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[ ハードボイルド ]
絆回廊 新宿鮫Ⅹ
新宿鮫シリーズ
大沢在昌 出版月: 2011年06月 平均: 8.43点 書評数: 7件

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光文社
2011年06月

光文社
2013年08月

光文社
2014年11月

No.7 7点 クリスティ再読 2022/01/19 21:52
さて一応本作でシリーズ区切り。評者も鮫の旦那はとりあえず区切りにしようかとも思う。「暗約領域」と短編集は気が向いたら、にしたい。

本作だと晶とも別れることになるし、ちょっとショッキングな...もある。その結果、今まで桃井と藪を別にすれば孤立無援だった鮫島を擁護するように、新宿署内の世論が変化してきた、ということで、やはりシリーズ区切りらしいことにはなっている。それでも宮本遺書の話などに決着がつくわけでもなくて、シリーズ継続の含みを持たせているわけだから、不完全燃焼感は、ある。
そういうあたりもあって、「仕掛け」ではなくて「ドラマ」側で押し切ろう、というのがこの作品。「風化水脈」に近いテイストだと感じる。結構似てるといえばそうかな。
樫原の造型はいうまでもなく大鹿マロイがベースで、意図しないトラブルメーカー。でも不器用な乱暴者というよりも、復讐心でバランスを崩した人、という印象だから、マロイの妙な人の良さとは別。女に狂うとかじゃない。
逆に樫原の出所を待つバー「松毬」のママの造型が印象的。でも湿っぽいな...過去の因縁は何となく見当がつきそうだから、全体的な湿度は高い。

すまん、いろいろ決着がつくかと、やや期待し過ぎたかもしれない。力作ではあるんだが。

まあ、例の要素は...うんやはりそうだった。でも、真壁ほどには樫原に「色気」のようなものがないと感じる。「長いお別れ」は特にそうだが、チャンドラーに同性愛を読み込むというのもアリだと思うけども、「狼花」と違って本作だと鮫島を巡ってはそういうケを感じない。まあ晶との問題が大きいからそれどころじゃないんだろうが。

シリーズ全体を通してだと、評者はやはり奇数番が好き。奇数番が実験的で、偶数番がオーソドックス、という傾向があるとやはり感じる。ベストスリーは「炎蛹」「屍蘭」「灰夜」かなあ。

No.6 9点 あびびび 2014/10/09 11:19
「新宿署は、全署を挙げて君を擁護する側に回ることを、先ほど副署長、組対課長、刑事課長と合意した」、鮫島は敬礼した。署長の目がうるんでいるのを見て、視界が曇りそうになった…。

何をいまさら…だが、自分にとって忘れられないシーンになりそう。大切な人々との別れがあり、河は大海に注いだ感じだが、新たに分水嶺があり、新展開が始まりそうなラスト。新時代に新宿鮫はどう対応していくのだろう。実に待ち遠しい。

No.5 7点 Tetchy 2013/09/10 19:41
シリーズ10作目にしてなお衰えず。いや巻を出すたびに変わる警察機構と高まる犯罪の複雑さと巧妙さを物語に巧みに織り込み、その情報量とリアリティで他の警察小説と一線を画すステータスを保ち続けている。
警察に復讐を企む正体不明の大男の出現と云うインパクト強烈な導入部から復讐者と鮫島との手に汗握る攻防戦を予想させたが、多様化する日本、特にその中心都市である東京の人種の混在が著しい新宿の犯罪の国際化が否応にもストーリーを複雑化させていく。

正体不明の大男こと樫原茂の人物像はレイモンド・チャンドラーの『さらば愛しい女よ』の大鹿マロイを想起する読者も多いだろう。斯くいう私もそうだった。登場シーンもいきなり出てきて話しかけるところといい、恐らく作者も意識をして造形したのではないだろうか。但しチャンドラーがマーロウとマロイを物語の冒頭で邂逅させたのに対し、大沢氏は鮫島が樫原の正体に行き着くまでにかなり筆を費やし、簡単には対決させず、逆に樫原の起こした事件の痕跡を追わせて最後に樫原を邂逅させることで樫原の凶暴性を伝聞的に記述することで、まだ見ぬ大男の恐ろしさを描くことに成功している。

私は前作を読んだ時にシリーズ10作目となる次回作がシリーズの最終作となるのではないかと予想したが、それを裏付けるかの如く作中にはそれまでのシリーズを回想するかのごとく、それまでのシリーズで語られたエピソードや事件、鮫島の前から消えた人々の事が触れられる。

そして本書でもさらに鮫島にとってかけがえのない者たちとの別れが描かれる。この選択はかなりの冒険だったのではないだろうか。

前作まで積み上がってきた新宿鮫の世界を彩るバイプレイヤーは本書にて一掃されたと云っていいだろう。しかし最後に鮫島の前に残ったのは警察機構の爆弾として周囲から疎まれたジョーカーだった鮫島の後押しをする仲間たちだった。
次作からはまさに新生“新宿鮫”の幕明けとなるだろう。作者の飽くなきチャレンジ精神に敬意を表し、これからも応援していきたい。

No.4 10点 itokin 2013/07/12 10:24
シリーズ10巻目と言うことで集大成への作者の力の入れようがひしひしと伝わる最高の出来ですね、暗黒社会と、警察、元やくざの幹部、それらが過去の事件に絡んで複雑な様相を見せるのだがわかりやすいプロットで巧みに後半の盛り上がりに導いています。最後は涙なしには読めませんでした大満足です(おもわず鮫島がんばれと言ってしまいました)。

No.3 10点 NAP 2012/02/13 22:18
さすがのひとこと。笑おもしろかったです!私的にちょっと悲しいことあったけど。。

No.2 9点 E-BANKER 2011/07/02 23:49
記念すべき(?)500冊目の書評は、「新宿鮫シリーズ」の最新刊で。
本シリーズがパート10を迎えるなんて・・・感慨深い!
~巨躯、凄みのある風貌、暴力性、群れない・・・ヤクザも恐れる伝説的アウトローが「警官を殺す」との情念を胸に22年の長期刑を終え帰ってきた。すでに初老だが、いまだ強烈な存在感を放つというその大男を阻止すべく捜査を開始した鮫島。しかし、捜査に関わった人々の身につぎつぎと・・・親子、恩人、上司、同胞、しがらみ、恋慕の念。各々の「絆」が交錯したとき、人々は走り出す。熱気、波乱、濃度、そして疾走感~

シリーズ第1弾からすでに20年が経過しましたが、第10弾を迎えても、決して褪せることのなく、読者の心を沸き立たせてくれる・・・やっぱり凄いね!
今回も、実に「新宿鮫シリーズ」らしいストーリー&展開。
前半は、鮫島を中心に、登場人物たちの"人となり”や心の動きが順に語られながら、割と静かに流れていく。
中盤以降、物語は加速度的に進行し、登場人物たちがまるで運命に吸い寄せられるように新宿・歌舞伎町の「ある場所」へ・・・
そして、物語が最高潮を迎える瞬間、ついに「○○○が×××しまう」(!)
こうやって書いていると、新宿鮫っていつも「交響曲」のような作りになってるんですねぇ。それだけ起承転結がしっかりしているということなのでしょう。
でも、本作ではついに恐れていたことが現実になってしまったなぁ・・・(「狼花<新宿鮫Ⅸ>の書評で書きましたが)
後悔と悲嘆に暮れ、号泣する鮫島の姿が目に浮かんでしまって、思わずもらい泣きしちゃいました。
それと、ラストの新宿署副署長の台詞がまた泣かせる・・・(言いこというねぇ!)

今回、新しいステージへの予感を抱かせるような作りになってましたので、まだまだ本シリーズは続いていくのでしょう。
晶や香田との関係も気になりますが、いつまでも鮫島は鮫島でいて欲しいなぁと思わずにはいられません。
(帯に書いてる「鮫島は歯をくいしばる・・・」という台詞が胸を打つ! 鮫島の姿に、自分が忘れかけた「使命感」とか「熱いこころ」という奴を追い求めているんですねぇ。スイマセン。新宿鮫シリーズについて語り始めると、ついつい熱くなってしまいます・・・)

No.1 7点 kanamori 2011/06/18 17:49
新宿鮫シリーズの最新作。
近年の単発作品の低調ぶりから推して内容を危惧していましたが、このシリーズに対する作者の思い入れ具合が分かるさすがの出来でした。シリーズを10作書いてクオリティが落ちないというのは大したものだと思う。
ただ、本作ではシリーズ愛読者にとってショッキングな事態があるものの、前作で一区切りつけて新たなステージへのイントロの物語のような感じで、次作に期待を抱かせるという結末は評価がわかれることだろう。


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