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ミステリの祭典

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mediocrityさんの登録情報
平均点:6.23点 書評数:286件

プロフィール| 書評

No.266 7点 密室の如き籠るもの
三津田信三
(2021/06/30 05:54登録)
<少しネタバレあり>


1作目がイマイチだったので、短編はこのシリーズ向きではないのかと危惧しましたが、2、3作目は普段とは変わった趣向で良かったですね。
ただ、やはり一番良かったのは実質長編に近いページ数の表題作でした。色々こねくり回して、わかってみれば意外なほどシンプルな真実で驚きました。


No.265 6点 ルドルフ・カイヨワの憂鬱
北國浩二
(2021/06/29 11:15登録)
SFの賞を受賞した作品とのことですが、コロナ禍で読むと、十分にありうる話として読めてしまいます。
ハードボイルドはあまり好きでないのですが、主人公の話以外にも複数の話が同時進行しており、最後まで飽きずに読めました。


No.264 4点 京都寺町三条のホームズ
望月麻衣
(2021/06/05 07:41登録)
スマホで「今週の100円ブック」だったので購入。
京都の骨董店を舞台にしたミステリ風ライトノベル。ミステリ:ライトノベル比はせいぜい2:8くらいな感じなので、ミステリを読んでる感じはほとんどなかったです。
第1巻を100円で売って、気に入ったら続編の2~3巻を定価で買ってもらうという売り方なのですが、このシリーズ、現在なんと16巻まで出てるということで、内容よりそちらの方が驚いたかもしれません。


No.263 6点 赤い月、廃駅の上に
有栖川有栖
(2021/06/04 05:32登録)
怪談ということだが、怖いものは少なくて、むしろ泣ける話が多かった印象。
全て鉄道の話なのに、一見鉄道物に見えない『海原にて』の結末が面白かった。


No.262 7点 家政夫くんは名探偵!
楠谷佑
(2021/05/29 07:52登録)
熱血刑事の怜が何気なく呼んだ家事代行サービス。やって来たのは、美人男子大学生の光弥。彼に進行中の難事件の話をすると、あっと言う間に謎を解いてしまいます。 先日読んだ『無気力探偵』とやっていることはそれほど変わりません。
ライトノベルとミステリの中間のような本は多いですが、この作品は、はっきりとライトノベルで、はっきりとミステリだと感じました。

「8時から10時ごろ・・・その3時間」と言ったような誤植や、少し違和感のある表現が散見されます。若い作家さんなのですから校正はしっかりしてあげてほしいですね。


No.261 8点 ハサミ男
殊能将之
(2021/05/25 02:58登録)
<ネタバレあり>


文庫本で約500頁ほどですが、リーダビリティーは高く、一気に読破してしまいました。序盤で叙述トリックであろうということは想像が付くのですが、具体的にどういう仕掛けなのかは想像しにくかった。真実を知った後でさえ、ちょっと状況を整理するのに苦労しました。二重人格の人間を登場させたり、警察関係者を絡めたりして、複雑にしたのが功を奏したと思います。
このジャンルはヒントを与えすぎてバレバレな上に、それ一ネタしか売りがないものが多すぎると常々感じていたので、この作品は珍しい成功例だと感じました。9点付けたいですが、色々と偶然が重なりすぎているのは否めないので8点で。


No.260 8点 無気力探偵 面倒な事件、お断り
楠谷佑
(2021/05/22 23:55登録)
著者はウェブ上の小説投稿サイト「小説家になろう」で人気を博し、高校在学中に本書でデビューしたとのこと。ということはまだ20代前半ですか。
デビュー作以後も年1冊ぺース、現在5冊が単行本化されています。

さて、本書は高2男子の天才探偵、霧島智鶴が難事件を解決していく短編集です。タイトルは無気力探偵ですが、別に普通に動いております。短編という形にはなっていますが、各事件と並行して主人公の複雑な家庭の謎も徐々に解明されていきます。この辺は『ビブリア古書堂の事件手帖』と似てますね。なお全編BL成分が多め。
各話、ネタバレなしで軽く触れます。

第1章 ダイイングメッセージはいつの時代もY
 最初は登場人物紹介と軽い事件です。ダイイングメッセージ解明より、論理的に犯人の行動を洗っていく過程の方が読み物です。
第2章 割に合わない壺のすり替え
 一見女性にしか見えない美少年がレギュラーとして加わります。これが最も良い出来でしょうか。
第3章 限りなく無意味に近い誘拐
 この誘拐劇はよくあるパターンで犯人はわかりやすいですが、犯人の反論を許さない詰めが良いです。
第4章 どことなく無謀なハウダニット
 リアル脱出ゲームで起こった殺人。事件より脱出ゲームの謎解きの方が面白かったかも。
第5章 霧島智鶴のコールドケース
 主人公の複雑な家庭環境の原因となった事件に絡んだ殺人事件が起こります。最後は妙にあっさりとしてますね。

高校時代のデビュー作でこの出来は見事でしょう。採点は若干甘めで。キャラクターにも魅力があって人気が出るのも当然かと感じました。


No.259 7点 魔王城殺人事件
歌野晶午
(2021/05/18 03:51登録)
小学5年生の探偵団ということで、読者もその辺りを想定しているんでしょう。奇をてらった趣向もなく、正攻法の本格推理で、ジュブナイルとしては上出来だと思いました。ただ、この本ですら平均的な小学5年生にはまだ少し難しい気がします。


No.258 6点 黄色い猫の秘密
エラリイ・クイーン
(2021/05/16 02:46登録)
1952年、名義貸しのジュブナイル小説(サミュエル・ダフ・マッコイ執筆)で、ジュナの冒険というシリーズの7作目。全10章。
5章までは、見知らぬ街を探検しているだけのごく普通の少年向け小説という感じで、ほとんど何も起こらない。もっとも、後から考えると後半のヒントを色々と撒いてるんだが。
後半は主人公が危ない目にあいながらも、何とか悪い企みを打ち破る。
ジュブナイルだから大筋と黒幕は見えやすいんだけど、主人公が何気なく観察していたことから細かい推理を展開していたのが意外だった。


No.257 7点 体育館の殺人
青崎有吾
(2021/05/09 05:49登録)
殺人は1件のみ。アリバイ、関係者の証言、残されたアイテムから犯人を論理的に絞っていく。かなり地味なストーリーで、小説としては正直あまり面白くはない。まさか傘だけであんなに引っ張るとは。
謎解きは満足だったが、アニメや声優関連と思われる話がいくらなんでもくどすぎると思った。


No.256 9点 法月綸太郎の新冒険
法月綸太郎
(2021/04/24 03:47登録)
①『背信の交点』
会心作とのことだが、そこそこの出来のトラベルミステリ短編にしか思えなかった。慣れないジャンルだからか、なんだか普段より読みにくいし疑問点も多い。以下気になったこと(ページは文庫本)
・P20、3行目からの段落
「図書館長と司書の穂波が2人で信州に行く予定だった」と最初に書いておいてくれないから、意味を取るのに苦労した。前巻を読んでいれば問題なくわかるのかもしれないが。
あと、細かいけれど、話の流れ的に館長が倒れたのは先週の日曜でなくて、おそらく今週の日曜でしょう。
・P26、4行目
前屈姿勢なのに、なぜ前のページで頭の上半分が見えてるのだろう。
・P26、5行目からの段落
ここも一読しただけでは理解できなかった。同じ車両のこちら側の乗客がいる席???
同じ車両なのは当たり前だから書く必要ないし、進行方向右側と書いてくれればそれで済むのに。右半分だけでもいいか。
・P86、12行目
アレを入れたら明らかに味が変わるから、よほどの味音痴でもない限り分かるでしょう。

②『世界の神秘を解く男』
これは人間心理を巧みに利用した会心作だと思う。シャンデリアが真下に落ちなかった理由も良かった。

③『身投げ女のブルース』
これも文句なしの名作。P182、12行目で、身投げ女を評して「知っている女に似ているような気がした」と書いてあるのに、P183最後で別人だと断定しているのはなぜだろうと思っていたが、解消されてスッキリ。

④『現場から生中継』
鉄壁のアリバイをどう崩すのかと思ったらそう来ましたか。
少し偶然が過ぎるかもしれないですが、納得の解決です。

⑤『リターン・ザ・ギフト』
登場人物が少なすぎて真相は見抜きやすいかもしれないが、そこに行きつくまでの推理が楽しい。かなりややこしくて、正直全部理解する気にはならなかったけど。

全体としては非常にレベルの高い短編集で大満足です。


No.255 6点 夜間飛行(ムーンライト)殺人事件
西村京太郎
(2021/04/09 02:18登録)
ただの新婚旅行客の蒸発かと思いきや、どんどんスケールが大きくなって来て社会派ミステリの様相を呈してくる。話を広げるだけ広げて投げ出し気味に終わるが、今回はそれほど気にならず強引に寄り倒しての勝利。同じページ数でも最近の著者の本の3倍は内容が詰まっている力作。


No.254 5点 九つの殺人メルヘン
鯨統一郎
(2021/04/08 01:21登録)
『本当は怖いグリム童話』的なメルヘンの新解釈(どこまで鯨氏のオリジナルかは不明)とアリバイ崩しのストーリーを絡ませた野心作。
9章あるが玉石混交。かなり無茶なアリバイ崩しもいくつかある。ブレーメンの音楽隊がベストか。昔のテレビ番組、歌謡曲の話題が多すぎて困惑。3ページくらい延々と続くことも。


No.253 3点 贖罪の奏鳴曲
中山七里
(2021/04/08 01:20登録)
著者の本は確か5冊目だが、「多くの方が驚いている所で自分は何とも感じない」作家のひとりで、今作も平均点が現状で6.70もある理由がよくわからない。
普段から参考にさせていただいている方々の高評価の書評を拝読しても、なんだかあまりにも感じ方が正反対なので、狐につままれているような感覚とでも言いましょうか。
設定が特殊なだけで、謎解き自体はよくある2時間ドラマの法廷ものと大して変わらないと感じました。
ところで、御子柴の行為は完全にアウトだと思うけど、2作目が存在するということは警察が見逃したのだろうか?


No.252 5点 終着駅殺人事件
西村京太郎
(2021/04/01 02:46登録)
アリバイ崩し部分は、今までに読んだ氏の他作品に比べるといまひとつ。
ゆうづる7号のアリバイを5号で確かめるとか、第三者の作為があったとしてもお粗末すぎる。
上野駅の毒殺の方のトリックも、何かすごいアリバイ崩しがあるのかと思ったらつまらない真相だし、青森のホテル密室殺人、青森駅の待合室殺人も全然面白くない。
事件のトリガーとなってしまったミスは確かに衝撃的で、物語の締めくくりの手紙は強烈な余韻を残す。


No.251 2点 ドS刑事 風が吹けば桶屋が儲かる殺人事件
七尾与史
(2021/04/01 02:45登録)
一見すると、東川先生の作品のようなユーモアミステリ風なのだが、最後まで読むと全くの別物。
主人公の刑事は、ドSなどではなくただの死体愛好者。犯人も真相がわかってみれば相当の性格異常者。
はっきり言って、狂人が起こした連続猟奇殺人を、猟奇殺人愛好者の刑事が解決するという、考えれば考えるほど気持ちが悪い作品。


No.250 7点 魔神館事件 夏と少女とサツリク風景
椙本孝思
(2021/03/25 04:30登録)
ライトノベル畑の作家さんということで、500ページ超の割にはサクサク読めた。
現実的な解決を予想していた人にとっては低評価になるのは仕方ないと思う。
私はもっとアホなことを考えていたので「意外とまともだった」ということでこの点数。


<以下ネタバレあり>


全ての殺人が起こった時点で、「果奈が人間型万能怪力殺人ロボットで、世界最高の知性、犬神博士が全てを計画した」以外の論理的な解決は不可能なのではないかと考えていた。本格推理のふりをしたDr.スランプというオチなんじゃないかと。
よって、本作の真相は私には突飛どころかむしろ現実的に感じられた。ああ、その手があったかと膝を打った。


No.249 6点 アンデッドガール・マーダーファルス2
青崎有吾
(2021/03/17 07:01登録)
前半がルパンvsホームズの頭脳と体力勝負。後半が人外たちの格闘。
後半にも名前を聞いたことのある有名キャラが続々と出てきて盛り上がる。
SF/ファンタジーとしてなら十分楽しめたのでこの点数。


No.248 6点 飛騨の陥穽―高山発11時19分の死者
津村秀介
(2021/03/13 06:18登録)
アリバイ崩しものだが、むしろ事件の背景の方が感心した。
アリバイ崩しは、本の中に出てくるデータだけでは解けないタイプなのであんまり。


No.247 9点 宿命
東野圭吾
(2021/03/13 01:25登録)
過去のしがらみがどんどん解き明かされていくプロットの見事さは『犬神家の一族』を思い出した。
登場人物は多いが、記憶力の悪い私がメモ無しでも問題なかったのは、作者の人物描写の書き分けが見事だからであろう。
物語進行中に起きた殺人とその謎解きがもっとすごければ満点評価だったかもしれない。

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