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[ 本格 ]
ヨルガオ殺人事件
スーザン・ライランドシリーズ
アンソニー・ホロヴィッツ 出版月: 2021年09月 平均: 7.00点 書評数: 4件

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東京創元社
2021年09月

No.4 7点 文生 2022/09/20 08:39
前作『カササギ殺人事件』にて死亡したミステリー作家の作品に殺人事件の犯人を指し示す証拠が残されていることが判明するという展開は非常にスリリング。おまけに、作中作として挿入されている問題の作品も抜群の面白さです。黄金期探偵小説の雰囲気に満ちており、誰もが怪しい中で意外な真相を提示してみせる手管には感心させられました。
ただ、現実の事件の謎解きはイマイチ。犯人にさほどの意外性がなかったのも不満ですが、なにより肝心の「犯人を指し示す証拠」というのが実はなんの証拠能力もない点がいただけません。これって要は、性格の悪い作家が「こいつが犯人だ」と(根拠も示さずに)勝手に言っているだけでわざわざその秘密を知った人間を殺さなくても言い逃れはいくらでも可能なのではないでしょうか?

No.3 7点 makomako 2021/10/17 16:21
 謎解きが二度味わえるとのうたい文句どうり、作中作がほとんど長編推理小説並みのボリュームで入っており、まさに二つの推理小説を複雑に組み合わせながら最終的に完結するといった形式です。
 ほかの評者の方がおっしょっていたようにこの二つのお話は名前も同一性があって、私のように外人の名前を覚えるのが苦手になってきた読者にとってはなかなか大変でした。若い頃なら平気で覚えたのですが(言い訳に近い)老化した頭では名前のページと首っ引きということになります。そんなに頑張って名前比べしていたのですが、実はそれほどお話の肝ではないので読まれる方はご安心を。
 ピュントの出世となった事件のトリックはなんだか手品みたいでちょっといただけませんが、そこを除けば実に緻密で細部まで吟味された素晴らしい推理小説と思います。
 カササギよりはちょっと落ちるかもしれませんが、充分に読みごたえがある推理小説です。

No.2 7点 HORNET 2021/10/16 12:11
 「カササギ殺人事件」から2年、編集者の職を辞したスーザン・ライランドは、クレタ島に移住して彼氏とホテルを共同経営していた。そんなスーザンのもとに、英国から夫妻が訪ねてくる。夫妻が言うには、経営するホテルで8年前に起きた殺人事件の真相を知ったらしい娘が行方不明になった。娘はある小説を読んで、真相に気付いたという。その小説こそ、かつてスーザンが編集に携わった故・アラン・コンウェイのミステリ「愚行の代償」だった。
 報酬を払うので、謎を解き、娘の行方探しに手を貸してほしいという夫妻。スーザンは再び英国に戻り、独自で調査を始める。

 前作同様、今回も「作中作」が挿入される二重構造で、上下巻合わせて800ページ以上の厚み。これも前回同様、作中作の「愚行の代償」は小説がまるまる一本入っていて(!)、氏の創作力には舌を巻くばかりだ。
 謎の中心はもちろん、コンウェイの「愚行の代償」に、真犯人を明らかにする何が隠されているか。当小説は英国夫妻が経営するホテルをモデルにして書かれたものということで、その作中作の登場人物と、実際の現実の人物の照応を考えながら読み進めることになり、外国人の名前を覚えるのが苦手な人はやや苦労するかも。
 とはいえラストには、そうした照応にはあまり意味はなかったことに気づかされるのだが―(笑)仕掛けは全く別のところにあり、そのことに気が付いても真相看破はなかなかできない仕組みだった。
 しかし、読みがいがある作品だった。

No.1 7点 nukkam 2021/09/18 22:42
(ネタバレなしです) 2020年発表のスーザン・ライランドシリーズ第2作の本格派推理小説で創元推理文庫版で上下巻合わせて850ページ近い大作です。「カササギ殺人事件」(2016年)と同じくアラン・コンウェイによる名探偵アティカス・ピュントシリーズの本格派推理小説が作中作として挿入され、現実の謎解きと作中作の謎解きの二本立てが楽しめます。しかも本書では作中作の中に現実の殺人事件を解決するヒントがあるらしいという趣向まであります。「カササギ殺人事件」では作中作の見せ方(クライマックス寸前での中断)に個人的にはちょっと不満がありましたが本書は一気に読ませる構成で、これは歓迎です。もっとも300ページほど進まないと作中作は始まらないのですが。本格派黄金時代の雰囲気を漂わせるアンガス・ピュントシリーズは全10作あるという設定なので、残り8作を絡めたスーザン・ライラントシリーズを(2作品分のアイデアが必要なので大変だと思いますけど)今後もぜひ書き続けてほしいですね。


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アンソニー・ホロヴィッツ
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