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ミステリの祭典

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無気力探偵 面倒な事件、お断り
無気力探偵シリーズ

作家 楠谷佑
出版日2016年06月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 6点 メルカトル
(2022/01/06 23:02登録)
高2の霧島智鶴はどんな難題も解決できる天才だが、最大の欠点は究極に無気力なこと。そろそろ進路も考えねばならず、労力を使わず頭脳だけで稼げる仕事はないか?と考える日々。そんな彼のもとに、失敗で現場捜査を外された落ちこぼれ刑事や同級生の揚羽、柚季らが次々と事件を持ち込む。ダイイングメッセージの謎、誘拐、脱出ゲームでの事故などに挑み…?やがて彼の隠された過去が明らかになり―。
『BOOK』データベースより。

全体的に小粒な感は否定できません。それでも読者を飽きさせない様に目先を変え、ダイイングメッセージ、密室、誘拐などをテーマにし、ロジックに特化したフーダニット主体の連作短編集。個人的には第三話(第三章)の『限りなく無意味に近い誘拐』が一番のお気に入り。ちょっと吃驚しました、情けないことに。読む人が読めばすぐに真相は想像が付くかもしれませんけど、私は見事に騙されました。

主人公で探偵役の高校生桐島千鶴はタイトルの様に無気力ではない様に見受けられます。積極的に事件に関わろうとはしませんが、かと言って面倒がって嫌々探偵する訳ではなく、似たようなキャラの裏染天馬よりはやる気があると思います。
若干ラノベ要素も含まれています。しかし、あとがきでクイーンが好きと書いているように、論理で攻めるやや地味目の本格ミステリであるのは間違いないでしょう。決して悪くはないと思います、もっと世間に知れても良いのではないかな。

No.1 8点 mediocrity
(2021/05/22 23:55登録)
著者はウェブ上の小説投稿サイト「小説家になろう」で人気を博し、高校在学中に本書でデビューしたとのこと。ということはまだ20代前半ですか。
デビュー作以後も年1冊ぺース、現在5冊が単行本化されています。

さて、本書は高2男子の天才探偵、霧島智鶴が難事件を解決していく短編集です。タイトルは無気力探偵ですが、別に普通に動いております。短編という形にはなっていますが、各事件と並行して主人公の複雑な家庭の謎も徐々に解明されていきます。この辺は『ビブリア古書堂の事件手帖』と似てますね。なお全編BL成分が多め。
各話、ネタバレなしで軽く触れます。

第1章 ダイイングメッセージはいつの時代もY
 最初は登場人物紹介と軽い事件です。ダイイングメッセージ解明より、論理的に犯人の行動を洗っていく過程の方が読み物です。
第2章 割に合わない壺のすり替え
 一見女性にしか見えない美少年がレギュラーとして加わります。これが最も良い出来でしょうか。
第3章 限りなく無意味に近い誘拐
 この誘拐劇はよくあるパターンで犯人はわかりやすいですが、犯人の反論を許さない詰めが良いです。
第4章 どことなく無謀なハウダニット
 リアル脱出ゲームで起こった殺人。事件より脱出ゲームの謎解きの方が面白かったかも。
第5章 霧島智鶴のコールドケース
 主人公の複雑な家庭環境の原因となった事件に絡んだ殺人事件が起こります。最後は妙にあっさりとしてますね。

高校時代のデビュー作でこの出来は見事でしょう。採点は若干甘めで。キャラクターにも魅力があって人気が出るのも当然かと感じました。

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