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ミステリの祭典

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平均点:6.23点 書評数:286件

プロフィール| 書評

No.126 2点 京都 紅葉寺の殺人
柏木圭一郎
(2019/08/25 02:15登録)
推理小説というより2時間ドラマの台本を読んでいるような感覚だった。
このシリーズは実際に何冊か2時間ドラマ化されているようだが、この作品はあまりにも見所が無さ過ぎてそれもきつそう。
私ですら3秒で解けたようなトリックを最終盤まで見抜けない人間を名探偵と言われても困る。


No.125 10点 戻り川心中
連城三紀彦
(2019/08/24 06:57登録)
光文社文庫。「ミステリー史上に輝く、花にまつわる傑作五編」という裏表紙の謳い文句は誇張ではありませんでした。

①『藤の香』
お見事。読み終わった後、余韻を味わいたくて次の作品を読み始める気が起こらなかった。
②『桔梗の宿』
ということで日を変えて再開。前作に増して美しい作品だ。これもよくできた話だと思っていたら最終節でもう一ひねりあって驚愕。
③『桐の柩』
最後まで読むとタイトルに納得。これも十分名作だと思う。この中だと埋もれてしまうが。
④『白蓮の寺』
短編を引き延ばして長編にしたような作品は多いが、これは長編1本分の素材を短編の中に詰め込んだ感じ。当然異様に凝縮されていて素晴らしい。今までの3作以上に「花」に大きな意味があるのも良い。
⑤『戻り川心中』
適当な言葉がなかなか見つからないのだが、非常に多面的?な作品だと感じた。色々な方向から見ないと全貌がわからないとでも言いましょうか。不思議な感覚を味わえました。


No.124 6点 寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁
島田荘司
(2019/08/22 01:06登録)
トラベルミステリと本格ミステリの融合と言いたいところですが、果たして成功したのでしょうか?


<以下若干ネタバレあり>


トラベルミステリ部分は正直かなり出来が悪いと感じた。あの程度のアリバイトリックはわざわざ電車に乗らなくてもわかるでしょと。替え玉トリックも犯人側がいくら注意しても乗客から声を掛けられる可能性があるわけで、かなり危なっかしい計画だ。途中下車にしてもあの駅で「はやぶさ」から降りる人などほぼいないだろうから目に付くでしょうし。
これじゃ3~4点くらいかなと思ってたが、トラベルミステリ部分を片付けた後の盛り返しがすごかった。見事に謎をまとめ上げた上に、おまけ要素まで付け足してそれなりの作品にしてしまった。さすがである。


No.123 7点 スタイルズ荘の怪事件
アガサ・クリスティー
(2019/08/20 05:07登録)
クリスティのデビュー作でポワロさんのデビュー作でもある。著作権切れなのかネット上に落ちている。
タイトルから、館モノかと思ったが建物自体の構造はそれほど重要でない。殺人事件は1件のみ。10章までは容疑者がどんどん変わっていく。主要人物はほぼ全員一度は疑われると言ってもよい。12章で意外な犯人が明らかに。

以下読んでいて感じたこと
・薬のトリック?は好きではないです。
・第11章の裁判の所は読みにくかった。
・犯人はさっぱり分からず。解決編には満足。
・ポワロさんを読むのは2作目だけど、やはりあまり有能とは思えない。

デビュー作でこの完成度の高さは、やはりすごい作家だと感じました。


No.122 2点 隻眼の少女
麻耶雄嵩
(2019/08/19 04:57登録)
<思いっきりネタバレあり>



日本推理作家協会賞、本格ミステリ大賞ダブル受賞作ということで期待して読み始める。
冒頭のスガル縁起・抄。安っぽい時代劇風RPGゲームみたいな設定でいきなり読む気をなくす。気を取り直して読み進んでみるが、やはりライトノベルぽい。ゲーム風だからと言って、一番信頼していた人間が最後の最後で「実は私こそが大魔王(犯人)なのだ!」なんていうよくあるパターンではないよね?と思ってたら、まさにそのまんまで閉口。
種田静馬、種馬で子供でも作ってヒロイン?の娘のパパとかまさかやらないよな、と思ってたらこちらもその通りで、もうどうしていいものやら。

この方のデビュー作の書評でも同じことを書いたのだが、どんでん返しがベタすぎて全く驚けなかった。もはや何も起こらず和生が犯人で終わった方がビックリしたかもしれないレベルである。動機まではさすがに全く予想できませんでしたが、これは驚きというよりそんなのありなの?という感じです。
500ページ中450ページあたりまではそれなりに楽しめたので最低点は付けません。


No.121 7点 はやく名探偵になりたい
東川篤哉
(2019/08/16 06:13登録)
烏賊川市シリーズの短編集第1弾。鵜飼と流平がメインで、砂川警部と大家の女性(名前忘れた)は登場しない。

①『藤枝邸の完全なる密室』
謎解きと言えるようなレベルの作品ではないがオチはいい。
②『時速四十キロの密室』
長編で使ったら袋叩きにされそうなトリック。
③『七つのビールケースの問題』
ドタバタしすぎだが、アイデア自体は面白い。
④『雀の森の異常探偵な夜』
流平の探偵にあるまじき注意力の無さはちょっと無理があるが、それを除けばすばらしい出来だ。これはトリックよりロジックの作品。
⑤『宝石泥棒と母の悲しみ』
愛らしくて楽しい作品です。

①が食前酒、②が前菜(珍味)、③が創作料理、④がメインデッシュ、⑤がデザートみたいな感じで全て雰囲気が違う、コース料理みたいな短編集だと感じました。本全体としては好みです。


No.120 9点 占星術殺人事件
島田荘司
(2019/08/15 04:02登録)
歴史的に重要な作品とのことで、確かに非常に重厚で素晴らしい作品でした。
ただ個人的には、犯人がわかりやすすぎることを除けば、メイントリックの衝撃度、メイントリック以外のトリックの完成度、文章の読みやすさ、全体の構成において『斜め屋敷の犯罪』の方が上だと感じました。


No.119 4点 雪密室
法月綸太郎
(2019/08/13 18:42登録)
ネタバレしないようにボカシて書きます。
読み終わってから該当箇所を読み返してみましたが、寝ぼけていたとして本当に気付かないのか疑問が残りました。結構会話してますしね。もっと言えば、警視が先に飛び出して行く危険性も0ではないような。
あと、それほど重要箇所ではありませんが、女の子に時計見せて時刻特定する所もちょっと無理がある気がします。

ところで、クイーンと同じ設定とのことですが、自分のペンネームと同名の有能探偵は書いてて照れくさくないのかな?有栖川さんはどちらのシリーズもワトソンポジションだからそうでもないだろうけど。


No.118 10点 時計館の殺人
綾辻行人
(2019/08/11 03:26登録)
新装改訂版、上下2巻。1週間くらいかけて少しずつ読もうと思っていたが、ページをめくる手が止まらず半日で読了。

<以下ネタバレあり>
これは文句なしの満点。針のない時計塔などから、時間錯誤トリックだとは思っていたが、まさかあんな手があったとは。真実を示された時のカタルシスは過去最高レベル。それまでモヤモヤしていたものが一気に晴れあがった。最後も何か起こるとは思っていたが、予想以上の展開で驚き。あそこまでやりますか。
あとは文章が非常に読みやすい。下手なのに妙に技巧を凝らして更に読みにくくなっている作家が時々いるけど、こういうシンプルな文章で書いてくれればいいのにと思う。
一つだけ文句を言うなら、メイントリック、2割はちょっとやりすぎじゃないかなあ。


No.117 6点 寝台特急(ブルートレイン)殺人事件
西村京太郎
(2019/08/09 23:52登録)
『北帰行殺人事件』の解説で鮎川哲也氏が興味深いことを書いていた。
鮎川氏が鉄道物のアンソロジーを組もうと思って西村氏の作品も入れようとした。ところが片っ端から西村氏の短編を読んだが鉄道物が一編たりともない。本人にその旨を伝えたら数年後、本作を皮切りに怒涛の如く量産し始めた。だから西村氏の著作が鉄道物ばかりになったのは自分が煽ったせいかもしれない、みたいな内容であった。

ということで鉄道物の記念すべき1作目である。
序盤は非常に面白い。こういう通常起こりえないような事態を設定するのがうまいですね、この方。中盤で一応の謎解きがなされるが、これもなかなかいい。ただ溺死の時間差の謎なんかはもっと面白く書けたんじゃないかとは思う。トリックのキモなのにあっさりしすぎな気がした。
終盤はまさにサスペンス、事件が起こるまでの臨場感はすばらしい。西明石駅に駅員を立たせて、犯人の数を知らせる所なんかは映像が目に浮かぶ。ただ事件が起こった後、急激に話がつまらなくなってしまったのは残念。中盤で謎を解明しすぎたのと、事件の動機が社会派のベタな政治ネタだったのが原因だろうか。


No.116 5点 私の嫌いな探偵
東川篤哉
(2019/08/08 06:59登録)
烏賊川市シリーズの短編集第2弾。作者は『謎解きはディナーのあと』ヒット以降は短編ばかり書いているようだが、このシリーズも短編化してしまっていたのか。前作は現時点で未読。

①『死に至る全力疾走の謎』
謎も解決もいかにもこのシリーズらしくて良い。ユーモアが上滑りしていない。ただ、準備段階の所で具体的にどうやったのかが今一つわかりにくい。文字で説明しにくいから省略したでしょ、東川先生。
②『探偵が撮ってしまった画』
これはいまいち。作中で使い古されたトリックみたいなことを言ってるが、まさにその通り。犯人を数人の中から絞る所が見どころか。
③『烏賊神家の一族の殺人』
イカのユルキャラ登場。内容も相当に緩いか。トリックはなんとなくわかるがそれをできた理由がわからなかった。読み進めると・・・そんなのわかるか!となること必定。
④『死者は溜め息を漏らさない』
鵜飼が珍しく文句なしの名探偵である。男子中学生がいい味を出している。
⑤『二○四号室は燃えているか?』
これも古典的なトリックぽいですがどうなんでしょうか。

ドラマ化されてたんですねこれ。全然知らなかった。原作を読む限り朱美はヤリ手の美女で、鵜飼と流平はパッとしないイメージを持ってたんだけど、ドラマは剛力彩芽、玉木宏、白石隼也か。うーん。いやなんでもないです。


No.115 5点 軽井沢マジック
二階堂黎人
(2019/08/06 06:39登録)
時事ネタが非常に多い。ギャグにしろ雰囲気にしろ今となっては滑っているとしか思えないが、当時読めば楽しかったのかもしれない。どう見ても浅見光彦を意識してるが、関西弁でいう所の「バッタもん」感がすごい。水戸黄門的なシーンは特に。
正直言って、発売24年後に読まれることを想定して書かれている本ではないと思う。ましてや大真面目に書評されるとか。仮に目の前で1点付けたところで作者は何とも思わないだろう、多分。文章もわざと素人ぽく書いてるでしょこれ。

<以下ネタバレあり>
・人物に関して、実は○○は××だった!言うのがいくつかあったが、1人だけ面白かった以外はベタ過ぎて苦笑。
・眼球を取り出した理由はちょっと無理があると思う。他人のアレはそう簡単に使えない(自分の昔の物ですら合わないのに)。9割方裸眼の方がマシ。
・ナイフのトリックは有栖川氏の某作の劣化版にしか思えなかった。

文句ばっかり書いたがこの緩さはなんか嫌いになれないので5点で。


No.114 4点 長い家の殺人
歌野晶午
(2019/08/04 03:33登録)
1つ目の殺人のトリックがわかりやすすぎるのはともかく、2つ目の殺人はさすがにもう少し何かあるのかと思っていた。あの部屋数であれはちょっと無理があるでしょう。
この方のデビュー作ということで、推理小説に対する愛情とか熱意は伝わって来ます。ゆえにあまり低い点数は付けたくないのですがそれでもこの点数が限界。


No.113 6点 ここに死体を捨てないでください!
東川篤哉
(2019/08/03 15:03登録)
ギャグはいつも通りですが、ちょっとドタバタが度を超えていると感じました。『 完全犯罪に猫は何匹必要か?』などはストーリーのコミカルさとレギュラーメンツのドタバタ劇が融合して、全体としてきれいにまとまっていたと思います。好き嫌いはともかくとして、この人にしか書けないタイプの作品とでも言いましょうか。
しかしながら本作の事件は、冗談など全く言わなそうな堅物な作家が書いてもおかしくないような代物。それゆえこの作家のユーモアな部分が上滑りしているように思えました。
色々とシリーズを作っては終了させている東川先生ですが、1つくらいはユーモアを排除したシリーズがあってもいい気がします。

<以下ネタバレあり>

さてストーリーですが、こういうトリックは初めて読むので新鮮でした。最初はこんなにうまくいくものなのかと感じたけど、むしろ確実性が高いのかもしれません。水の勢いは思っているよりはるかに恐ろしいですから。私も川で溺れかけたことがあるからよくわかります。ほんの少し川の内側に寄ったら突然流れが速くなって一気に数十メートル流されました。通常時でもそうですからこの作品のようなことをしたらひとたまりもないでしょう。
ただし、徒歩数分圏内で音が聞こえなかったのか、鉄砲水の跡がもっとわかりやすい形で残らないのか、という疑問は残ります。
もう1つ、車の移動の部分は都合が良すぎます。これは話を面白くしようとしたための弊害でしょう。ドタバタ抜きで普通に書けば、あの部分はもっと現実的な形にするはずです。


No.112 8点 北の夕鶴2/3の殺人
島田荘司
(2019/07/28 03:48登録)
トラベルミステリみたいなタイトルで、実際1章終わりまではそんな感じである。プロローグは文体とか言い回しまで西村御大みたいでちょっと笑ってしまった。文庫版第27刷を読んだが、P11、一ケ所だけ「ゆうづる」が「ゆうずる」になっている。何か意味があるのかと思ったがただの誤植のようだ。
2章は突如、本格推理ぽくなり数々の魅力的な謎がばらまかれる。これらが全て説得力を持って解決されれば大傑作だと思いながら読み進む。
4章に入るとハードボイルド調に。個人的にあまり好きでないので斜め読み。ちょっと長い。
5章、あと50ページしかないぞ、全て解決できるのかと思ったが無事解決。めでたしめでたし。

『斜め屋敷の犯罪』のトリックは頭をぶん殴られたような衝撃だったが、この作品の物理トリックはあれほどではなかった。可能性として「直接結ぶ」しか方法がないから、なんとなくは想像できてしまう。それでも細かい点はやはり良く練られていると思った。
ただ、集合写真に鎧が映っていた方の謎はちょっと欲張りすぎな気がした。あまりにも偶然にすぎるし、別になくても話は成立するから。


No.111 8点 中途半端な密室
東川篤哉
(2019/07/24 06:00登録)
東川氏のデビュー前からデビュー間もない時期にかけて書かれた短編5つ。
『謎解きはディナーのあとで』とそれ以後の短編集より、出来も面白さも上だと思った。
一番好きなのは、いかにもこの作家らしい作品の2作目『南の島の殺人』でしょうか。他の作品も建物消失トリックなど、なかなか魅せます。『有馬記念の冒険』だけはそれほどでもないか。
2作目以降の大学生コンビ、いやトリオはかなりいいキャラだと思う。この短編集以外に出ていないのならちょっともったいない。


No.110 9点 モルグ街の殺人
エドガー・アラン・ポー
(2019/07/24 05:59登録)
推理小説を読み始める前にネタバレを食らっていた4作品のうちの1つ。残りの3つは『オリエント急行の殺人』の犯人と『占星術殺人事件』の有名トリックと『獄門島』の「きちがい」ネタ。これは少ない方なのかな?

さて本作品だが、シャーロックホームズよりかなり読みにくい。冒頭から新聞記事が出てくるまでは特に。色々な人の「何語が聞こえたか」の証言の食い違いが興味深い。世界最初の推理小説の犯人がアレだというのは、冷静に考えるととんでもない。推理の過程も想像以上にしっかりしていて驚き。あの犯人だから、もっと冗談めいた小説なのだと思っていた。


No.109 6点 水の柩
道尾秀介
(2019/07/23 06:03登録)
1章の(1)から10人ほど登場人物があり、しかも読み進んでないうちは間柄が非常にわかりにくい。ということでメモを取りながら、再度最初から読み始める。主人公の友達の智樹君の姓は堀内か、メモメモ。読み進めると堀内は智樹じゃなくて主人公?え、主人公の姓は吉川じゃなかったっけ。なになに、堀内は主人公のあだ名だって。入学写真が堀内孝雄に似てたから。て、ややこしい物をさらにややこしくするなよ・・・
まあ何が言いたかったかというと、登場人物リスト付けてください。

さてストーリーだが、どこでミステリーに転じるのかと思って楽しみにしていたが、結局そのまま終わってしまった。よく見ると、長編推理小説なんて一言も書いてないし、裏表紙のあらすじにもミステリの文字がない。ミステリを読んでたつもりだったのでなんだか未消化な感じはしますが、読後感は良いです。青春ミステリというより普通の青春小説ですね。ということで、点数は自分の平均あたりで適当に付けときます。


No.108 6点 交換殺人には向かない夜
東川篤哉
(2019/07/16 06:07登録)
烏賊川市シリーズ第4弾。過去3作を読んでいた方が楽しめるだろう。
確かに設定とか章立ては凝っているし、細かい所のつじつま合わせまでよくできていると思う。ただ、こういう作品は他にいくらでもありそうで(実際あるでしょう、多分)、わざわざ東川さんが書かなくてもいいのではと思ってしまった。
前作のネコの話なんて今思い出しても情景が目に浮かぶくらい楽しかったのに、この作品はユーモア含めてあまり楽しくなかった。


No.107 7点 魔女
樋口有介
(2019/07/10 07:03登録)
はっきり言って推理小説としては、ほとんど見るべきものがないと思います。というか、作者自身、あまり謎解きを重要視してないような気がします。細かい所を詰めようとしている形跡がほとんどないですから。もっと言えば「推理小説」にするつもりなら、犯人をあの人にしないでしょうし。
しかしながら、作品自体は非常に好みでした。文章もうまいし、登場人物も魅力的です。セックス描写が結構生々しいですが、不潔感がないので不快感がありません。創元推理文庫の表紙も美しくていいですね。

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