皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
[ 本格 ] 私のすべては一人の男 |
|||
---|---|---|---|
ボアロー&ナルスジャック | 出版月: 1967年01月 | 平均: 7.25点 | 書評数: 4件 |
早川書房 1967年01月 |
No.4 | 8点 | メルカトル | 2023/08/10 22:49 |
---|---|---|---|
これは面白い、これは笑える、まさにバカミスの一級品だ。とは私の心の声であります。何故この傑作が今まで文庫化されなかったのか不思議でなりません。この作者の作品は三冊目ですが、未読も含めておそらくこれが最高傑作だと思います。
早々にこの実験的なミステリの概要は語られるので、ネタバレにはならないでしょうが、一応未読で今後読むかも知れない方の為、以下ネタバレ注意としておきます。 【ネタバレ】注意 本作は頑健な男の死刑囚を四肢、頭部、胸部、腹部の七つのパーツに分け、それぞれの部位を事故で無くしたり、切断せざるを得ない状態の男性六人、女性一人に移植するという現実的にあり得ない物語。そして手術後のそれぞれの人物をルポの様に追っていくというもの。章立てはしていないので、少し表現が違うかも知れませんが、最終章では正直感動しました。そしてエピローグでその皮肉なエンディングに唖然とさせられ、読後暫く何も手に付きませんでした。SFと本格の融合と言うべきでしょうか・・・。 ただ、誰がどの部位を移植されたのかが途中で判らなくなったりしたので、主な登場人物一覧が欲しかったです。それだけが残念でした。 |
No.3 | 8点 | クリスティ再読 | 2022/11/20 14:28 |
---|---|---|---|
人体移植というSF風の設定を利用した大技炸裂!で、実はボア&ナルって「やんちゃ」なミステリ作家だ、というのを実感する。ファンタジーだと思って小説内での奇想の辻褄があってれば、それでいいんだよ。まあだって、ボア&ナルって一貫して、固定した視点人物の主観の中で完結する話じゃないの。ファンタジーと言えばファンタジー、それがボア&ナル。らしさ満喫。
まあそういうことを言わなくても、本作のサスペンスの「作り方」って「そして誰もいなくなった」なんだよね。死刑囚の遺体が7分割されて、それが事故で身体の一部を失った7人の男女に移植される。しかし一旦は回復した7人の男女が次々と...という話だから、「そして誰もいなくなった」風の次から次への連打。サスペンスのお手本みたいに展開していく。死刑囚の左脚を移植されたのは清楚な人妻、右腕を移植されたのは司祭(祝福を行う手が死刑囚のもの、という皮肉)、左腕は左利きの画家で移植で画風が変わってしまい苦悩する....などなど、ちょっとした人間ドラマも仕込んであれば、死刑囚の恋人がこの件に関心をもって関わるという波乱もあり。 最後には大技に目を奪われるけども、そういう見地以外でも上出来な佳作。ボア&ナルでも上位の出来。 |
No.2 | 7点 | 人並由真 | 2018/03/22 12:07 |
---|---|---|---|
(ネタバレなし)
その日「私」こと警視庁官房長ギャリックは、警視総監アンドレオティから奇妙な指示を受ける。その内容は、偏屈な天才老外科医アントン・マレック教授のある医療計画に立ち会い、その始終を確認せよというものだった。マレックの計画とは、銀行強盗の殺人犯人で、28歳のハンサムな死刑囚ルネ・ミィルティルが近日内にギロチンで処刑される。そこでミィルティルの死体を利用し、体の部位が欠損した直後の複数の年若い人間(20~30歳前後)に、頭部・胸部・腰部・それぞれの四肢とその体を7つに分割して、移植するというものであった。世にも奇妙な施術はつつがなく成功したかに見え、ミィルティルの肉体を受け継いだ6人の男と1人の女は独自のコミューンを形成するが、そんななかで予想外の展開が……。 大昔に購入しておいて、いつか読もう読もうと思っていたマイ蔵書シリーズ(笑)の一冊。 手持ち本の帯にも「恐怖!怪奇!SFとミステリの結合!」との惹句が書かれており、時たまガイドブックで目にする評判からしても、まあ一筋縄ではいかん作品だろうな、とは思っていた。 ボリューム的には、一段組のハヤカワ・ノベルズで全240ページ前後と比較的短め。しかも会話の多く展開の早い、いかにもフランス・ミステリ風の中味だからスラスラ読める。この作者コンビの作品のなかには、リーダビリティの高いものもあればそうでないものもあるという感じだが(まあ個々の作品の翻訳のせいもあるにせよ)、今回は確実に前者。 それと主人公ギャリックは独身、まだ年若い感じ。そんな彼と、事情を知って事態に介入してくる、ミィルティルの情婦だった美人モデル、レジィーヌ・マンセルとのどこか危なげなロマンスっぽい描写も作品の流れをなめらかにしている。 それで肝心のミステリ味だが…ああ、これは確かに(中略)! SFミステリとかいうより、二十年早かった日本の新本格、そのフランス版という感じで仰天しました。ネタバレになるのであまり詳しくは書けないけれど、kanamoriさんもおっしゃっている通り、バカミスの範疇にも十分入るであろう大技である。 好きか怒るか? もちろん大好きですよ、こういうの(笑)。 まあただ一箇所だけ、そこが明確になると都合のよろしくないポイントを、わざと曖昧にしているな、という部分はあるのだが。 あとこれはミステリ的なトリック&奇想以外の部分だけど、最後まで読むと一種の人間ドラマというか、青春小説っぽい仕上がりになっている点もステキであった。 |
No.1 | 6点 | kanamori | 2010/04/17 14:44 |
---|---|---|---|
従前の心理サスペンス風の作風とはちょっと異なるボア&ナル最強の怪作だと思います。
臓器移植の大家が、重傷を負った7人の患者に一人の死刑囚のからだの部分を移植するが、手術後に患者たちに次々と異常が起こり始め、自殺が相次ぐ。 いわば、「占星術」の逆バージョン。現象はホラー小説の様相ですが、全ては合理的に説明される(かな)。 フランス・バカミスの頂点でしょうか。この驚嘆の真相に対して笑って許せるか、壁に投げつけるか、読者の度量の大きさが試されます(笑)。 |