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[ 本格/新本格 ]
とむらい機関車
大阪圭吉 出版月: 1992年05月 平均: 7.08点 書評数: 13件

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国書刊行会
1992年05月

東京創元社
2001年10月

東京創元社
2001年10月

No.13 6点 パメル 2021/06/17 08:51
戦前に書かれたとは思えないほど古臭さは感じさせない、そして味わいのある挿絵が嬉しい9編からなる短編集。                   「とむらい機関車」乗り合わせた老人客が語る、豚連続轢断事件に秘められた真相とは?冒頭の謎の提示から、意外で凄惨な結末に驚かされる。
「デパートの絞刑使」宝石盗難事件に続いておきたでパート店員の不可解な死。謎の不可解性をロジカルに推理する。お見事。
「カンカン虫殺人事件」作業員二名が行方不明となり、そのうち一人が死体として発見される。悪くはないが少し地味か。
「白鯨号の殺人事件」雄大な自然を背景に行動力で陰謀に挑む探偵。実に絵になる。真相自体は小粒。
「気狂い機関車」機関士殺しと消えた機関車の謎を追う。わずかな手掛かりから、ハウダニット、フーダニットそして驚愕のホワイダニットを解明する。
「石塀幽霊」チンドン屋のチラシが語るおぞましい真相。説得力はあるが、物理的に可能なのかは疑問が残る。
「あやつり裁判」その女証人は、別の事件の証人でもあった。魅惑的な謎が全く予想外の解決に。ユニークなホワイダニットが味わえる。
「雪解」金鉱脈を探し続ける青年が砂金池の持ち主とその娘に出会った時、殺意は芽生える。皮肉な結末が何とも言えない。
「坑鬼」炭鉱という特殊な状況で起きた不可解な殺人事件。トリックも鮮やかだが、ロジックが素晴らしい。逆転の構図が良く出来ている。傑作。

No.12 7点 斎藤警部 2019/03/27 06:38
創元推理文庫の選集x2も今や古本プレミア付き。

とむらい機関車 8.3点
例の『動機』、明言せず暗示で締めるのが素晴らしい。しかもその暗示の手紙の立ち位置! 初読時((こっからネタバレになると思います))、その動機が”患部”切断のための実験かと妄想で思い込んだものです。実際そういうミスディレクションも少しばかりあったのか、無かったのか。 連城の某有名短篇とどちらを先に読んだのでしたか。

デパートの絞刑吏 6.6.点
鮮やかな物理トリックに薬味の心理トリック。導入の謎が地味だが解明ロジックの充実と結末の大胆な意外性は目を引く。しかしこの死に方はなかなか怖い。

カンカン虫殺人事件 7.3点
昔の港の殺人噺はいいなあ。推理小説より犯罪実話の体だが満足。勝新の「かんかん虫は唄う」とは雰囲気違う。私にとってこのストーリーは絶景。どうにも忘れ難き一篇。

白鯨号の殺人事件 7.0点
ひどく散文的な物理解決に導き出されたのは、冒険への郷愁を誘う大型真相と、残酷な詩情溢れるドラマチックなエンディング。ホームズを地道に仕立て直した様な構造の物語だが、この意外な大ラストシーンの訴求は忘れ難い。巻末解説を読んだ限りでは改稿「死の快走船」のほうが充実してそうだけど(ラストシーンの伏線となる絶妙な台詞追加とか)、本作の素っ気ない魅力もまあ悪かねえ。

気狂い機関車 5.3点
物理物理し過ぎる小型物理トリックで引き摺るショッぱさも、ビジュアルが映えるドラマ性強いカタストロフのお陰で和らいだか? 鐵道に纏わる風物は悪くないやね。あとまァ、なんツか唐突ながら意外な犯人てやツスか。

石塀幽霊 5.1点
小味ながら鮮やか、不思議興味を唆る光学系物理トリック(ピタゴラスイッチで紹介されそう)。 これはこれでドラマなど不要。しかしこのトリック核心、派手に応用出来たら相当に。。。。

あやつり裁判 6.4点
面白いかもな、その遊び。だがその犯罪行為まで手を伸ばすのは最悪よ、純粋に楽しみゃいいものを。結末は見え透いとるが展開の奇妙なサスペンスが良い。んで題名と店の名前はちょっとね。。

雪解 8.3点
こりゃあいいぜ。どうにも光り過ぎの某人物のナニが最後にこう活きるわけか。。考えオチってやつですよね。 本格だけでなく戦時系でもなく人間派サスペンスのこういうブツも大坂なおみ選手はキメられるんだなあ〜! 間違えた、圭吉っつぁんか、大阪か。

坑鬼 8.7点
ホヮイダニットの鬼(色んな意味で)。社会派で本格。導入の瞬間から文言濃いこと(途中すぐ普通になったが)、展開敏捷なこと! しかし犯人、よくもその限られた時間で。。。!! 初出がかの『改造』誌ってのが凄味を放ちますよね。 ラストシーンの恐怖は胸に沁み入る。。。。後から”より”じわじわ来る一篇です。

小説群のあとは短い随筆がいっぱい。東野「名探偵の掟」にも直結する推理小説愛・本格ミステリ愛が真摯に軽快にスプラッシュしまくりです。 「我もし自殺者なりせば」はエッセーなのにまるでブラッドベリの掌編。読んですぐ、これに影響されたであろう不気味に美しい空中風景の夢見ちゃいました。 「探偵小説突撃隊」の自由平等両立宣言も愛おしい。 言及される方の多い「お玉杓子の話」はアツいですねぇ~~ (9.0点)。 「幻影城の門番」も、今の自分よりずっと若輩の、しかしずっと大人であったであろう作者の筆と思うとなんともくすぐったい味がある。 随筆部分のみ、まとめて8.3点あげちゃいます。

No.11 7点 レッドキング 2019/02/01 15:00
このサイト見てたらこれが出てきて「あ!これがあった」と思い出した。
「坑鬼」良かったねえ。トリック自体はいくらでも元ネタ辿れるんだろうけれども、炭坑という場面設定と描写に見事に嵌っていた。

No.10 9点 クリスティ再読 2019/01/31 21:24
「銀座幽霊」はB面だったね。こっちがA面。粒ぞろいなのに、「坑鬼」みたいな「戦前を代表する名作短編」と言って過言じゃないのまで、ある。
大坂圭吉は「モダン」の小説としての「探偵小説」を意識的に書いているように思う。風俗だけではなくて、「カンカン虫殺人事件」「気違い機関車」そして「坑鬼」といったあたりは、プロレタリア文学風と言ってもいいくらいに、労働のデテールが登場人物以上に詳細に描かれて、それがミステリとしての「核」の部分にも密接に関連しあっている。だから本当は、大坂圭吉って戦前の探偵文壇で、「非文学派」と「文学派」を一番総合できた部類の作家だったのかもしれないよ。
だから「社会主義探偵小説」を清張流の「社会派」と捉えるのは大いに不足で、「モダン」の振幅の中にプロレタリア文学的な部分も併せて捉えるような視点が必要なのでは、なんて思うのである。実際ミステリの牙城となった「新青年」でも顧問格でプロレタリア文学の批評家の平林初之輔がいたわけだしね...そもそもね、戦前の日本を舞台に、欧米ブルジョア家庭内の殺人事件の小説を持ってくるのは、相当のムリがあるわけでね。浜尾四郎とかやってるけどリアリティなんて出るわけがないんだよ。そうしてみると「日本でリアルなミステリ」の一番誠実な例だったようにも感じるんだよ...
でまあ「坑鬼」。本当にコレに尽きる。ロジックよし、動機も社会派な動機、しかも最後には「海がやって来る」。無主人公でヒーロー性は皆無、文体も映画的な客観性があって、よい意味で「文学的」じゃない。別文脈のハードボイルド、という触覚。それでもモノによる象徴詩みたいにも読めるあたりが素晴らしい。戦前でも屈指の大名作だと思う。

No.9 7点 人並由真 2018/10/20 12:53
(ネタバレなし)
 創元推理文庫版のレビュー。
 先日読んだ芦辺拓の新刊『帝都探偵大戦』に刺激されて、読了(今、『銀座幽霊』読んでます)。
 表題作は大昔に鮎川のアンソロジー『(鉄道ミステリー傑作選)下り”はつかり”』で読みかけたと思うが、たしか少年時代のことで生々しい轢死事故の死体描写がキツくって、途中で投げ出した記憶がある。あの頃は私も若かった。しみじみ……。

 しかし初めて一冊単位で通読して、今さらながらにそのハイレベルさに舌を巻いている。改めて接した表題作の無常観たっぷりな余韻もよいが、続く収録作がそれぞれ佳編~優秀作。
 青山探偵ものは安定して面白かったが、特に『デパートの絞刑吏』のぶっとんだ真相は当時としてはかなり斬新だったと想像に難くないし、『石塀幽霊』のリアリティ希薄な謎解きも豪快で印象に残る。『気違い機関車』も犯人の設定から逆算すれば殺人の実行はまず現実では無理では? ……とも思うが、魅力的な謎と意外性を追い求めたかった作者の情熱が伝わってくるようで納得。
 クライムストーリー『雪解』の小説としての結晶度も見事だが、最高傑作と定評の『坑鬼』での最後の最後で明らかになる動機の真相には慄然。のちに戦後1950~60年代のある翻訳ミステリ叢書のとある一冊がまったく同じ手を使っていて、たしか佐野洋がそっちの方を斬新な創意で素晴らしいとか称賛していた覚えがあるけれど、すでにこの作品でやっていたのだった。
 創元文庫版の巻末に収録の作者のエッセイ群も、21世紀の現在の我々の心にも響くミステリ愛が凝縮されており、うなずくことしきり。とても楽しい一冊であった。

No.8 6点 蟷螂の斧 2014/11/10 17:28
「とむらい機関車」は動機が秀逸。「奇妙な味」がありました。これが一番かな。「あやつり裁判」はオチがすぐわかってしまいました。女将が「つぼ半」でアカラサマすぎませんか?(笑)。「抗鬼」はストーリー的には面白いのですが、妻が○を間違えてしまうのか?「う~ん」という感じです。全体を通して、戦前・探偵小説の始まりを感じることはできました。

No.7 7点 メルカトル 2014/10/18 22:09
噂にたがわぬ名作揃いの短編集。
好みから言うと表題作と『石塀幽霊』である。『とむらい機関車』はホワイダニットとして大変優れた作品だと思うし、ミステリとしてのみでなく文芸としても十分評価に値する。また、真相は人間の哀れを誘う悲哀に満ちたもので、独自の作風にマッチした名作だろう。『石塀幽霊』は不可思議な自然現象を扱ったもので、正直真偽のほどは怪しい気もするが、その奇想には一目置かれてしかるべきではないかと思う。
評判の高い『抗鬼』だが、個人的にはあまり面白いとは思わなかった。名作と呼ばれているらしいが、なんとなく全体的に煩雑な印象を受け、ストーリーがややこしい気がするのが原因。文体もやや合わなかった。
余談だが、巻末の随筆の中の『お玉杓子の話』は一読に値する。約60年前に書かれているにもかかわらず、内容が先鋭的で現代でも十分通用するものとなっているのには驚きを隠せない。

No.6 6点 mini 2014/07/07 09:58
本日7日に戎光祥出版から大阪圭吉『死の快走船』が刊行される、戎光祥(えびすこうしょう)という出版社は私も知らなかったのだが半蔵門近くの千代田区麹町に本社を置く基本的には宗教関係の出版社である
ところが意外にもミステリー部門でも実績が有り近々鉄道関連にも手を伸ばすということだ、きっと担当者の趣味だな(笑)
そのミステリー部門の代表が日下三蔵氏編集の『ミステリ珍本全集』である、今回の大阪圭吉はその叢書第4弾だ
大阪圭吉の代表的な短編は本格派限定なら国書刊行会版や創元文庫の2巻が有るし、他に論創ミステリ叢書からも刊行が有る
大阪圭吉は戦前のガチな本格派一辺倒の作家だと思い込んでいる読者もたまに居るがこれは間違いである、大阪作品は結構ジャンルが多方面に渡っており例えばユーモア系統の短編もあるようで、大阪圭吉の本質は案外と軽妙なユーモアなのかも知れない
今回の戎光祥出版版ではそうした各ジャンルでの大阪圭吉の業績を網羅しており特にこれまで単行本に未収録だった短編が8編も収録されておりマニアには見逃せない

さて大阪圭吉という作家を研究しようというのではなく、ただ単に戦前のミステリー作家に興味が有るとか、ジャンル的に本格派にしか興味が無いタイプの読者程度なら創元文庫の全2冊で充分だろう
第1巻の『とむらい機関車』には表題作を始め、初期の青山喬介ものや、戎光祥出版版の表題作「死の快走船」の探偵役変更前の別題名ヴァージョン「白鮫号の殺人事件」や、中編「坑鬼」などが収録されている
世のネット書評を見るに「坑鬼」への高い評価に驚く、何故なら私は「坑鬼」は過大評価だと思っているからだ
戦前の物資不足で紙数が足りなかったのだろうが前半の怪奇趣味な部分がちょっと中途半端で、特に良くないのが社会派的な真相とミスマッチな点だ
このような真相であるなら前半から社会派的な方向性で話を進めた方が良かった気がするし、逆に前半の怪奇趣向を活かすのならもっと大々的にやって悲劇的な真相にした方が良かったように思う

私個人的な収録作ベストは表題作「とむらい機関車」と「あやつり裁判」である
「とむらい機関車」は青山喬介ものに代表される物理的トリックに振り回されていた感の有る初期の作風から脱して人間ドラマと謎解きのバランスが取れた名作である
私は「デパートの絞刑使」「白鯨号」や「坑鬼」に比較して「とむらい機関車」だけを低く評価する人の書評は私の感性と合わないと判断して信用しない事にしている
ところで指摘する人があまり多くないのは意外なのだが、連城三紀彦の某短編の元ネタはこれなんじゃんねえの?
もう1つの「あやつり裁判」は私が思うにある意味作者の別格代表作である、分量も短いし内容的にコクも無いのだが、こういう軽妙なユーモア感覚こそが大阪圭吉の本質に近いんじゃないかなぁ

No.5 7点 ボナンザ 2014/04/07 22:37
大阪圭吉の代表作を集めた本格好き必読の書。
どれもユニークな発想で楽しませてくれる。

No.4 8点 E-BANKER 2013/01/06 16:39
生誕百年を記念して東京創元社より復刊された作品集。
戦争による若くしての死去が何とも惜しい! そんな佳作が並ぶ。

①「とむらい機関車」=轢死事故を繰り返すある機関車。しかし、調査すると轢いたのは人間ではなく、なぜか「豚」だった・・・というのが本作の謎。このフワイダニットは切なさすら感じさせる。
②「デパートの絞刑吏」=作者の実質の処女作品がこれ。で、これが実に小気味いい。同じく本作でデビューした名探偵役の青山喬介の推理はまさにシャーロック・ホームズばり。現場に残された物証や関係者の証言から的確に真犯人を演繹していく。
③「カンカン虫殺人事件」=本作の現場である造船所の殺人現場から、青山喬介が導き出したのは別の奸計なのだが、本編での青山の推理は神懸かり的。因みに「カンカン虫」とは造船所の作業員のことを指す。
④「白鮫号の殺人事件」=被害者はヨット「白鮫号」の船長。本編も③と同ベクトルの作品で、つまりは一つの殺人事件からその裏側にある「見えざる犯罪」を暴き出す・・・そんなプロット。本編では、真犯人たる人物の体重を割り出すという、青山の科学的捜査も披露されるのだが・・・。船長が残したダイニングメッセージも気が効いてる。
⑤「気狂い機関車」=本編、青山があまりにもスピーデイーに推理を進めるため、事件の内容すらよく腹入れできないまま読み進めてしまったのだが、本編もホワイダニットが印象深い作品。こういう「動機」で殺人を起こすか?という疑問は残るが・・・
⑥「石塀幽霊」=推理クイズレベルと言えなくもないが、プロットは実に短編っぽくって好き。ただ、このトリックはそもそも真犯人が意図したものなのだろうか、という点と科学的に正しいのか、という点は気になる。
⑦「あやつり裁判」=これは実に面白い。同種のプロットはどこかで接したことがあるように思うが、ミステリーの楽しさというものを体現したような作品だと思う。リアリテイの問題はあるが、事件の「謎」そのものを「ずらす」技法に作者がいかに長けていたのかが分かる。
⑧「雪解」=倒叙形式で書かれた作品。プロットそのものはよくある手だが、自身の欲望のため徐々に狂っていく主人公の描写が作者の筆力を窺わせる。
⑨「坑鬼」=名作との誉れ高い作品だが、その冠に偽りなし。このプロットはスゴイ。戦前の海底炭鉱という特殊な舞台設定が色を添えているほか、フーダニット・ハウダニット・ホワイダニットの三つを包含した謎の設定、ラストにそれら全てが一気に解き明かされていくカタルシス・・・。まさに短編のお手本とでもいうべき水準だろう。

以上9編に加えて、作者のエッセイが全部で10編収録というおまけ付き。
やはりと言うか、作者の作品は初読なのだが、そのクオリテイにはビックリさせられた。
巻末の巽氏の解説がなかなか面白いので、詳しくはそちらを読まれるとよいと思うが、同世代の乱歩がロジックやトリックという、ミステリーの骨格だけでなく、猟奇や耽美といったストーリーの「風合い」とでもいうべきものに拘ったのとは違い、作者の作品は「謎」の面白さに真正面から取り組んだという感が強い。
②から⑥までは青山喬介登場作品。まさにホームズ譚を意識した構成で目立つが、個人的にはそれ以外の作品の方が印象に残った。
特に⑨は別格で⑦も素晴らしい。
当然評価すべき作品だろうと思う。
(エッセイのなかでは、「お玉杓子の話」が作者のミステリー感が出てて興味深い。)

No.3 8点 まさむね 2012/12/16 11:12
(創元推理文庫版)
 戦前の探偵小説作家の中で,本格度の高さ,手法の先駆性という意味においては,やはり大阪圭吉氏は外せない…旨の薦めを目にし,かつ,個人的には唯一読んだことのある短編「デパートの絞刑吏」が良かった記憶もあったため,何気なく手にした次第。
 結論から言えば,「坑鬼」と表題作がずば抜けて面白かったですね。
 「坑鬼」は,極めて完成度の高い本格中編。海底炭鉱という,現代では想像しにくい舞台ながらも,最後まで読めば,決して「時代が違うお話」とは思えない辺りが相当に趣深いです。今だからこそ読むべし。傑作。
 また,表題作も記憶に残ります。「豚の連続轢死事件」「鉄道会社を退職した理由」という謎が魅力的ですし,ラストの反転も見事。「日常の謎系」の原型とすら言いたくなるプロットです。
 他にも,倒叙形式の「雪解」,ホワイが魅力の「気狂い機関車」など,多種多彩。若くして戦地に散ってしまわれたことが,本当に惜しく,悔しい。

No.2 7点 江守森江 2010/04/07 22:24
※はじめに(但し書き)
大阪圭吉の本格探偵短編を網羅した「国書刊行会版」(絶版)と、幻想・ユーモア短編を加えて二冊に分冊化した「東京創元社版」がある。
同一タイトルで収録作品に違いがある為、収録数と入手難度から新しい「東京創元社版」での書評にした。
まず、表題作は期待ほどの作品ではなかった。
「デパート~」は本格のお手本としてマズマズ。
「雪解」の倒叙幻想や「カンカン虫~」「気狂い~」の物理トリックは好みではない。
「白鮫号~」の重量のロジックや「あやつり裁判」の何故?は楽しい。
なんと言っても一番は、謎・奇想・ロジックと本格要素を満たしながら炭坑風景の描写まで素晴らしい「坑鬼」だろう!
この一編さえ読めれば残りはオマケな感じがする。
戦前に、こんな本格探偵小説が存在した事にも感嘆した。
「坑鬼」単独なら満点だが、作品集としては7点。

No.1 7点 シュウ 2008/11/06 21:39
各所の評判どおり面白い本でした。1話につき30ページ程度の短編ばかりなので読みやすいです。
物悲しいラストが印象的な「とむらい機関車」、倒叙作品の「雪解」、ミステリとしての完成度がかなり高いので
できれば長編で読みたかった「坑鬼」など古き良き探偵小説がつまってます。巻末に収録されているエッセイも時代を感じさせて読み応えがあります。


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大阪圭吉
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死の快走船
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