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ミステリの祭典

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黒蜥蜴
明智小五郎シリーズ

作家 江戸川乱歩
出版日1968年01月
平均点6.00点
書評数10人

No.10 5点 蟷螂の斧
(2020/03/20 13:45登録)
怪人二十面相や少年探偵団といった子供向けの筋に、大人用としてエログロをプラスしたような作品ですね。当時、通俗的と批判されても致し方なかったと思います。黒蜥蜴は、何故裸で女性美を見せびらかしたり、部下の前で裸になるのか?。そしてなぜ男装で、男言葉を話すのか?。イメージが湧いてきません。宝ジェンヌの男役がストリップをするようなもので、あまりイメージとしてはしっくりこなかったです。色々調べたら、露出狂と評した方がいました。あゝ納得(笑)。なお、「僕」「わたし」「わたくし」の使い分けは特に決まりはなく、連載ものなので前に書いたことを忘れたか、あるいは著者の気まぐれだったのかと思います。三島由紀夫氏がどう翻案したのか見ものですね。

No.9 6点 レッドキング
(2020/03/10 08:09登録)
乱歩に加え、三島由紀夫と美輪(当時は丸山)明宏に援護されちゃあ、この点数よりは下げられない。

No.8 7点 クリスティ再読
(2019/10/20 22:37登録)
三島の戯曲の方は評者は別途書いているので、今回は乱歩原作側について書くことにしよう。まあ出版だって戯曲側は「三島由紀夫作」だしね、筋立ては借りてても文章も作品力点も全然別物なんだもの、一緒にするのは乱暴というものだ。
戯曲と原作の一番の違い、というのは、戯曲が「恋」を中心に描いているのに対し、今回読み直して感じるのは、原作は「エロス」が主題なんだと思うんだよ。まあ乱歩というと、幻想短編だろうと明智通俗物だろうと、とにかくエロスに満ち満ちた独自の文章が最大の魅力のわけだけど、たぶん通俗長編でのエロス充実度では本作が頂点に立つのではないかと思う。

軽蔑するわね、僕だって車くらい動かせるさ。

これである。今の萌えジャンルとしての「僕っ娘」の言葉遣いとは全然別の、女言葉と不良少年スタイルの蓮っ葉さとが混在してモザイクとなったような、黒蜥蜴の言葉遣いに、まずヤられる。男かとおもえば女、女かと思えば男、といった性を超越した、ではなくてジェンダーもセックスも未分化な両性的なエロス、というものを黒蜥蜴は体現している。三島の戯曲には、美と恋はあっても実はエロスがない。乱歩の黒蜥蜴はセックスを欠いたエロスなのだろう。だからその恋は、ゲームとマゾヒズムによってのみで、表現されるのだ。船中での黒蜥蜴と明智の会話でも、三島では恋の策略、というニュアンスが強く出るのに対して、乱歩では黒蜥蜴のサディズムとそれを受け止める明智のマゾヒズムの方を、評者なぞは強く感じるのだ。
まあここらへんの事情は雨宮の扱いの差にも出ている。三島の黒蜥蜴は雨宮の美に目を止めて犠牲にしようとするのだが、あまりに醜く命乞いをする姿を見てシラケて手下にするのに対して、乱歩では雨宮のマゾヒズムを認めて手下にするのだ...だからこそ、乱歩では恋の成就ではなくて、サド=マゾ関係の逆転によって、結末がつくわけである。
乱歩と三島、それぞれの「黒蜥蜴」の観点が大きく異なることが、今回の再読では最大の読みどころになった。まあ同じようでも、全然違う、というのが結論。それぞれがそれぞれに、独自の面白味があると思う。
(そういえば早苗さん眼鏡っ娘だ...乱歩は萌えの先駆者かしら)

No.7 7点 りゅうぐうのつかい
(2016/07/11 20:10登録)
映像作品は見たことがなく、初めて読んだが、展開がスピーディーで、場面が次々と切り替わり、面白いと感じた。
確かに俗っぽいストーリーで、「そんなにうまくいくだろうか」と思わざるをえないようなご都合主義が随所に見られるし、明智小五郎は名探偵の割には迂闊だし、もっと安全に黒蜥蜴を捕まえることができるのにわざわざ劇的に逮捕するための演出過剰が見られるなど、不自然な点は多々あるが、そういうことを指摘するのは野暮というものだろう。
明智と黒蜥蜴との虚々実々の駆け引きや意表を突いた策略など、見どころ満載。
「怪老人」の正体を完全に読み誤っていて、真相には驚いた。
しかし、明智が取った策略は、人命を軽視しすぎではないだろうか。

No.6 5点 斎藤警部
(2015/08/13 10:54登録)
読前の憶測を遥かに上回るべったりの通俗ぶりに仰天!! 三島由紀夫の戯曲でどんだけ化けたのか気になります。

黒蜥蜴の正体に意外性があるわけでもないのは少し残念ですが、謎解き的にびっくりさせる作りの小説じゃないのだから仕方ありません。

往時の挿絵入り(創元推理文庫)で読みましたけれど、絵の彼女(黒蜥蜴)にさっぱり性的魅力を感じず、困りました。。

No.5 6点
(2014/06/20 09:54登録)
みなさんが記載されているように、映画、演劇では有名な作品です。
原作は初めてですが、断片的な記憶しかなかったので、まあ読んでよかったかなという程度です。でも、ちょっとちがうかなという感はおおいにありますが。
挿絵付きだったので、それによる効果はあったようです。うまく描かれているなあと挿絵ばかりを見返してました。

こんな小説が今、突然出てきたとしたら、どんな評価を受けるのでしょう。
少年向けとしては大人っぽいところが多すぎるし、大人が読むとしたら、目の肥えた現代人にはどう考えても・・・、いや意外に新鮮にみえるのかもしれません。まあ大騒ぎされることはまちがいなしです。
ラストも余韻が残りましたしね。これも無茶苦茶な感はありましたが、今なら新鮮ですw

乱歩に関しては映像は多く観ていますが、原作を読んだのはごくわずか。タイトルを見れば、懐かしくて読んでみようかなとも思うのですが、通俗物、少年物はほどほどにしておくのがよさそうです。

No.4 5点 ボナンザ
(2014/04/07 22:24登録)
明智と女怪盗の一騎打ちという黄金仮面の好評を受けての意欲作。三島が惚れ込んだのもわかるおもしろさ。

No.3 5点 江守森江
(2009/05/22 13:53登録)
小説も楽しいが映画(京マチ子主演)はもっと楽しい。
更に、三島由紀夫脚本の舞台や映画は別世界な素晴らしさだった。
小説自体は通俗物として水準レベル。

No.2 7点 白い風
(2008/09/09 11:05登録)
多くの映画・舞台にもなってる名作の一つです(美輪さん演じる三島版が有名)
あの明智の恋愛話もあるのが魅力の一つだと思う。
ミステリ的には今となっては古いと思うけど、漫画『名探偵コナン』ばりの怪盗も出てくるので、逆に今の時代にあってるかもね。

No.1 7点 Tetchy
(2008/03/21 17:10登録)
本作は小説で愉しむよりも映像や演劇で愉しむのがいいでしょう。
小説で読むとあまりに通俗すぎてベタな感じがしますが、映像や演劇だと逆にこれがよい演出効果を生み、ドラマチックになるからです。
「黒蜥蜴」のキャラクターも現代に繋がるファム・ファタルのいい原形ですね。

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