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[ サスペンス ] 思い乱れて |
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ボアロー&ナルスジャック | 出版月: 1959年01月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
東京創元社 1959年01月 |
No.1 | 6点 | 空 | 2012/03/27 01:17 |
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タイトルは、作中に出てくるシャンソンの題名でもあり、また作品そのものの内容を示したものにもなっています。
あとがきにも書かれているように、ミステリとして見れば、『死者の中から』等に比べると「迫力も劣る」ことは間違いありません。愛人の夫であるシャンソン界の重鎮作曲家を殺してしまったピアノ奏者ルプラの視点からほぼ描かれた作品です。死んだ作曲家のメッセージが録音されたレコードが送られてくるという謎とサスペンスはそれほどでもありませんし、さらに起こる殺人事件で使われるトリックにしても、現代ではありきたりなものです。 しかし、真相の見当は簡単についても、だから結末はどうなるのかという点については、かなり意外な展開が用意されています。最後のルプラの一見矛盾したような行動については、シムノンの純文学系作品を想起させるところもありますし、ラスト1ページの息詰まる心理的葛藤にはさすがだと思わせられました。 |