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ミステリの祭典

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ぷちレコードさんの登録情報
平均点:6.32点 書評数:242件

プロフィール| 書評

No.22 6点 教場
長岡弘樹
(2020/08/19 20:13登録)
年齢も動機も職歴もさまざまな学生たちが、挫折に直面しながら、ふるいにかけられる恐怖に抗っていく。
緊密な文体、極めて密度の濃いプロット。警察小説のジャンルにエポックを画する作品。


No.21 6点 紅城奇譚
鳥飼否宇
(2020/08/05 19:36登録)
舞台は戦国時代。血で血を洗う決戦が繰り広げられ、政略結婚や下克上が当たり前であった時代の地方の一戦国大名の没落に焦点を当て、その時代だからこそ成り立つ逆説と奇想を際立たせている。


No.20 5点 ミステリ・オペラ
山田正紀
(2020/07/30 19:08登録)
メタミステリ的要素を多く含みつつ、メタミステリ批評を試みた作品。分厚い長編の謎解きとしては、一つの大トリックで一挙に解決される方が美しいだろうが、本書は解決が分散型でギクシャクしている気がする。


No.19 7点 鏡の中は日曜日
殊能将之
(2020/07/22 20:13登録)
ミステリへの「逆説的な視点」を内包しつつ、ミステリを熟知した「仕掛け」が詰まっている。作者の企みが見抜けなかったのが悔しかった。
読み終わってから、伏線やミスディレクションを探し、読み返すのが楽しかった。


No.18 6点 紅楼夢の殺人
芦辺拓
(2020/07/16 19:16登録)
個々の事件、やや古風な犯罪トリックが、隠れた動機が明らかにされる時、全く新しい必然性を帯びてくる趣向、その動機の普遍性、夢幻的な余韻に満ちた結末まで間然することがない。中国古典と現代の本格ミステリを融合させることで、全く新しい本格をつくり出している。


No.17 5点 美濃牛
殊能将之
(2020/07/08 20:00登録)
作品全体に張り巡らされた伏線が、物語のラストで畳みかけるようにチェスタトン流の逆説に落とし込まれてゆく手筋の冴えに瞠目させられた。しかし、トリックと叙述に若干の無理があると思う。


No.16 4点 凶笑面
北森鴻
(2020/07/03 19:16登録)
民俗学と殺人事件が密接に関わり、すべての謎が解明されていくその構成の妙。しかも解決に至る手順は毎回異なり、民俗学との絡め方も決してワンパターンではない。
全5編のうち後半3編はまずまずだったが、前半の2編は今ひとつ。


No.15 4点 扉は閉ざされたまま
石持浅海
(2020/06/24 18:18登録)
タイトル通りの状況の倒叙ものとして、どこまでロジックを詰めていけるか奮闘している。だが、犯罪動機とその解明に不自然さを感じる。さらに肝心の論理の積み重ね部分の詰めが甘い。


No.14 6点 黒野葉月は鳥籠で眠らない
織守きょうや
(2020/06/17 19:09登録)
どこにでもありそうな平凡な事件が、強烈な意思を湛えた依頼人が介在することで、意外性たっぷりのストーリーへと変貌を遂げている。


No.13 6点 美人薄命
深水黎一郎
(2020/06/11 18:48登録)
若者と老人の交流物語として充分満足させておきながら、終盤でそれまで描かれてきた風景が一変し、したたかに計算されたミステリへと変貌する。鮮やかな手並みに脱帽。


No.12 10点 そして扉が閉ざされた
岡嶋二人
(2020/06/04 18:30登録)
気が付くとそこは核シェルターの中だった。閉じ込められた二人組の男女は、犯人の思惑通り否応なく三カ月前の変死事件の真相を推理するハメとなる。
意表をつく謎とそれに絡む絶妙のサスペンスが売り物の技巧派の作者ならではの仕上がりといえる。凝った設定を活かした技ありの作品。
真相には非常に驚いた。気付く人はほとんどいないでしょう。


No.11 5点 新しい十五匹のネズミのフライ
島田荘司
(2020/05/28 19:56登録)
原典に対する言及が知識のひけらかしにとどまらず、プロットや趣向と密接な関係にある点はさすが。ワトソンの恋の行方も気になるところ。
ただ作者らしさが出ているかというと...うーん。


No.10 7点 闇に香る嘘
下村敦史
(2020/05/22 19:44登録)
伏線の回収や小道具の使い方も堂に入っており、謎の解明とともに当事者たちの人生が一瞬で反転する仕掛けも、シンプルであるがゆえに、いっそう鮮やかに映えている。


No.9 8点 火車
宮部みゆき
(2020/05/14 19:52登録)
クレジットやローンという現代社会の金融産業の異常な拡大と、その蟻地獄のような底なしのマネーの世界に呑み込まれてしまう、多くの犠牲者の姿。
現代社会の影のなかに、自分自身すらも失ってしまう人間たち。作者は、この異様な現実を、一本一本の糸を解きほぐすようにして描き出す。推理小説としても読みごたえがあり、同時に経済小説、社会小説としても面白い。火車とは「生前に悪事をした亡者を乗せて走る火の車」だという。いや、その「亡者」とは実はわれわれ自身であり、その車こそ、現代のこの社会自体である。


No.8 6点 透明カメレオン
道尾秀介
(2020/05/05 20:10登録)
読みどころの集合体といって過言ではない本作だが、特に素晴らしいのは、物語を用いてフィクションが人にもたらす特別な効能を描いる点にある。偽りとは必ずしも卑怯であり害をなすものではなく、創作とは現実よりも劣る絵空事をただ濫造する行為ではない。
現実を前にしたとき、偽りが折れそうな心を支え、創作が一歩踏み出す力をもたらすこともある。そうした真理を、本作は笑いと涙を交えて教えてくれている。


No.7 7点 鍵の掛かった男
有栖川有栖
(2020/04/20 20:09登録)
大阪中之島にある銀星ホテルに長い間逗留していた、身寄りのない年配男性、梨田の死は自殺なのか他殺なのか...。
一本一本の紐を解きほぐすような聞き込みと行動、そして考察は梨田の鍵の掛かった人生に丁寧に歩み寄り、難航する調査の中にあって確実な光を見出す。
ハウダニットの楽しさというよりは、全編を通してひとりの男の人生を味わう大人の小説として読み応えがある。都会の喧騒を忘れさせてくれる佇まいと居心地の良いホテルの贅沢な時間を存分に堪能できる。


No.6 7点 ユリゴコロ
沼田まほかる
(2020/04/12 14:34登録)
主人公は、婚約者に失踪されたばかりか、母まで亡くしてしまった亮介。彼はある日、父の書斎の押し入れに四冊のノートを発見する。そこには、おぞましい告白が綴られていた。
手記の謎に迫るメインストーリーに、やがて婚約者失踪のからくりが明らかになるサブストーリーが合流し、最後に用意されている悲しくも美しい真相に驚愕必至。


No.5 7点 沈黙のパレード
東野圭吾
(2020/04/03 18:10登録)
被害者遺族側の苦悩を描きつつ、トリックもどんでん返しもしっかりしていて、その上で久しぶりのガリレオコンビがやっぱり魅力的。
作品の中で流れた時間分、ゆっくりと登場人物の心情が変化していく様を描きつつ、そしてその変化が物語が進むには不可欠というそのバランスが素晴らしい。


No.4 8点 満願
米澤穂信
(2020/03/27 19:37登録)
人間誰しもが持っている弱く痛い部分を突かれるような、じわじわと締め付けられるような怖さが少しずつ迫ってくる。
後味は不穏であり不気味で背筋がゾクゾクして、でもそれが何とも魅惑的でどんどん深みにはまって抜け出せない。
極上のストリーテラーによる至福の短編集。


No.3 9点 屍人荘の殺人
今村昌弘
(2020/03/19 20:07登録)
人里離れた山奥の山荘に集まった学生たち。やがて彼らは閉じ込められて、事件は起こる。ミステリ読みに慣れた方にとっては飽きるほど使い古された展開。
しかし、この作品はありきたりを大胆に裏切る。そのあまりにも斬新すぎるアイデアには驚かずにはいられない。突飛な舞台設定ではあるが、特筆すべきは謎解きの論理性の高さ。それをしっかり踏まえているからこそ、型破りな設定が際立つ。
読む人を選ぶ部分は確かにあるが、なるべく多くの人に読んでいただきたい。

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