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[ 本格 ]
カシノ殺人事件
別題『カジノ殺人事件』
S・S・ヴァン・ダイン 出版月: 1956年07月 平均: 5.12点 書評数: 8件

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芸術社
1956年07月


1960年10月

東京創元社
1960年10月

Independently published
2022年02月

No.8 7点 虫暮部 2023/01/26 13:03
 毒物が見付からないと言う謎は魅力的。しかし半分を過ぎてからようやくそこへ辿り着くなんて遅い。
 毒物や水云々の薀蓄はもっとやって良かったんじゃない? 真相は期待した程ではない。
 どこがどうと言うことではないが雰囲気的な面白さは感じた。特に賭博の場面がこんなに楽しく読めたのは自分でも意外。

No.7 5点 クリスティ再読 2021/02/24 23:18
前作の「ドラゴン」だと長々と龍に関するウンチクしてくれて楽しかったのだが、本作だと蘊蓄が足りないよ~そこらが不満。評者ヴァンスのウンチクを楽しみにしているんだ。
で今回は毒殺で、何件も毒を飲まされる事件が連続する。短い長編で、ヴァン・ダインの気取ったスタイルで書かれるわけだから、「人がどんどん斃れる」ホラーの味が出るかな?というあたり。でも作者が徹底できていないようにも思う。取り調べられていた関係者が続々急に倒れて、どんな毒か不明、というのはうまく恐怖を煽って書けば「怖い」アイデアだと思うんだけどね。で最後はバタバタとスリラー風に展開して終わる。毒殺トリックもまあ常識範囲だが、そう悪いアイデアじゃない。語源を知ってるとね...

(ネタばれ?)
実は本作のネタの一つの例の水、事故で飲んだ人が実際にいるらしいけど、別に病気とかならなかったらしい....そりゃ、大量に飲めば別のようだが、コップ一杯くらいなら平気みたいだよ。いやいや本当は、DHMOといって、例の水に近いもので、これを飲んだ人の死亡率が100%の液体があってね、こっちの方が怖い?かもよ。

No.6 2点 レッドキング 2020/11/29 20:46
「ファイロ・ヴァンスが生涯で出会った、最も巧妙を極めた、最も凶悪な犯罪・・」なんてチンプな謳い文句で話が始まっちゃうと、「最もつまんねえ話なんでないの?」て危惧を抱かざるを得なくなり、ハードルは下がるが、結局・・「うーん」な話だった。犯人、「グリーン」「ガーデン」「誘拐」と同パターンの誤魔化し行為やらかして・・この作では容疑者二名出てきて若干賑やかだが・・そもそも「毒殺事件」ての好きでないのよ。

No.5 5点 ボナンザ 2018/10/10 22:56
毒にこだわった一遍で、初期作品ほどでないものの独創的なところもある佳作。

No.4 6点 青い車 2016/03/09 12:25
 後期のヴァン・ダインの試行錯誤が見て取れます。最初期にはなかった特殊な謎の設定で、今回は未知の毒物をめぐるストーリーがポイントとなります。序盤から事件が続発する刺激的な展開が読む者を引きつけ、そこもこの時期ならではの作者の工夫だと思えます。
 大きなミスディレクションを除けば、実はかなり単純な事件です。毒殺のトリックは、多少薬学の知識がある人ならば見抜くことは可能だと思います。作者がどれほどその道に精通していたのかは知りませんが、8作目にしてはじめて毒殺をメインにフィーチャーした意欲は高く買えます。
 もうひとつ特徴的なのはサスペンスフルなクライマックスです。個人的にはアリだと思いますが、ヴァン・ダイン作品にはミスマッチという声もあるようで難しいところですね。あと、ギャンブルに興じる人々を描こうとしたのかもしれませんが、内容的にカジノは特別重要ではありません。そこは次作『ガーデン』でより上手く扱われます。

No.3 7点 斎藤警部 2015/07/15 11:51
‘Je suis .. ’ ってヴァンスが気障なフランス語を喋ってるのかと思ったら .. ‘重水’だったか!
後半六作に属する中篇(のような長篇)ですが、これが存外面白くて得した気分w 上品ぶっちゃいるがB級サスペンスの良さがある。
事情あって「ケンネル」とぶっ続きで読んだんで、その余韻の勢いも多少手伝ったかも知らんが。。 いや、やっぱりサスペンスの持続が読ませるポイントだったと思う。終始ざわついた雰囲気もいい。短時間一気読みでした。

No.2 5点 2013/07/02 10:03
次々と起こる毒物事件。しかし死体からは、毒は検出されない。
この謎はなかなか魅力的。そして中盤、毒物への疑惑が水への疑惑へと変化してゆく。このあたりも楽しめる要素の1つ。毒薬に関する薀蓄の量が適度で、つっかかるところがないのも好ましい。世評はかなりひどいが、それほど悪いとは思わない。
ラストはたしかにあっけない。息切れして、むりやり締めくくったような感じ。ただ最後には、B級サスペンス映画なみの、特上の見せ場が準備されている。縁遠いと思っていた大作家を、身近に感じてしまった。

ヴァン・ダインの魅力は、一般的には、けれんみと、ファイロ・ヴァンスのキャラクタと、ペダントリーだけど、個人的には堅苦しさの象徴でしかなかった(大昔は途中退場の連続だった)。じつは自分にとって、「二十則」だけの作家だった。たまに本作のような作品を読むと、ギャップを感じるのか、よく見えてしまう。
著名で評判のよい「僧正」が未読なので、いつになるかわからないが、読むのを楽しみにしている。

No.1 4点 2010/09/04 11:46
小説としてのふくらみを持たせる前段階だと言われる『ウィンター殺人事件』を別にすれば、ヴァン・ダインの長編中、特に短い作品です。
今回薀蓄が披露される(控え目ですが)のは毒物学と当時最新の科学成果だったらしいあるものです。しかし、ヴァンスの得意な教養はやはり基本的に文科系。理科系ならせいぜい『僧正殺人事件』の哲学的宇宙物理学ぐらいではないでしょうか。専門家から毒物学の講義を受けたりしています。
未知の毒薬を使ってはならないという自らの20則中の条項を逆手に取ったような発想そのものは悪くないのですが、使い方はどうも冴えません。摂取したはずの毒物が胃の中から見つからないという謎、さらに「水」への疑惑など、半分を過ぎてやっと問題になり、さらに上記最新科学成果が出てくるのはその後です。それからすぐ解決部分に突入してしまうので、あまりにあっけない感じがするのです。動機がかなりいいかげんに扱われているのも不満でした。


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S・S・ヴァン・ダイン
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