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[ 本格 ]
森を抜ける道
モース主任警部シリーズ
コリン・デクスター 出版月: 1993年09月 平均: 5.86点 書評数: 7件

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早川書房
1993年09月

早川書房
1998年10月

No.7 6点 レッドキング 2021/11/18 14:32
デクスター第十作。オックスフォード界隈の森で、異国の娘が行方不明となって一年、娘の殺人を暗喩するかの如き詩が投書される。だが、再捜査に乗り出したモース警部の勘で発見されたのは男の遺骨だった。いったい森で何が起きたのかWhatダニット。入代りトリックにアリバイトリック、相変わらず引出しは乏しいが、何故あえてリュックが放置されたかロジックは見事。前作同様に今回は二つの森の地図が巻頭掲載されるが大した効果は果してない。

No.6 8点 2019/12/10 17:16
 わたしを見つけて、スウェーデンの娘を
 わたしを覆う凍った外被をとかして
 碧空を映す水を乾かし
 わたしの永遠のテントを広げて

 約一年前の一九九一年七月、ウッドストックの南一マイルにあるA44号線の待避所でスウェーデン人女子学生のリュックサックが発見された。脇ポケットから出てきた書類によって、持主はウプサラ出身の学生カリン・エリクスンと判明。ロンドンからヒッチハイクでオックスフォードへ行ったと思われる彼女の足取りは、バンベリー・ロード周辺で途絶えていた。だが新たにオックスフォードシャー、キドリントンのテムズ・バレイ警察本部に送りつけられた謎の詩は、事件に新たな光を投げかけることとなった。
 警察本部は《タイムズ》に協力を求め、詩の全文を公開し一般からの協力を募る。紙面上で繰り広げられる推理合戦。一連の記事は、ドーセット州のベイ・ホテル〈ライム・リージズ〉で休暇を過ごしていたモース主任警部の興味をも惹きつける。彼女が眠るのはマールバラ公に下賜された広大な面積を誇る大庭園にして世界遺産ブレニム・パレスか、それともオックスフォード大学が所有する古代森林地ワイタムの森か? 加熱してゆく世論と進まない捜査に痺れを切らしたストレンジ主任警視は担当者を交代させ、事件の解決を主任警部とルイス部長刑事の黄金コンビに託すのだった・・・
 1992年発表のモース主任警部シリーズ第10弾。最初期二作「ウッドストック行最終バス」「キドリントンから消えた娘」の変奏版とも言うべき作品で、仮説スクラップビルドの代わりに一般参加の多義的解釈が用意されたもの。内外共に評価は高く、八作目の「オックスフォード運河の殺人」に続きCWAゴールド・ダガー賞を受賞。ただしツートップ程のブリリアントかつ切れ味の鋭い推理はありません。舞台設定の巧みさや各エピソードの面白味、加えて小説作りの上手さなど、総合力で押すタイプの作品です。
 ブレニム・パレスに目星をつけた前任者ジョンスン主任警部に対しモースは《タイムズ》読者の指摘に従いワイタムの森を選択。首尾良く遺体を発見するものの、何とそれは男性のもの。捜査は一時停滞しますがまもなくカリンを撮影した写真が現れ、その背景から全ての発端となった建物〈セカム・ビラ〉に行き着きます。
 初読の際には紙上推理が鼻に付いたんですが、再読するとまあまあ。でもアクセントレベルですねこれ。メインの謎もそこそこ程度。けれども上手く興味を繋いで転がしてるので、ナンバー3作品という格付けに異論はありません。純粋に好みだと今のところ次作「カインの娘たち」になりますが。
 後期のデクスターは推理以外の部分も読ませるので面白い。読み終えた後一番心に残ったのは、モースとモデル・エージェンシーの女、クレア・オズボーンの交際シーンでした。

No.5 5点 nukkam 2016/07/28 09:14
(ネタバレなしです) 1992年発表のモース主任警部シリーズ第10作で1990年代の作品の中では最も評判がよく、CWA(英国推理作家協会)のゴールド・ダガー賞を獲得しています。物語が匿名人物からの詩が投稿された後から始まっているので、その前に発生していた事件やそれまでの捜査状況について把握するのがやや難しかったです。またモースによる推理が頓挫してはまた新たに推理を重ねていく従来パターンではなく、代わりに新聞紙上で色々な人が謎解きに挑戦するという展開ですが論理的な推理というよりも主観的な解釈に近いので読者によっては期待外れに感じるかもしれません(個人的には新たな試みとして評価したいです)。68章での真相には驚かされましたが、「なぜそんなことを?」という理由についてははっきりしなかったのが気になりました(まあ往々にしてある私の理解力の不足かもしれませんが)。

No.4 6点 ボナンザ 2015/12/13 17:13
中期の傑作。
最初期の二作以上に評価する人もいるが、物語としては確かに初期を上回る出来だと思う。

No.3 5点 了然和尚 2015/05/26 17:16
すでに過去に使ったような手品でしたので、途中でネタはばれました。もっとも、作者の複雑な文章や展開は、ある程度推測ができていないと読みにくいので、マイナス点ではないですね。好みでマイナス1点しましたが、それは、あまりに無意味な死(自然史、事故死、自殺)が多いと感じたからです。それにしても、デクスターの登場人物は皆さんよく飲みますよね。

No.2 4点 あびびび 2013/02/14 17:36
以前、ミステリチャンネルでモース警部は何度も見たが、あまり印象には残っていなかった。

それで、小説ならばと初めて読んでみたが、こちらも起伏のない物語だった。粘り強さが身上の警部だけに、コツコツ推理を進めていく過程は分かるが、まあこれは読む方の好き嫌い、合うか合わないかだから、仕方ないかも。

No.1 7点 kanamori 2010/10/09 18:16
モース主任警部シリーズもややマンネリぎみか、と思っていた時期に出た中期の佳作。
女性失踪の謎が事件の中心なのは初期作を思わせますが、新聞社への事件を暗示するような詩の投稿を発端に、モースの推理のころがしではなく、複数の読者が紙上で謎に挑戦するというプロットが捻っていて面白い。
最後の、”名探偵の役割”に関する仕掛けには、作者の会心の笑みが目に浮かぶようです。


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コリン・デクスター
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