| みりんさんの登録情報 | |
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| 平均点:6.65点 | 書評数:588件 |
| No.588 | 8点 | 復活の日 小松左京 |
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(2026/09/29 23:03登録) SF御三家の1人らしい。ミステリーでいうと横溝正史のポジション? パンデミックにより徐々に世界が崩壊していく過程が実に丁寧で、60年前の作品なのに、つい6年前のコロナウイルス情勢を予言したような記述が多々あり、当時の不安感を再現してくれた。印象に残っているのは医療現場の崩壊、哲学者の死の淵の大演説、南極編の3つである。人間の果てない争いの果てにこの危機が訪れたという背景があり、人間ドラマというありふれた言葉で形容するのも失礼なほど壮大な人類ドラマであり、人類が築き上げてきた暗黒史を振り返らなければならない。 ただの風邪で人類が絶滅を迎えるという無茶苦茶な設定を支える緻密なディティール。なぜ高度な知性を持つ人類が"ただの風邪"になす術もなく死んでいくのかということに対する哲学的解釈。「復活の日」を迎えるに至ったアイロニカルな結末まで見事です。エスエフって面白いなあ… この作品が発表されたのはキューバ危機の翌年らしいが、今も小松左京が生きていたら、ロシアウクライナ戦争やイラン戦争を見て何を思うのだろう。虚しい。 |
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| No.587 | 6点 | 連続殺人鬼 カエル男 中山七里 |
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(2026/09/29 19:40登録) 【かなりのネタバレ】 中山七里作品をいくつか読んでいる人なら二重の企みまでは読めると思う。というか、そこまではあの名作とほぼ同じプロット・犯人像・動機でほぼ模倣ではないかと思って焦ったが、その先がオリジナルであった。ミステリー的にオリジナル部分は真相が三重構造であることと動機を刑法第三十九条に絡めた点にあり、特に後者は真犯人像からも上手いと思った。 だが、二重でさえ不可能に近いとされているなか(主観)で、三重となるともはやファンタジーの領域であり、あの名作を下敷きにして独自の地平を切り拓いたとは言い難いと思う。 オチに関しては良かったのこの点数で。 |
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| No.586 | 7点 | わたしがいなくなった世界に 七河迦南 |
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(2026/09/26 18:40登録) 『日常の謎』というのはどこまでの範囲が該当するのか、明確に線引きがあるのか寡聞にして知りませんが、今作の主題は立派な殺人事件であり、ジャンルとしては本格/新本格になるんじゃないですかね? 同じく幻想的で摩訶不思議な手記を扱った島田荘司の『眩暈』を彷彿とさせるが、真相の衝撃度で上を行くのではないか。そして、謎が解明されると同時に、発達障害を持つ人々に対して我々が持っている偏見・先入観を取り払うという副次的な効果も齎している。これなら物語を堪能しながら、自然に心地よく響く。まあ、『眩暈』も好きですがね。 シリーズを3作続けて読んだので私は良かったですが、まさむねさんが懸念している通り、シリーズを追っている方には厳しいですね…『アルバトロスは羽ばたかない』の最後の部分だけでも復習してから本作を読まないと、一部おいてけぼりをくらうと思われます。 |
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| No.585 | 7点 | アルバトロスは羽ばたかない 七河迦南 |
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(2026/09/23 21:08登録) シリーズ2作目。前作「七つの海を照らす星」を読まないと効果は薄いと思います。 久しぶりに脳が混乱しました。 |
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| No.584 | 6点 | 七つの海を照らす星 七河迦南 |
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(2026/09/22 17:44登録) 露悪的な作品を好む自分に勿体無いほどイイハナシ。物分かりの良すぎる子供達。 1話の「今は亡き星の光も」という詩的なタイトルと切ない真相がマッチしたベスト短編。 2話の「滅びの指輪」では、戸籍のない子供がテーマ。今年の新刊でも同一のテーマを扱った話を読みましたが、我が国では20年間もこの問題が放置されているんですね。なんとかならないのでしょうか。 4話の「夏季転住」では人間消失が演出されますが、これはかなりフェアに手がかりが明示されるため簡単です。その他は日常の謎らしく、読んで思わずほっこりするような小品ですね。 |
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| No.583 | 8点 | 第三の銃弾<完全版> カーター・ディクスン |
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(2026/09/21 14:55登録) 現代においてカーを読むメリットとして、「事件状況が複雑でトリックを端的に言い表せないゆえにネタバレが横行していない」という点が挙げられると思う。 今作もそんな恩恵を受けている作品。密室内の人間が狙撃に使用した銃と別の銃が室内から発見されるだけでも不可解性は十分。さらには被害者を死に至らしめた第三の銃の存在が判明し、徐々にカオスが増大していく構成にワクワクする。 トリック成立に必要な素材は、一部フェル博士シリーズのものを使い回しているが、完成品は全く新しいものに仕上がっている。最後の1ページ丸々費やされるマーキス大佐のメタ発言(お決まりパターンの脱却)で、確かに自分もそのパターンのせいでスッカリ騙されていたんだと気づかされる。分量・切れ味文句なしの傑作。 |
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| No.582 | 7点 | 未館成の殺人 信国遥 |
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(2026/09/20 23:44登録) 典型的なクローズドサークル&孤島サバイバルもの。 最初から最後まで一本道で一切無駄な描写がなく、クライマックスまで一気に駆け抜けていくスピード感が心地よい。笠井潔の2倍以上の速度で読むことができる(笑) 作中の選評通り人間が描かれていない(良いことよ)。それは歓迎なんだが、あまりにも小説的余暇というか味気がない。小説というよりアイデア展覧会?しかしそのアイデアが優れているのは間違いない。フェアプレイ精神は薄く、この動機を当てることはほぼ不可能に近いと思いますが、おお…そこで横溝正史の…と妙に納得感はあった。 Amazonの酷評レビューにも頷けるところはありますが、今年の収穫の1つでしょう。 |
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| No.581 | 7点 | サマー・アポカリプス 笠井潔 |
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(2026/09/20 15:30登録) 『ヨハネの黙示録』の「四騎士」に準えた4件の連続見立て殺人という豪華絢爛な本格ミステリで、まるでディクスン・カー?を連想させる密室トリックもついているため、本格としては前作より上。ただ、カタリ派という異端宗教に関する蘊蓄が長ったらしく、読み終えてから振り返るとあまりその蘊蓄がミステリーに活きていないんだよねぇ…言ってしまえば、この見立てにはカタリ派の歴史的な怨恨や秘宝の絡んだ「宗教的・思想的な連続殺人」らしいぞということさえ抑えれば、ミステリー的には充分。動機もあまりに探偵小説的で、前作のように犯人との思想対決じゃないと熱くなれない。あと、コンセプトである現象学的推理というのも2作目にして既に鳴りを潜めていて、総合的には『バイバイ、エンジェル』に及ばないんじゃないかな。 |
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| No.580 | 3点 | 熟柿 佐藤正午 |
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(2026/09/15 20:11登録) 轢き逃げをして刑務所に服役していた女性の波乱な人生。夫は妊娠中の妻に高速を運転させるし、妻は贖罪の意識も薄いし、子供の為のお金を盗まれてなぜか警察にもいかないし、とにかく登場人物達に苛立ちが募った。晴子叔母さんの柿のくだりも鶴子の不倫のくだりも物語の構成的に何の意味があったのかよく分からないし、結末も予定調和というか安直に感じた。 登場人物全員が好きになれなかった作品だが、それでも読ませてしまう力はある。 |
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| No.579 | 7点 | 修羅にしてリラのごとく 弥生小夜子 |
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(2026/09/15 20:04登録) 戦後から現代まで、苛烈な運命を背負った女性の生き様を描いたノワール小説?現代で起こった無理心中事件の真相がその女性の手記に隠されているというミステリー小説でもある。 育ての親である遊女が病死し、小学生にしてヤクザに引き取られるという壮絶な環境で育った珠々の叙事詩だけでも、読み応えは十分。352ページと決して分量が多いわけではないが、時代を跨ぐためなのか、あまりに色々な出来事が降りかかるからなのか、かなり読み疲れる。現代で起こった無理心中事件は、手記の最後の最後までその輪郭が見えてこない。そこに至るまでの枝葉を味わうだけでお腹がいっぱいだ。この時代に生まれたならばこんな人生もあったのかもしれない。著者渾身の力作。 |
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| No.578 | 6点 | 白昼の悪魔 アガサ・クリスティー |
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(2026/09/13 17:39登録) 序盤から不必要なほどキャラクターがわんさか出てくるが、たった数ページの会話でぞれぞれの特徴を捉えることができるので苦にならない。登場人物の書き分けが世界一上手いのではないだろうか。 【ネタバレ】 トリックに新規性はありませんし、この手法だとリスクが高すぎるので、ポアロがいうほど計画性の高い狡知に長けた(スリック)犯罪という印象は受けませんでした。共犯者の存在は当てられませんでしたが。 リゾート地という心理的に開放感のある心地よい舞台で人間関係が交錯していく物語の本筋にはのめり込むことができ、その点は『ナイルに死す』に匹敵するかも。バカンスの文化が羨ましいなあ…もっと真夏に読むべきだった。 |
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| No.577 | 8点 | メルカトルと美袋のための殺人 麻耶雄嵩 |
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(2026/09/12 02:25登録) 銘探偵メルカトル鮎の第一短編集。こいつも名探偵推理力トーナメントがあれば手段問わず勝ち上がりそうな卓越した探偵の1人。「哀しいかな、基本的に私は長編には向かない探偵なんだ」←かっけぇよ… ただ、そろそろ長編にも最初から最後まで登場して苦戦してくれw 初っ端から『遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる』で幻惑密室の先にあるホワイに心を奪われてしまった…この短編の切れ味に8点を献上すべきだと思わされた。 『化粧した男の冒険』や『彷徨える美袋』はまあいかにも短編向きの小粒なネタだが、名探偵にあらざる倫理観を披露するダークヒーローメルさんシリーズ。 短編のくせにやたら複雑で2回読まさせられたのが『ノスタルジア』と『シベリア急行西へ』 この作者は、斜め読みしていると重要な手がかりを素通りしてしまうから気を抜けない。『ノスタルジア』はメルカトルの書いた超悪文ですこぶる読みにくいが、途中からあまりにも変態的なロジックを展開し、こういった作中作叙述モノをするならここまでやれと示してくれた。『シベリア急行西へ』もフツー短編でこれをやるか?というような、捻くれた多重解決もの。「そう思うだろ。それが犯人の目的なんだよ。」←いや、わかるかよww この二つは並の短編じゃ満足できなくなった変態向けでしょう。 |
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| No.576 | 7点 | 青の炎 貴志祐介 |
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(2026/09/12 01:40登録) 倒叙=犯人わかってる=つまらないという俺の辿り着いた結論等式を覆した作品。読者を物語の世界にグッと引き込む筆力がずば抜けている。東野圭吾と同様に小説家として一流なのかも。 【展開バレ】 1つ目の計画はQ=Ivtと不自然なアリバイ工作以外ほぼ完璧だったんじゃないか。ここまでは秀一の名に恥じない秀才ぶりを発揮。問題は2つ目の計画。監視カメラに一部始終を撮影されるのはあまりにもリスキーだし、すっ転んで死んだなんて主張は無理筋だろう。読みながら「おい秀一、それは流石にやめておけ」と手に汗握りながら必死に応援していたが、案の定ここから芋蔓式にバレてしまう。でも、天才とはいえ、秀一は高校生なのだから仕方がない。殺人を一度犯したことで、秀一自身を青の炎が焼き尽くす。罪悪感で徐々に冷静さと正常な思考判断能力を失い、杜撰な計画に頼ってしまうというのは、秀一が等身大の高校生であることを痛感させる。 そう、あの義父さえ存在しなければ、秀一は普通の高校生だった。紀子と真剣に交際し、やがてはおしどり夫婦になる未来もあったと考えるとあまりにも救いのない結末だ。例え証拠不十分で釈放されても、母と妹が好奇の目に晒されることが耐えられないのであれば、秀一はああするしかなかった。トラックの運ちゃんは気の毒だが… 中高校生の頃に読んでいたら、櫛森秀一のことを夜神月ばりに神格化していただろう。とにかく、絶対に忘れられない主人公の1人になった。 |
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| No.575 | 7点 | プレーグ・コートの殺人 カーター・ディクスン |
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(2026/09/06 18:39登録) 唖然の密室トリック以上に、WhoとHow双方のミスリーディングが物語の核として機能している点が見事。なかでも、白い粉によるWho・Howダブルミスリードが気持ち良すぎるだろ。解決編の前に計画乗っ取り型の犯罪であることを明かしてもなお、誰も真相に到達できないレベルの難易度であり、フェアさを気にしない俺みたいな読者にピッタリ。『三つの棺』の密室講義をスキップしていて本当に良かった。ただ、H・M卿とフェル博士のビジュアルほぼ同じじゃね? あまり類似性を指摘されていないが、処女作『夜歩く』を発展させた作品という印象を受けた。 |
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| No.574 | 8点 | 造反有理 文革楼の殺人 稲羽白菟 |
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(2026/09/05 21:03登録) ジャンルは本格/新本格になってしまっているが、個人的には歴史物としての感興の方が大きい。 舞台は1960年代中国。毛沢東の夫人・江青らが主導する紅衛兵による知識人への弾圧が進む「文化大革命」の最中、周恩来首相は命を狙われている重要人物達を「文革楼」に逃して匿っていたが、その屋敷内で連続見立て殺人が起こるという話。 「文化大革命」を全く知らなかったので、この凄惨な動乱について調べてから読んだ。「文革楼」というものは実在しないが周恩来首相が文化人や科学者のリストを作成し、保護していたのは史実通りらしい。 登場人物が多く最初は混乱したが、次第に読む手が加速した。文革楼の外での大虐殺、中での連続サツ人という二重地獄の状況である。本格ミステリとしての最大の読みどころは「見立て」だが、その「見立て」にこそ、この地獄の時代・状況を選んだ必然性が見えてくる。途中からはスパイ小説的なハラハラ感もあり、終盤では理不尽な革命に翻弄されながらも自分の誇りを貫く文化人達がいちいち格好いい。 本格としての骨格だけを評価すればせいぜい6〜7点だが、舞台設定の独創性、革命に生きる人間達のドラマ性・メッセージ性、作者の並々ならぬ熱量に押されてこの評価。 |
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| No.573 | 6点 | 本を読むのが超速い人の頭の中ってどうなってんの殺人事件 白井智之 |
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(2026/09/04 18:15登録) 自分も挑戦した。30分ちょいだった。 なかなかひねりの効いたオチだった。このギミックをM先生やT先生ではなく、白井智之がやるのかという驚きがある。感心したので7点でもいいのだが、基本的に同一作家内の評点は面白さ・凄さ順にしたい派である。これに7点をつけてしまうと『ミステリー・オーバードーズ』や『そして誰も死ななかった』より面白い・凄いということになる。それはそれでどうなの?と思い直し6点。 |
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| No.572 | 7点 | 法月綸太郎の冒険 法月綸太郎 |
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(2026/09/04 17:47登録) 「死刑囚パズル」 執行直前の死刑囚の毒殺事件を扱った純粋なフーダニットもの。動機も独創的でこの短編集の中では頭ひとつ抜けた出来。死刑囚が死刑執行直前に毒殺されるという奇異な状況により、通常の殺人事件の捜査よりも取り調べが緩くなっているというのが実は大事なのかも。共犯者否定のロジックは結構ガバい気がする。 「黒衣の家」 あの有名なサイコパス診断テストと全く同じネタだね。AIによるとそのテストが流行り始めたのは2000年ごろでこの作品の方が古い。お、これはもしかして元ネタなのか?と興奮して、AIに時代を遡らせると戦前の推理作家の某短編、フロイトの著作、江戸時代の実際の放火事件など類似ネタが色々ヒットした(笑) その某短編が収録されている短編集はこのサイトでもかなり人気が高いみたいなので、読みたい作品リストに入れた。 「カニバリズム小論」 動機1本に絞った半ば論文のような作品。評論家としても一流の作者らしく、筆が乗っているのが伝わってくる。カニバリズムという映像的な恐怖以上に、人間の思考そのものの悍ましさに愕然とさせられる。 図書館シリーズは前3作と比べると雰囲気が緩くなり、ユニークな密室トリックが炸裂する『緑の扉は危険』以外は個人的にイマイチだった。前半3作と図書館シリーズは別の短編集に収録すべきでは。 |
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| No.571 | 7点 | 楽園 夕木春央 |
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(2026/08/31 00:35登録) 『方舟』1発で終わる予定だったものを、大人の都合で無理矢理シリーズ化させられただろうに、特殊なクローズドサークルを拵えて…旧約聖書に準えて…犯人は…と様々な制約がある中で、一定のサプライズを演出しなきゃいけないなんて罰ゲームに近いだろう。それをやってのける作者は本当に凄い…この状況を成立させるために、不自然なほど物分かりのいい犯罪者達を登場させ、ありえない選択を主人公に強いるあたりで、作者の苦心が窺えた 【ネタバレ】 『方舟』にはまだ動機を推測する余地が読者側に残されていたが、こちらは後出し感が強くて、衝撃はあるものの納得感には欠ける。あと、犯人による怒涛の動機開示はサイコパスネタで笑かせにきているだろうとややシラけてしまう。とはいえ、whyに驚愕したのは事実だし、シリーズ前作からの流れとしては完璧な落とし所であるのは間違いなく、十分に期待に応えた作品である。なにより、こんな縛りプレイに近い状態でここまでのものを提供できる作者に感謝すべきなのかもしれない。 |
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| No.570 | 6点 | シュレディンガーの密室 麻根重次 |
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(2026/08/29 21:26登録) 「シュレディンガーの猫」という思考実験はいつの間にか「観測するまで分からない」という程度の意味で使われることが多いよね。本来は、単に観測者が結果を知らない。観測すれば収束するという話ではなく、量子力学をマクロな世界に適用すると死んでいる状態と生きている状態が重ね合されてしまうことへの問題提起なのに。その点でこの舞台設定はミステリー的にはとても面白いけど、「シュレディンガーの猫」という言葉の意味をかなり単純化したタイトルには引っかかってしまう。と、偉そうなことを書いているけど、所詮はシュレディンガー方程式を習った時にほぼ理解できなかった人間の戯言です。 【ネタバレ】 負圧の密室を開けた瞬間に硫化水素が流入して死ぬ。しかし、すでに死んでいる場合は密室に押し入り、臓器を回収しなければならない。この状況設定が非常に独創的で素晴らしい。帯の過剰なハードル上げがなければまあフツーに面白いじゃんと楽しめたはずだ。前例のありすぎるひっくり返し方ではあり、その点は『千年のフーダニット』には敵わなかったが、それを差し引いても十分に魅力的な作品です。 ※風船を用いたダミートリックは風船の中に二酸化炭素が溜まるだけかつ注射器を用いた風船への空気の送気は不可だというような記述があったから、ダミーとはいえそもそも成立しないような気がするのだが…なにか読み落としたのかな。 |
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| No.569 | 6点 | 愛国殺人 アガサ・クリスティー |
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(2026/08/28 22:54登録) クリスティーなのにあくびが止まらなかった。複雑さのせいか登場人物の希薄さのせいか…それでもやはりトリックはさすがである。アムバライオティス(覚えにくい)を「国のため」ではなくただ自殺偽装のためだけに殺していれば、かなり納得感のあるトリックに仕上がったのではないか。期待したような国を愛するが故の尊い殺人ではなく、限りなく卑小な動機だな。ポアロも引いているぞ。 |
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