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[ ハードボイルド ]
最悪のとき
ウィリアム・P・マッギヴァーン 出版月: 1957年01月 平均: 6.50点 書評数: 2件

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東京創元社
1957年01月

東京創元社
1960年04月

東京創元社
1960年04月

No.2 7点 クリスティ再読 2016/11/08 20:40
これはハードボイルドというより、ヤクザ映画だよ。
本作は沖仲士の組合が舞台の話なんだが、沖仲士なんてすでに絶滅した職業なわけで、今の人ら何の仕事かわかんないんじゃないかな。だったらイイのは映画で、絶好の参考作品がある。エリア・カザン監督の「波止場」である。マーロン・ブランドが主演だ。見ると雰囲気が伝わる..というか、映画も本作も波止場を支配するギャングとの戦いを描くんだが、1年遅い本作の方が、映画の世界を完全にコピーしてる感じである。ただ、映画は勝利したブランドが新たな波止場のリーダーになる話だが、本作は主人公は復讐に狂う元刑事で、そりゃ最後はギャングたちに勝つのだが...結構心がイタくなる話なんだ。カザンとかドミトリクもそうなんだけど、50年代のトップ監督たちってのは赤狩りの中で仲間を売ってキャリアを継続した裏切り者だったりするわけで、憑かれたように善人も悪人もいない灰色の世界を描いていたわけだが、評者なんかは性格が歪んでるせいか、こういう人らの屈折感がタマらなく好きだったりする。本作の主人公にもヒーローらしいどころかそういう屈折感が強く出ていて、赤狩り後の荒廃して虚脱した時代感を感じるだけでなく、主人公にあるまじき卑怯なトリックを使ってギャングを自滅させる。主人公の「道徳」がテーマな作品なのである(ドミトリクだと「ケイン号の反乱」と似てる)。
なので、三島由紀夫が「ギリシャ悲劇のようだ」と絶賛した東映ヤクザ映画「博打打ち 総長賭博」の最後で、鶴田浩二が吐き捨てるセリフが、本作の主人公にはとても似つかわしい。「俺はただのケチな人殺しなんだ...」ハードボイルドの文脈にありながら、こういうウェットな情緒性が本作の大きなポイントだと思う。

No.1 6点 mini 2010/09/02 09:34
社会派ハードボイルドの雄マッギヴァーンは前期と後期ではテーマが違い、前期だけなら”悪徳警官ものの”というキャッチコピー通りの作家である
いかにもマッギヴァーンらしい前期の代表作であり集大成とも言えるのが「最悪のとき」だ
この作品を最後に後期になると”悪徳警官”というテーマから離れてしまうらしいが、後期作は未読なのでどんな感じかは分からない
作家事典などによると、悪徳警官ものか否かという違いだけで、作品の質はさらに進化したらしいのであるが
前期の出世作「殺人のためのバッジ」は、正直言って展開が形式通り過ぎて面白いと思わなかったが、「最悪のとき」は進歩していて、これなら代表作に相応しいだろう
ただ不満も有って、やはり人物が若干ステロタイプで、しかも人物配置も有りがちなパターンだ
まるで日本の時代劇によくあるような人物配置なのだ
悪くない作家だとは思うけど、何かこう物足りなさを感じる作家でもあるんだよなぁ


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ウィリアム・P・マッギヴァーン
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