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ミステリの祭典

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◇・・さんの登録情報
平均点:6.03点 書評数:193件

プロフィール| 書評

No.13 7点 毒入りチョコレート事件
アントニイ・バークリー
(2020/03/15 17:10登録)
それまでのミステリで名探偵が提示する解決は一つだったけれど、そんなのは論理的にいくらでも考えられるぞ、と言って五つ六つ並べて眩惑させる。
コンセプトとテクニックと両方持っているのが凄い。


No.12 6点 トレント最後の事件
E・C・ベントリー
(2020/03/15 17:05登録)
探偵がヒロインに恋愛をしたために、意外な展開を見せる異色作。最後のどんでん返しが見事。すべての可能性を検討すれば、真実に辿り着く可能性は高い。


No.11 8点 火刑法廷
ジョン・ディクスン・カー
(2020/03/14 12:36登録)
怪奇趣味とトリックの、非常に怪奇な現象。科学的な解明がなされようとするのだが、それを妨げる異様な雰囲気が全編を漂う。                 あんな場所で死体が・・・みたいな不思議な現象が、こういう事だったんだよと合理的に説明されて、だから死体があの時・・・という、かえって不気味さが立ち上がってくる。
トリックが一番不気味な姿を見せる点は最高レベル。


No.10 7点 曲った蝶番
ジョン・ディクスン・カー
(2020/03/14 12:31登録)
トリックが明らかになった時に浮かび上がって広がっていく不気味な感覚が見事に成功している。動機のひねりも、そこまでやるかみたいな感覚。題名も絶品。


No.9 7点 ルルージュ事件
エミール・ガボリオ
(2020/03/07 16:21登録)
異説もあるが、一応これが長編での推理小説の第一作であると認められている。
アリバイ崩しの元祖でもあり、警察官の捜査を描いた意味でも元祖的な小説。
死体の発見、犯罪捜査、素人探偵の登場、無実の人間の逮捕、死刑の危機がある一方、探偵の活動によって事件の背後や真相が明らかにされるというスタイルが組み込まれている。
ただ今の観点から見ると、犯人が早くからわかり過ぎてしまうという欠点がある。(作者自身が簡単に明らかにしてしまうため、謎解きの興味が薄れてしまう)


No.8 7点 モルグ街の殺人
エドガー・アラン・ポー
(2020/03/07 16:14登録)
記念すべき最初の探偵小説であるが、これは密室殺人の最初であるとか意外な犯人の最初であるともされている。同時に真相があまりフェアでないことも。
しかし注意深く読んでいくと、何が起こったかをデュパンの推理と分析によって再現していく手際はすでに完成されたもので、これは今でも評価に値するし、問題になる窓の施錠の問題も、何故その点が見落とされたかということが丁寧に書かれているので、密室がフェアなかたちで提示されていることがわかる。


No.7 10点 そして誰もいなくなった
アガサ・クリスティー
(2020/03/02 18:27登録)
外部と連絡が取れない孤島や雪山の山荘などに、見知らぬ男女が集まり、次々と殺されていく、というのが孤島ものの基本パターンだが、これは本作によって確立された。
映画的なカットバックが多用され、テンポが早く一気に読める。犯人探しなどしている暇もない。常識的には最後に残った一人が犯人なのだが、そう単純ではない。
ミステリには連続殺人がつきものだが、三日間に十人も殺されるのは前代未聞であろう。だが、ひとつひとつの殺人には密室トリックがあるわけでもないし、作品全体を貫く奇抜なトリックもないし、クリスティー作品でお馴染みのポアロやミス・マープルといった名探偵も登場しない。
大胆な着想と、読者をとらえて離さない筆力によって支えられた名作である。


No.6 4点 運命のチェスボード
ルース・レンデル
(2020/03/02 18:17登録)
思わせぶりな書き出しから、どうやら殺人が起こったらしいというサスペンスだけで引っ張っていく。人間が描けていても事件が抜けているというか、真相はあっても謎はないという感じ。ウェクスフォードもやたら高圧的なだけだし。


No.5 5点 アクロイド殺し
アガサ・クリスティー
(2020/03/01 16:06登録)
面白いが大きな不満があるのも確か。
いきなり私という人物の言行になっていて、その言行が客観的に正しいかどうかという前提が明確になっていない。
手記を書くという動機づけが曖昧なのが弱い。


No.4 6点 ABC殺人事件
アガサ・クリスティー
(2020/03/01 16:03登録)
ABCという法則にのっとって殺人が行われる。でもそこには別の意味があったという答えを聞いてみると、やはり不自然すぎる。
面白いけれど不自然だと考えた推理作家達が、後々このパターンを改良していった。自分ならこうする、という風に創作意欲をかき立てる部分をミステリ・シーンに投げ込んだという意味では重要な作品だと思う。


No.3 7点 Yの悲劇
エラリイ・クイーン
(2020/02/29 10:55登録)
ドルリー・レーンという探偵の造形が古臭い。一番特徴的なのは、ラスト少し前に変装して、犯人をおびき出す場面。
確かに、純粋な謎解き脳内ゲームとしては良く出来ているし、面白い。ただクイーンの代表作と言われていることには違和感がある。
この作品は、中学生くらいの時に読むべき作品だと考えれば、最高の作品。その年代なら文句なく、語りで読者をミスリードしていくスタイルの面白さに驚くと思う。


No.2 8点 シャイニング
スティーヴン・キング
(2020/02/22 11:09登録)
徹底した描写力とキャラクター造形の妙。それから、お決まりを少しずつ少しずつ、ずらしていくプロットの巧さ。それほど突飛なことが起きなくても、小さなことの繰り返しでどんどん思いがけない方向に物語が導かれていく。絵空事じゃない深層心理に訴えるリアルな恐怖。
雪に閉ざされたホテルという一種の密室モノだけど、ホテルがとてつもなく広い。その広い中に三人きりという、空間恐怖症的な手触りがある。もちろんいろんなものが潜んではいるし、逃げ場のあること自体が恐怖という発想も新しかった。


No.1 9点 ブラウン神父の童心
G・K・チェスタトン
(2020/02/15 17:44登録)
警句と逆説を縦横に駆使して、才気あふれる鋭利な文芸評論や小説を書いていったチェスタトンが、まさしく少年の心を持ったブラウン神父を探偵に捉え、彼だからこそ気付けた異常な事件の驚きの真相を解明していく本格ミステリ。
短い一篇、一篇の中で世界の見え方が変わってしまう思考の転回点みたいなものが提示できるのは凄い。しかも語り口が巧くて、どのページにも自分で使ってみたくなるような気の利いたフレーズが散りばめられている。

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