皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 本格 ] 謎まで三マイル モース主任警部シリーズ |
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コリン・デクスター | 出版月: 1985年03月 | 平均: 5.50点 | 書評数: 6件 |
早川書房 1985年03月 |
早川書房 1993年09月 |
No.6 | 5点 | nukkam | 2022/11/27 18:33 |
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(ネタバレなしです) 1983年発表のモース主任警部シリーズ第6作の本格派推理小説で、犯人当てと被害者当ての謎解きを特徴としています。この紹介でパット・マガーの「七人のおば」(1947年)を連想させてしまったら申し訳ありません、マガー作品とはほとんど共通点がありません。両手両足さらには首まで切断された(残虐描写は一切ありません)死体の素性を巡ってモースとルイス部長刑事が右往左往し、なかなか犯人探しに集中できません。「ジグソー・パズルのまん中に、一つだけ大きく抜けている場所がある」とモースが終盤に述べていますが、結構肝心な部分の説明を後回しにしたままで真相を説明するというのがユニークです。もっとも最後に残したその謎の真相は賛否両論になりそうですね。ミスリードの手法が効果的ではありますけど。 |
No.5 | 5点 | レッドキング | 2021/10/31 17:07 |
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デクスター第六作、モース警部オックスフォードサーガ第六弾。頭と両手首、両脚が切断された着衣のトルソー死体。大学教官どうしの怨念と小半世紀前の戦時下譚がからみ、Whom:誰を殺した?超えてWho:この死体誰?のパズル。該当可能性4人がバタバタ死者となり、え?もう該当いねくね?思わしといて意表突くWhom出て来て、いきなりそんな奴持ち出して反則じゃ?と読み返したら、あらら、序盤にそいつが出づっぱりの一章あったわ、見事。頭と手首切るのは誰の死体か不明にするため、服を着せるのはある人物に見せかけるため、でバラバラにして服着せるのはパズル解読者を悩ませるため・・斬新なロジック。 |
No.4 | 6点 | 雪 | 2019/11/12 07:50 |
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オックスフォード大学ロンズデール学寮の試験委員ブラウン=スミスは七月十日木曜日の朝、なんとも奇妙な、興味をそそられる一通の手紙を受け取った。――娘が卒業試験の合格者リストにのっているかどうかを知らせてくれれば、まったく人に知られるおそれのない性的スリルを満喫させよう――
誘いに応じて迷路のような歓楽街ソーホーに引きこまれた彼は、やがてラッセル・スクエアの手入れのよいマンションに導かれる。そこでイヴォンヌと名乗る女に迎えられたスミスは巧妙に薬を飲まされ昏倒するが、そんな彼を不似合いなサングラスをかけた謎の男がじっと見つめていた。 それからちょうど二週間後の七月二十三日水曜日、オックスフォード運河からわずか三十ヤードばかり離れたはしけ〈ボート・イン〉から男の遺体が揚がる。そして、にごった水から引き上げられた死体の四肢と頭は切断されていた・・・ 「ジェリコ街の女」に続くモース主任警部シリーズ第6作。前々作、前作とたて続けにCWAのシルヴァー・ダガーを受賞してきたデクスターですが、1984年度の本作では候補に挙がったものの惜しくも無冠に終わりました。首無し死体一発勝負と若干シンプルなのが祟ったのでしょうか。とはいえ簡単に真相にはたどり着けないよう工夫が凝らされています。 一九四二年十一月、北アフリカのエル・アラメインの戦いから始まる異色の構成。警察関係者以外の登場人物はごく少数なので身元はすぐ判明しそうなものですが、これがなかなか判りません。ああでもないこうでもないと頭を抱えているうちに、容疑者たちがバンバン死んでゆくというとんでもない展開に。 ただこのストーリーには賛否両論あるでしょう。作者の自信は分かりますが、最後に問題の死体だけが残るのは露骨。渾身のサプライズも結果的にあまり生きていません。容疑者たちを何人か残した方が謎がより深くなったと思います。 「死者たちの礼拝」でも感じましたが、デクスターという作家は謎を作るのは上手くても、プレゼンというか効果的な見せ方についてはあまり得意ではない。クロスワード・パズルの達人という経歴から来るものでしょうか。初期シリーズのスクラップアンドビルドの繰り返しは、そんな彼が編み出した策略なのかもしれません。 追記:第7章にはこのような記述があります。 骨の折れる一学年がやっと終って、大学全体が団体で昼寝をしているかのようだった。老齢で一人暮しの指導教官の二、三人を殺すにはこんないい時期はないなとモースはふと考えた。 (中略)実際、彼らがいなくても、だれも気にかけない――十月の中旬までは。 オックスフォードという大学都市の特殊性をフルに生かしたトリックです。 |
No.3 | 5点 | ボナンザ | 2015/12/29 11:40 |
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デクスターらしい趣向の佳作。
でも、なんでこいつが死んでたのに何の騒ぎにもならんかったのか。 |
No.2 | 6点 | E-BANKER | 2013/11/09 16:44 |
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1983年発表。
お馴染み「モース主任警部」シリーズの長編作品。 ~河からあがった死体の状態はあまりにもひどかった。両手両足ばかりか首まで切断されていたのだ。ポケットにあった手紙から、死体が行方不明の大学教授のものと考えたモース警部は、ただちに捜査を開始した。だが、やがて事件は驚くべき展開を見せた。当の教授から、自分は生きていると書かれた手紙が来たのだ。いったい殺されたのは誰か? モースは懸命に捜査を続けるが・・・。現代本格の旗手が贈る謎また謎の傑作本格~ 面白い趣向なんだけど、ちょっと物足りない。 そんな感想になった。 首なしどころか、両手両足までもが切断されたという猟奇的な死体や、章前に各章の小見出しを付すなど、本格好きには堪らないサービスが用意されていて、ついつい期待してしまう展開。 まずは、この死体がいったい誰なのかというのが謎の中心になる。 この辺り、普通の“犯人探し”のフーダニットではなく、死者のフーダニットがテーマとなる点で変わっていて面白い。 ただし、このシリーズらしく序盤から中盤まではモース警部とルイス部長刑事の捜査が続いて少しまだるっこしい。 そして終盤以降(本作では二マイル目以降)では死体が急速に増え、あろうことか登場人物のほとんどが死んでしまうというアクロバティックな展開に突入してしまう・・・ 最終的に明らかになる死体の身元は何だか付け足しみたいになってしまった。 魅力的な前フリからすると、もうちょっとやり方があったんじゃないか? って思わされる。 (でも、これがモース警部シリーズだと言われると、「そうかも」ということにはなるのだが・・・) トータルでは、水準レベルという評価に落ち着くかな。 (ロンドンのソーホーってそういう街だったんだねぇ・・・) |
No.1 | 6点 | 空 | 2012/08/07 20:43 |
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魅力的な邦題ですが、読後に考えてみると適切ではありません。三マイルかかるのは謎そのものではなく、その解明だからです。原題を直訳すれば「三マイル目の謎」で、これはなるほどと思えますが。
それにしても、登場人物が少ない。デクスターなので当然容疑者リストから外せる(少なくとも今まで読んだ作品から判断すれば)警察関係者を除くと、登場人物表に載っているのはたった5人です。まず提出される謎は、首無し死体は誰か、ということです。その謎でじっくりと読ませてくれるのかと思っていたら、2/3を過ぎるあたりから、第2の殺人を手始めに事件は急展開していきます。モース主任警部の推理ではなく、その「そして誰もいなくなった」的な構成にびっくりさせられました。ただ最後の1人についてはあっさりしすぎていて、不満でしたが。 章ごとに小見出しをつけていて、「早く最初の死体に出会いたがっている読者の期待がみたされる」といったお遊びも愉快です。 |