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ミステリの祭典

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みりんさんの登録情報
平均点:6.66点 書評数:385件

プロフィール| 書評

No.185 8点 奇想、天を動かす
島田荘司
(2023/08/24 17:55登録)
吉敷竹史シリーズ第10弾
【ネタバレあります】


今まで密室殺人、死者の亡霊、人間消失、列車消失と数々の不可能状況を演出してきた作者はシリーズ10作目で「もうこれ流石にオカルトに頼らないと解決不可能だろ」ってレベルの謎を提示してきます。
特に"トイレからの人間消失"の不可能っぷりには蟻の這い出る隙間もありません。あるけど。

しかし、ここまでされるとハードルが上がりすぎて、この世の法則を捻じ曲げてしまう程のトリックを期待してしまいました(タイトル的にもね)。解決編は驚く部分もありましたが、やはり即席の殺人なのもあって少々チープな真相も… あらゆる不可能状況は連動していて、一つの真相で全てが解けるタイプの方が私は好みなんだなぁとふと思いました。そういった観点では『北の夕鶴』の方が好きかな〜とか…
社会派との兼ね合いも難しいところだとは思いますので贅沢な要望ですが(笑)

遊郭の情景描写や社会的背景の蘊蓄、『冤罪』や『日本人の罪』をテーマにした社会派要素、最後の吉敷竹史の信念など島荘ベストに上げる方がいるのも不思議ではありません。しかし、これに満点をつけるのは自分自信を騙しているような気がするのでこの点数で


No.184 6点 幽体離脱殺人事件
島田荘司
(2023/08/22 05:56登録)
吉敷竹史シリーズ第9弾
関西弁の女が強烈すぎて電話シーンだけで既に面白かった。『毒を売る女』でひたすら梅毒を移そうと奮闘するヤベー奴がいたけどあいつより印象に残った。
「女の親友同士は結婚する相手に、その男っぷりも経済状態もあまり差がついてはいけないということだ。相手と同程度の男と一緒にならなくてはいけない。」
そうなんですか世の女性の皆さん


No.183 5点 夜は千の鈴を鳴らす
島田荘司
(2023/08/21 04:57登録)
吉敷竹史シリーズ第8弾
この作品『異邦の騎士』と同時期なのか・・・『斜め屋敷』〜『異邦の騎士』の間に吉敷竹史シリーズが7作品も出てるなんて当時はゴリゴリの本格モノはやはり嫌われていたんでしょうかねぇ…
今作トリックはわかってしまったけど、小説として楽しめましたよ


No.182 6点 灰の迷宮
島田荘司
(2023/08/20 11:58登録)
吉敷竹史シリーズ第7弾
【ネタバレがあります】



こういうフーダニットでもハウダニットでもなく"独立した個々の不可解な事象に関連性を見出して一つの連続的な真実を導き出す"系のミステリ(名称あるのか?)が読んでる途中は1番モヤモヤします。そのモヤモヤに対して解決編で得られるカタルシスは少し足りなかった。そして、吉敷竹史の思考回路は少し飛躍しすぎというか御手洗潔に片足突っ込んで来てる気がしますね… ピタゴラスイッチとかアレとか諸々。

偶然要素は多いですが、良くできてるとは思いますし、最後の電話はウルッときましたよ。まあ満足です。
いや、満足じゃねぇ。『北の夕鶴』で登場した元妻の通子はいつ登場するんや。あんな良いキャラを使い捨てはやめてくれ〜シマソ〜と思いつつ続きも読みます。


No.181 7点 Yの構図
島田荘司
(2023/08/19 19:22登録)
吉敷竹史シリーズ第6弾
いじめを苦に自殺した少年の亡霊、一つのホームの両側に到着した新幹線から服毒死体、死体には桔梗の花や蝶が…
相変わらず不可能状況を作り上げるのが上手い。
そして吉敷竹史モテすぎ。課長時代の島耕作かよってくらいモテる(シマコーよりは遥かに紳士だが)


No.180 6点 確率2/2の死
島田荘司
(2023/08/17 18:59登録)
吉敷竹史シリーズ第5弾(のはず)
2時間でサラッと読めた。前作あたりから文体がスリムになったのかなあ?読むスピードが異常に上がった。なんか超不評ですが、私は楽しめました。

やっぱり誘拐ものってある程度の面白さは保証されてると思う。犯人の目的がわからない誘拐モノは特にね。そしてタイトルもイイ皮肉ですね。
しかし、前作『消える水晶特急』同様に推理で真相を引き当てることは不可能だと思う。どうせヒントをもらっても推理を組み立てられないので私には問題ありませんが(笑)


No.179 7点 消える「水晶特急」
島田荘司
(2023/08/17 06:38登録)
島田荘司「その列車 消えるよ」 なぬ!?
人間消失程度では飽き足らなくなった島荘は遂に列車消失も演出してしまいます。草。

吉敷竹史シリーズ第4弾

本作はなんか知らんが前3作に比べてリーダビリティが異常に高い。私は小説を読む時に100ページごとに時間を測るという奇特な習慣があるんだが、島荘作品は大体100ページで80〜90分くらいかかるのね。でも今作はなぜか100ページ55分ペース(これは東野圭吾クラスw)。なんでだろうね。やっぱり立て篭もり事件はサスペンスフルで読む手が止まらなくなるのかな。それとも今回は語り手が吉敷竹史じゃなかったからかな。ともかく一気読みできる快作でした。

最後の"感動の再会"シーンは作者のサービス精神に拍手です。いや〜面白かった。
この愛らしい女性コンビはこれからも登場してくれないかな〜なんて思っちゃったわけです。


No.178 8点 北の夕鶴2/3の殺人
島田荘司
(2023/08/16 17:38登録)
私は本格ミステリに"実現可能性"というあまりに些細なことを気にする余り、『斜め屋敷』や『姑獲鳥の夏』を読んでブチギレそうになったのも今は昔。今読めばどちらも傑作という評価を下すでしょう。いつか読み返そうと思いつつ、なかなかタイミングがねぇ…

この『北の夕鶴2/3の殺人』も実現可能性が著しく低そうなトリック、それでいい(保険付きなのは笑った)。『占星術』『斜め屋敷』そして今作『北の夕鶴』。一生忘れられないであろうトリックを島荘はいくつ生み出しているのだろうと楽しみにこれからも読んでいきます。

吉敷竹史シリーズは3作品目。奇妙奇天烈で掴みやすい御手洗潔と違って冷静な好青年というぼやけた印象しかなかった吉敷竹史がこんなに情熱的で感情的なキャラクターだったとは。男とはこうあるべきだという少々古臭い価値観だが、元妻の幸せを心から祈る元亭主の命懸けのラブロマンス+サスペンスとしても優秀だと思います。しかし、あのユニークな物理トリックとこのラブロマンスがややミスマッチな気がしないでもない笑


No.177 7点 出雲伝説7/8の殺人
島田荘司
(2023/08/15 15:49登録)
虫暮部さん(名前出して申し訳ありません)のおっしゃる通りで犯人はヒジョーに不可解な偽装工作をしていると言わざるを得ません。普段、物語の整合性・矛盾というものに鈍感で何でも受け入れてしまう私ですら今作はさすがに変だと感じました。

が、これは好きな作品になりました。
まず、首無のバラバラ遺体が7つの終着駅で部位ごとに見つかる。もうこれだけで読む推進力になるのに更に胴体には「五穀の起源」の見立てが施されている。出血大サービスです。でも時刻表は思考停止するので無視無視♪
「八岐の大蛇伝説」について巻き起こる学術的な対立がまあ面白い。そしてこんな見立てをしたのも8つに切り刻んだのもすべては犯人の学術研究由来の憎悪であるというのが良い。ラストの犯人を追い詰めるトラップもそれに心を揺さぶられた犯人という皮肉も最高でした。
「学術研究は成果なんて出さなくても楽しければ良いんだ」という前向きなメッセージもいただきました。


ということでミステリとしては大きく減点、それ以外の要素で大きく加点としこの点数にします。


No.176 6点 寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁
島田荘司
(2023/08/14 03:50登録)
吉敷竹史シリーズ第1弾
タイトルから明らかなトラベルミステリーだったので避けていた。

「死んだはずの女がなぜ寝台列車に?」「なぜ犯人は被害者の顔の皮膚を剥いだのか?」
相変わらず冒頭からとてつもなく魅力的な謎、いや、越えるべき"壁"を提示してくれる。さすが島荘です。その謎の強大さに対して、吉敷竹史はあまりにも丁寧な筋道を示し、合理的な解決を試みる。このあたりは奇想天外な真相を唐突に思いつく御手洗潔との対比でしょうか。
真相はトラベルミステリーの域を出ないかと思っていたら一捻り、二捻り、どんでん返しと見せかけて1.5捻りほどで留まりました。

綾辻先生の解説によると『占星術』『斜め屋敷』では先生のようなマニア間では既にカルト人気を得ていたが、売れ行きは芳しくなかったそうです。そこで流行のトラベル要素を取り入れ見事『はやぶさ』は大ヒットしたそうな。そんな苦心の末生み出された一冊、なかなか楽しかったです。


No.175 7点 亜愛一郎の逃亡
泡坂妻夫
(2023/08/13 05:59登録)
徹夜で読んでしまった。亜愛一郎と出会ってからわずか2日でお別れの時が来たようだ…
亜愛一郎、名探偵ランキングを作るなら間違いなく上位の逸材である。(当然1位は京極堂w)

今作『逃亡』は"何を推理するのか"を推理する所から始まるお話が多い。難易度激高です。
狼狽の『DL2号機事件』と転倒の『藁の猫』のような"超次元ロジック"は今回も『歯痛の思い出』にて健在。一見関係のないように見える出来事も論理の飛躍のためには重要な要素となってくるのが気持ち良い。この超次元ロジック作品(?)は泡坂センセーの他に書いてる人いないのか??って思うくらい楽しかった。
表題作『亜愛一郎の逃亡』ではシリーズ最大の謎、亜愛一郎が何者であるのかが明かされるわけだが、読み終わった後、不覚にも寂寥感を覚えた。これはズルい。
ラスト1行の完璧さ。最後まで作者の遊び心満載のシリーズだった。

※ミステリとしては『転倒』を1番に推していきたい


No.174 7点 亜愛一郎の転倒
泡坂妻夫
(2023/08/12 15:31登録)
こ〜れは読んでいて楽しい。ヒジョーに楽しい(^^)
なんだ『狼狽』より『転倒』の方がイイじゃん。
『狼狽』に比べたらハズレもあるけど『転倒』の方が3発くらいガツンと来たよ。

気に入ったの3つ挙げると『藁の猫』『意外な遺骸』『病人に刃物』
『藁の猫』は狼狽の『DL2号機事件』っぽい。完全を忌避する人間の心理をついたロジックのマジック(?) いや〜実に素晴らしい。
『意外な遺骸』では趣向を偏重する犯人が登場するが、遊び心満載の泡坂妻夫そのものじゃんね。
『病人に刃物』 もしこれが無かったら『狼狽』を超えたとは思わなかっただろうってほど驚いた。これこそINPERFECT INSIDERにふさわしい。

『三郎町路上』の響子姉さんの再登場を願いながら『逃亡』に進みます


No.173 7点 亜愛一郎の狼狽
泡坂妻夫
(2023/08/11 14:18登録)
泡坂妻夫の中では世間的に1番評価の高い作品かな?というだけあってどれも無難に面白い。しかし『しあわせの書』で作者の変態ぶりに衝撃を受け、『乱れからくり』の美しさに感銘を受けた私としてはいささか物足りない。上記と違って短編だから仕方ない部分もあるけど、こう何か一発ガツンと来るものがなかった。

1番面白かったのは『掌上の黄金仮面』でこの反転は流石に見事でした。「あ、この作者そういえば変態だったなあ」と再確認したのは私史上最高難度の暗号が登場する『掘り出された童話』ですかねぇ。でもね〜とある人間の心理を深く突いたロジックのマジック(?)『DL2号機事件』とこれぞザ・本格『曲がった部屋』も捨てがたい。
いや、やっぱり世評通りのすげえ濃密な短編集な気がしてきたぞ。

連城とか泡坂とか幻影城出身の方って連載形式だから短編が人気になりがち?


No.172 8点 十戒
夕木春央
(2023/08/08 22:35登録)
あえてハードルは下げておきます。『方舟』よりはやや劣ると思います(でも新刊補正で+1)。発売からわずか1年で既に28件の書評数と8.39点と高い評点を獲得した『方舟』はもう本サイトではレジェンドに片足を突っ込んでるので、それと比べるのは酷ですが…
『方舟』からわずか1年でこれを書き上げる夕木春央はミステリ界の救世主(出版社的にも)ですね。
ハードルを下げたいのか上げたいのかよくわからない評価になってしまいましたが、『方舟』が好きな方は買って損はないでしょう。


No.171 5点 二銭銅貨
江戸川乱歩
(2023/08/08 03:05登録)
乱歩のデビュー作。
よく練られたショートコントっぽい。8字ずつ飛ばす理由までついてると嬉しかった。
当時男同士では頭脳の優劣を競い合うことくらいしかやることなかったんでしょうか笑


No.170 6点 殺人鬼
綾辻行人
(2023/08/07 23:59登録)
キツすぎ。
読んでるだけなのに共感性(?)からくる痛みを感じたのでスプラッタシーンは1部読み飛ばした。でも冒頭に気になる記述があったので最後まで耐えながら読んだらしっかり騙された。あとこれ囁きシリーズと世界繋がってるんですね。
でも2は読まなくて良さそうかな。怖いもの見たさもあって読むか迷う。


No.169 5点 盗まれた手紙
エドガー・アラン・ポー
(2023/08/07 17:47登録)
結構前に海外の古典短編集が6つくらい乗ってるやつ(著者はバラバラ)で読んでて、唯一覚えてるお話。なんかコナンドイルの赤毛連盟とかも乗ってたような気もするが思い出せん。
ふと登録されてるの発見して嬉しいので書いときます。


これにピッタリなことわざ知ってますよ。
『灯台下暗し』ドヤ


No.168 7点 黄昏の囁き
綾辻行人
(2023/08/06 23:07登録)
ヘボ探偵すぎてたぶんここ30作品くらい連続で犯人が当てられていません(笑)

シリーズ3作品を通して読みました。
語り手の幼少期の封印された記憶が"囁き"という形で徐々に蘇ってくるのが共通ですね。物語の終盤までその記憶は2重3重に包み隠され、多用される色彩表現が幻想的な雰囲気を作り、表現し難い気持ち悪さがずっと味わえます。ずっと不安定なんですよねこの世界。最後には記憶の全貌と意外な犯人が浮かび上がり、モヤモヤが溶けました。
トリックや衝撃度は館シリーズに劣るけど、文体や雰囲気や読後の気持ち悪さはこちらの方が好みです。続編ないのですか?

シリーズの中で1番は僅差で『緋色の囁き』ですかねぇ…


No.167 7点 暗闇の囁き
綾辻行人
(2023/08/06 13:18登録)
囁きシリーズ第二弾 
人形館〜霧越邸を描いた頃の綾辻先生、抜群に雰囲気がイイ。人形館と霧越邸好きなんです。ミステリというよりもオカルトホラー・幻想小説って感じで。で、この人形館と霧越邸の中間みたいな感じの作品が『暗闇の囁き』ですかね。
ずっと足場が不安定で眩暈のするような別世界にいる少年達。主人公との邂逅で交錯した異世界が一つの真実に収束する。そんな幻想的で救いのないお話でした。

個人的には舞台設定も含めて『緋色の囁き』の方がやや上かな。


No.166 7点 緋色の囁き
綾辻行人
(2023/08/05 16:36登録)
綾辻先生が「今読み返すと赤面してしまう箇所がある」ってあとがきで言ってるけど、この文章が好きですよ。

【ネタバレがあります】



全寮制の厳格なお嬢様学校が舞台のキャッキャウフフな青春ミステリ…ではない!相当ホラー寄りです。
まあ十中八九二重人格オチだろうと半ば確信しながら読んでいくと、徐々に自信が揺らいでいく。いや…それでもさすがに…と思っていると反則スレスレの真相が待っています。
テーマはたぶん「血」ですよね。
ずっとこの作品に漂うカラーはタイトル通り緋色なわけですが、視覚的・物理的な血のみにとどまらず、DNAとしての血も内包しています。ラストの主人公の独白から、鮮やかな血に魅入られた母親と恐らく同じ末路を辿り、DNAには抗えないというメッセージでしょう。

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