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ミステリの祭典

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sophiaさんの登録情報
平均点:6.92点 書評数:384件

プロフィール| 書評

No.164 9点 首無の如き祟るもの
三津田信三
(2018/02/01 21:41登録)
伏線の提示と回収のサイクルが絶妙で、各章の長さも丁度よく読み進めやすい。何より終盤のどんでん返しの連続は圧巻。全体の構成が非常に凝っており、巷で高評価なのも頷けます。ただ前半は私の好きな旧家の物語だったのに、後半は物書きの人たちの方に焦点が動いてしまったのがちょっと残念。
この刀城言耶シリーズはこの作品しか読んでいませんが、この作品における刀城言耶の立ち位置をみると、これ以前の作品を読んでから読んだ方が驚きも増したのかなと思います。
本格ミステリーとしては満点を差し上げたいのですが、トータルで10点を付けるには読了後に心に残るものにどうも乏しいんですよね。それはプロットの複雑さゆえ登場人物が記号化しちゃってるせいなのか、はたまたホラー的なオチのせいなのか。
余談ですが栄螺塔の図解を見て、この塔の構造を利用した島田荘司ばりの大技物理トリックが使われるに違いないと勝手に期待してワクワクしていたので肩透かしを食らいました(笑)


No.163 6点 2分間ミステリ
ドナルド・J・ソボル
(2017/10/18 00:40登録)
全71問から成る推理クイズ集。
恥ずかしながら7割方の問題が分からなかったのですが、解答編を読んでも「必ずしもそうとは言い切れないんじゃ?」と思うことがしばしば。素直に「なるほど」と思えたのは両手の指で数えるほどですかね。
問題編に関しても、2分間ミステリと銘打っている以上問題文を短くするためにやむを得ないのかもしれませんが、説明不足で状況が分かりにくい部分が所々あります。
続編が2冊あるようですが、読むかどうかは迷うところです。
余談ですが、どうしても分からないのがQ63の「ルーベンス盗難事件」です。パーシー・キルブルーが右利きだと問題編のどこかに書いてありますかね?


No.162 6点 黒笑小説
東野圭吾
(2017/08/14 22:59登録)
「怪笑小説」「毒笑小説」を読んだのがもう10年以上前のこと。久しぶりにこのシリーズに手を出しました。
エンタメに徹していた前2作とは異なり、作者の欲求不満解消や出版業界に対する鬱屈した感情のはけ口になってる作品が多い感じがします。どちらかと言えば「超・殺人事件」とかの方に近いかもしれません。
「臨界家族」と「選考会」でプラス1点しておきます。このシリーズはどうも6点ぐらいの評価になっちゃいますね。ワーストは「ストーカー入門」ですかね。


No.161 7点 ぼっけえ、きょうてえ
岩井志麻子
(2017/08/01 17:37登録)
コメントしてる人少ないかなとは思っていましたが、まさかNo.1ゲットとは(笑)この作品って結構有名じゃないんですかね。
表題作を含む四編から成るホラー短編集。「ぼっけえ、きょうてえ」「密告函」は人間の怖さを描いた話。「あまぞわい」「依って件の如し」は亡霊が出てくるタイプの話。
驚愕のオチで肝を冷やすというタイプの作品群ではありません。オチ自体は読んでいるうちに何となく見えてきます。しかしながら筆力、リアリティが抜群で、明治時代の村社会の風俗が手に取るように分かります。さらには一つの文が短く、小気味いいテンポを作り出しています。ホラーとしてというよりも物語として面白く読めました。


No.160 9点 ゴールデンスランバー
伊坂幸太郎
(2017/07/23 23:37登録)
全部読み終わった後で「ああ、そういう話か」と分かるタイプの作品ですね。
本来の犯人候補であった人物のことなど、謎をもう少し解き明かしていく作品かと思っていたので拍子抜けした部分はありましたが、それを帳消しにしてもいいかと思えるくらいラストシーンが感動的でした。


No.159 5点 世界の終わり、あるいは始まり
歌野晶午
(2017/07/12 22:16登録)
父親の行動の描写ばっかり、しかもどうせ妄想なんだろうという退屈で緊張感のないところを我慢して長いこと読み進めて、最後は結局何もないんかいという感じです。
リドルストーリーなのは分かりますが、持って行き方がちょっと下手です。
しかしこの父親は小説家になればいいのに。


No.158 10点 折れた竜骨
米澤穂信
(2017/07/05 02:51登録)
これは凄い。SFミステリーとして山口雅也「生ける屍の死」に匹敵するかも。目次の各章タイトルを眺めただけで傑作の匂いがプンプンしましたもんね。現在のところ私が10点を付けた作品の中では唯一の21世紀の作品となります。


No.157 6点 どんどん橋、落ちた
綾辻行人
(2017/06/27 18:39登録)
綾辻行人の稚気による自虐炸裂の短編集。館シリーズなど、氏の他の作品を読まずにいきなりこれを読んだ人は全く楽しめないのではないでしょうか。これはちょっと他の作品と同じ尺度では評価できませんので、点数は本来「採点不能」にしたいところですが・・・
「どんどん橋、落ちた」「ぼうぼう森、燃えた」「フェラーリは見ていた」とぶっ飛ばして来たのに、「伊園家の崩壊」でいきなり真面目になった感じがします。「伊園家の崩壊」はよく出来ている話であるのに、前3作の後だと「つまらない」と感じてしまうのは何故なのか(笑)


No.156 7点 消失!
中西智明
(2017/06/19 23:44登録)
久々に騙されました。違和感はずっとあったのですが、ユカの隣のベッドのおばさんの独白を挿入して読者の思い込みを補強する手段などは上手いと思います。
ただ、終盤までややコミカルな調子で話が進んできたので、読後感がこんなに悪いものになるとは思いませんでした。少なくとも探偵社パートだけはハッピーエンドにしてほしかった気がします。
それに他の方も書いていますが、ストーリーテリングの粗さがありますね。第二章の「2 裕二」の最後にある犯人の独白は、あそこに挟むのはアンフェアなのでは?「ふたりが部屋を出ていくと」はちょっと駄目でしょう。場面が離れすぎています。また、第三章の初めの「別人」の章は、あそこをそんなに思わせぶりに書く必要があったのでしょうか。
ただ、文章そのものに関してはまあまあ読みやすいですし、登場人物の心理描写も上手いと思います。


No.155 9点 戻り川心中
連城三紀彦
(2017/06/09 01:53登録)
この作品を読むのは今回で3回目ぐらいになるのですが、毎回「戻り川心中」以外の4編の筋を綺麗さっぱり忘れてしまっています。どれも良作なのに何故なのでしょう。でもそのお蔭で毎回新鮮な気持ちで再読できるのでよしとします(笑)


No.154 7点 奇面館の殺人
綾辻行人
(2017/05/24 22:58登録)
これぞ館シリーズという、王道の舞台設定と展開。十角館や時計館には及ぶべくもないですが、平均的な出来でそれなりに楽しめます。
序盤は迷路館の、そして段々と水車館のテイストが出てきます。
登場人物表がないことにきっと何か意味があるのだろうと思っていましたが、なるほどこの設定ならそうせざるを得ないですね。その辺の苦しさを最後に作中人物の鹿谷の口から弁明させているのが良いのか悪いのか・・・
推理面での疑問点を。殺人事件に関して、鹿谷たちに動機面からのアプローチもさせておくべきだったのではないでしょうか。あと、雪に閉じこめられなかったら犯人はどうしていたのかという点も考えさせておくべきだったのでは。等々推理の定石をいくつか外しており、不自然さを感じました。本格パズラーとは言え作者の単なる予定調和にはならないよう、その辺りのリアリティには気を配ってほしいと思いました。


No.153 8点 満願
米澤穂信
(2017/05/16 20:31登録)
「夜警」は伏線がちょっと分かりやすかったかもしれません。
「万灯」は冒頭の現在を受けてのオチの裏切りが見事。森下が急にヘタレになりすぎるところに違和感は残りますが。
「関守」は世にも奇妙な物語みたいな話。この短編集で一番完成度が高いのではないでしょうか。「サエノカミ」というキーワードを隠して話を進め相手の様子を窺うお婆さんの語り口が見事。
表題作「満願」は動機にいまひとつ納得できませんでした。人を殺すほどのことなのか。


No.152 9点 さよなら神様
麻耶雄嵩
(2017/05/11 19:07登録)
神様ゲームよりこちらの方が楽しめました。
この設定は短編向きですね。
第4章、第5章が衝撃的でした。
ただ、最終章が死ぬほど胸糞悪い。


No.151 7点 毒入りチョコレート事件
アントニイ・バークリー
(2017/03/23 00:52登録)
読む前は事件パートと推理パートが独立していて会議室では無機質な推理合戦が繰り広げられるのかと思っていましたが、相互が絡み合うことで事態は複雑な展開をみせます。毎晩一人ずつ推理を披露するという趣向も面白い。
しかしながら、最後に明かされる真犯人の正体にどうも驚けない。その原因は途中で一度他の研究会メンバーに容疑がかかっていることが大きいでしょう。しかも真犯人の名前は痴情絡みで唐突に浮上しており、これだったら別に誰が真犯人でもよかったかなと思わされます。
さらに全体に渡って事件的な面白さも物語的な面白さもほぼありません。構成点のみで7点です。


No.150 8点 夜よ鼠たちのために
連城三紀彦
(2017/03/15 23:28登録)
宝島社版の9編を読みました。最初の4編までは9点ないし10点の手応えを感じていたんですが、5編目の表題作であれ?という感じになりました。いわゆる叙述トリックものですが、人物誤認のさせ方が強引です。あんな書き方をしたらそれはみんな騙されるでしょう。「代役」もどんでん返しを狙いすぎて設定や展開に無理が生じています。あの男のどこにそんなにモテる要素があるのかが分かりませんでした。「ベイ・シティに死す」の恭子は何がしたいのか。この短編集で最も腹立たしい人物でした。ラストの「ひらかれた闇」は入れなくてよかったのでは。何か色々と痛々しかったです。
短編集全体の感想は、同じようなテイストの話が多いということです。ほぼ全ての話に「入れ替わり」が出てきます。中でも「奇妙な依頼」「二重生活」「代役」は着想がほぼ一緒のように感じました。ただでさえ複雑な話ばかりなのに、同じようなオチが続いて後半は段々と読むのがしんどくなっていきました。前半9点、後半7点でトータル8点といったところでしょうか。もう少し全体の緩急が欲しかったです。やはり「戻り川心中」には及ばないのではないでしょうか。


No.149 7点 ジェゼベルの死
クリスチアナ・ブランド
(2017/02/20 18:21登録)
終盤に嘘を付く登場人物が続出して訳が分からなくなります。読み終わって思うのは、「あれ?赤騎士は結局誰だったの?」ということ。各人の証言のどこまでが本当でどこからが嘘かがはっきりしないから混乱します。ちょっと説明不足です。事件が起きたときの舞台上の人馬の動きもよく分からないんですよね。日本人には馴染みのない演劇だからでしょうか。あと、女流作家であれば男女の情愛をもっと深く描いてほしいと思いました。パーペチュアの故ジョニイへの思いがあまり感じ取れません。


No.148 6点 パラレルワールド・ラブストーリー
東野圭吾
(2016/06/24 21:19登録)
タイトルの付け方絶対間違ってると思う。
内容は未来版の「こころ」と言ったところでしょうか。


No.147 7点 ブラウン神父の童心
G・K・チェスタトン
(2016/06/15 23:00登録)
レギュラーになりそうだと思われた人物が最初の方で退場したのは衝撃的でした。
「飛ぶ星」は色々と説明不足で分かりにくかったです。
「神の鉄槌」は犯人が一歩も出ていないことをもっと強調した方がよかったように思います。
なお、創元推理文庫で読みましたが、表現がまどろっこしい上に訳も古臭いので大変読みにくかったです。
そろそろ新訳を出した方がいいのではないでしょうか。


No.146 7点 展望塔の殺人
島田荘司
(2016/06/05 01:54登録)
島田荘司の悪いところ(笑)を詰め込んだような短編集。正気で書いたのか疑いたくなるような話が多く、それ故に「面白い」です。「発狂する重役」なんて読んでるこっちが発狂しそうですよ(笑)ただ、初読み時の衝撃は大きいですが、久々に再読するとイマイチに感じてしまうのは各短編のクオリティ自体がそんなに高くないからなんでしょうかね。最近気付きましたが、表題作「展望塔の殺人」は実は「奇想、天を動かす」と同じ構図をしているんですね。
ちなみにこれ光文社文庫吉敷竹史シリーズに入れられてますが、6作中2作にしか登場しませんし、内1作は吉敷じゃなくても刑事なら誰でもいい感じですし、無理やりな分類ですね。


No.145 7点 人格転移の殺人
西澤保彦
(2016/06/04 15:53登録)
真相の性質は「七回死んだ男」と似通ったところがありますが、こちらはややアンフェアかもしれませんねえ。
逃げ込んだメンツや(=誰)の部分を客観的事実と捉えて読んじゃいましたから。
「七回死んだ男」を超えられないのはやはりその辺りでしょうか。
文庫本裏表紙のあらすじの「6人が逃げ込んだ先」もギリギリの表記ですね。

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