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ミステリの祭典

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芋虫 江戸川乱歩ベストセレクション2
芋虫・指・火星の運河・白昼夢・踊る一寸法師・夢遊病者の死・双生児・赤い部屋・人でなしの恋

作家 江戸川乱歩
出版日2008年07月
平均点6.60点
書評数5人

No.5 8点 みりん
(2024/09/10 17:27登録)
表題作『芋虫』はあまりにも凄惨を極めた内容で衝撃を受けました。評点は『芋虫』だけの評価。
外界からの(性的)刺激を受信する感覚器官の欠損という点で『人間椅子』に通ずる異常性愛の形であると読み取ることもできます。
『人でなしの恋』は性愛の異常さでいえば、『芋虫』には遠く及びません(我基準)が、両作ともに残された妻は生涯罪の意識に苛まれることでしょう。

探偵小説的趣向が強いのは『夢遊病者の死』とせいぜい『双生児』くらいで他はほぼ怪奇小説。
『芋虫』と『人でなしの恋』以外は正直4〜6点ほどで、『踊る一寸法師』が結構よかったかな。元ネタのエドガー・アラン・ポー『ちんば蛙』も読まねばならん。

あと巻末の三津田先生の解説が良い。未収録の『陰獣』で解説を〆るほどお気に入りなのが面白い。

No.4 5点 バード
(2019/04/26 22:45登録)
乱歩さんのおどろおどろしさが堪能できる欲張りセットではないか。
日常的なホラーのお手本的なものかと。ただし、出来が良いのは間違いないと思いつつ、私はホラーはそれほどなのでこの点数で(笑)

個別の書評
「芋虫」 本短編集の中で一番かも。最後世界との一切の接触が断たれた須永中尉を自分に置き換えるとかなり恐ろしい。最早自殺が最良の選択肢としか思えない絶望感だろう。

「指」 軽くまとまった良作。

「火星の運河」 私の読解力が低いのか、正直良さが分からなかった。?ただし乱歩さんの素が一番出てるかも。

「白昼夢」 いまひとつかしら。ちょっと話がストレートすぎる。

「踊る一寸法師」 手品を始めた瞬間からもう嫌な予感しかしなかった。嫌いというほどではないけどこれもひねりは少ないかも。

「夢遊病者の死」 本短編集の中で最もミステリっぽい作品(と思う)。ただし、あくまでホラーで、ミステリではない。こういう思い込みを誘発させて他人の行動を操作する方法は相当上手くやらないと、ミステリでは駄作になりやすいが、ホラー要素を主役にすることで、本作は名作となっていると感じた。

「双生児」 これは双子がいれかわる話なのだけど、弟はくず野郎だね。おちは読めるけど、死刑囚が懺悔してるという形式なのが面白さを引き出していると思う。

「赤い部屋」 おちはあれで良いのか?と思うけど、語り方が上手く内容にはぐっとひきこまれた。本短編集で二番目に好き。

「人でなしの恋」 私には門野の気持ちが全然分からないからそれほど面白いと思えなかった。あの手の異常性性癖の人を知ってれば感想も変わるかもしれない。

No.3 7点 レッドキング
(2018/11/15 19:46登録)
男が女に残した「ゆるす」の文字が全てだ。
もちろんミステリではない。いわば究極の反戦小説。でも「ゆるす」

No.2 6点 メルカトル
(2010/05/28 23:26登録)
「芋虫」のみの書評です。

両手両足を失いながら奇跡的に助かった傷痍軍人、聞くことも話すこともできない、そんな夫を表向きは献身的に支える貞淑な妻。
しかし、その裏では無力な夫を弄ぶことに異常な快感を覚えていく。
グロテスクの極致を容赦なく描いた乱歩の隠れた名作。
乱歩自身が言うように、反戦小説ではない。
これは人間の悲しい性を描いた、グロテスクな仮面を被った感動のヒューマンドラマだ。

No.1 7点 江守森江
(2009/07/01 17:51登録)
(但し書き)
他の短編集で読んだが思い入れある作品「赤い部屋」を単独で書評したい。
有栖川・綾辻ミステリージョッキーへの収録で再読した。
イタズラとプロバビリティーの犯罪をテーマに書かれており30年以上前に初読した。
当時の自分は、線路に小石を載せたり、青になる前の信号で飛び出す素振り(犯罪と認識せずに)のイタズラをした事がある。
黄信号とか微妙に危険な時に善意で「危ない!!」と叫ぶ事が逆効果になる等々で子ども心に怖さを感じた。
現在に措いても罪に問えない形で応用可能な点に改めて(乱歩の中の悪意に)恐怖を覚えた。
しかも、余りにドギツイためか妄想オチで終わるが、悪意は拭いきれない。
※その他の収録作品については各自の好みで収録された作品集をあたればよいと思います。

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