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ミステリの祭典

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みりんさんの登録情報
平均点:6.66点 書評数:518件

プロフィール| 書評

No.438 8点 変調二人羽織
連城三紀彦
(2025/06/29 18:16登録)
このサイトの出版年を信仰しすぎるあまり、処女作は『暗色コメディ』だと勘違いしていた。お恥ずかしい。 
いわれてみると『暗色コメディ』ってらしくなかったもんなあ…

表題作は真っ白な丹頂鶴が東京を飛び去る冒頭の叙述から著者の凄まじい熱量とこだわりを感じる。やっぱり探偵小説お好きなんですねぇ…
明治と現代のカットバック技法が最後に全てを氷解する『六花の印』はその抒情性も含めて傑作と思う。
『ある東京の扉』はミステリへの自己言及性の高さが著者らしくないと感じたが、なかなかなトリックと、諧謔的なオチにさす連と唸らされた。ただ、このお話は短編集の中でも浮いてしまっている印象が拭えない。著者の得意とする愛憎渦巻く夫婦関係のお話では『メビウスの環』『依子の日記』があり、いずれも鮮やかな反転であった。
国内オールタイムベスト短編みたいな企画があったら、連城サンだけで何作ランクインするのだろうと気になりますな。


No.437 6点 妖女のねむり
泡坂妻夫
(2025/06/29 18:05登録)
アーサカさんの第七長編。幻想とロマンスの塩梅が『湖底のまつり』に近い。
樋口一葉の未発表小説の発見から始まる。戦時中という特殊状況が生んだとある奇蹟に発展し、最終的には輪廻転生の真偽を問うミステリとなる。思想を超えて信念を貫いた者の究極の動機の一つと言えるのではないか。どっかの作家が"観念の動機"と読んでいたものかな(うろおぼえ)


No.436 6点 一次元の挿し木
松下龍之介
(2025/06/29 18:03登録)
「このミス」はどうも合わないという自覚はあるのだが、本作の持つ謎の壮大さに惹かれて読んだ。冒頭の神秘性は島田荘司っぽい。しかし、この不可解さを説明するには(タイトル的にも)これしかあり得ないだろうと珍しく予想が的中してしまい、不完全燃焼になってしまった。本作は謎の解明よりも、終盤のスリラーに身慄いさせられた。アカデミックな雰囲気もいい感じ。島田荘司もこのくらいのコンパクトさだったらいいのかもしれない。


No.435 7点 写楽 閉じた国の幻
島田荘司
(2025/06/29 09:41登録)
読書メーターに私が投稿した感想を引っ張ってきてるので上巻と下巻に分けます。

<上巻>
10ヶ月で140作品を版行し、忽然と姿を消した天才浮世絵師・写楽は出自・経歴・人柄に至るまで全てが謎に包まれている。  Who is Sharaku? 今作はその200年来のミステリーが解かれてしまうのだろうか?歴史ミステリーゆえ敬遠してきたが、傑作の予感! 
※ちなみに写楽が世界三大肖像画家の1人という言説は完全なガセらしい

<下巻>
"どのように考えてもどこかに破綻が生じ、隘路に迷い込む" かのアゾート殺人を彷彿とさせる歴史ミステリーだ。 あとがきによると初出の説でないことが悔やまれるが、"閉じた国の幻"をここまでドラマティックに演出した事で優れたエンタメへと昇華したと思う。面白かった! 

ところで島田荘司って高飛車で地位が高くて聡明でお嬢様系の強い女性に偏った嗜好があるよね。今どきこんな口調で喋る女の人いるのか?笑 逆にちょっと主婦に対して扱いが雑に感じる。


No.434 7点 御手洗潔のダンス
島田荘司
(2025/06/29 09:31登録)
タイトル通り御手洗潔が小躍りするような謎が詰め込まれた短編集 。どいつもこいつも面白い。
特に2つ。『山高帽のイカロス』は空を飛ぶ幻想画家が20m上空で死亡するという衝撃的な導入と真相でグッと引き込まれた。 『とある騎士の物語』くらい強引なトリックとロマンスが組み合わさると島田荘司といえばこれだなあと安心します。


No.433 7点 展望塔の殺人
島田荘司
(2025/06/29 09:28登録)
読み落としていた吉敷竹史シリーズ!しかし吉敷はほとんど名前だけの登場であり、シリーズものの楽しみはない。 表題作の展開は『奇想、天を動かす』を想起させる。受験戦争は「父親の経済力」と「母親の狂気」だと40年前に島田荘司によって既に問題提起されていた。 乱歩『目羅博士の不思議な犯罪』の島荘版とも呼べる『死聴率』や、亡霊と偶然と奇想が光る『発狂する重役』が特に面白い。


No.432 7点 切り裂きジャック・百年の孤独
島田荘司
(2025/06/29 09:27登録)
あの猟奇殺人鬼がベルリンにも出没。100年の時を経ても、人間の卑小さが不変である限り、時代の特異点のような凄惨な事件は起こり得る。世界で最も有名な未解決事件に本格味溢れる真相と雰囲気を味付けしたのは流石。今作のコンパクトさを御手洗潔シリーズでも見習って欲しいところ。解説でも言われている通り、島田荘司という作家は夢を託せるミステリ作家だなとしみじみ。


No.431 7点 天国からの銃弾
島田荘司
(2025/06/29 09:23登録)
粒揃いの中編が3つ。どれも平均以上に面白いが、表題作『天国からの銃弾』は出色の出来栄え。 高度経済成長期の魔都"東京"で蔓延る虚飾・天下り・利権・薬物・風俗を題材にここまでミステリーとして面白くするのは流石としか言いようがない。島田荘司の小説家としての最盛期はこのあたり?


No.430 8点 天に昇った男
島田荘司
(2025/06/29 09:21登録)
珍しくミステリーではなく、冤罪や死刑制度に対するアンチテーゼとして書かれた作品(あとがきによると) 『涙流れるままに』などでも繰り返し用いられる島荘の一大テーマと思われる。今作は作品の雰囲気を損なうほど主張は強くなく、男の波乱の生涯と儚いロマンスにもの悲しくなった。 島田荘司って童話みたいなモチーフのお話が毎度上手くて引き込まれる。


No.429 8点 死者が飲む水
島田荘司
(2025/06/29 09:17登録)
トランクに詰められたバラバラ死体という猟奇的な幕開けだが、牛越警部の地道な捜査がメイン。官僚の天下り問題はこの頃から既に… 鮎川哲也『黒いトランク』が元ネタだろうけど、こちらも島荘流の流石のトリック。個人的にはトリックだけでなく、犯人の造形も強く記憶に残るものでした。白く舞い散る雪と犯人の中に燃えていた憎悪の対比がなかなかに印象的。


No.428 7点 殺人ダイヤルを捜せ
島田荘司
(2025/06/29 09:12登録)
これまたノンシリーズ。 この頃の島荘は女性一人称サスペンスものにハマってたのかな?「毒を売る女」や「幽体離脱殺人事件」と同様に虚言癖の奇女を描かせるとなぜこうも面白いのか。 ダイヤルには馴染みがないが、今でもブツさえあれば実現可能なの?時代を感じる。


No.427 6点 高山殺人行1/2の女
島田荘司
(2025/06/29 09:11登録)
初期の吉敷シリーズの様なタイトルなのに実はノンシリーズのサスペンス。 トラベルミステリーの時刻表系は退屈だが、正真正銘のドライブミステリーなので、話の展開もスポーツカー並みの疾走感があって心地良い。1980年代はいろんなジャンルに挑戦してるなあ


No.426 7点 眩暈
島田荘司
(2025/06/29 09:01登録)
『占星術殺人事件』を読んだのでどうせならと『眩暈』も読んだが、こちらは初読時の感慨を偲ぶこともなく、淡々と読み進めた。手記の魅力もその真相も占星術には叶わないから尚更かな。中盤くらいにピークが来るので結構退屈。 教授と御手洗の精神分析や生物・遺伝学談義は興味深く読めた。


No.425 7点 水晶のピラミッド
島田荘司
(2025/06/29 08:58登録)
この頃の島荘は叙述が過剰気味なのがかったるいですが、謎の創出と演出がに関しては一流ですね、5000年間も謎に包まれたピラミッドの前には密室も天上溺死という異様な状況も霞む。
ピラミッド○○○説は作中でも示されているように無理がありましたが、密室の方にはガス置換で応用可能なんじゃないでしょうかね 先人が誰かやっていそうですが


No.424 7点 人格転移の殺人
西澤保彦
(2025/02/22 22:38登録)
6人が"閉ざされた円環"の中で人格が転移していく本作こそが真のクローズドサークル。
人格の入れ替わりという非常にややこしい話をここまで読みやすくしてしまう著者は天才だと思います。特殊設定ミステリーとしての完成度も高い上に、CIAだの異星人だの、仰々しい話をここまで綺麗かつロマンチックに終わらせるのも凄い。『七死男』より好き。


No.423 7点 犯罪の回送
松本清張
(2025/02/19 23:30登録)
この高度経済成長期の頃の我が国はさぞ輝かしい時代だったのでしょう。この時代のミステリーを読むたびにそんなことを妄想してしまう。本作は1962-63年に小説新潮で連載されていたものを大幅改訂し、1992年に没後出版された長編とのこと。
北海道の北浦市の春田市長は工場誘致のために港湾埋立計画を推進している。大蔵省からその許可を得るために、春田は東京に出張するが、その夜に行方不明になり、数日後に絞殺死体となって発見される。さらには、埋立計画に猛反対している革新派の野党議員早川も上京していることが判明し、警察は事件の陰で蠢く動機から捜査を開始する、、、というような、いかにもな社会派を匂わせるが、帯にある「鮮やかなトリックを駆使した傑作長編推理」に宣伝負けしないほどトリックは極めて本格モノ。清張サンの捜査編の快感は何から来るものなのだろう、今回も堪能させてもらいました。
郷原宏氏の解説にて、噂に聞くThe・新本格バッシングに初めて遭遇して笑いました。


No.422 7点 死の泉
皆川博子
(2025/02/15 22:35登録)
先人方が素晴らしい書評をされてるので自分のは読まなくて大丈夫です

第二次世界大戦末期におけるドイツの福祉施設「生命の泉(レーベンスボルン)」で物語は幕を開ける。当時のドイツ人の優越性・純血信仰・行きすぎた優生思想…etcというよりは、芸術(音楽)に傾倒して、歪みすぎたヴェッセルマンの思想が生んだ悲劇かなと思う。。
ナチズムを描いた貴重な作品で特にレーベンスボルン編は学ぶことが多かった。ここまで純文学とエンタメを融合させた大作であるからこそ、ミステリーとしてどんでん返しは一つ目のアレだけでも良かったかなと思う。レナとアリツェの件はいったい…?
結合双生児、美少年嗜好、ヘルムートの同性愛描写、廃城での冒険活劇までサービスされると『孤島の鬼』を思い出す


No.421 5点 夢殿殺人事件
小栗虫太郎
(2025/02/08 23:54登録)
「つまり、1番複雑に思われるものが1番簡単なんだよ」

いや、そんなもんわかるかーい(^O^)

独特のルビと難解な文章で幻惑されながら読むと、意外にもごく普通の探偵小説の様式を纏っていた。実現可能性や論理性が微塵もないのが逆に好きだけど、過剰な装飾と奇想天外なトリックは7割が意味不明なもので、もはや誰にも到達できない域に達している。百年前の作家なのに一人だけ千年先のミステリを書いているのでは…?

これ誰かが我々一般読者にも伝わるように分かりやす〜くリライトしたら、小栗虫太郎のトリックメーカーとしての資質がバレるんじゃないかな。『後光』の心理トリック、『聖アレキセイ寺院』の鐘トリック、『夢殿』の硬直トリック、『失楽園』の膜嚢(てなんやねんw)トリックなどは普通に面白く、正直ここまでトリックを凝っている作家だとは思いも寄らなかった。個人的には『失楽園』>『後光』=『夢殿』>『聖アレキセイ』>>>『オフェリヤ』>『人魚』かなあ。まあ理解できた順ですが。
ちなみにヴァン・ダインの『ケンネル殺人事件』のネタバレがあったので未読の方は注意。

以下備忘録のためのメモ【ガッツリネタバレあり】

『後光殺○事件』
主な謎は合掌したまま無抵抗に殺された住職、足跡の謎、死亡推定時刻の後に目撃された謎など。時計のアリバイトリックは理解させる気がないだろうが、凶器とそれを可能にした心理誘導というか洗脳トリックが斬新である。

『聖アレキセイ寺院の惨劇』
共産革命後にロシア人家族がひっそりと住むアレキセイ寺院。1日に2度しか鳴らないはずの鐘が定刻ではない時刻に鳴り響き、近くに住んでいた法水麟太郎は駆けつけた。 詳細な部分は意味不明であるが、時間差で鐘を鳴らす物理トリックが本筋とはかけ離れて実に探偵小説味があって良かった。メインは観念の殺人とも言える動機と罪に問わなかった法水。戦争が被害者の心を貧しくしたのだろう。

『夢殿○人事件』
主な謎は血を抜かれた遺体、遺体に残った梵字型の傷、孔雀の足跡、そして密室。冒頭からなんとも魅力的な探偵小説。まあそうはならんやろトリックと死者蘇生にまつわる動機。日光と窓の二重の使い方good!

『失楽園○人事件』
孤島に療養所を設立した博士の真の目的は非道な人体実験を行う屍蝋研究であった。法水への依頼はその孤島で起こった連続○人の解決。主な謎は犯行時刻に見えるはずのないの怪しい白光、グーテンベルクより先に活版印刷を発明したとされるコスターの初版聖書の行方。結構読みやすくてブーメラン膜嚢トリックにも笑わせてもらった。上手いのは"紙"状胎児と活版印刷、グーテンベルクとコスターを犠牲になった双子に喩えたダブルミーニングの親父ギャグ。

『オフェリヤ○し』
今回は法水麟太郎が「ハムレット」を改変し、失踪した俳優の代わりに自らが主演を務める。その舞台で殺人が起こるという内容。法水さん、なぜか探偵や弁護士としてだけでなく劇作家・俳優としても一流というマシマシ設定が追加(笑) 主な謎は失踪者からの手紙と、亡霊が殺人に関わっているということ。ですが…これがまあやたらめったらわかりにくい。動機は結局腹違いの父親と姉への内なる憎悪ということか?

『人魚の謎お岩事件』
こちらも『オフェリヤ』と同様に舞台中における殺人を扱った話だが、今までの法水短編とはガラッと雰囲気が変わって、トリックがほぼ皆無。探偵小説味が薄れているのが残念。人形に関する手記から冒険小説に入ってくれても良かった。


No.420 6点 砂漠の薔薇
飛鳥部勝則
(2025/02/07 03:56登録)
クセが強い登場人物達も…やたらハイコンテキストな会話も…嗚呼…なんとも大胆な伏線だ。もはや伏せる気もなかったのかもしれない。
「伏線ってサァ!結末まで書いた後にサァ!後付けで配置しておくだけだからサァ!連載作品ならともかくサァ!書き下ろしでありがたがる道理はないよなァ!?」ってずっと思ってたんですけど、凄い伏線ってこういう挑戦的なモノを指すのかと認識を改めました。
ダミーのトリックも結構好きなので、もう少し洗練してメインのネタにして欲しかったかな。図像学と本格を高い次元で調和し、シナジーを生み出した『殉教カテリナ車輪』に比べるとやや…。評点はハードルが上がりすぎた弊害。


No.419 6点 魔術師
江戸川乱歩
(2025/02/05 03:54登録)
乱歩の通俗スリラーはこれで何冊目だろう、毎度手を替え品を替え楽しませてくれますね。最近読んだポオのネタもあって嬉しい。
今回は殺人現場に巨人の影、怪しい笛の音、厳重な監視下における密室殺人と謎めくアイテムの目白押しです。犯人の予想はついてしまいますが、あちらの方はなかなか盲点。ところで、結局あのサイズの手形はどうやって付けたんだよ。がんばって書いた?

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