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[ サスペンス ]
シルエット
アイリッシュ短編集4
ウィリアム・アイリッシュ 出版月: 1974年03月 平均: 6.25点 書評数: 4件

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東京創元社
1974年03月

No.4 6点 斎藤警部 2022/03/14 18:18
■■毒食わば皿■■ 家賃を払えず窮した男女。「もう一時間もしたら、あの世で会おうぜ」 どうしようもない馬鹿の馬鹿話と思ったら、いつの間にか"アンダルシアに憧れて"を彷彿とさせる泣ける展開に。或る落とし前、哀しくもきっちり付けた。だからその最後のオチは(伏線ちゃんとあったし、ミステリには必要なんだろうが)、いらないよ。。 と思ったけど、やっぱりこのオチ込みで泣ける人情話。
■■窓の明り■■ 恋人の家を訪れた帰還兵。ああ、また馬鹿な奴が出て来た。。陰性の巧みな比喩と、ハードボイルド式表現がナイス。前半と後半でガラリと姿も内面も変わる、妖気と冷風の中のストーリー。或る事件(事故)が起きるかどうかの緊張で何気に引っ張ったのも良かった。「二股」と叙述トリックとは、げにこれ程までに相性が良い、という再認識を見事な陰画の形で突き付けてくれた。
■■青ひげの七人目の妻■■ 妹の結婚相手を怪しむ兄。コミカルなバカ解決譚からスタートし、怪談落語めいた進行。しかしこれ、そろそろ短篇集内「同一パターン」の予感が。。未来への布石じみたキーワードさえ。。おっと、後半はそう来なさるか!.. これはなかなか。。 ええっ!?
■■死の治療椅子■■ 歯科にて不審死。熱い友情(リアリティを傷つけかねないほど感動的!)のドタバタ喜劇。しかしこれ、「アレ」ですよね?「アレ」の元祖的な?! 仮に推理クイズネタを知らなくともすぐピンと来そうな流れではあるけれど、クイズではなく小説だけに犯人、動機、犯罪構造はもちろんのこと、捜査過程のスリルは流石、厚みが違う。
■■殺しのにおいがする■■ カーのルームメイトはジョン・ディクスン(!)。その恋人が行方不明に。推理クイズ的な失言解決はちょっと弱いか。。「きみだよ、きみ自身だよ」 最後はほんのりしみじみと。
■■秘密■■ 仲良し夫婦、大恐慌を挟んでの激動。どうも夫にはディープな怪しさが、妻には先の悲劇を予見させる不安定さが付き纏うのだが。。 最後、この皮肉ストレートパンチの深い食い込みには、なかなか立ち直れないぜ。
■■パリの一夜■■ お笑いコント風の妙に早口な状況説明の出だしがなんか笑う。軍隊をちょこっとだけ抜け出した二人が向こう見ずな滑稽冒険譚を繰り広げる。雪崩れ込む○○○○エンドも文句無し!
■■シルエット■■ 家庭内殺人の現場らしきものを目撃した、通行人の夫婦。 愛憎ドラマのはずが、いつの間にか想定外のバカ真相、バカ法廷に。ほんとの意味でリアリティ無い、作者の恣意でどうにでもなったとの感触が表に出過ぎ。。むしろそういうの自体のパロディかと思わせたり。。ところがさ。。。。(!!) 表題作に指名されただけの事はある一品じゃった。
■■生けるものの墓■■ 墓場にて、不審者として捕らえられた青年。予想外の◯◯◯社が大暴れするストーリーだが、、ホラー感はよく演出されていると思うが(そのへんの感覚欠如の自分にも感知出来ました)。。恋愛ドラマの側面が意外と伸びたのは心地良かったが。。最後の(ホラー感覚正常な人にはなかなか重いと推察される)ちょっとした逆説の決めフレーズ含め、なんだかあっけないね。

No.3 6点 蟷螂の斧 2021/03/06 21:07
①毒食わば皿まで 8点 男は未払いの給与を取りに行った。ひょんなことから金庫の番号を知ってしまった
②窓の明り 6点 香水、タバコ、ベッドなどの状況から恋人が浮気したのは間違いないが
③青ひげの七人目の妻 7点 妹の夫は殺人犯?。刑事である兄の苦悩
④死の治療椅子 5点 歯医者で患者が青酸で死亡。いったい何が起こったのか?
⑤殺しのにおいがする 6点 同室の相棒が殺人犯?。状況証拠はそろっている
⑥秘密 7点 夫は殺人犯と知っての結婚。夫がまた殺人を?「いつもとかわらぬ夜だった。月が出ていた。星も出ていた。」アイリッシュ節炸裂
⑦パリの一夜 5点 一夜の冒険譚。ドタバタ風
⑧シルエット 7点 窓に映ったシルエットは殺人のようだ。マープル風
⑨生ける者の墓 5点 恋人が墓に生き埋めされたという青年。背後には?

No.2 6点 ボナンザ 2014/04/08 16:09
皮肉と孤独、そして恐怖。
どれも満点。

No.1 7点 Tetchy 2008/08/09 19:19
アイリッシュ短編集。
本作では「秘密」がベスト。かつて殺人を犯したことのある夫の上司が死ぬという事件が起きて・・・というベタな展開だが、やはりこの作家、物語の肉付けが巧い!夫が失業して得たバイトが半身裸になって商品の宣伝をドラッグストアのショーウィンドウで実演するもの。それを見て妻が涙するなんて、滑稽なんだけど、泣かせます。

準ベストは「生ける者の墓」。生きながら埋葬され、そこでわずかばかりの酸素で死を克服する団体という設定がまずすごい。なんか本当にありそうである。

他の作品も設定はどこかで見たことあるものの、アイリッシュの手にかかると一味変った作品に仕上がっているのがよく解る。

名シェフの技をご賞味あれ。


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ウィリアム・アイリッシュ
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