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ミステリの祭典

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Tetchyさんの登録情報
平均点:6.73点 書評数:1626件

プロフィール| 書評

No.286 7点 呪い!
アーロン・エルキンズ
(2008/07/14 23:46登録)
今回の舞台はメキシコのマヤ文明の遺跡。
これに纏わる呪いにかかって死んだとしか思えない事件に巻き込まれる。
そして今回も遺跡から出てきた骨に関する鑑定結果はけっこう驚かされます。

そして今回出てくるギデオンの師匠エイブ・ゴールドスタインのキャラクター造形が素晴らしい。
ホント、安心して読めるシリーズだ。


No.285 8点 古い骨
アーロン・エルキンズ
(2008/07/13 21:20登録)
海外ミステリが苦手という人もこの作家の作品は読めるのでは?と思うくらい読みやすい作品です。
特に代表作とされる本書はフランスのモン・サン・ミッシェルを舞台に見つかる古い骨の正体を探るスケルトン探偵ギデオン・オリヴァーの骨に関する含蓄溢れた推理と、あるトリックを使った事件の真相にあっと驚かされる、佳作となってます。
私はこの1作を読んで以来、このシリーズの虜です。


No.284 7点 クルンバーの謎
アーサー・コナン・ドイル
(2008/07/12 20:14登録)
今回は初めて読む作品群だったせいもあったのか、結構面白く読めた。

今回の中短編にはアジアを中心とした諸国に古くから信仰されている古代宗教に伝わる呪術をモチーフにした怪異譚という一貫したテーマがある。
しかし、作品に使われているモチーフは21世紀のこの世においてもはや手垢のついたテーマ以外何物でもなく、新たなる驚き、衝撃が走るような物は1つも無かった。

だが、これら中短編群はドイルという作家の一側面を語るのに貴重である事は確かだ。

長くなるので詳しくは述べないが、アジア各国に伝わる呪術や宗教に関する記述は詳細を極め、単なる物語を編むための取材に終わっていない。ここにドイルが晩年、心霊研究科の権威として色んな活動を行っていた片鱗が窺える。

上に述べたように作品の内容に斬新さはないが、ドイルという人物の側面を知る上で、非常に有益な短編集であると云えるだろう。


No.283 4点 北極星号の船長
アーサー・コナン・ドイル
(2008/07/11 21:31登録)
本コレクションは、新潮文庫から出ているドイル傑作選ともダブっている作品があり、読むのが二度目という作品もけっこうあった。

高空領域、北極、未開の島、洞窟と未知の領域が多かった19世紀という時代だからこそ、受けたであろう怪物譚も今となっては少年少女の読み物といった感じ。

個人的には最後に読んだ「寄生体」が、かろうじて現代にも通じる怖さを持っていると感じた。


No.282 4点 まだらの紐 ドイル傑作集1
アーサー・コナン・ドイル
(2008/07/10 20:30登録)
東京創元社が独自に編纂しているドイルの未発表短編、もしくはホームズ物以外の短編を集めたドイル・コレクション第1集。
「王冠とダイヤモンド」、「まだらの紐」の2つの戯曲が入っているところが、ミステリ収集家の興味をそそるだろうが、そうでない人にしてみれば、あまり価値のない短編集かも。

とはいえ、「ジェレミー伯父の家」、「田園の恐怖」の2編は今読むと古臭く感じるが、当時としてはその真相が奇抜で、かなりセンセーショナルな内容だったと思われる。

シャーロッキアンもしくはドイルファンならば、読んでおくに損はない1冊。


No.281 6点 バースデイ
鈴木光司
(2008/06/23 20:13登録)
『リング』、『らせん』、そして『ループ』で登場した高野舞、山村貞子、杉浦礼子という3人の女性の物語を描いた連作短編集。内容的にはこれら3作で語られなかったエピソードを補完するような内容となっている。

高野舞が主人公の「空に浮かぶ棺」、山村貞子が主人公の「レモンハート」までを読んだ時は、これは書く必要があったのか、と思うくらい、内容がない話で、むしろ何故本編にいれなかったのか、疑問に思った。
この2編を読んだときまでは、どうしたものかと憤慨していたが、最後の杉浦礼子が主人公の「ハッピー・バースデイ」がとても良かったので安心した。

結末はよくある物だと云われれば確かにそうだが、やはり子を持つ親になった今、こういう話は心に響く。
最後のこの1編でどうにか救われた感じがした―貴重な読書時間を無駄にしなかったという意味で。


No.280 1点 シャーロック・ホームズ最後の挨拶
アーサー・コナン・ドイル
(2008/06/22 13:16登録)
とうとう来るべきものが来たという感じ。
各短編全てにおいて興趣を欠いている。

有名な短編としては「瀕死の探偵」が挙げられるが、この話もホームズの馬鹿さ振りを髣髴させるエピソードとして色んな作家の作品中で語られるものなので実は大したことはない(実際、この短編におけるホームズはアホである。それにまんまと引っかかるワトスンもまた斯くや)。
短編集の題名になっている「最後の挨拶」はもはや本格ですらない。

これこそドイルがホームズ譚を執筆するのにうんざりしていた証拠だ。

やっぱり何事も引き際が肝心である。


No.279 4点 シャーロック・ホームズの帰還
アーサー・コナン・ドイル
(2008/06/21 20:04登録)
小学校の頃、学校の図書館で読んだ「踊る人形」が入っていたのが懐かしく感じた。
しかし今読むと、ポーの『黄金虫』のほとんど二番煎じじゃないか?と思ってしまった。

「犯人は二人」のように義侠心からホームズとワトスンが窃盗を働くユニークな一編があるものの、やはり全体としては小粒。


No.278 10点 恐怖の谷
アーサー・コナン・ドイル
(2008/06/20 20:08登録)
数あるホームズシリーズの中でもさほど名の知られていない本書。しかし、私はこの作品が一番好きである。

今回も第1部は本格ミステリパートになっており、本件で明かされる事件の真相は、ミスディレクションがなされてはいるが、現代ミステリを読んだ者達にとってみれば、さほど目新しさを感じないだろう。

しかし、本作における魅力は第2部の加害者のバックストーリーにある。
これはシリーズ中、白眉の傑作である!
なんとハードボイルドなのだ。
しかもこのパートにもどんでん返しが用意されており、逆にこっちの真相に驚いた。
これもよく考えるとよくあるパターンなのだが、もうすっかり騙されてしまった。

本作を読むと、本当にドイルが書きたかった小説が何なのかというのが解る。


No.277 6点 バスカヴィル家の犬
アーサー・コナン・ドイル
(2008/06/19 19:42登録)
初めて読んだのは小学4年生のころ。
児童向けにリライトされた作品で題名も『呪いの魔犬』だった。
あの時と最近になって読んだときとはやはり当然のことながら、読後感は違っていた。

ただ陳腐な内容には変わりないのだが、ここには本格ミステリの定型があり、特にそれが私が傾倒する島田氏の唱える「冒頭の幻想的な謎を結末で論理的に解明する」形式がきちんと形になっているのが興味深かった。


No.276 5点 ループ
鈴木光司
(2008/06/18 19:20登録)
『リング』、『らせん』シリーズの最終作『ループ』。
しかしこの作品の評判が非常に悪いのが気になっていた。
実際映画化されたのも『らせん』止まりだし(短編集『バースデイ』から『リング0』という映画も出来たが)、あれだけ世間で大ブームを起こしたこれらの作品に比して、この『ループ』は一種のタブーめいた扱いを受けているような気がした。

で、なぜなのかは解った。

ああ、こういう風に持っていっちゃったのね、という内容だった。
これをスゴイと思うか、え~、そりゃないよ~と思うか賛否分かれると思うが、私はやっぱり前2作を楽しく読んでいただけに、この設定には壁に投げつけようかと思った。

やっぱりホラーは路地裏の暗闇とか台所の隅の暗がりみたいな部分があってこそ面白いのだなぁと今回痛感した。

最後に抱いた感想は、「ハイ、お疲れさん」でした。


No.275 5点 生と死の幻想
鈴木光司
(2008/06/17 20:08登録)
タイトルどおり、生と死をテーマにした短編集・・・と思いきや、あとがきで作者は堂々と「これは父性と母性をテーマにした短編集である」とのたまっている。
しかしどちらにしても、一貫性はない。

6編中、「闇のむこう」がよかったかな。
誰にも起こりそうな恐怖を、しかもありえる形で描いているのが怖かった。


No.274 7点 らせん
鈴木光司
(2008/06/16 14:50登録)
大ヒットホラー『リング』の続編。
高山の死の謎をかつての大学時代の同級生である監察医安藤が探るといった内容。

途中『リング』と重複するところがあり、退屈したが、そこも大事な伏線だった事がわかる。
しかし結末は自作が思った以上に大ヒットした事を皮肉るような内容になっている。
しかし、やっぱやりすぎだなぁ、あの結末は。
何でもアリ過ぎる。


No.273 4点 四つの署名
アーサー・コナン・ドイル
(2008/06/15 20:06登録)
やはり大人になった今読むと、ここに書かれている推理が穴だらけで噴飯物であることがよく解る。
ほとんど偶然の産物だもんなぁ。

今回も推理小説の第1部より、第2部の方が面白かった。


No.272 7点 シャーロック・ホームズの冒険
アーサー・コナン・ドイル
(2008/06/14 23:29登録)
この『シャーロック・ホームズの冒険』はオールタイム・ベスト選出に必ず上位5位の内に入る逸品ではあるが、三十路を控えた我が身にはやはり子供の頃のように純粋に愉しめたとは云えない。
やっぱり今読むと、ホームズの推理は恣意的かつ独善的に感じるし、ワトスンは医者の割にはアホじゃなかろうか?と思えるほど盲目的に見える。
でも各短編はヴァラエティに富んでいるので、推理小説というものを未体験ならば、お勧めできる。
やっぱ小学生ぐらいのときに読むのが妥当だろうな。


No.271 5点 シャーロック・ホームズの回想
アーサー・コナン・ドイル
(2008/06/13 22:04登録)
「白銀号事件」ぐらいしか『~冒険』クラスの短編は無かったように思う。
残りは特に可もなく不可もない。

本格物ではない「最後の事件」でホームズを葬り去ろうとした、そんな作者の苦悩が窺われて興味深い。


No.270 8点 緋色の研究
アーサー・コナン・ドイル
(2008/06/12 19:38登録)
正直推理小説パートの前半よりも後半の西部小説のパートが非常に面白く読めた。
ミステリに対する嗜好が変化してきているのかもしれない。

しかし改めてホームズの長編を読むと、現在数多あるミステリにものすごい影響を与えているのがわかる。
特に島田荘司氏はその忠実なる愛弟子となっている。


No.269 7点 サハラに舞う羽根
A・E・W・メイスン
(2008/06/11 11:27登録)
100年以上も前の作品だが、なんと2003年に映画化されている。
確かに文章は古めかしいかもしれないが、100年以上も前に書かれた作品とは思えぬほど、中東戦争の描写の丹念さや物語の登場人物が織り成す心の綾などが非常に丁寧に描かれ、はっきり云って21世紀に残しても遜色ない。

メイスンは本格よりもこういう歴史冒険物の方がやはり合う。もともとこっちが本家だけにこなれている。


No.268 3点 矢の家
A・E・W・メイスン
(2008/06/10 21:06登録)
アノー探偵が無個性で、あまり印象に残らなかった。
あと、隠し通路は真剣に謎を考えていた当方にとっては、「ズルい!」と思ってしまい、そこで興味を失ってしまった。


No.267 7点 絹の変容
篠田節子
(2008/06/09 11:13登録)
篠田節子デビュー作。たった200ページにも満たないパニック小説であるが、中身は薄っぺらな物ではなく、仕上がりは堅実。

品種改良した蚕が人間を襲うパニックの経過を発端から結末―もちろんこういうパニック小説のセオリーともいうべき、最後に一抹の不安を抱かせる結末はきちんと用意されている―まできちんと描いているのに好感が持てる。
突然変異とかで片付けなく、きちんと読者にも怪物が生まれていく様子が納得できる。

ただ冗長な作品も困るけど、あまりにコンパクトに纏めすぎて味わいが薄く感じるのも確か。贅沢な要求かもしれないが。

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