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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ]
恐怖の限界
ウィリアム・P・マッギヴァーン 出版月: 1961年01月 平均: 4.00点 書評数: 1件

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東京創元社
1961年01月

No.1 4点 クリスティ再読 2017/10/20 23:50
マッギヴァーンというとハードボイルド/警官モノがメインなのだが、たぶん長編は一つだけだがスパイ小説があって、それが本作。イタリアに出張していたアメリカ人ビジネスマンが、行きずりの女性の危難を救ったことから、ソビエトのスパイが暗躍する謀略の中に巻き込まれていった...というのがアウトライン。各務三郎が昔アンブラーについて「現代版の恐怖小説になってしまったスパイスリラーに、もう一度冒険のセンスを取り戻そうとした..」なんてことを言っていたのだが、要するに本作、タイトルからして「恐怖の限界」だが、まさにそういう「現代版恐怖小説」としてのスパイ小説だったりするのである。
しかしね、作者がマッギヴァーンだ。主人公はラヴクラフト風の受動的なキャラではなく、行動的で現実的なアメリカンで、一種のモラルからドンキホーテ的なおせっかいをして結果死体がゴロゴロ(いくら冷戦まっ盛りのスパイ活動でも、外国での殺人はなるべく避けるだろうに...)、ということになってしまう。副主人公的ポジションで、左翼系インテリで皮肉屋の友人がいるのだがこの男と、加えて敵方のボスである冷血の職業的スパイと、この3人の内面描写を切り替えて、神視点三人称で多面的に状況をきっちり説明して「見せる」のだが...まあ実際本作の内実は恐怖小説なので、しっかりかっきり説明してしまうと、どうしてもお話がお安くなるというものだ。
というわけで、本作はマッギヴァーンのイイ面が全部裏目に出てると思う。まあこういうのも、ある。


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