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[ 本格 ]
予期せぬ夜
ヘンリー・ガーメッジシリーズ
エリザベス・デイリー 出版月: 2002年01月 平均: 6.25点 書評数: 4件

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早川書房
2002年01月

No.4 6点 人並由真 2019/05/07 16:45
(ネタバレなし)
 評者はデイリー(デイリイ)作品は、数年前に翻訳された『閉ざされた庭で』に続いてこれが二冊目。
 そっちがべらぼうに面白かった(たしかにそちら『~庭で』での大技は「クリスティーが最も愛好した米国女流作家」という肩書きに実に相応しい印象であった)ので、こっちも期待したが、最初から最後まで外連味ゆたかな展開で楽しめた(先行の方々の評の通りに、事件の乱発、すっきりしない、という部分もまあわからないではないが)。
 文章にも随所にユーモア味があって、なかなか快い。素人名探偵のガーマジがあちこちの事件の局面に首をつっこんで、時に関係者の命を救ったりするのだが、そんな一連の彼の行動の流れを、終盤に事件に介入してきた弁護士の先生はうさん臭がり、まるで疫病神のように半ば見やる。アマチュア名探偵なんて傍から客観的に見れば、そういう存在として目に映ることもあるよね。
 一方でクリスティーと非常に属性の近い……というような資質の作家ゆえに、犯人の正体は早々に読めてしまった。まさに英国のミステリの女王ならまんま仕立て上げそうなストーリーの流れと登場人物の配置だから。

 それでも全体としては普通に面白い。こっちが邦訳のあるあと残り二冊を読み終える前に、また次の未訳作品が発掘翻訳されればいいなあ。

No.3 7点 mini 2014/12/05 10:00
先日2日に論創社からJ・J・コニントン「レイナムパーヴァの災厄」とエリザベス・デイリー「閉ざされた庭で」の2冊が刊行された
デイリーの既訳の長編3冊は全て初期の作だが、今回の「閉ざされた庭で」で初めて中期の作品が紹介される事になる
まぁトリックの切れ味勝負な作家でもないから中期の作も初期に比べてそう劣らないのでは?との期待も出来そうだ
デイリーにはノンシリーズ長編が無く、長編は全てヘンリー・ガーマジ登場のシリーズなので当然今回刊行のもそうである
ところで論創社では探偵役の名前を”ガーメッジ”と表記しているみたいだが、従来は”ガーマジ”表記である
作者がアメリカ作家なのでアメリカ訛りだろうと思うのと名字の綴りを考え合わせると、推測だが発音上は”ガーメッジ”の方が近いんじゃないかなぁ

探偵役ヘンリー・ガーマジと言えばビブリオ探偵として知られているので、既訳3作の中で最も特徴が出ているはずの「二巻の殺人」をまず読むべきなのだろうけど、私は「二巻の殺人」だけ積読なので(苦笑)、今回はこの作の書評としたい
ガーマジのシリーズ第1作で作者のデビュー作が「予期せぬ夜」である
デイリーはクリスティが敬愛する作家の1人としても知られるが、実はデイリーの方が年上で、にも拘らず「予期せぬ夜」の刊行はクリスティの長編デビューの20年後の1940年で、その時点でデイリーは60歳を過ぎておりまさに遅咲き作家だ
「予期せぬ夜」を一言で評価するなら、”隠れた佳作”である
デイリーの文章は地の文は豊かで一方会話文は自然体で、ミステリー的にはそれほど大した事はないが、私には文章の感性が合うという点で大好きな作家の1人である
「予期せぬ夜」にはさらに、まぁ小技ではあるが気の利いたトリックが仕掛けられており、文体には興味が無くトリックにしか興味の無い読者にも一応お薦め出来る
ただし私はトリックが仕掛けられた段階で気付いてしまったので、見破った方も結構居られると思う、そもそも題名自体がネタバレ気味で私も題名から狙いはこうかなと即ピンときた
しかもそのトリックが全体の流れにも関わってくるので、その辺は割り引く必要が有ろうが、そこそこの佳作という評価が覆るほどでもないであろう

No.2 6点 nukkam 2014/08/14 16:39
(ネタバレなしです) エリザベス・デイリー(1878-1962)はヘンリー・ガーメッジ(ハヤカワポケットブック版ではガーマジ)を探偵役にした本格派推理小説を16冊書いた米国の女性作家です。1940年に本書でデビューした時には既に還暦を過ぎていたという、英国のエリザベス・ルマーチャンドに匹敵する遅咲きです。年下ながら作家としては先輩格のアガサ・クリスティーから「お気に入りの米国作家」と評されていますが、本書の雰囲気はまるで英国の本格派推理小説風で私にとっても好みでした。コナン・ドイルの某作品をちょっと連想させるところがありますがどんでん返しで意外性の演出に成功しています。プロットが後半は事件の乱発で錯綜気味になってしまうのと、ある殺人事件の動機がちょっと納得しづらいのが気になりますがまずまず楽しめる謎解きでした。

No.1 6点 2010/07/21 21:59
1940年に書かれたエリザベス・デイリーの第1作。しかし生年が1878年ですから、何と60歳を越える新人作家というわけです。
霧の中車を走らせている冒頭からバークリー家での語らい、ホテルの雰囲気など舞台はいかにもイギリスだなあ…と錯覚しそうなぐらい、イギリス・ミステリ風の味わいがあります。
遺産相続青年が「病死」した事件を調べていくうちに殺人事件が起こっていくプロットは、なかなかおもしろくできています。その解決については、根本的なアイディアにはなるほどそうだったかと思わせられたのですが、枝葉の部分で推理の詰めが甘い感じがしました。ゴルフボールの事件、その後の毒殺未遂も、すっきり納得とはいかなかったのです。
名探偵役のヘンリー・ガーマジは、解説にも書かれているように上品ではありますが、もうひとつ個性的なところが欲しい気もします。


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エリザベス・デイリー
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