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[ ハードボイルド ]
悪徳警官
ウィリアム・P・マッギヴァーン 出版月: 1961年01月 平均: 7.00点 書評数: 1件

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東京創元社
1961年01月

東京創元新社
1966年01月

東京創元社
1982年01月

No.1 7点 クリスティ再読 2018/03/31 23:07
マッギヴァーンお得意の警官モノ。主人公がギャングに買収された悪徳警官だったのが、弟のトラブルをきっかけにギャングたちに反逆する話である。ただし道徳的に悔い改めるとか、弟の復讐で...とか、そういうウェットな話にしないのが一番いい点。
主人公はギャングに買われる悪徳警官を自任しながらも、それでも有能な刑事であり、ヘミングウェイ風な頑固一徹なコードヒーローである。世の中の仕組みが分かってるからこそシニカルになり、利口に立ち回って職務を売るのも、それが独立独歩で他人を信じないタイプの男だからこそだ。そもそも正義と不正・道徳といった観念で動く柄じゃない..だから本作はマッギヴァーンの中でも一番ハードボイルドのテイストが強い作品になっている。
事件の目撃者となったことでギャングに不利な証言をする弟に対し、死なせないためにその証言を翻させようと主人公は躍起になる。マトモな警官である弟はまったく取り合わないので、主人公と組んでいたギャングに殺される。それでも主人公は自分がギャングたちに騙されメンツを潰されたあたりに怒り狂う(弱みなんぞ見せたくもないしプライド高いんだよ)みたいに描かれて、ウエットさなぞ薬にしたくてもないような煮え切った主人公である。
要するに主人公は自分の周囲の、弟を含む善良な警官たちを、多少小馬鹿にしていたのである。しかし周囲の善良な警官たちが「警官殺し」に対して一致団結してギャング壊滅に向けて頑張る姿に、主人公は逆に考えさせられることになる。こういう道徳主義的ではないダイナミズムの設定がなかなか、いい。あくまでもバッドボーイの物語なのだ。
日本だとどうもハードボイルドの名のもとに情緒的な浪花節が横行するのだけども、本当はこういうシニカルでドライなのが、ハードボイルドの真面目なんだよね。作者が自分の作り出したキャラをうまく客観視できている印象がある。こういうあたりが極めてマッギヴァーンという作家の個性を感じるところ、かな。


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