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[ 本格 ]
ニコラス・クインの静かな世界
モース主任警部シリーズ
コリン・デクスター 出版月: 1979年01月 平均: 5.71点 書評数: 7件

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早川書房
1979年01月

早川書房
1990年12月

No.7 3点 レッドキング 2021/10/18 18:19
デクスター第三作。試験委員会の委員連続殺人事件。難聴(ほぼ聾啞)者の読唇述ネタや英文縦読みネタ(「文を縦に書くおかしな民族」・・我が国バカにしとる!)、狙いは面白いのに驚きがイマイチ。非英語国民にはチト響きづらかろう。ディヴァイン同様、この人のトリックの肝は、どうやらアリバイ時間トリックのようね。それはよいが、最後の半どんでん返し、一つ前のせっかくの「人間関係トリック」がチャラになり、冒頭の伏線が無意味になるじゃん・・1点減点。

No.6 6点 2020/07/19 10:58
 約百カ所の海外センターを通じて、オックスフォードからイギリスの優れた試験制度を世界に提供する海外学力検定試験委員会。その審議員の一人が、パインウッド・クロースの自宅で変死した。死んでいたのは三カ月前メンバーの一員に加わったケンブリッジ大出の俊秀ニコラス・クイン。死因は青酸カリによる中毒死だった。
 誠実な人柄と聡明な知性で見事委員の座を射止めたクインだが、彼には重大な肉体的欠陥があった。巧みな読唇術でハンディキャップを補い、常人同様に振舞えるとはいえ、電話も受けられぬほどの極度の難聴だったのだ。就任したばかりのクインは果たして何を知り、どうやって殺害されたのか?
 キドリントン、テムズ・バレイ警察のモース主任警部は勤務先の試験委員会に捜査の照準をあわせ、職場の人間関係から事件の謎に迫ろうとするが・・・
 『ウッドストック行最終バス』『キドリントンから消えた娘』に続くモース主任警部シリーズ第三作。1977年発表。「なぜ?」「いつ?」「いかにして?」「誰が?」の四部を、プロローグとエピローグで挟み込む構成。仮説を組み立てては崩すスクラップビルド型の前作・前々作とは若干異なり今回は割とストレート。変化したように見えても鏡餅風というか前の推理が完全に捨てられず、その上に二段目三段目と推理が積み重ねられていきます。
 〈スタジオ2〉関連の出入りが結構込み入っていますが、これを除けばアリバイトリックは単純。一見複雑に見えるものの、初期六作の内ではシンプルな方の作品です。最後の捻りはややアンフェア気味ですが、本文で先に触れられているのでまあセーフかな。ただ四作目以降に比べても華やかさに欠ける面があるので、点数は6点止まり。

No.5 6点 クリスティ再読 2020/03/15 11:40
パズラーというものに、「フェアに読者が犯人を当てることができる」を要求しちゃうとすると、本書みたいなのは失格、ということになるのかもしれないね。ややアンフェアに感じるあたりもあるんだよ。二転三転するモース警部の推理に引きずり回されて、その都度絵面が切り替わっていくのを愉しむのを主体とするタイプになるのだが、本作はそれほどこの「切り替わり感」が強くないので、まあ普通?というくらいの評価。まあ丁寧に組み立てられてはいるのだが、スタジオ2のあたりの話は、他の入場者が分かるのか?とか今一つピンとこない。

けどねえ

「警部さんは?彼のクリスチャン・ネームは?」
ルイスは眉をよせて数秒考えた。まったく、おかしなことだ。モースにクリスチャン・ネームがあるなんて考えてもみなかった。

と書かれるくらいにモース警部はパズラーの推理機械なんだけど、ポルノ映画を見たがるとか妙に俗っぽいな.....バランスが何か変なキャラだと思う。

No.4 5点 ボナンザ 2015/10/09 21:40
真相が二転三転するのは見所。ただ、全体的に吸引力不足。

No.3 8点 nukkam 2015/07/26 02:06
(ネタバレなしです)  1977年に発表されたモース主任警部シリーズ第3作で、プロローグとエピローグの間に32章をはさんだ構成となっています。第24章でモースは犯人は〇〇だと思い込んで逮捕し、容疑者取り調べの中で自分の推理を基に事件を再構成しますが反対証拠のために釈放を余儀なくされ、その後も推理が二転三転していきます。容疑が転々としていく本格派推理小説は珍しくありませんが、本書が優れているのはボツになった推理もそれなりによく考え抜かれていることで、特に最後から2番目にモースが示した解決は非常に強力に構築されています。最後の(そして本当の)解決が直前の解決を否定するだけの説得力が足りないようにさえ感じられたほどです。

No.2 6点 ミステリ初心者 2014/03/27 18:44
ネタバレがあります


 とても凝った?作品だと思いました。モース警部の推理とキャラが面白かったです。意外な犯人というか、どんでん返しが楽しめました。

 個人的には、どんでん返しの結末より、その前のモース警部の推理のほうが好みでした。バートレットの部屋の前のランプの使い方が好きです。

 あと、読者が真相を当てられないような気がします。自分がアホなだけかもしれませんが。犯人以外の嘘、犯人の幸運と不運、犯人の協力者があります。 この辺は、アガサとか、横溝さんとか、三津田さんに近いような。


 余談ですが、タイトルから、ニコラス・クインが探偵だと思っていました。このシリーズを読むのが初めてなものでして。いきなり殺されてびっくりしました。

No.1 6点 2011/10/29 10:50
例によって仮説を組み上げては、新たな情報の入手により最初から組み直していくプロットを予想していたら、それは最後の80ページほどに圧縮されてしまっていました。今回は、モース警部はルイス部長刑事相手に思いついた推理をすぐ述べ立てるのではなく、むしろポアロ風に秘密めかしているところさえあります。
デクスターの経歴を見ると、彼自身が熟知していたに違いない試験作成委員会という、関係者が最初から限られたかなりクローズドな世界での殺人事件です。そのことが、普通のフーダニットに近くなった原因なのでしょうか。
最終的な解決のきっかけについては、最初の方に伏線があったので、ここで使ってきたかと納得したのですが、そのひねりのため、かえって某登場人物の最後の方のある行動が不自然になってしまっているのは残念です。また、本作での意味あり気な証人視点シーンの挿入は、前2作ほどには成功していないように思えます。


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コリン・デクスター
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