。 今回再読して、第8章で教会の鐘の音が輪のように広がっていく描写は、後にシムノンが書いた純文学の傑作『ビセートルの環』の冒頭につながるものであることに気づきました。 |
No.304 | 5点 | 考える葉- 松本清張 | 2010/06/27 13:54 |
---|---|---|---|
最初に読んだのは中学生の頃だったと思いますが、当時は前半がつまらないという感想をいだいたのでした。しかし今回読み返してみると、むしろメインの事件と言える外国使節団長暗殺までの謎が膨らんでいく前半の方が楽しめました。それまでにもすでに2件の殺人が起こっていたことは、全く覚えていませんでした。
松本清張の作品では、全体的な犯罪計画はかなり適当なことがありますが、本作では特に目立ちます。主役の男を暗殺犯人に仕立て上げるといっても、接触した人物は完全に正体を明かしているのですから、計画に無理がありすぎです。そんな策略などしない方がよっぽどましでしょう。 まあその部分の非現実性に目をつぶれば、事件の裏の設定やストーリー展開はおもしろくできています。 |
No.303 | 5点 | 夜歩く- ジョン・ディクスン・カー | 2010/06/24 21:21 |
---|---|---|---|
ケレン味たっぷりな展開は、みなさん認めるとおり最初からいかにもカーです。というより、本作や次作『絞首台の謎』のこけおどし的猟奇性は、後の作品ではむしろ薄まり、正統的な怪奇性に変わってきます。
全体的な構造はおもしろかったのですが、偶然の使い方が説得力に欠けるのが難点です。メインの密室トリックにしても偶然うまくいったというところがあるのです。運が少し悪ければ致命的目撃者があったはずで、殺人計画と偶然との組み合わせ方としては『白い僧院の殺人』等の巧みさにはほど遠いと思います。また、ある出来事が起こるために必要な偶発的条件を考えれば、密室殺人が起こる前から犯人の見当はついてしまうとも言えます。 ところで、最終章「勝利のとき」とは、誰の勝利なのでしょうか。バンコラン? それとも真犯人? |
No.302 | 6点 | 消えた消防車- マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー | 2010/06/20 09:43 |
---|---|---|---|
マルティン・ベック・シリーズの第5作。しかし、久々に読み返してみると、彼が特に主役というわけでもないなと思いました。スウェーデンのエド・マクベインといった趣もありますが、マクベインに比べるとていねいで厳格、地味な印象です。
タイトルにもかかわらず、メインである放火事件に関して、消防車は決して「消えた」わけではありません。ただ火災現場に到着しなかっただけです。この消防車の件から少しずつ事件がほぐれていくあたりはなかなかおもしろく読ませてくれます。短い第1章での自殺事件との絡みも、意外性はありませんが自然でした。一方、本当に不可解な消え方をしたルン刑事の玩具の消防車の行方も、最後にはわかります。 ただ、これ以上ストックホルム警察では手の打ちようがなくなった後のラストの決着は唐突ですね。 |
No.301 | 8点 | 犬神家の一族- 横溝正史 | 2010/06/17 21:08 |
---|---|---|---|
岡山もののような因習的土俗性もありませんし、東京もののような耽美的刺激性もありません。もちろん横溝正史らしい残酷なおどろおどろしさも確かに感じられますが、他の方も指摘している悲劇性、人間関係のドラマ性が印象に残る作品です。『獄門島』でも戦地からの復員が最後のキーポイントになっていましたが、本作ではそのテーマがさらに掘り下げられていると言えるでしょう。
犯人の仕掛ける大技トリックのみを期待する人は凡作と思うかもしれませんし、偶然の多用を嫌う人もいるかもしれません。しかし、連続殺人に至る人間関係や状況設定の構成は見事ですし、『獄門島』や『悪魔の手毬唄』と違って見立て殺人の意外な理由も鮮やかに決まっています。 |
No.300 | 8点 | 汽車を見送る男- ジョルジュ・シムノン | 2010/06/14 21:44 |
---|---|---|---|
シムノンの数多い犯罪者の側から描かれた小説の中でも、この犯罪者はチェスが得意で、警察を出し抜こうといろいろ策を廻らしたりするという意味では、ミステリ的な味わいのある作品です。メグレもの『オランダの犯罪』でも舞台となった港町デルフザイルで話は始まりますが、すぐにアムステルダムを経由して舞台はパリに移ります。
新潮社の翻訳では、主人公の犯罪者が敵役として意識する警視はルーカスとなっていますが、これはメグレものでおなじみリュカ(Lucas)のことでしょう。この英語風な人名読みから考えても、またフランス語の原題ではなく英語題名が記載されていることからしても、翻訳はどうやら英語版を元にしていると思われます。 その翻訳は、主人公が時々書き記すメモで自分のことを「余」と訳す(将軍様じゃあるまいし)など、あまりに古くさい言い回しです。しかしその点を差し引いても、犯罪心理小説の傑作だと思います。 |
No.299 | 7点 | 忘られぬ死- アガサ・クリスティー | 2010/06/12 11:30 |
---|---|---|---|
ノン・シリーズ作品ですが、ポアロが登場する某短編を長編に仕立て直したものです。
元の短編では第2の事件から話を始めていましたが、本作の前半では、過去の事件から第2の事件発生までが、関係者たちそれぞれの回想を主軸に語られていきます。登場人物それぞれの内面に立ち入りながらスムーズに過去の事件の顛末を示してくれる手際は、鮮やかなものです。この部分を読み返してみれば、真相すれすれの書き方がされていることがわかります。このような展開なら、確かにポアロは出てこない方がいいかもしれません。 犯行方法のアイディアは元の短編どおりですが、犯人設定の変更や巧みな偶然の導入は、長編化のお手本と言える出来です。ただ、犯行計画の必然性がちょっと弱くなってしまったのが欠点でしょうか。 なお、『ひらいたトランプ』『ナイルに死す』ではポアロと一緒に活躍したレイス大佐も半ばになって登場します。 |
No.298 | 7点 | 赤い館の秘密- A・A・ミルン | 2010/06/06 12:39 |
---|---|---|---|
犯人の意外性や殺人計画の緻密さでは、本作の前年に発表されたクリスティーやクロフツの第1作に比べると大したことはありません。しかし推理小説の価値はそれだけで決まってしまうわけではないでしょう。
冒頭1ページ目から、ほのぼのしたイギリスの田舎の雰囲気が漂ってきます。ギリンガムの探偵ぶりも、プロフェッショナルなポアロなどの捜査に比べるとむしろ探偵ごっこという感じで、プーさんの作者だと言われれば、確かになるほどねと納得できる作風が楽しい作品です。二人での池の捜索場面など、メルヘン的な感じさえ受けます。 ギリンガムと金田一耕介との共通点については意識しながら今回読み返してみたのですが、どうも感じられませんでしたね。 |
No.297 | 6点 | 黒部ルート殺人旅行- 斎藤栄 | 2010/06/03 21:46 |
---|---|---|---|
最初のバスの中での人間消失の方法はありきたりですが、中心問題はその後。2つの殺人それぞれに時計と鉄道を利用したアリバイで、どちらも着眼点は優れていると思うのです。
ただし疑問点もあります。時計の方は、証人におかしいと気づかれる危険性がかなりある状況です。また、鉄道の方はあまりに作為が感じられ過ぎます。まあ作中で主役の検事も、だから怪しいとにらむわけですが、犯人にしてみれば、そんな不自然なアリバイなどない方がましではないかと思えます。 「環境破壊への怒りを、私はこの作品にぶつけてみた」という「作者の言葉」中の趣旨がさっぱり感じられない話なのは、同時期の森村誠一作品とは根本的に小説作法が異なるところです。 いい素材なのでもっと何とかならなかったかなという気がして評価に迷う作品ですが、とりあえずこの点数で。 |
No.296 | 7点 | メグレ、ニューヨークへ行く- ジョルジュ・シムノン | 2010/05/31 23:22 |
---|---|---|---|
タイトルどおりの発端から始まる作品。シムノン自身アメリカに移住してすぐ、1946年に書かれた作品ですから、ニューヨークに対するメグレの感想は、シムノン自身の意見とも重なるのでしょう。英語があまりできないというだけでなく、習慣の違いなどにいらいらさせられる様子が鮮やかに伝わってきます。
事件は、ニューヨークに住む父親が心配なので、メグレに一緒についてきてくれと依頼した青年が、アメリカに入国するなり姿を消してしまう、というあいまいなものです。さらに轢き逃げによる老人殺しが起こり、どうやら事件の裏はジュークボックスの製造販売で大成功した父親の過去にありそうだ、ということになりますが、真相自体はシムノンにしてもまあまあといったところです。しかしその結末まで持って行く過程、登場人物たちの造形描写がさすがにうまく、かなり楽しめました。 |
No.295 | 6点 | 処刑6日前- ジョナサン・ラティマー | 2010/05/29 12:31 |
---|---|---|---|
1935年に発表された小説ですが、解説でも触れられているようにアイリッシュの『幻の女』(1942)との共通点がよく指摘される作品です。まあタイトルからしてもそうでしょう。しかし、密室にする理由という点では『ユダの窓』(1938)との類似点も指摘できそうです。そう、通常ハードボイルドに分類されるのに密室殺人という意外な取り合わせでも有名な作品ではあります。
しかしハードボイルドと言っても、ハメット~パーカー等のような気のきいた会話や人物描写のリアリティを期待しても無駄というものです。また派手なアクションの痛快さもありません。証人が目の前で撃ち殺されるシーンなども、文章の切れが悪く、迫力がいまひとつです。 通俗ハードボイルド的なタッチを取り入れてはいますが、途中で糸を使って密室解明の実験を試みたり、探偵役クレーンが最後まで手持ち札を伏せて謎めかしてみせたりと、完全にパズラーの常道です。 |
No.294 | 7点 | 成吉思汗の秘密- 高木彬光 | 2010/05/25 22:59 |
---|---|---|---|
本作執筆にあたって作者が参考にしたのは、まず近代の義経=成吉思汗説の書物だったそうです。ちょっと気になるのはその参考資料が明示されていない点で、著作権法的には微妙なところがあるかもしれません。
これが偶然といえるだろうか、という台詞が何度も繰り返されますが、成吉思汗の側から義経を連想させる固有名詞などを列挙していくことにより、説の蓋然性を高めていくという手法です。一方井村助教授を配しての反論もなかなか手厳しいものがあります。結局、初版最終章(15章)では現実の自殺事件を持ち出して輪廻転生論・宿命論的にまとめたわけで、合理性重視の考え方からは、不満もあります。 サブストーリーについては、初っ端から伏線がやたらに目立ちます。こっち系については高木彬光はどうも(神津恭介ではありませんが)不器用な気がします。 |
No.293 | 7点 | 犠牲者は誰だ- ロス・マクドナルド | 2010/05/22 12:25 |
---|---|---|---|
リュウが仕事のため自動車旅行中、瀕死の男を路上で発見するという場面から始まる本書、ロス・マク作品中でも主人公をリュウにする必要がなかったのではないかとも思える巻き込まれ型発端のミステリです。
格闘や銃撃などアクションも豊富で、事件の展開も速く、様々な出来事を完全に整理消化できていないような状況で、まだ半分ほどしか進んでいない。この後どうなるのだろうと思わせられました。 そのようなわけで、事件全体はかなり複雑にできているのですが、最終的にはやはりこの作者らしく、巧みにつじつまを合わせてくれます。そのつじつま合わせの事件解明がタイトル"Find a Victim" に表れされるテーマと見事に重なってくるところ、感動的な結末になっています。 |
No.292 | 6点 | メグレと老婦人- ジョルジュ・シムノン | 2010/05/19 21:38 |
---|---|---|---|
『メグレと老婦人の謎』評で臣さんも書かれてるようにまぎらわしいタイトルですが、先に出版された本作の邦題は原題直訳です。
最初読んだ時には、おもしろいと思わなかったのですが、それはたぶん初期作品のような雰囲気を求めていたせいだったのでしょう。久々に再読してみたらなかなか楽しめました。 シムノンにしては謎解きの度合いがそれなりに高い作品で、ちょっとした秘密と犯人の企みが隠されていて、伏線もしっかり張ってあります。終わりに近づくにしたがって登場人物たちの醜さが暴かれていき、嫌な話という感じがだんだん強まってくるところ、個人的には今回の再読では気に入りました。 訳者は日影丈吉。特に会話など、メグレが「会いたいッてのかね?」とか「それは、あなた次第でさ、部長」とか言っていたりして、いつものシムノン調を崩すような言葉遣いですが、独特な味はあります。 |
No.291 | 8点 | ゴメスの名はゴメス- 結城昌治 | 2010/05/17 22:18 |
---|---|---|---|
1962年に発表された、日本製スパイ小説の嚆矢であり、また代表作ともされる作品。
舞台が1960年頃のベトナムというところからして、なるほどと納得。まあこれは現在だから特にそう思うのかもしれません。当時は身近な問題だったわけですから。 結城昌治は様々なタイプの作品を書き分けていますが、作中にも名前が挙げられるアンブラー等につながるシリアス・スパイものとして、完成度の高いものとなっています。サイゴン(ホーチミン)に赴任した「わたし」の周りで起こる不可解な出来事、謎が最後になってすべて収まるべき所に収束していくところは、パズラーも書く作者らしい手際ですし、リアリティも十分です。 会話を中心とした文章は、ハードボイルドっぽいところが感じられました。これは後に書かれる『暗い落日』に始まる真木シリーズとつながってくる感じです。 |
No.290 | 6点 | 邪悪の家- アガサ・クリスティー | 2010/05/13 21:45 |
---|---|---|---|
本作と次作『エッジウェア卿の死』については、ポアロにいつもの冴えがなかなか見られません。他の作品ではいつの間にか推測をつけてしまっているのですが。途中でポアロが容疑者の一覧と注釈・疑問点を書いて見せてくれるのも、クリスティーよりクロフツとかを思わせるぐらいです。
犯行計画そのものの出来は、悪くないという程度だと思いますが、結局使い方がうまいんでしょうね。くどいところから予想はつくのですが、殺人犯以外の登場人物たちのごまかしもあり、惑わされます。ポアロが18章で真相に気づく2つの手がかりの組み合わせは、シンプルで説得力があります。 冒頭部分でくじかれたポアロの自尊心が結局最後には妙な形で満足させられるのは愉快でした。 |
No.289 | 7点 | ひとりで歩く女- ヘレン・マクロイ | 2010/05/11 22:46 |
---|---|---|---|
解説によれば「アメリカ女流サスペンス御三家のひとり」と呼ばれていたマクロイですが、本作は書き出し2ページぐらいはそれらしい感じがあるものの、その後全体の2/3ぐらいまでは不可解な謎が錯綜するいかにもパズラーらしい話です。手記の部分が終わった後の意外な展開も、知的な興味を引くようになっています。
その後、一気にサスペンス調になる構成もおもしろいところです。このサスペンス部分に入って、作者の基本的な企みにはほぼ確信が持ててしまいました。とは言え、事件の全貌に説明をつけることができたわけではないので、文句はありません。最終章の推理は、若干決め手に欠けるところはありますが、きれいに事件を解明してくれます。 解説の最後で天地逆に印刷してある〈謎〉(疑問点)と〈解決案〉については、少なくとも私が読んだ初版では〈解決案〉は示されていないのですが。ただしこの〈謎〉は簡単に説明がつくと思います。書き出しにこだわる必要はないのですから。 |
No.288 | 6点 | 人喰い- 笹沢左保 | 2010/05/09 09:09 |
---|---|---|---|
1961年の日本推理作家協会賞受賞作。全体的にメロドラマチックな謎解きになっているのはこの作者らしいところです。
最初の姉の遺書の章は、無理やり遺書の中で状況説明をまとめてしまったような感じがして、あまり好きになれなかったのですが、その後は快調に読んでいけました。ただ、妹の視点から描かれた部分と、より第三者的な描き方の部分とのバランスが、多少まとまりを欠いているようにも感じられます。 犯人の計画の根本はクリスティーも使った手ですが、書かれた当時の社会状況などもうまく利用していて、なかなか巧妙な使い方です。ただし社長殺害については、殺害トリック自体は悪くないのですが、そのようなトリックを使う理由がないのが難点です。また、犯人指摘の決め手のひとつになる犯人のある行為にも意味が全くないので、この行為ははぶいてしまった方がよかったと思います。 |
No.287 | 7点 | メグレのバカンス- ジョルジュ・シムノン | 2010/05/05 15:18 |
---|---|---|---|
8月、港町にバカンスにやってきたメグレ夫妻でしたが、メグレ夫人は虫垂炎で入院という破目に。
修道院がやっているクリニックに夫人を見舞うシーンから本作は始まります。シスターたちが行きかうその独特な雰囲気に、聖歌隊の少年だった頃を思い出すメグレ。あまりミステリらしくない書き出しですが、事件が起こってメグレが独自の捜査を始めると、このシリーズ中でもかなりサスペンスのある話になってきます。 容疑者はほとんど最初から1人に絞られているのですが、動機がわからず事件の全体像がなかなか見えてきません。その上、さらに殺人が起こり、しかも事件はまだ続きそうだという展開は、アイリッシュ等に比べるとのんびりしているようでいて、妙に緊迫感があります。 |
No.286 | 8点 | ガラスの鍵- ダシール・ハメット | 2010/04/30 11:41 |
---|---|---|---|
高校の頃のことですが、最初に読んだハードボイルド小説が本作でした。その時も傑作だとは思ったのですが、それでもなぜだか、当時はあまり他のハードボイルドを読む気にはなりませんでした。このジャンルにも手を出すようになったのは、その数年後たまたまロス・マクに接してからになります。
ハメットが自作の中で最も気に入っているのがこれだそうです。その理由は知りませんが、私が読んだ4長編中、完成度は最も高いと思います(『影なき男』は未読)。また、主役の賭博師ネド・ボーモンは、コンチネンタル・オプやサム・スペードよりも孤高の正義派という印象を受けました。その点では、後のマーロウ等につながっていく人物造形ではないでしょうか。 ところで、本作ではなぜ被害者の帽子がなかったのかという疑問が、はっきり謎として提示されます。ひょっとして少しはクイーンを意識したのかもしれません。 |