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ミステリの祭典

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絞首台の謎
アンリ・バンコランシリーズ

作家 ジョン・ディクスン・カー
出版日1981年01月
平均点4.85点
書評数13人

No.13 5点 虫暮部
(2021/11/27 13:15登録)
 “怪奇趣味”がまるで怖くない。ドタバタ騒いで回って、これはメタ的なユーモア小説? 率先して殺人現場を荒らすなよバンコラン。
 殺された人は巻き添えを食っただけ。特に運転手は端から“主人の添え物”扱いで、彼個人に対する動機など考慮されない。失礼な。

 ところで、本書には語られざる恐ろしいラスト・シーンがあることにお気付きだろうか?
 甲は首を拘束されたまま転落、首が折れてだらりとぶら下がる。その足の下では泥酔した乙がテーブルに突っ伏していびきをかいていた。
 縊死の場合、たいていは“漏らす”と言いますよね……。

No.12 5点 レッドキング
(2020/01/14 08:54登録)
天才ディクスン・カーの記念すべき長編第二弾! アンリ・バンコランいいなあ。惜しいことに滑稽味には欠けるが。

No.11 4点
(2019/12/27 13:18登録)
霧の中の絞首台の影や、喉をかき切られた死者が運転するリムジン、と怪奇趣味は映像的で、至極よい。
フーダニットはまずまず。トリックはいまひとつ。
それに物語の流れもいまひとつで、パッとしない。
結局、雰囲気だけが飛び抜けてよく、その他はイマイチで、総合的評価は低い。

ところで、カーをWikipediaで確認すると、1906年生まれと、クリスティやクイーン(二人)より遅い生まれであることにびっくり。
国内ミステリーのほうが好きなので国内作家と比較するが、生年は横溝(1902年)と松本清張(1909年)の間なのだ。彼らより、10年か20年は上だと思っていた。
とても古くさく感じていたのは、雰囲気によるものだったのか?
それに若書きでもあったのだ。

評者自身の認識は誤っていたけど、だからといって本作の評価は変わらない。
やはり、イマイチ(4点)であることにはちがいない。

映像的と評したが、いまの時代なら、映画、テレビに引っ張りだこの作品になってたかも。惜しいなぁ。
そういう意味では、古くさいというより、むしろ現代的なのか?

No.10 5点 弾十六
(2019/06/21 07:22登録)
JDC/CDファン評価★★★☆☆
バンコラン第2作。1931年出版。創元文庫の新訳で読みました。こなれてない単語をときどき使う感じなのと、セリフの表記が少々へんてこな時がありますが他は読みやすい訳文。
前作の続編で人物再登場もあるので『夜歩く』を読んでたほうが楽しめます。
つかみは素晴らしいんですが、その後が続きません。ラストの活劇も乗れません。全体的にまとまりを欠いている印象です。ラブコメ展開も本筋と全然絡まないし… ところで、これも本筋に絡まないのですが、バンコランが読んでた『囁く家殺人事件』J.J.アクロイド著(The Murders at Whispering House by J.J. Ackroyd)ってあの超有名作(1926)と関係あり?
以下、トリビア。原文入手出来ませんでした。
銃は「スミス アンド ウェッソンのリヴォルヴァー、象牙の握りのついた四五口径、銃身の長い、ニッケルメッキ」が登場。該当銃はM1917(45ACP弾)、5-1/2インチ銃身、通常はブルーフィニッシュ、ニッケル仕上げはレアもの。
作中時間は前作の数ヶ月後、1927年。
p27 最上階には電気が来ていない: ガス灯を使っています。
p29 ミュージカルの歌めいたものを口ずさんでいる: この作品、結構、歌が豊富です。
p30 奇抜な緑の長いミネルヴァ リムジン(Minerva Limousine): ロールスロイスに迫る性能でちょっと安い高級車らしい。
p59 『アラビアン ナイト ブルース』とかいう歌に笑った: 調べつかず。
p68 タラ ラ ラ タラ ラ ラ ブーン!可愛こ娘ちゃんが街ゆけば、小鳥はみんなチュンチュンチュン: ナイトクラブでやってた歌。調べつかず。
p88 十万フラン: 豪勢なパーティ代、たった一晩の支出。仏国消費者物価指数基準1927/2029で416.53倍、416.53旧フラン=0.635ユーロ。現在価値770万円。
p107 バンコランの口を借りて短い探偵小説論が語られます。
p130 歴史探偵: 歴史の謎を解いて評価されてる男が登場。JDC/CDは後年『エドマンド ゴドフリー』(1936)を発表します。
p170 五ポンド賭けてもいい: 英国消費者物価指数基準1927/2019で46.16倍。現在価値31586円。
p206「遊ばれるのはまっぴら」話しかける相手はいない/ひとりぼっちのあたし/ともに歩く人はいない/極楽とんぼの店晒し/遊ばれるのはまっぴらさ!: 調べつかず。
p208 バグダッドのおふくろの歌を悲しい声で歌い上げた: 調べつかず。
p283 鼻歌: バンコランが楽しげに鼻歌を歌う… 何の歌なのか、とても気になります。

No.9 6点 クリスティ再読
(2019/01/15 22:21登録)
評者本作結構好きなんだ。霧深いロンドンに浮かぶ絞首台の影、地図にない町「ルイネーション(破滅)街」で絞首刑になる男、深夜の街を蛇行する死人に運転されるリムジン...とポエジーに溢れた怪奇を提供してくれているんだもの。イメージの豊かさでは、なかなかのものだと思うんだよ。
だからね、本作は「密室パズラーの巨匠カー」という思い込み(というか読者の期待)を一旦外して、この時期に成立するパズラーを参照点にするんじゃなくて、それこそスティーブンソンの「自殺クラブ」とか、ああいったビザールでロマネスクな冒険譚を参照点にすべきなんだと思うんだよ。というかね、こういうロマンが当初のカーのやりたかったこと、だったわけで、それが日本の凝りに凝ったマニアの期待からズレていてもさ、それをあくまで押しつけるのはどうか?と評者は思うのだ。
まあミステリとしては、ほぼ「隠す気なし?」というくらいの明白な犯人(特定はまあファア)、ショボめの不可能興味の真相と、大したもんじゃないのはその通りなんだけども、ビザールなロマンの味を楽しむ余裕くらい、あってほしいと評者は願うのだよ。

No.8 5点 E-BANKER
(2017/12/21 23:01登録)
「夜歩く」に続いて発表されたアンリ・バンコランを探偵役とするシリーズ二作目。
原題“The Lost Gallows”。1931年発表。
今般、約六十年振りの新訳版で読了。

~怪しげな人々が集うロンドンの会員制クラブを訪れたパリの予審判事アンリ・バンコラン。そこに届く不気味な絞首台の模型に端を発して霧深い街でつぎつぎと怪事件が起こる。死者を運転席に乗せて疾駆するリムジン、実在した絞首刑吏を名乗る人物からの殺人予告、そして地図にない幻の<破滅街(ルイネーション)>・・・横溢する怪奇趣味と鮮烈な幕切れが忘れがたい余韻を残す、カー初期の長編推理~

「夜歩く」の書評でも書いた気がするけど、初期のアンリ・バンコランシリーズは、どうしても「習作」っていう感覚が拭えない。
四作目の「蝋人形館の謎」辺りまでくると、だいぶ“こなれてきた”印象になるんだけど、本作はどうにもプロットの未整理が目について、読みにくいこと甚だしい。
途中までは、一体どういう事件が起きて、事件の背景はどうなっていて、容疑者(として考えられるのは)どんな奴で、っていう基本的な事項がなかなか頭に入ってこない。
(新訳版でこれだから、旧約版では更に・・・って感じだったんだろうね)

もちろん紹介文のとおり、「喉をかき切られた死者が運転する自動車」や「無人の部屋に突然出現する置物」など、カーお得意のオカルト&不可能趣味は登場するし、バンコランの造形も相まって、独特の作品世界を醸し出しているところは他の方も触れているとおり。
フーダニットはさすがにカーっていう感じで、まずまずのサプライズ感を味わうこともできる。
などと書いてると、それなりのレベルなんじゃないって思われそうだけど・・・

やっぱり・・・高い評価はできないなぁー
トリックにしても腰砕けっていうか、「そんなこと!」っていうツッコミが入りそうなもんだしね。
こういう雰囲気が好きな人向け、っていうだけの作品ということかな。
ちょっと辛口かもしれんが・・・

No.7 6点 nukkam
(2016/09/07 11:24登録)
(ネタバレなしです) 1931年発表のアンリ・バンコランシリーズ第2作は不思議な魅力を持った本格派推理小説です。夜と霧を効果的に使うためでしょうか、舞台は前作「夜歩く」(1930年)のパリからロンドンに移っています。欠点も非常に多く、死人の運転する自動車トリックはひどいトリックだし、miniさんのご講評にもあるように霧の中に出現する絞首台の謎及び謎解きは文章説明だけではわかりにくいです。しかし幻想的怪奇的な演出に優れており、犯人逮捕場面のサスペンスも素晴らしく最後の一行も衝撃的です。結果としては雰囲気のみで勝負したような作品になっていますがこれだけ雰囲気豊かな作品はなかなかお目にかかれません。

No.6 5点 ボナンザ
(2014/10/13 00:42登録)
犯人当てとしてはまずまずだが、肝心のトリックがあまりに陳腐で減点。

No.5 5点 初老人
(2014/06/12 02:15登録)
考えてみれば、犯人を特定する手掛かりはそこかしこに散りばめられていたのですね。当事者しか知り得ない事実を元に犯人を特定したと思ったのも束の間、○○になり登場したいかにも怪しげな人物による初歩的なミスリードに引っ掛かり真犯人を取り逃がした悔しさを昨日の事のように思い出す事が出来ます。
死者が夜の街をリムジンで疾走したトリックについては、虚仮威しもいいところだと思いました。

No.4 5点 mini
(2013/11/29 09:56登録)
昨日28日に創元文庫からディクスン・カー「夜歩く」の新訳版が刊行された、藤原編集室絡みのようだ
創元では少し前にも同じ初期のバンコランもの「蝋人形館の殺人」が出ており、創元的には旧訳版が存在せず新訳と言うより初訳に近いものまで含めて、初期のカー作品の新版を揃えようという事なのかな、ついでだから「毒のたわむれ」なんかも頼むよ

さて「夜歩く」が作者のデビュー作にしてバンコランものの第1作ならば、シリーズ第2作目が「絞首台の謎」である
無理矢理オカルト的はったりを利かせた雰囲気重視な作風など基本的には「夜歩く」と大差ない感じ
私には世のネット書評では「絞首台の謎」の評価の低さに対し「夜歩く」の評価が相対的に高い感じがしてしまう
「夜歩く」に好意的な評価が多いのは作者のデビュー作という理由も有りそうでまた読まれる度合いも多いのだろう
「夜歩く」をあまり高くは評価してない私としては、まぁ五十歩百歩な感じなんだけどなぁ
ただし「絞首台の謎」の大きな弱点は、地理的あるいは舞台の視覚的なイメージが湧かない点で、それが謎解きの本質に関わっているので見取り図を添付し難かったであろう事情は察するものの、とにかく図面無しには訳分からん、てな印象はたしかに有るな

No.3 4点 kanamori
(2010/07/01 18:49登録)
予審判事バンコランものの第2作。
冒頭の、夜霧のロンドンを死者が運転するリムジンが疾走する光景のみが印象に残る作品で、幻想的雰囲気はいいんですが、ミステリの結末としては腰砕けでした。

No.2 2点 Tetchy
(2009/01/08 22:25登録)
色々な意味で全体を捉えるのが難しい作品だった。
怪奇趣味が横溢しているものの、明かされる真相がほとんど子供だましの領域であったのが、大きな原因か。
バンコランの非情さが色濃く出た作品であるのはあるのだが、改訳した方がいいと思う、いい加減この作品は。

No.1 6点
(2008/12/07 17:47登録)
フェル博士もののような大トリックや論理性は最初から期待しない方がいいです。
むしろ、はったりをきかせた不気味な謎を次々に繰り出しておきながら、その解明に意外性や鮮やかな論理性がほとんどない(一応説明はつけているのですが)ところなど、江戸川乱歩や横溝正史の通俗長編に近いものがあると言えるでしょう。
特にカーの場合は、ビジュアルな効果を出すのがうまく、雰囲気は楽しめましたし、意表をつく皮肉なラストも鮮やかでした。

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